ケイデンス90理論の崩壊。ロードバイクで目指すべきケイデンスは一体どれくらい?

読者様より、ケイデンスについてのコメントを頂きました。

読者様
読者様
三年以上前の記事ですが少々気になったのでコメントさせていただきます。

ケイデンス90を無理なく延々と回すというのは、JBCFなどのレースで上位争いをしている選手でもかなり厳しいものがあります。軽いギアなら話は別ですが、ロングライドペース(FTP比50~75%)で90付近で回し続けている人はかなり少ないです。

ジュニアナショナルコーチが行った実験によると、ケイデンスを上げればあげるほど血中乳酸濃度と心拍数は上がり、出力は下がりやすくなります。その実験では、FTPテスト(TT)においてケイデンスは85程が最も効率が良いとのことです。ガチガチのレーサーでもレースでケイデンス100を越える時間は長くありません(これは脚質にもよりますが)。

ケイデンス90を維持できたとしても心拍等はかなり高い数値を示すのではないかと思います。それと、仮にケイデンス90~85で巡航できたとしても、初心者の方の出力からすると常用できるギアは34-17や18程になるかと思われます。これではトルクが小さすぎて股ズレや掌の痺れ、体幹を使えない見かけ楽なポジション(誤解を招くので捕捉。体幹を使うのと使わないのとでは出力が3割違います。これは本当です。)で乗ってしまうことによる腰痛に悩ませられることになるのかと。それでは快適に自転車に乗り続けることはできません。それならばケイデンスは75~60程に落として50-18や20を使うべきでしょう。

これについてですが、一般的通説としては【ケイデンスは90程度】というのが基本でした。
これはいろんなところで書かれていますし、ヤフーの検索で【ロードバイク ケイデンス】と入れると、サジェスト機能で【90】という数字すら出てきます。

でした、と書いたように最近の考え方は少し違うようで、実はこれについては記事を書かねば、と思っていたところです。

最近のケイデンス理論

これは論文で読んだのですが、ケイデンス90というのはプロ選手では当てはまるけど、アマチュアの場合はもうちょっと低いほうが望ましい、というものがありました。
ただし、この論文での被験者数が極端に少なかったので、どう評価すべきかについてはちょっと難しいなと思っているところがありまして、悩んでいた最中でした。

海外の記事ですがこういうのがあります。
https://road.cc/content/news/256189-high-cadence-pedalling-inefficient-amateurs-says-new-study

で、内容についてはコメントいただいた内容とほぼ同じなのですが、この実験、被験者数が9人とかなり少ないデータを元に解析した結果です。
統計学的に言えば9人のデータというのはほぼ意味を成さないので、これをどう評価すべきなのかについては難しく、ほかにもリサーチがないのかといろいろ探していたのが現状です。

この中で、

Pedalling at cadence greater than 90 rpm is advantageous for professional cyclists, but appears inefficient for recreational cyclists

翻訳

90以上のケイデンスはプロのサイクリストには有利ですが、レクリエーションのサイクリスト(アマチュアという意味)には効率が悪い

とあります。
ただ、この結果は先ほども書いたように、被験者数9人という限られた範囲でのデータでしかないので、これはこれで一つのデータなんだと理解し、その上でそれが全てのアマチュアサイクリストに当てはまるかどうかはまだわからない、と読み取るほうが科学的なのかなと思ってました。

また、実験手法でやや怪しい点としては、エアロバイクを使用したとある点です。
エアロバイクだとどうしても使う筋肉が変わってしまう(ロードバイクに比べて)ということや、適切なギア比を選択していたのかどうかもよくわからないこと、そもそも実験方法として【4分間ペダルを】とあるように、短時間での測定なのでそれが長時間になった場合にどうなのかが不明であるのが、どうなのか?という疑念もあります。

あくまでも筋肉の影響を測定した実験であり、関節への負荷が考慮されてない点も注目です。
重いギアでゴリゴリ踏めば膝の関節に負担がかかることはよく知られた事実ですし。

で、こういうことから、この実験の結果を否定したいわけではなくて、この実験自体が参考程度にしかならないと思っています。
これが大規模な被験者数で行った場合にどうなるのか、長時間のペダリングになった場合にどうなるのかなどは不明であるとことです。
この研究結果通りになる可能性もあるし、全く正反対の結果になる可能性もあるし、それはやってみないとわからないということですね。

ご意見いただいた方の【ジュニアナショナルコーチの】というのは、どのデータなのか調べてもわかりませんでしたので、もしご存知でしたら是非とも見たいのでご提供いただけると助かります。

自分のケースでいうと

自分自身のケースで言うと、実は昨年あたりから、意図的にケイデンスを抑え目にして乗るようにしていました。
以前は平坦でロングライドしているときは、ケイデンス90以上を目安にしていたのですが、最近は80~85あたりを目安に。

これ、何でかと聞かれると特に理由があるわけでもなくて、なんとなく始めたことだったのですが、自分には合っているような気もするし、ケイデンス高いほうが良かったかなと思うときもあるし。
自分でも考えがまとまっていなかったというのが本音です。

ただし、このコメントを頂いた記事についてですが、これとも関係します。

筋力がある初心者が間違いやすい乗り方。へっ?アウター×トップ常用??

これは仕事上のお客様(かなり筋トレで鍛えている方)が、ロードバイクを買ったという話です。
ショップから自宅までの約30キロの距離、筋力が高いからかアウター×トップでひたすら走ってきたらしく、たった30キロの距離で翌日動けないほど疲労したそうです。

学生さんなんかでもそうですが、スポーツをしていた(している)人にロードバイク乗らせると、なぜかアウター×トップのような、普通はまず使わないだろうクソ重いギアを使い、ローケイデンスで乗ろうとします。
人によっては、

読者様
読者様
ギアが軽すぎて困っている。
もっと重く出来ないか?

などと言ってくる人すらいます。

そういう人に限って、

管理人
管理人
一番重いギアでどれくらいスピード出てます??

と聞くと、

読者様
読者様
時速40キロ出るか出ないかくらい

と答えてきます。
これは完全に間違ったギア選択なのは誰しもがわかることでしょう。

そういう人に向けての書いている記事でした。
レースしている人とはちょっと感覚的なズレがあるような気がします。

ご意見いただいた方も、

読者様
読者様
軽いギアなら話は別ですが、

と書いているように、一般サイクリストだとそんなに重いギアを使わずに、軽めのギアでケイデンス重視で回してロングライドしている人のほうが多いような印象です。
あと誤解を与えているかもしれないので書きますが、ライド中の平均ケイデンスが90という意味で記事を書いているわけではないので、そこはご理解を。
登りやら足を休めたりなどもありますから。

参考までに時速33キロ程度で走っていると仮定した場合、ケイデンスとギア比の関係を見ていきます。(タイヤは25c、タイヤ周長2105mmで計算)

ケイデンス フロント リア 速度
90rpm 50T 17T 33.4km/h
85rpm 50T 16T 33.6km/h
80rpm 50T 15T 33.6km/h
75rpm 50T 14T 33.8km/h

続いては、時速25キロ程度で走っているときのケースです。

ケイデンス フロント リア 時速
90rpm 50T 23T 24.7km/h
90rpm 34T 15T 25.8km/h
85rpm 50T 21T 25.6km/h
85rpm 34T 15T 24.4km/h
80rpm 50T 21T 24.0km/h
80rpm 34T 14T 24.6km/h
75rpm 50T 19T 24.9km/h
75rpm 34T 13T 24.8km/h

ケイデンス理論

そもそも、【ケイデンス90】というのがどうやって決まってきた数字なのかについても調べていた最中ですが、正直なところイマイチ根拠はわかりませんでした。
強いて言うなら、昔は重いギアでゴリゴリ乗るのがある種の基本であったわけで、その時代ってスプロケ自体も11-23Tなどでした。

アームストロングが山岳で、軽いギアでクルクルとケイデンス上げて乗ったあたりで、ケイデンスを上げて軽いギアという風潮になったのかなと思うのですが、これもイマイチよくわかりませんでした。

言いたいこととしては、ケイデンスについてはある程度の目安はあっていいと思いますが、要は人間だって人それぞれ体は違うのですから、本来は数字の目標がみんな同じということが間違っているのかもしれません。
少ないエネルギー消費で長く速く乗れればそれが正解とも言えます。

で、当サイトではレース志向というよりもロングライド志向の人が多いので、個人的には軽めのギアでケイデンス90程度というのは、さほど間違っているとは思いません。
もう少しいろいろリサーチしてから書こうと思っていたのであまり考えもまとまっていませんが、初心者が目指すべきケイデンスは、80~90程度なのかなと思います。

この手の研究って、恐らくはカネにならないのでどの研究者もやりたがらないのかなと思いますが、どうなんでしょうかね?

最初に書きましたが、今回頂いたご意見よりも前に、ケイデンスの記事は見直さないと、と思ってました。
ただ、評価するに値する論文がイマイチ見つからなかったので、見つけた論文だけで論ずるのはちょっと危険だなと思ってまして。

なのでその【ジュニアナショナルコーチの】という論文があるようでしたら、是非ともご提供ください。
よろしくお願いいたします。




コメント

  1. タクリ より:

    自分のコメントを取り扱っていただきありがとうございます。
    その文献、実は本として出版されてます。[自転車競技のためのフィロソフィー]と別の方の著者ですが[ロードバイクの科学]という本です。かなり面白い内容ですので、レースに興味がないという人でも是非一度読むことをオススメします。

    さて、ケイデンスのお話ですが、ケイデンス90というのはどちらの本もあくまでも[レースなら]効率が良いという形で取り上げています。LT走以下の強度ならばケイデンスは単に出力を出すだけなら85程が効率が良く、ロングライドなら筋肉の負荷そのものが小さいためにケイデンス60程が一番効率が良いとのことです。実際最近のTTの映像を見ていると、ケイデンスは一昔前よりかなり低くなってきています。60-11や62-11といった、踏めるの?と思うようなギア比を使用する訳ですから速度そのものは上がっています。
    勿論TTというLT域を維持する特異な環境のレースだからこそのギア比ではありますが。

    これに関して自分でも実験をしてみました。
    ハイブリッド固定ローラーと負荷なし三本ローラーでの(ほぼ)同一ギア比、同一出力での比較です。
    LT域=SST~FTPでのメニューをそれぞれ行った結果、三本ローラーでは本来の実走でのLT出力を維持することすら出来ませんでした。固定ローラーでは実走より多少低い値ですが維持は比較的楽でした。ケイデンスはそれぞれ100~110、130~140という高めの値ですが、これは自分のギア比とローラーの負荷特性に合わせた結果なので仕方ないと考えています。
    LSD域(=ロングライドペース)でも実験を行いました。ケイデンスはそれぞれ60~75、95~110です。同じ心拍数なら固定ローラーの方が高い出力を維持できましたし、三本ローラーではケイデンスが上がりすぎて股と手への負担が大きく快適とは言えませんでした。これに関しては乗り方が悪いというのは(自画自賛ですが)一切なく、むしろ理想的なニーバリフォームを維持した結果でした。つまり多少負荷を脚にかけた方が同一出力での心拍数は下がり(=運動効率は良くなる)、熱の発生を押さえることで空冷性能を相対的に引き上げて楽に長い距離を乗れるというわけです。

    これらを踏まえた結果ですがケイデンスをロングライド時に高く保つ理由は、皆神話を信じすぎているからです。単に速く楽に走るならケイデンス60~75という領域が一番楽だと思います。個人的にはガチガチのロングライドセッティングとはケイデンスを如何に高くしすぎず、パワーロスを押さえられるかに焦点を当てたセッティングだと思っています。クランクを160㎜にしたり、空気圧を5bar程まで落としたり等々な訳です。私達一般人がランスやフルームのような[ツールを勝つ人間]のやることをむやみに真似るのは良いことではありません。彼らがケイデンスを高く保つ理由は、23日にも渡るレースで、筋肉への負担を少しでも押さえて体力を温存するためと言われています。

    しかしそれを真似してケイデンス90維持なんてしたら疲労度はかなりのものでしょう。平地でもケイデンス90をなるべく維持する努力は相当なものです。ブエルタを二度完走した土井さんの著書[敗北のない競技]でも、第20ステージの朝は燃えるような筋肉の痛みで目が覚めたとあります。マッサージを毎日受けている選手ですら、そして当時のチームのエースに近い位置にいた土井さんですらこれなのです。フルームやランスのような総合争いをする選手はなおのことでしょう。

    ですが彼らはあくまでも訓練された特別な人間です。心拍が多少高くても放熱能力は高いでしょうから、その点に関しては負担は小さいはずです。そもそも彼らは200㎞のレースを走っている訳ですが、私達は200㎞のロングライドをしているわけです。楽に走るならば筋肉の負荷と心拍のバランスが重要でしょう。19×1より10×10の方が計算結果が大きくなるのと同じことです。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      書籍のほう、探して見てみます。
      2点ほど疑問があるのですが、

      >ケイデンスを高く保つ理由は、23日にも渡るレースで、筋肉への負担を少しでも押さえて体力を温存するためと言われています。

      これがプロだとこういう理由なのに、一般人には当てはまらない理由は何があるのでしょうか?

      >19×1より10×10の方が計算結果が大きくなるのと同じことです

      これの意味がちょっとわからなかったのですが、どういう意味でしょうか?

      よろしくお願いいたします。

      • タクリ より:

        ケイデンスを高く保つ理由が少し不明瞭でした。捕捉させていただくと、フルームやランスはプロの中でもトップレベルの心肺機能を持っている(た)わけです。彼らはトルクを稼ぎ心肺に負担をかけないように登るよりも、持ち前の心肺機能を存分に生かしていたわけです。

        ここで少し思い出していただきたいのですが、クリス・フルームが今まで走ってきた総合争いをしたグラン・ツールで3週目にバッドデイが来た大会はどれだけあるでしょうか。私の知る限りでは2015年に風邪を引いてしまったときのみだと記憶しています。2018年はジロの疲労でツールでは精彩を欠きましたが、全体としてフルームの走りはとにかく安定しているように思います。つまり、「心肺機能への負担と出力効率を度外視し、疲労を溜めないために」ケイデンスを高く保つ訳です。出力効率については後に解説しますが、心肺への負荷はケイデンスを高くすることにより上昇することは上のコメントで既に解説している通りです。

        私達一般人がフルームのような心肺機能を持っているのならば話は別ですが、ケイデンスを高くすることで心肺に負担をかけて余裕を無くすよりかは、脚と心肺にそれぞれ負荷を分散させることで実質的な負荷を減らす方が良いということです。

        出力効率についてですが、こちらは実走で行ってみるとわかると思いますが、インナーローでケイデンス200(34-28、25cタイヤで30.8㎞)を出すよりも、50-18(ケイデンス88)で同じ速度を出す方が明らかに楽です。努力度で換算すると、前者はスプリント、後者は初心者の方でもせいぜいFTPか~VO2領域に入るか入らないか位でしょうか。筋肉の稼働速度(ケイデンス)を稼ぐより、筋肉への負荷(トルク)を多少増やしておくほうが、総合的な出力は大きくなります。面積の計算と同じです。周長が40mの庭があったとして、1m×19mの庭よりも10m×10mの庭のほうが使い勝手は良いはずですよね。要はケイデンスとトルクのピークのグラフを作って、それを照らし合わせて見たときにケイデンス曲線とトルク曲線が重なるところが最もエネルギー効率が良いわけです。その時のケイデンスが大体60~75だと言われているわけです。
        長々と書きましたが、ケイデンスは重要な指標になるので読んでいただけると幸いです。この理論の完全な捕捉が例の二冊に記してあるので、このサイトをご覧になられた方は探してみてください。

        • roadbikenavi より:

          度々ありがとうございます。

          書籍のほうは発注しました。
          補足もありがとうございます。

          トルクとケイデンスのバランスは大切だと思ってます。
          この件についてまともなレベルで研究した論文がないかずっと探していたので、参考になりました。
          ありがとうございます。

  2. のぶ より:

    はじめまして!
    ケイデンスの高低よりはトルクの高低かなと個人的には思います。
    僕の場合、FTP程度ならケイデンス88くらい、FTP90%なら程度82くらいです。
    FTP105%~110%くらいになると92~95が楽です。短時間高強度になるともっとケイデンスは上がっていく傾向があります。ケイデンスを低いままギアを重くしてパワーを上げていくと、早くタレてしまいます。なんでかなと、主観的に疲労感が強くなるトルクを調べてみると、どのパワー域でもトルクがある一定の値を超えると急激に疲労感が強くなる傾向がありました。参考までに(^^)

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      この件は、極論で言えば人それぞれというのもあるのですが、トルクとケイデンスのバランスは大切ですね。