京都市の自転車ナビラインと自転車事故数の減少について。数字を見て考えること。

ちょっと前に、大手自転車サイトのサイクリストに、京都市の自転車行政、特に【自転車ナビライン】がうまく効果を発揮しているという記事がありました。

https://cyclist.sanspo.com/504828

この記事ですが、京都市は自転車ナビラインを推進していて、それにより自転車の逆走が減り、車のスピードも落ちて安全になり、自転車事故も減ったから成功だ、という論調なのですが、確かに事故数の減少は数字で出ています。
しかし、

・自転車の逆走が減った
・車のスピードが落ちた

このあたりは記事中では全くデータが出ておらず、記事自体の信憑性が怪しいと思ってました。
この記事だけ見れば、京都市の取り組みは素晴らしい!自転車ナビライン最高!となりそうなんですが。

で、これについて、公表されているデータからお話します。

逆走は減ったのか?

これについてですが、実は2016年(平成28年)に、京都市はデータを出しています。
サイクリストの記事では、逆走は減ったとかのデータが出ていないままに、自転車ナビラインの成功だと結論付けているようですが、実態は本当にそうなんでしょうか?

こちらが、京都市が専門部会で公表したデータです。

4kyogisiryo-guideline

ここからデータを抜粋しましょう。
こちらは自転車ナビラインを設置した前後の比較です。

このデータからわかることは、

・元々京都市については、自転車の車道走行率が他都市よりも著しく低かった(車道走行率17.0%)
・元々京都市については、車道を走る自転車の順走率は他都市よりも高かった(順走率94.2%)

これを踏まえて、自転車ナビラインを設置した結果、

・車道走行率が3.4%上昇
・車道順走率が1.6%上昇

確かに、自転車ナビラインのおかげで逆走も減ってます。
場所によってはそれなりに大きな変化が出ているところもあるので一概に無意味とは思いませんが、平均すると車道走行率の3.4%上昇、車道順走率の1.6%上昇です。
逆走が減ったことは確かなんですが、たかだか平均1.6%の変化ですよ。
かけた費用に対しての効果としてはどうなんでしょうか?

こちらのデータは自転車ナビラインを整備したあとに、一時停車もしくは路上駐停車している車の台数に変化があったのかどうかのものです。

これについては大きな変化はなかったと結論付けてます。
変化率で見ると、むしろ自転車の車道走行率や順走率よりも変化出ているんですけどね。
変化率はデータには出ていませんが。

いくらの予算をつぎ込んで、車道走行率が3.4%上昇、車道順走率が1.6%向上したんだか・・・
確かに、良くなったと言う見方は出来ます。
しかし、一番の問題としては、市民感覚と有識者感覚が大きく乖離していることではないでしょうか?

有識者の中には、前の記事を書いた方も含まれています。
有識者は素晴らしい!と絶賛し、市民はそうは思っていない。

例えば有識者は

ピクトのある区間では、自転車も車も遠慮がちに走ってくれたと思う

と評価し、一般市民は

ドライバーにはほとんど認識が浸透してないので怖くて車道を走れない

いかに有識者感覚と市民感覚がズレているかの証明です。

これが現実です。

ほかには生活道路での自転車ナビラインを設置後のデータも出ています。

これを見ればわかると思いますが、むしろ悪化しています
交差点での一時停止率は悪化し、交差点での減速率も悪化。
まあ、1~2%の差なので、ほぼ変わってないと見るほうが正しいのかもしれませんが。
ここでも資料の中で

整備の前後で左側通行の走行率、交差点での一時停止率、交差点での減速率のいずれも、ほとんど変化が見られなかった

と結論付けているわけで、1~2%の変化については【ほとんど変化が見られない】という見方になるのですが、車道順走率のところでは、

観測した8地点全てで上昇
(最大12.8ポイント)

と、平均1.6%の上昇しかなかったのに、なぜか効果的であったかのようになってます。
このあたりはよく行政がやる手段ですが、マイナスポイントはなるべく目立たないようにして、プラスに転じているならやたらと強調する。
一時停止率が1%減少し、交差点減速率が2%減少してますが、それについては【ほとんど変化がない】と評価し、1.6%上昇した車道順走率については、評価するという姿勢も意味不明です。

この生活道路については、少なくとも、自転車ナビラインが成果をあげたとは言えませんよね。
左側通行率、つまり逆走率については変化無しになってます。

確かに、事故件数は減ってます。

今回私が出したデータは平成28年のものなので、事故数の減少も同じく平成28年を見ていただければ。
他の都市よりも下がっています。

京都では、平成25年11月より、条例を改正し、自転車に乗りながらイヤホンやヘッドホンを使うこと自体を違反にしました。
多くの自治体では、【イヤホンなどを使って周囲の音が聞こえない状態】が違反なので、イヤホンやヘッドホンを使うこと自体を禁じたので、ある意味ではほかの自治体よりも一歩進んでます。

この条例による効果はあったのか、なかったのか、わかりません。
それも加味して検討して、【自転車ナビラインは事故を減らした】というのであればいいですが、先にあげたデータのように、自転車ナビラインは逆走をわずかに封じた程度の話というデータしかありません。
また生活道路ではむしろ状況が悪化しているという現実。
それだけでここまで事故件数が減ると考えるほうが不自然ですが、これ以上はデータがないのでわかりません。

この自転車ナビラインを導入しての自転車の挙動の調査は2016年(平成28年)当時のものなので、もしかしたらさらにそこから時が流れて、市民に自転車ナビラインの走り方についての周知が出来たという可能性は否定できませんが(平成29年については)、【逆走が減った】などと曖昧な表現にせず、まずはデータを出してどれだけ逆走が減り、事故がどれだけ減ったのかを見せるべきではないでしょうか。

ちなみにですが、警視庁(東京都)では、自転車ナビラインの設置により、逆走自転車が44%減少した(180台⇒100台)と報告しています。

https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/smph/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/navimark.html

京都市はあくまでも自転車の車道での順走率で出してますが、車道走行自転車の数と順走自転車の数も公表されていますので、そこから東京都と同じように逆走自転車の数の推移を出すことが出来ます。

観測点 整備前 整備後 増減
河原町通 北 北行き 21 10 -11
河原町通 北 南行き 3 3 0
丸太町通 西 東行き 16 11 -5
丸太町通 東 東行き 54 62 +8
丸太町通 西 西行き 24 17 -7
丸太町通 東 西行き 15 14 -1
河原町通 南 北行き 7 4 -3
河原町通 南 南行き 9 10 +1
合計 149 131 -18

(約12%ダウン)

警視庁は32観測ポイントで約17000台を調査した結果、逆走が180台⇒100台と44%の減少としています。
京都市のデータは8観測ポイントで約15000台を対象に調査し、逆走車両の減少は149台⇒131台(12%減少)としてますが、こう見ると、44%とか12%は大きな数字に見えるかもしれません。
でも、具体的な数字を見ると、京都市の149台⇒131台とかそれほど大きな変化には見えません。
あと、順走率でいうと上昇しているけど、逆走数は悪化した観測点もあります。
これは単純に車道走行数の母数が増えたからだと思いますが、車道に導いた上に逆走開始されたんじゃ、失敗ですよね。
東京都のほうは、そもそもの順走率はわかりませんでした。

こういう事業にどれくらい費用がかかるかというと、自転車ナビラインの設置には100mあたり60万~110万程度だろうとされているようです。
なので10キロ分整備すれば、6000万~1億1千万。

もちろん、ナビラインの描き方などによっても予算は変わるでしょうけど、東京都の場合、平成31年だけで自転車ナビラインのために7億円超をつぎ込む予算を出してます。

http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/syukei1/zaisei/30jigyouhyouka/01_30jigo/30jigo_227.pdf

ほかの年度も5億とか7億とか予算計上してますが、これだけ掛けて確かに逆走は減ってますが、掛けた費用に対してそんなに大きな変化なんでしょうか?
また、京都市では確かに車道走行率が3.4%上昇し、車道順走率が1.6%向上してますが、これだけでそこまでの自転車事故数が減るのでしょうか?

ジャーナリストを信じ過ぎない

記事の著者は京都の自転車インフラ整備に関わっている人なわけで、京都市自転車政策審議会のメンバーです。
自分が関わっている事業に、不利なデータなど出さないでしょ。
都合のいいデータだけを集めて、自転車行政は成功した!という結論を導くわけですので、こんな記事は信用に値しません。

私は前々から、自転車ナビラインは税金の無駄遣いだと言ってきました。
効果がゼロではありません。
費用対効果が悪過ぎるケースが多いという話です。

道路の形状や幅によっては、自転車ナビラインしか設置することが出来ず、【ないよりマシ】という場合もあれば、場所によっては多少効果を挙げているところもあるようです。
しかし、京都について言うならば、自転車ナビラインはほぼ気のせいレベルの効果しか挙げてないというデータが出ています。

行政とかジャーナリストとかによくある手法ですが、この京都市の話で言うと、残っているデータだけ見たら自転車ナビラインの効果は極めて限定的というか、気のせいレベルの効果しか出なかったというデータしかないわけです。
もし最近のデータで、逆走率がもっと下がったというなら別ですが、最初の数字にも出ているように京都市は元々自転車の順走率が極めて高い(94.2%)わけで、これ以上は順走率が上がりようがない気がします。

で、繰り返しますが、一応はデータを見る限り、わずかですが改善されていることは確かです。
自転車が車道を走る率が上がり(3.4%)、順走率が1.6%向上ですよね。
しかし車道走行率はそもそも低いという点から見ても、この数字は微妙過ぎます。
元々車道を走る自転車が少なかったわけで、車道を走る自転車が少ない中で順走率というデータですので。
そんでもって生活道路ではむしろ悪化しているという現実はデータに出てますが、生活道路での数字については、これは【ほぼ変わってない】とみなすほうがより正確かと。

大阪や新潟では、順走率がそれなりに上がっていると言うデータも出ているわけですので、自転車ナビライン全般がダメだとは思いませんが、この京都について言うならば、自転車ナビライン、つまりインフラ整備が事故を減らしたと見るのかについては、相当な疑問です。
そして大きな問題としては、有識者と一般市民での意識の乖離が大き過ぎます。

記事の著者は京都市の自転車行政に関わっているわけですので、有識者のほうに当てはまるわけですが、確かに事故は減っている。
それ自体はすばらしいことであると同時に、自転車ナビラインが自転車の走行に大きな影響を与えたというデータはないわけで、自転車ナビラインを設置してからマンセー!的な記事はさすがにどうかと思うのですが。

最初に挙げた京都市の資料ですが、
4kyogisiryo-guideline

大きく数字が変化してないにも関わらず、やたらと成果があったかのような報告になっています。
この時点で大きな間違いです。

で、私が知る限りのデータですが、京都市の自転車インフラ整備について、データを見る限りではほぼ気のせいレベルの効果しか出していません。
記事のタイトルは

自転車都市のインフラ整備に一つの答え 疋田智さん「京都市の『計画』の驚くべき成果」

驚くべき成果はインフラ整備であげているものなのかは果てしなく疑問です。
2016年のデータによると、車道走行率が3.4%向上し、車道順走率が1.6%向上したそうですが、たったこれだけのために多額の予算をつぎ込むのか、それが驚くべき成果なのかについては、市民がもっと調べたほうがいいのではないでしょうか?
駐輪場整備とか、駐輪場で雨合羽を販売とかはいいアイディアだと思いますが。
自転車ナビラインの設置が、事故軽減にどれだけ貢献したのかは不明なのに、記事ではインフラ整備の成功と話が変わっているわけですよ。
どこにもそんなデータはないにもかかわらず。

私は京都市民ではないので関係ないですが、こんなレベルの話に税金使われていることに納得するならそれでいいです。
私なら、どうせ金を使うなら、もっと効果的なことを探してやってくれとしか思いません。
京都の自転車ナビライン事業については、現地の話を聞いても、いい話は聞いたことがありません。
そして、それが数字にも出ています。
たった3.4%の車道走行率の上昇と、たった1.6%の順走率の向上。
そして生活道路では一時停止率や減速率の悪化。
これが驚くべき成果だというならば、その驚きとは【すごい!】ではなくて、【たったこれだけ??】という驚きではないかと思います。
事故が減っているのは、本当に自転車ナビラインなどインフラ整備による結果なのか、相当な疑問です。

そもそも車道での順走率については、京都市はインフラ整備前から他の都市よりも著しく高かったわけで(94.2%)、自転車ナビラインが出来たことで逆走は確かに減ってますが、事故数を著しく下げるほどの効果でしょうか?
しかも、車道走行率についても、自転車ナビライン設置前が17.0%、設置後が20.4%ですので、自転車ナビラインが出来たから車道を走ろうとした人もほとんど増えていない結果ですし。

自転車ナビラインが全くの無意味だとは思いませんし、効果を上げているところもあります。
ただし、ほとんどの場合その効果は限定的で、そんなもんに大量の税金投入する意味がわかりません。

なんでもそうですが、費用対効果ですよ。
話は逸れますが、最近GUSTOのロードバイク欲しがる人って凄く増えている気がします。
いわゆる【コスパ】はいいですもんね。

行政の道路政策も、コスパは求められます。
掛けた費用に対してそれ以上のリターンがないと意味がないわけですが、少なくとも、この京都の自転車ナビラインについては、ほぼ効果がないことはデータから明らか。
自転車事故が減ったことは当然喜ばしいことですが、その減った理由は本当に自転車ナビラインなのでしょうか?
イヤホンなどの条例制定もしてますし、自転車教室的なこともしていると記事には書いてあります。

これらが同時並行的に行われているので、どの政策が効果的なのかを見極めることは難しいですが、少なくとも自転車ナビラインについてはほぼ効果がないことがデータ上出ているにも関わらず、【事故が減ったのは自転車ナビラインを始めとするインフラ整備のおかげだ!】と結論付けるこの記事は、普通に読んでおかしいと思いませんか?

京都市が自転車ナビライン設置にどれくらいの予算を投じているのか調べてもわかりませんでしたが、確かに自転車ナビラインは逆走車を減らす効果はあります
前からいっていることですが、逆走を減らす程度の効果に対して、かける費用から見て割にあっているのかかなり疑問ですし、京都市については自転車ナビラインにより【驚くべき効果】をあげているようには感じません。
データを見てみると分かると思うのですが、これらのインフラ整備が、京都市の自転車事故数を減らした主の要因なのでしょうか?
データから読み取れることは、京都市民の多くは車道を走ってないし、車道では元々逆走が少ないという事実と、自転車ナビラインが設置されても車道に行く自転車は3.4%しか上昇せず、順走率も1.6%しか向上しなかったということだけだと思うのですが。

自転車事故が減った、それ自体はいいことには変わりありませんが、本当に自転車ナビラインの効果なのか、そこについてはかなり疑問です。
そして単に事故数が減少しているというデータを出すだけで、逆走車が減った(データなし)、車のスピードが落ちた(データなし)で書かれた記事、そのまま鵜呑みにしてもいいのでしょうか?

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コメント

  1. blank るうべ より:

    私も、効果を評価している記事を鵜呑みにしておりました。
    管理人様の冷静なご指摘、流石です。ありがとうございます。
    ナビラインについては、10年、20年と年数を重ねていけば、自動車のドライバーや自転車乗りの人たちの意識が、良い方に変わっていく可能性もあるかもしれないですね。

    • blank roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      自転車ナビライン、効果としてゼロだとは思いませんが、記事では過大評価されているような印象を受けました。
      冷静に数字を見ると、本当にそうなのか?ということがわかると思います。