解釈の話。

ちょっと前に書いた記事で、二段階右折と、信号で停止するときの左すり抜けのことを書いたものがあるのですが、

先日もちょっと触れた内容なのですが、 T字路での【正しい】右折方法についてです。 正直なところ、今更感がある...

ここで挙げたケース6の事例、左すり抜けが問題ない理由として、

管理人
管理人
進路変更をしてないから追越しにはならないので問題なし

と書きました。
これについて、

読者様
読者様
追越しには該当しないというのはその通りだけど、その理由は違うのでは?
追越しは、前車が走行中の場合を指すから、前車が停止中だから追越しにならないという理由なのでは?

このような意見を頂きました。

※長文になるので、意訳してます。

これについて、長年疑問に思うところがあったので、調べてきました。

追越しの定義

これはよく言われることで、教本とかでも

追越しは、走行中の前車に対するもので、停止中の車に対しては側方通過と呼ぶ

こんな感じで書いてあると思います。
これ自体、実務上はその通りで間違いはないのですが、道路交通法を読むと、ちょっと解釈が違うのではないかと思ってました。

まず、道交法2条の追越しの定義。

二十一 追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。

追い付かれる側が、走行中か停止しているかについては言及されていません。
停止している車にも追い付くという概念は成立するのでは?と。
で、よく言われることなんですが、

いろんな人
いろんな人
追越し禁止の道路に、路駐車がいたとする。
止まっている路駐車に対して追越しできなくなるでしょ。

だから、追越しは走行中の車両が対象なんだよ。
そうじゃないと、追越し禁止で路駐車がいた場合に、みんな追越しできずに後ろで待機させられるよ。

それもその通り。
ただ、法的な意味はちょっと違うと思ってまして。

追越し禁止の道路で、路上駐車の車がいた場合。

(通行区分)
第十七条

5 車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下「右側部分」という。)にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。この場合において、車両は、第一号に掲げる場合を除き、そのはみ出し方ができるだけ少なくなるようにしなければならない。

三 当該車両が道路の損壊、道路工事その他の障害のため当該道路の左側部分を通行することができないとき。

17条5の3で、【道路工事その他の障害】がある場合は、反対車線にはみ出して通行してもいいよとなってます。

路上駐車とか停車している車両を【その他障害】とみなす。
だから追越し禁止の道路に路上駐車の車がいても、反対車線にはみ出して通過できる。
だけど、信号待ちしている前車は、障害物じゃないんじゃね?と思うので、停車している全ての車に対して追越しが成立しないというのもおかしいのでは?と。

で、私の理解としては、
・追い越しの定義には、停止中の車両も含まれる
・けど、17条5の3により、路上駐車などを障害物とみなして側方通過が認められているから、追越し禁止の道路に路上駐車があっても問題なく通行できる

これらを分かりやすくした場合に、

・追越し ⇒ 前車が走行中
・側方通過 ⇒ 前車が停止中

こう説明したほうが分かりやすい程度の話であって、道交法上の【追越し】自体には、前車が走行中か停止中かを分けてないのではないかと思ってました。

いろいろ調べてみたのですが

で、先に結論から書きます。

「追い付いた場合」に限ったのは、進行している前後車両相互の間の移動関係を規制する趣旨と解されるから、異論もあるが、駐車又は一時停止している前車の前方に進出しても、追越しには当たらないと解する。

野下文生・道路交通執務研究会(2017)執務資料 道路交通法解説 P.69 東京法令出版

主流の考えでは、法2条の21【追越し】の定義には、停止している車両が含まれない。
私の考えは成立しなくはないけど、異論のほうに当たるようなので、訂正しておきました。
ご指摘ありがとうございます。
ちなみにこの本、相当詳しい上に、関係する判例が豊富にあるので、道交法の解釈で迷うときにはオススメです。

ケース6のイラストを見る限り、前車が完全停止なのかなとも思うのですが、

前車の状況違反?理由
完全停止している違反ではない停止中の車に対しては、追越しが成立しないから
停止に向かって減速中違反ではない進路を変えずに追い抜きしているから

こっちのほうが主流のようなので、変更しておきました。

追越しの定義

再び条文を。

二十一 追越し 車両が①他の車両等に追い付いた場合において、②その進路を変えて③その追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、④当該車両等の前方に出ることをいう。

この条文ですが、この4要素を全て満たしたときに追越しとなります。

他の車両等に追い付いた場合

この条文の前提条件になるところです。
まず、追い付くことが追越しの条件。

これは【追い付いてから】、【進路を変えて】なので、追越しに当たります。
そのため、左追越しになってしまうので違反。

ところが、追い付く前に進路を変えている分には、

これだと追越しにはならないので、追い抜きです。

一応判例もあるようです。

京都簡易裁判所 昭和42年8月17日判決

他の車両に追い付いた場合とは、後者が前車との距離を縮めて、法26条にいう必要な距離にまで接近した場合をいうものであるから

道交法26条は、車間距離に関する規定。

第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

一応、車の場合では目安が示されていますが、自転車・ロードバイクについては無さそうな。
目安は警視庁が出しているものもあれば、判例でも出ています。
ただ、名古屋高裁判決にもあるように、

名古屋高等裁判所 昭和30年3月10日判決

必要な距離とは、追従距離であり車両等の種類、構造、速度、性能、道路の状況、昼夜の別、見通しの状況、積載量、制動操作の運転技術等の諸条件によつて異なるので、これを一律に決定することは困難である。

まあ実態として、ロードバイクが追越し違反を取られた話は聞いたことがないですが、この判決文をロードバイクに当てはめるなら、そのロードバイクの制動性能もそうだし、乗り手の技術にも左右されると言えるのかなと・・・
ブレーキがデュラエースの人とクラリスの人でも異なる可能性があるし、初心者と上級者でも異なる・・・と解釈も出来る。

まあ、本音で言うならば、左すり抜け自体が危険性があるので、しないほうがいいよとまとめてしまいます。
どれほどの距離がある状態で進路を変えていれば、追越しにはならないのかは、こういう諸条件で違いますよということのようですが、そもそもロードバイクの急制動の実験データ自体、メーカー以外が持っているのかは果てしなく疑問だったりする。

進路を変えて

追い越しの定義には【進路を変え】とあるわけですが、どの程度進路を変えた場合が当てはまるのかについて。

ロードバイクの場合、原則として第一通行帯しか走れないので、車線変更という概念自体がないわけで。
同一車線内でも左右に進路を変更できるわけですが、どの程度変えることが進路変更に当たるのかは、特に規定があるわけでもないようです。

前に説明した【追い付いて】ということは、前車と進路が重なっているわけなので、前車が進路を変更していない限りは、その前車の範囲から外れたときは間違いなく進路変更に当たるのかなと思うのですが。
そもそも、ロードバイクで追越し違反を取られた人がいるのかすら怪しいので、このあたりは常識的な範囲で、なのかもしれません。

車幅も違う車の判例が、そのまま当てはまるわけでもないでしょうから。

側方を通過し

これは特に言わなくてもわかるように、横を通ってます。
当たり前ですが、違う道路を迂回してくることは除外です。

当該車両等の前方に出る

これは前方車両の幅に対する前だけではなくて、

どちらも前に出ている状態とみなします。

※どっちもこのケースでは違反です。
左追い越しですので。

どの程度前に出た場合が、【前方に出る】なのかについてについては、完全に抜ききることまでは必要としないけど、それがどの程度なのかについては判断が割れるようです。

これの場合。

条文成立
他の車両等に追い付いた場合
その進路を変えて
側方を通過し
前方に出る× 出てない

追越し違反にはならないですが、危険なのは言うまでもなく。

まとめると、追越しとは
①前車に追い付いて
②進路を変えて
③側方を通過し
④前に出る

これを全て満たさないと、道路交通法上では追越しとはならない。

何度か取り上げているケースですが、

これ自体、それなりに広い道路じゃないと、事実上は不可能です。
しかし道路交通法の規定から見ていく場合、

条文成立
他の車両等に追い付いた場合×
その進路を変えて×
側方を通過し
前方に出る

追越しにはならず、追い抜きと言われます。
追い抜きという用語自体は、道路交通法には出てこないですが、判例とかでは出てくるようです。

渋滞のときの左すり抜けの場合は、車が動いているかどうかでまた意味合いが変わるのですが、どちらにしても追越しにはなりません。

そういえばだいぶ前の出来事。
ある道路をロードバイクで走っていたら、車のほうは渋滞していたんですね。
ただし、道路幅はそこまで狭くない。

なぜか前方に、原付が何台もいて、誰も左からすり抜けしないんですね。
普段なら原付はバリバリ前に行くので不思議に見ていたら、その先頭には警察のバイクがいまして。

違反ではないけど、すり抜けせずに待機している警察官を超えて前に行く勇気がなかった(?)のかもしれません。
なかなかシュールな状況だなと思って見てましたが、前にいる原付の方々は、左すり抜けがグレーだと思っていたのかもしれません。

実態として危険なので

だいぶ話が飛んでしまいましたが、信号待ちのときに、ロードバイクが左からすり抜けて前に出る行為は、あんまりオススメしていません。
どうせ速度差で、追越しされる運命ですから。
追い越されるときに近くて危険!幅寄せされたと騒ぐだけなので、後方待機していたほうが安全。

強いて前に出ていたほうがいいケースは、直進したいけど、前に並んでいる車が全部左折したがっている場合ですかね。
ただし、法的には左折前に左に寄せるのが正しいことなので、本来は左からすり抜けるスペースもほぼないはず。

走行中に左からすり抜けていく行為も、道路幅が異常に広い場合を除けば、オススメ出来るものではないです。
前に、時速35キロで走るトラックに対し、時速36キロで左から追い抜きしたロードバイクの方が、お亡くなりになったことがありましたが、

先日書いた記事ですが、大型貨物車の左側をロードバイクがすり抜けていきお亡くなりになった事故ですが、 いろいろと気になる...

この道路幅で、左から追い抜きしようと思うのもどうなのかなと。
相手は大型車なので、なぜ前に出ようと思ったのかについては、果てしなく疑問。

これは信号待ちで撮った画像ですが、この隙間をすり抜けて前に出るのは、さすがに無理。
相手は大型車だし、信号が青になればどうせ追越しされるし、嫌な予感しかしないのは当たり前。

で、あえて左からすり抜ける行為が違反ではない、と書く理由なんですが、これ自体を勧めているわけではありません。
この手の問題って、マナー論なのか、法律論なのか不明な議論になりやすいと思ってます。
【前に出てもいいんだよ】、これは法律論ですね。
【前に出ないほうが安全だよ】、これはマナー論とか、安全性確保の議論。

なのでこの手の話をする場合、まずは違反なのかどうなのかをハッキリさせた上で、それが安全なのか危険なのかを考えたほうがいいと思ってます。
そうじゃないと話がグチャグチャになるので。

違反ではないけど、しないほうがいいことって多々あるわけですが、信号待ちで前に出るかどうかも、安全性確保の一つの手段ですから。

と、いろいろ書きましたが、ご指摘ありがとうございました。