追越しと車間距離について、補足を。

先日の記事について。

前にあったウーバーイーツとバスのトラブルについて質問。 これの件ですね。 図式化すると、...

自転車同士の車間距離(道交法26条)ですが、明確な距離が定まっているわけではありません。
実際、いわゆるトレインを組んで走行している人たちもいるわけですが、実態としては車間距離保持義務の違反でしょうけど、取り締まりにあったという人は聞いたこともないです。

見知らぬ人の真後ろにつくのは道交法26条の違反だし、人としてもどうかと思うのですが。

車間距離

(車間距離の保持)
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

ここでいう車間距離について、ちょっと誤解しているのかなと思うメールを頂いたので、解説を。
【その直前の車両等が急に停止したときに】の解釈。

これ、先行車が急ブレーキを掛けたときのみを指すわけではありません。
これについては判例があります。

昭和42年5月17日 福岡高裁

法第26条1項(現行第26条)の先行車が「急に停止したとき」とは、先行車が制動機の制動力によって停止した場合のみならず、制動機の制動力以外の作用によって、極端にいえば、前車が、その先行車に追突するなどして制動をかけずに停止した場合をも含むと解するのが相当である。したがって、右条項により、追従車は、先行車が制動機の制動力以外の作用により、制動をかけた際の通常の停止距離を進行せず停止したとしても、これに追突するのを避けることが出来るため必要な距離を保たなければならない。

(注)この判決に際し、弁護人が判例違反を理由に最高裁に上告したが、(中略)、上告を棄却した。

野下文生 道路交通執務研究会、執務資料道路交通法解説(2017)、P250、東京法令出版

先行車が急ブレーキを掛ければ、先行車自体も前に進んで止まる。
追従車が取るべき車間距離とは、急ブレーキを掛けた際の先行車の制動距離を考慮したものではないということです。

つまりは先行車がいきなり不動の壁になったと仮定するような意味合いかと。

で、追越しの定義は①追い付いてから、②進路を変えて、③側方を通過し、④前に出ること。
なので追い付くというのは上で書いた車間距離を意味しているということです。

法令解釈の妙

前回の記事について、

前にあったウーバーイーツとバスのトラブルについて質問。 これの件ですね。 図式化すると、...

同一車線内の左追越しは違反だと書いてある、そのように教わった、という話も頂いているのですが、これは何度も書くように、左から【追越し】すれば違反です。
左から【追い抜き】することは違反ではありません。

追越しの定義は道交法2条の21に書いてある通り。

二十一 追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。

この条文は4つのパートに分解して考えるのが正解。
つまり、
1、車両が他の車両等に追い付いた場合において
2、その進路を変えて
3、その追い付いた車両等の側方を通過し
4、当該車両等の前方に出る

この4つが全て成立しない限り、追越しにはなりません。
また前方に出るというのは【先行車の幅の前】だけとは限らないと解釈されてます。

一応、同一車線内でも追い抜きは左でも右でも成立するのですが、追越し違反にはならないけど他の違反に触れる可能性はあります。
代表的なところでいうと、

・通行区分違反(同一車線内ではなく、左のラインを超えた場合)

・割り込み違反

・信号待ちでの停止線オーバー(信号無視扱い)

・進行妨害

・煽り運転

左からの追い抜きを至近距離でやった場合に、先行車が危険と判断して進路変更を余儀なくされるとか、そういう事態があれば進行妨害に当たる可能性もゼロではないです。
それが何度も繰り返してなどの事情があれば、今だと妨害運転と見なされる恐れも。

不思議なことにネット上で調べると、オートバイの左すり抜けは違反だとするものもそこそこ出てきます。
まあ、警察に聞けば一発で解決しますが、左追越しなら違反、左追い抜きなら違反ではないです。

ただこれ、いろんなサイトを見て意味を取り違えているのだろうと思うものも多々ありますが、例えば先行車が車、追従車が二輪車の場合。
現実問題として、追いついてから左に進路変更してすり抜けようとするから、その行為が追越しになってしまい違反というだけなんですよね。

左から抜く行為も、追越しも追い抜きもありうる。
追越しになれば違反。
追い抜きになれば違反ではない。

普通に判例で出ているんで、その辺を確認してもらったほうがいいかと。

※ちなみに旧道路交通取締法では、追越しの定義が無かったため、追い抜きは追い越しに含まれるのか?という論争があったらしいですが、現行法になった際に追越しをきちんと定義したため、疑義は解消されています。

結局、推奨はしないのですが

ロードバイクで無理矢理追い抜きする行為。
基本的にいいことはまったくと言っていいほどないので、推奨しません。

推奨しない理由は単純に危険なことが多いから。

こういうのも

読者様
読者様
左からの追越しは違反だからやめろよ!

こういう論調だと、

いろんな人
いろんな人
はぁ?進路も変えてないし追越ししてないよ。
追い抜きだよ。

こういう無意味な論争になりかけないので、法律は条文から検討しないとわからない。
同一車線内で左から抜く行為=追越し、と間違った話をすれば、当然突っ込まれる。
左から抜く行為は、追越しも追い抜きも成立するので。

なので追い越しについては、違反ではないことを明らかにした上で、危険性・リスクの話をしたほうがいいんですよね。
ずいぶん前にですが、T字路で信号待ちしていたときのこと。

路側帯はかなり狭い道路。
ここで赤信号で停車中、

狭い路側帯から、減速してないと思わしきロードバイクが抜いていったことがありまして。
これも追い抜きですね。

※この場合追いついた・進路変更したかどうかではなく、追越しとは先行車・追従車ともに走行中の位置関係を示すとなっているため、追越しには当たらない。

ちょっと前に書いた記事で、二段階右折と、信号で停止するときの左すり抜けのことを書いたものがあるのですが、 ここで挙げた...

まあ、かなり至近距離を抜いていったため、マジで立ちゴケするかと思うくらいふらついたのですが、そもそも信号くらい守ろうぜ・・・と。

普通に危険なことが多いので、原則として左すり抜け、追い抜きはしないほうがいいですね。

先行車も追従車もロードバイクの場合、先行車がこんなところを走っていれば、左からの追い抜きは成立する。
別に違反ではないですが、なぜ先行車がこんな位置にいるのか?というところから警戒して様子をみないと危険。

側方距離の判例

ついでなので、車が自転車を抜く際の側方距離について。
いくつか判例があります。

被告人(タンクローリーを40キロメートル毎時で運転)が被害自転車に約1メートルの間隔を保って安全に追い抜きうると考えたことは首肯しうるところであり、その追い抜き中に被害自転車の先行自転車が急停止し、そのため被害自転車が突如として先行自転車の右側に出て、被告人の車の進路上に進出接触する危険の生じることまで予見すべきであったとするのは酷に失するものであり、またかような状況のもとで被告人が警音器を吹鳴して警告も与えず、あるいは、減速して追い抜きの挙に出なかったとしても、これに自動車運転者として責むべき過失ありと断じ刑事責任を問うは失当である。

昭和43年7月19日 広島高裁

野下文生 道路交通執務研究会、執務資料道路交通法解説(2017)、P71、東京法令出版

1mの側方距離は適切だという判例。
そのほか、バスが軽二輪車を追越しするときに1.5mの間隔を保ったものの、軽二輪車が転倒した事例も問題ないという判断になってます。

1mって結構近く感じそうですけどね。
これらは道路状況や速度など様々な要因で変わりうるのですが、おおよそ1mあれば刑事責任を問うものではないというのが判例。

時速40キロのタンクローリーが1mの側方間隔で追い抜きって、メッチャ近く感じそう。
しかし刑事責任を問うのは失当(=的外れという意味)となっている。

今だと、激オコする自転車乗りもいそうですけどね。
時速40キロのタンクローリーが1mの側方間隔で追い抜き。

私も今年からバーエンドミラーを使ってますが、

ちょっと前に書いた記事。 どうもミラーの有用性がイマイチわからず、私の中では と思ってい...

結局、自分の命は自分で守るしかない。
もしこれで死んで、相手が刑事責任ありと判断されても、死んでしまったら意味が無い。

先日の腕ライトの件もそうですが、

今年に入ってからですが、右バーエンドにミラーをつけてます。 このミラー、実はバーエンドライトとしても使えるのですが、日...

ロード乗りなら誰だって、至近距離での追い抜き・追越しなんてされたくないので、いろいろ知恵を絞って考える。
そうするしかないです。