ロードバイクのジオメトリの中に、リアセンター長(チェーンステイ長)があります。
ここはそれほど重視すべきポイントというわけでもないのですが、フレームの方向性を決める一つの指標にはなる数字です。
そんなリアセンター長について。
Contents
チェーンステイの役目
リアセンター長(チェーンステイ長)は、そのまんまの数字でチェーンステイの長さです。
より具体的に言うと、BB中心~後輪ハブ軸中心までの距離。
ここはある程度、タイヤクリアランスにも関わります。
リアセンターが短過ぎると、シートチューブとタイヤが接触しかねないので。
チェーンステイは駆動に関わる重要なセクション。
ペダリングに応じて、チェーンステイがしなります。
ある意味でわかりやすいのは、後輪がフリーになっているハイブリッドローラーを使ったとき。
後ろからの映像だと、後輪がペダリングに応じて左右に動いているのがわかるかと。
ペダリングするたびにフレームも左右にシナるわけですが、チェーンステイが結構動く。
ちなみに多くのカーボンフレームで固定ローラー台がNGな理由はこれです。
フレームがペダリングと同時にしなるわけですが、しなった【先】である後輪が固定されちゃっているので、シナリを逃がせないので割れやすくなるという話。
チェーンステイはペダリングのパワーを伝えるセクションだと思えばいいかと。
リアセンター長の意味
一般的に言われるリアセンター長は、こんなイメージです。
リアセンター | 加速性 | 振動吸収性 | 直進安定性 |
長い | 落ちる | よくなる | よくなる |
短い | よくなる | 落ちる | 落ちる |
リアセンターが短いほうが、ペダリングしたときの加速性は上がるというか、ダイレクト感が増すイメージ。
そのため、レーシングバイクでは短めにするのが主流です。
加速性と旋回性を重視するといいますか。
レーシングバイクのほとんどは、リアセンター長が410mm以下に設定されています。
逆にエンデュランスバイクでは、リアセンターを長めに取り、直進安定性や振動吸収性を重視する傾向になります。
大体見ていると、レーシングとエンデュランスの境目は410mm程度なのかなと分かります。
実例
適当に各社のレーシングバイクとエンデュランスバイクを比較してみます。
ブランド | 車種 | タイプ | リアセンター長 |
ラピエール(DISC) | AIRCODE DRS | レーシング | 405mm |
XELIUS SL | レーシング | 405mm | |
PULSIUM | エンデュランス | 412mm | |
トレック(DISC) | EMONDA SLR | レーシング | 410~412mm |
DOMANE SL | エンデュランス | 420~425mm | |
ジャイアント(DISC) | TCR ADVANCED SL | レーシング | 405mm |
DEFY ADVANCED PRO | エンデュランス | 420mm | |
スペシャライズド(DISC) | TARMAC SL7 | レーシング | 410mm |
ROUBAIX | エンデュランス | 413~415mm | |
LOOK | 795 BLADE RS DISC | レーシング | 415mm |
795 BLADE RS | レーシング | 405mm | |
785 HUEZ RS(リム・DISC) | レーシング | 405mm | |
765 OPTIMUM | エンデュランス | 410mm | |
メリダ(DISC) | SCULTURA | レーシング | 408mm |
SCULTURA ENDURANCE | エンデュランス | 418mm | |
キャノンデール(DISC) | SYSTEMSIX | レーシング | 405mm |
SINAPSE CARBON | エンデュランス | 410mm | |
SUPERSIX EVO | レーシング | 408mm | |
ARGON18 | GALLIUM CS DISC | レーシング | 415mm |
GALLIUM PRO(リム) | レーシング | 406~408mm | |
KRYPTON GF(DISC) | エンデュランス | 417~420mm | |
ピナレロ | DOGMA F12DISK | レーシング | 406~411mm |
PARIS DISK | レーシング(コンフォートエアロ) | 415mm | |
DOGMA FS | エンデュランス | 415mm |
トレックについては、昔からリアセンター長を長めに取る傾向にあります。
理由は・・・よくわかりませんw
長めに取ると、チェーンが斜めになる角度が減るので、変速性能もちょっとだけ良くなったりします。
ピナレロは2021年モデルとして、PARIS DISKを出してますが、カテゴリとしてはレーシングに入れながらも、【コンフォートエアロ】と銘打った新しいジオメトリだとしてます。
そのため、プリンスディスクに比べても長めのリアセンター長を取っているのがポイント。
ちなみにクロスバイクだと、かなり長めに取っている車種もあります。
例えば、コーダーブルームのRAILシリーズはかなり長いリアセンターが特徴で、450mmあります。
シートチューブと後輪の隙間がかなり開く。
フレームが拭きやすいという謎のメリットはありますが。
ジャイアントのエスケープRXシリーズだと、425mmなのでクロスバイクとしては短めに取る傾向があります。
同じようなクロスバイクでも、ここの差により乗り味は結構違う。
で、長いとか短いとかでの変化ですが、あくまでも同じ素材、同じ形状のチェーンステイがあったと仮定しての話。
チェーンステイの形状や素材でも、シナリやすさなどは変わりうるので。
こちらはビアンキのインプルソ(アルミ)の残骸画像ですが、チェーンステイの形状はまっすぐ。
LOOK765(カーボン)だと、かなり外に開いているような形状。
素材、形状、厚み(太さ)などで剛性を変えることも出来るので、チェーンステイ部の剛性に関わるのは、ジオメトリとしての長さ、素材、形状、厚みなどが関係してきます。
LOOK765はエンデュランスバイクですが、リアセンターは他社のエンデュランスよりもちょっと短めで410mm。
トレックとかジャイアントとかは、エンデュランスバイクのリアセンターは結構長く取る印象があり、ジャイアントのDEFYとか420mm。
ジオメトリを見るときは、サイズ選びとしての指標がまず第一。
リアセンター長やBB下がり、フォークのトレイル量などは、フレームの方向性をある程度示す指標になる。
こういう細かいところは、恐らく一台目選びでは全く考えないポイントだと思います。
二台目以降を買うときに、一台目との比較で見るかな・・・という程度かも。
個人的にはあんまりリアセンターが長い自転車が好きな方向性とは違うようなので、ここは一つの指標にしてます。
【違うよう】というのは、長いから好みではないとも言い切れない車種もあったりするので、ここが悩ましいところでして。
実際に試乗してみると、ジオメトリから見て取れる印象と少々違う場合もあるので。
なので確実なのは、やっぱ試乗してみることなんですよね。
今年はコロナ禍で大規模の試乗会はほとんどないでしょうけど、ジャイアントストアとかだと試乗車が置いてあるので、そういうところに頼るしかないですね。
LOOKとかTIMEとかは、試乗車自体が無いことが多いです。
ショップレベルでも、最近は試乗車が無いケースが多いような気もするんですが、メーカー直営のショップだとだいたい何かはあります。