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直ってないのに工賃を払うのは納得がいかないという話。

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ちょっと前に読者様から頂いていた内容なんですが、長くなるのでだいぶ端折ってまとめると、

ある修理をプロショップに頼んだが、全く改善されていない。
直して欲しいとお願いしているのだから、工賃を払わされるのは納得がいかない。

こんな内容でした。
いろいろと思うところはあるのですが。

実際のところなんですが

修理を依頼するのは契約になりますが、修理契約は基本的に請負契約(民法632条)になります。

第632条

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

請負は仕事を完成させることで報酬を得る、つまりは結果が求められる契約。
なので修理を依頼して、ショップ側が直すことが契約なら、もし直ってない状態なら理論上、支払いの義務はないです。
契約不履行を理由に支払いを拒むことは可能。
ただし後述しますが、必ずしもそうはなりません。

 

請負と対比させる意味で、よく準委任契約が取り上げられます。

第656条

この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

 

第643条

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

※委任契約(643条)=法律行為を託すこと、準委任契約(656条)=法律行為ではない事務行為(業務)を託すこと

 

こちらは請負とは異なり、結果を求められない契約で、依頼された一定の業務をこなせば済む契約になります。
ただし、自転車の修理関係では、基本的には請負契約(民法632条)とみなされます。

 

よく言われるのは、
・機械の修理⇒直ったという結果が求められるので、直ったという結果に対して支払う(請負)
・医師の診療⇒例えば風邪の患者が来て、風邪を治さなくても一定の診療業務をこなせば支払いの義務が生じる(準委任)

 

で、請負の成果物って、かなり幅広い解釈が成り立つものです。
民法の著名な解説書を見ても、例えば医師の診療業務は準委任だが、手術を請負と見なす考えもあると書いてあったりする。
なので厳密に分けることが困難な事例も少なくない。

自転車の修理は請負・・・なんですが、これは内容次第になると思います。
というのも自転車の場合、修理前にイチイチ契約書を交わすわけでもないので、口頭での契約になる。

 

修理契約であれば直すことが仕事の完成となる。
しかし作業契約であれば、一定の作業を完了することが仕事の完成になる。
点検契約であれば、一定の点検をすることが仕事の完成になる。

 

これらを分けずに作業に着手することが多いと思うので、点検作業したことについては支払う必要があるかと。

 

まあ、個人的に言わせて貰うと、この手の話ってショップといい関係が築けていないことが原因なような。
ロードバイクの修理関係で、パーツ交換をしないなら高額になるとは思えませんし、こういうので払う、払わないと揉めるのはあんまり好きにはなれません。

 

実際のところ、私が懇意にしているショップはいい関係が出来ていると思ってますし、工賃を払わないという選択肢が頭に浮かばないというか。

 

でももしあまりにもクソショップだった場合は、やっぱ考えが変わるのかもしれませんw
そういう経験をしたことがないというのが幸せなことなのかもしれませんが。

例えばなんですが

プロショップの工賃表を見ると、こんな表記があったりします。

 

・ハブグリスアップ  〇千円
・ホイール振れ調整  〇円~

 

これだけ見ると、直すことに対する工賃とはなっていないわけで。
わかりますかね?
ハブグリスアップなら、グリスアップするという行為自体に対する工賃なので、ハブの回転が最高になることを保証しているわけではない。
ホイールの振れ調整も、調整することに対する工賃なので、振れがなくなることに対しての工賃ではない。

 

まあ、普通の真面目にやっているショップならば、ハブのグリスアップ=グリスアップして回転を向上させてお客様に渡すことを考えるでしょうけど。
振れ調整も同じく。

 

しかし契約上では、振れがなくなることを保証した契約とはいえない。
なので請負契約であっても、仕事の完成が何を意味しているかは異なるように感じます。

 

一連の振れ取り作業を完了するという行為も、請負契約の仕事の完成に当たる。
これは修理契約ではなく、作業の契約という感じなんですかね。
一見すると準委任契約風なんですが、請負としても成立する。

 

例えばですが、シマノDi2の変速が動かない状態を何とかしてくれと持っていったら、ショップの人も動かない状態を確認しますよね。
つまりは故障状態を把握できる。
こういう場合、故障=動かない、正常=動くと定義しやすいので、請負契約の完成物は動くように直すこととみて間違いない。
動かないままお客さんに返せば、仕事を完成したとはいえないので修理工賃は支払いの義務がありませんが、点検工賃は求められたら支払う必要がある。
けどこういうのってなかなか難しくて、最初の時点で点検=いくら、と取り決めせずに着手するので、あとから揉める原因になりかねないのですが。

 

乗っているときに異音がするけど、メンテスタンドでは異音はしないという場合。
ショップの人も再現性が無い以上、ある程度お客さんの話から予想してチェックするしかない。
こういうケースでも、直らない限り支払いの必要が無いのかというと、それはありえない。
お客さんが言う異音が再現されない以上、修理工賃というよりも作業工賃としての性質が強くなると思うのですが、これもイチイチ最初に説明せずに取り掛かるケースが多いのかと。

変速がもたつくという症状に対して、ショップの人が調整したらちょっと改善した。
しかしお客さんの理想はもっとスムーズな変速だったとすると、お客さんが考える【直った】とショップが考える【直った】が一致していない。
こういう場合に支払いの必要が無いのかというと、それもありえない。
【直った】という完成の地点を明確に出来ないような作業については、これも揉める原因になりかねないんですよね。
ショップがこれで十分と思っても、お客さんはそうは思っていないので、ショップ側は直したという感覚で、お客さんは直らなかったという感想を持つ危険性もある。

 

そもそもどこのショップでもそうだと思いますが、工賃表には【変速調整 1000円】などと書いてあるわけで、あくまでも調整することに対する工賃になっている。

 

たぶんですが、お客さんが求めることとショップが考えることの不一致も、こういうトラブルになっているような。

 

こういうのもそうだと思いますが。

https://biciamore.jp/owner_blog/%E4%BB%96%E5%BA%97%E3%81%ABdis%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E4%BB%B6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%82%E3%80%82%E3%80%82
 

検査することに対する工賃で、原因がわからない可能性もあることを告げていればトラブルにならないと思うのですが。
きちんと説明を受けて納得しなければ検査の申込をしないという選択肢も出てくるわけで。

 

で、修理契約=請負契約だから、直っていなければ支払う必要が無いという考えですが、例えばDi2が動かないことを修理する契約をして、いろいろやってもらって直っていないというなら検査代以外は支払う必要がない・・・と言えます。
しかし直ったという完成地点が不明瞭なもの、異音問題だとか、変速のスムーズさなど明確なゴールがないものについては、どの地点が【直った】になるのか明確にはなっていないので、支払う必要が無い・・・とはなりません。

 

そもそもの感覚で、他人に作業させてタダという感覚は私には無いのですが、こういう不満が出るのもショップとの関係性が築けていないからなんじゃないですかね。
不明なことがあれば先に聞く。
本来はショップ側も説明すべきことだとは思いますが。
良心的なショップなら、先に大まかな金額提示があると思いますし。

 

明らかな手抜きとか、ミスで直らないなら話は別。
前に某ショップのブログで、セラミックスピードのベアリングに交換するようにお願いしたにもかかわらず、安価なセラミックベアリングが入っていたという事例が紹介されていましたが、そういうのはもちろん無しです。

 

ちなみにですが、最近流行り(?)のロードバイクの洗車サービス。
あれも請負契約ですが、あくまでも洗車するという一つの工程が完成したかどうかというところになるはずで、キレイになったかというところが仕事の完成ではない。
キレイかどうかは人により判断が割れるので、曖昧なものは請負の完成にはなりません。

 

前に大手清掃会社の役員さんに、御社の清掃業務って請負?準委任?どっち?と聞いたら請負といってましたので。

いろいろあるとは思いますが

私自身、他人を働かせて直せないならタダというのが好きになれませんが、気に入らないなら納得行くまで説明を求めるよりも、違うショップに行ったほうが精神衛生上いいような気がします。
もちろん、ショップに壊されたなどの場合は別として。

 

ちなみにですが、印紙税法上は自転車修理を請負契約と見なします。
印紙税法では、請負の契約書には印紙を添付する義務があり、準委任契約であれば印紙は不要になってます。

 

一般的に税理士業務は委任契約(法律行為、643条)ですが、印紙税法上では税理士の顧問契約は委任契約で印紙不要、確定申告書の作成業務の契約であれば請負契約で印紙が必要となってます。

 

実際、自転車修理について印紙税の追徴課税になった事例もあるくらい。

 

「修理承り票」に印紙を貼らず3300万円の過怠税
法人税と比べると印紙税は金額も小さく目立たない税金です。しかし、きちんと理解しないまま余計な印紙を貼っていたり、逆に納付漏れを指摘されて多額な追徴課税を納める羽目に――なんてことも。甘く見ていると、痛い目にあいますよ。

 

自転車修理の確定工賃って、修理完了しないとわかりません。
パンク修理と言っても、パッチで直るのか、パッチは何箇所必要なのか、チューブ交換が必要なのかはやってみないとわからない。

 

だから金額を書いていない修理承り証にしていたんでしょうけど、請負契約の課税文書になってしまうので追徴課税となるわけで。
こういうのも普通の自転車店がここまで調査されることはほぼないでしょうけど、ダイエーの中の自転車コーナーだったことが調査の理由かと・・・
大手はくまなく調査されますから。
個人店は必死に調査してもたいした税収が上がらないので、まず来ない。

 

修理品の承り票、引受票等|国税庁

 

まあ、ちょっと複雑な話になりましたが、気持ちよく払いたいと思えるショップを探したほうがいいような。
読者様からは、様々なショップでのトラブル話を聞いてしまうことは正直あるのですが、そのショップに固執せず違うところ、相性が良さそうなところを探したほうがいいのかと。

 

ちなみにですが、直らなかったら工賃を貰わないというショップもあります。
作業に着手した時点で、分単位での作業工賃が発生するショップもある。

 

どっちがいいとかではなく、自分自身が納得できるかどうかの話なんじゃないですかね。
この人になら気持ちよく払いたい、と思えるショップが見つかるといいんですが。

 




コメント

  1. 高はし より:

    高はしです。
    記事でも触れられているように、「いい関係」が大事そうですよね~。「ちょっと見てもらえません?」てなオーダーで上手くまわってゆく感じでしょうか。
    最近のサラリーマンでも話題になる、ジョブ型の職務定義のハナシもありますが、区切りをもって仕切られる仕事ばかりじゃないですから、ね。

    私は、自分では出来ない作業(技術的な律速とか工具の制約とかありますが)をお店に頼むようにしています。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      結局は人と人のつながりなので、信頼関係が無いと何も起こらないような気がしてます。

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