自転車の少額違反金制度、いろいろ懸念点なども考えてみる。

ちょっと前にも書いたように、警察庁の有識者会議は、自転車の違反に対する責任追及が不十分だということで、少額違反金制度を検討しているようです。

警察庁の有識者会議が中間報告をまとめたとのことで、いくつか報道にも出ているように、自転車に対して少額違反金制度を導入することと、電動キックボ...

まだ本決まりではないのですが、恐らくは導入されるかと。

少額違反金制度の方向性

今のところの方向性はこちら。

・刑事罰ではなく行政罰として、少額違反金制度を作る
・14歳以上を対象にする

車にも反則金制度がありますが、車の反則金制度って、全ての違反を道交法で取り締まって刑事罰を与えようとすると、警察・検察・裁判所すべてが崩壊することが要因です。

15キロオーバーで逮捕して起訴して裁判にかける・・・みたいなのを繰り返したら、世の中には前科者が溢れると同時に、警察・検察・裁判所は忙しすぎて崩壊します。
反則金を払うことで刑事罰には問わないというのが車の反則金制度(一部例外はありますが)。

車の反則金制度の自転車版を作っていこうというのが今の方向性のようです。

自転車の違反の場合、道交法違反で赤切符を切り、書類送検して裁判にかけることも出来るわけですが、実態としては98%以上が不起訴のようです。
理論上は赤信号無視の自転車に対して、検察送致して裁判にかけて罰金刑(前科)ということも出来なくはないでしょうけど、現実的ではない。

少額違反金制度で身分証を持っていない時は?

自転車の場合免許制ではないため、何らかの身分証を元に本人確認することになります。

ちょっと前にも書いた件ですが、軽微な交通違反で逮捕されない理由は、法律で決まっているから。

犯罪捜査規範(身柄拘束に関する注意)
第二百十九条 交通法令違反事件の捜査を行うに当たつては、事案の特性にかんがみ、犯罪事実を現認した場合であつても、逃亡その他の特別の事情がある場合のほか、被疑者の逮捕を行わないようにしなければならない

赤信号無視でタイーホ!ということは原則ありえません。
逃亡の恐れもないときに逮捕すると、違法な逮捕だとして損害賠償の対象にもなります。

少額違反金制度ではマイナンバーカードや免許証などで本人確認するとなってます。
もし身分証を持っていない時に違反を取られるとどうなるか?という話。

車の反則金制度と同じようなものを作ることになると思いますが、あれってまず名前や住所などを青切符に記入させられ、印鑑か拇印を求められます。
ここに嘘の名前を書いたり、他人のフリをすると、有印私文書偽造・同行使で犯罪です。

恐らく、自転車の防犯登録だったり、財布に入っているクレジットカードや会員証などである程度確認し、家族、勤務先、学校に確認して本人と確定することになると思います。
実際のところ、車の例ですが免許不携帯の事例では、家族に確認しているようです。

反則切符に「母親に電話して本人だと確認した」と記載し、男を弟本人として処理した。

https://news.yahoo.co.jp/byline/maedatsunehiko/20210201-00219018/

このケースでは、警察官が「母親に電話した」ということが嘘だったために、警察官は虚偽公文書作成罪に問われ、違反者は弟の名前を語っていたので有印私文書偽造・同行使に問われるというマヌケな結果ですw

身分証提示を拒否する姿勢を示した場合、下手するとタイーホです。
逃亡の恐れありに該当しますので。
身分証を持っているのがベストですが、万が一持っていなくても警察に協力的な態度であればタイーホはさすがにあり得ないかと。

他人の名前を語ってサインすれば、有印私文書偽造・同行使でアウト。
逃げるのもアウト。
身分証提示を拒むのもアウト。

ちなみにですが、自転車に乗るときに身分証携帯することを義務とするなんてことは法律上無理です。
車の場合は、免許を持つ者だけが運転できるので、免許証は許可証のようなものですから携帯義務を課すことは可能。
自転車は誰でも自由に乗れてしまうため、身分証携帯を義務とするなんてことをすると、憲法上の行動の自由を制限していることになってしまうため無理。
努力義務には出来ると思いますが、罰則化は出来ないし、そもそも身分証を持ってない人は乗れないのか?という問題も出てくる。

マスク義務化の法律を作れないのも、同じ理由ですね。

少額違反金制度の懸念点

車の反則金制度と同じように、行政罰として作ろうとしていることがわかりますが、車の反則金って支払いは強制ではなく任意です。

Q14違反に納得できないんだけど、反則金を払わなければどうなるの?

A反則金の納付はあくまでも任意です。違反について納得できる、できないにかかわらず、通告を受けてもなお、反則金を納付しなければ、道路交通法違反事件として刑事手続きに移行する(成人の場合は検察庁に送致(いわゆる書類送検))こととなり、少年の場合は家庭裁判所の審判に委ねられ、裁判になる)ことになります。

https://www.pref.nagano.lg.jp/police/anshin/koutsu/dokoho/tsufaq.html#q11

反則金を支払うことで、刑事責任を免除しますよというシステムなので、支払わないなら検察送致されて刑事事件になるだけ。
刑事事件で罰金刑なら前科持ちの仲間入りです。

で、これ。
車の場合、ワンチャン狙いで軽微な違反に対して、否認して争う人もいるわけですよ。
検察から出頭するように連絡が来たら出頭して、略式起訴を拒否すると、不起訴になる事例が結構あるらしく。

https://clicccar.com/2019/11/29/934289/

不起訴の場合、前科は付かないし、刑事罰もない。
反則金も支払う必要はなく、減点だけされることになります。
起訴された場合はほぼ100%有罪で確定するので、めでたく前科持ちになれます。
リスクを負ってでも、不起訴狙いで払わない人もどうもいるらしく。

検察から出頭するように連絡が来て、無視すると逮捕案件に変わりますw
逃亡の恐れありということですかね。

・・・・・・・・・・・

さてさて、自転車の違反についても、現行の赤切符を切られても98%程度は不起訴扱いのようです。
そうなったときに、ワンチャン狙いで違反金を払わずに、争う人たちが出てくるかもしれません。
違反なんてしていないということで否認して、検察にも出頭して、略式起訴を拒否する。
そうすると不起訴になる可能性もある・・・という、前科持ちになるリスクを負ってでも違反金を払わない人が出てくるかも。

少額違反金というくらいなので、例えば赤信号無視で数千円とかそんなもんだろうと思いますが、世の中暇な人たちもいて、検察に出頭したりしてでも不起訴狙いで払わない人も出てくる可能性が。
タイムイズマネーなので、無駄な時間がかかるので、個人的には払っておしまいのほうが賢いと思いますけどw

まともなロード乗りには関係ない話

少額違反金制度ですが、まともなロード乗りなら引っかかる要素がほとんどないので、関係ないといってもいいかもしれません。
問題はママチャリの方々ですね。
赤信号無視、逆走、歩道で爆走、歩道でベル連打、全部違反ですから・・・
まあ、ながらスマホの歩行者に向けて警音器を鳴らせ!としていたメーカーもあったくらいなので、一部のロード乗りは引っかかるかもしれません。

恐らく、少額違反金制度が出来たときは、最初は集中取り締まりをすると思います。
昔ピストバイクを取り締まるために全力を挙げたみたいな形で。

集中取り締まりをすれば、かなりのママチャリが捕獲されると思いますが、たぶんゴネたり、激怒したりする人が増える。
ちなみにですが、頭にきて違反切符を破り捨てると、公用文書毀棄罪になってタイーホコースですw

身分証提示を拒否したり、逃亡しようとしたりすれば、理論上はタイーホも可能ですが、よほど悪質ではない限りタイーホはしないかと。

少額違反金制度で、どの違反まで設定されるのかは不明ですが、唯一、まともなロード乗りでも引っかかる可能性があるのが自転車道です。

(自転車道の通行区分)
第六十三条の三 車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する自転車で、他の車両を牽けん引していないもの(以下この節において「普通自転車」という。)は、自転車道が設けられている道路においては、自転車道以外の車道を横断する場合及び道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない。
(罰則 第百二十一条第一項第五号)

自転車道がある道路では、自転車道の通行義務があるので、車道を走ると通行区分違反になってしまいます。
こちらは国道16号の相模原。

こちらは横浜の湾岸道路。

自転車道については、気が付かずに車道を走ってしまうケースもあります。
こんなのどうやって気が付けばいいんだよと思うときも。

昨日ロードバイクに乗っているときのこと。 今まで横浜の海側ってほとんど走ったことが無かったのですが、正月に16号を回避して湾岸道路を走った...

あとは、左折専用レーンがある道路を直進するときに、第2通行帯から直進すれば理論上は違反。
ロードバイクのトレイン走行も車間距離不保持の違反ですが、こういうところも少額違反金が設定されるのかは謎です。
車の場合、車間距離の目安がある程度示されていますが、自転車の場合って数字の根拠がないので、どうやって取り締まるのかはやや不思議。
あと、チームでトレーニング走行しているグループの中には、なぜか車道で併走している奴らもいます。
併走違反は少額違反金制度の対象に・・・なるんですかね?

こういうのって今までは、取り締まってもどうせ不起訴になるから取り締まらないという事情もあったはずなので、違反金が設定されたら積極的な取り締まりの対象になるかもしれません。

自転車道の通行義務については、赤信号無視とか逆走とかと一緒にされるとツライところですが、理論上は違反。
こんなもんに少額違反金を科すのかは不明ですし、実態としてはこんなところまで違反金が設定されるのかは謎ですが、逆走を取り締まるためには【通行区分違反】も設定されるはずなのでどうなるかは注視していたほうがいいかもしれません。

現在はまだ検討段階ですので、本決まりではありません。

前に自転車横断帯の話を書いてますが、

結構前に読者様から指摘いただいていた件があります。 上記リンクにあるようにそういった横断帯は交差点...

横断帯の違反は直接的な罰則はなく(63条の7)、警察官から注意されても従わない場合にのみ罰則があります(63条の8)。

そういうところには少額違反金は設定されないだろうと思いますし、制度趣旨から考えても悪質な違反(赤信号無視など)に責任追及をしたいのだろうと思いますが、今後の議論の経過を見ていく必要がありそうです。
少額って、どれくらいのイメージなんですかね?
まさかワンコインではないでしょうし。
車は免許制、自転車は免許不要という事情まで考えると、車の違反よりも安いところに設定されると思いますが、赤信号無視で500円とかはさすがにないでしょうw