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キープレフトの原則とトンデモ論。片側1車線道路でのキープレフトの概念を見ていく。

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だいぶ前にも書いたのですが、検索しても出てこないw
と思ったらこれか。

 

ロードバイクがあおり運転・・・世も末です。
自転車に対しても妨害運転罪が適用されるようになったのはつい先月のことだったと思いますが。 ロードバイクがあおり運転をして怪我をさせるという、世も末としか思えない事件が発生したようです。 ロードバイクであおり運転 自転車で追い抜かれたことに腹...

 

だいぶ前のことですが、片側一車線道路(歩道アリ)をロードバイクで走っていたときのこと。

車道はやや混みくらいで、速度もさほど出てないけどゆっくり前進しているみたいな状況でした。

この話はかなり長いので、法解釈に興味が無い方はリターンしたほうがいいと思いますw

ローディー激怒

私の10mくらい前にいるロードバイク乗りが、信号待ちのときに先行車に激怒し始めたんですよ。

 

いろんな人
いろんな人
左に寄りすぎだよ。
もっと右側に寄れよ!!
幅寄せするな!!

 

おいおい・・・と思って後ろから見ていたのですが、要は渋滞気味でノロノロ状態だけど、左からすり抜けするには幅が足りない。
先行車がもっと右に寄れば俺様がすり抜け出来るだろ!嫌がらせの幅寄せするな!みたいな話。

 

まあ、私は後ろから客観的に見ていて思ったのですが、先行車の位置は極めて常識的
むしろさらに右に寄れば、センターラインギリギリになってしまい危険。

 

わざわざ信号待ちしている先行車の窓を叩いて呼び出しているくらいなので、よほど頭に来ていたんでしょうけど、

 

管理人
管理人
あれは頭がおかしい

 

酷いなぁ。

 

信号が青になっても抗議しているので、車も危なくて発進できない。
なにせ片足を歩道に乗り上げてぎりぎり通れるくらいの隙間にロードバイクが入ってきているので、車が発進したら危険。
さすがに無いわーと思って、

 

管理人
管理人
信号青です。
あなたのせいで渋滞してますよ。

 

後ろから伝えたら、急に恥ずかしくなったのか歩道に上がってました。
おかげで車も後続車も発進できたので、一安心・・・という事件でした。

 

けどこの件、一体何の権利があってこんなムチャクチャ言っているだろうなと考えていたのですが。

キープレフトの原則

自転車の話ではなく、車の話。

以下、片側1車線、歩道と車道の区別アリの話に限定します。

 

道交法ではキープレフトの原則があります。

(左側寄り通行等)
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。

これがキープレフトの原則(車両通行帯の件は省きます)。

 

車は左側に寄って、自転車は左側端に寄って、という話です。
車の【左側に寄って】というのはどこを指すのか?という問題があります。

 

道交法18条では左側と左側端を書き分けています。
18条の【道路の左側に寄つて】というのは、左側端を開けた上での左側に寄ることと解釈されます。

イメージとしては、一つの車線内に仮想の車両通行帯があるような形。

 

けど、変だと思いません?
仮想であっても車両通行帯【風】にしたいなら、自転車は左側端で、車は中央寄りみたいにしたほうがよりはっきりするはず。

 

しかも左側端は左側の一部では??という疑問も出てくるのですが、このような意味不明な条文になっていることには理由があります(後述)。

 

ちなみに交差点での左折や、道路外に左折して入るときには、予め左側端に寄ってから左折することとなってますが(25条1項、34条1項)、これの意味としては、後続車に左折する意思を伝えると同時に、二輪車をブロックすることで左折巻き込みを防ぐものとされます。

 

(道路外に出る場合の方法)
第二十五条 車両は、道路外に出るため左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、徐行しなければならない。
(左折又は右折)
第三十四条 車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。

18条のキープレフトが誕生した背景

これは昭和39年に道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)に加入したことが理由。
国際免許に関わる条約ですが、昭和39年というと東京オリンピックの年でもあります。

第9条
1,道路において同一方向に進行する車両は、道路の同一の側を通行するものとし、その通行する側は、それぞれの国においてすべての道路について統一されていなければならない。ただし、一方通行に関する国内法令の適用は、妨げられないものとする。
2,運転者は、原則として、また、第7条の規定により必要とされるときは、次のことを守らなければならない。
(a)2の通行帯を有し、一方通行を行なうこととされている車道においては、自己が進行する方向に適応した側の通行帯において車両を運行すること。
(b)2を超える通行帯を有する車道においては、自己が進行する方向に適応した側の車道の端に最も近い通行帯において車両を運行すること。

これだけを見ると、車両通行帯がある道路での第一通行帯義務だけで十分だと思うのですが、このように説明されています。

以上のルールは、道路上を対向する車両同士の進路を分け、かつ、道路の中央部分を空けておくことで、①対向車同士の擦れ違いを円滑にし、②同一方向に信仰する車両同士の追越しを容易にしようとするものである。

(中略)

「キープレフト」の原則を定めた条約9条第2項(b)に対応するためには、旧第19条及び第20条を廃止し車両通行帯の設けられた道路における通行区分を定める本法第20条第1項本文の規定を置けば足りるわけだが、そもそも道路の中央部分を追越しのために空けておくという「キープレフト」の考え方は、通行帯の設けられた道路に限らず、およそ道路一般に適用される普遍的な思想であったので、車両通行帯の設けられていない道路における「キープレフト」についても、旧第19条を改正する形で第18条の左側寄り通行の規定を置いたのである。

 

道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房

18条1項のキープレフトの基本概念は、「道路の中央を空けておくことで追い越しをしやすくする」ということ。
車両通行帯では追越しする車両は第二通行帯などから追越しでき、追い抜かれる車両は第一通行帯を通行するわけですが、その概念を車両通行帯がない道路にも適用しようということです。
ちなみに対向車との衝突を避ける目的のキープレフト(左側通行)については、主に17条の4(左側通行の原則)です。

 

国会議事録でも上で書いたような解釈となっています。

先ほど御説明いたしましたキープ・レフトの原則は、これを徹底いたしますと、自動車であろうが、いま御指摘の原動機付自転車であろうが、すべて道路の左側を走るということに相なりますが、ただいま御指摘ありましたように、わが国におきましては、非常なたくさんの種類の車が走る混合交通といったような実態がございますので、キープ・レフトの原則をとるといたしましても、一応軽車両とそれ以外の車両、つまり自動車と分けて、軽車両は道路の一番左端を通る、それ以外の車両は、左端に寄ったところを通るという区分を考えております。御承知のように、通行帯と申しまして筋を引きました場合には、そういう軽車両用の通行帯を引く場合もございます。その場合には、軽車両は定められた通行帯を通る、それ以外の自動車はほかの通行帯を通る、かように相なっております。

 

国会会議録検索システム

なので一番左端を自転車、車は左端に寄ったところとしたかったようです。
とはいえ、道路幅の問題などからそれが出来ない場合もあるので、ある程度限界も認めている。

○川村委員 わかりました。
それから次に、この前委員から質疑があっておりましたが、十八条の規定であります。このキープレフトの問題はこれは原則でありまして、日本の道路の中にはこれを実施する道路はそうたくさんはない、こういうように裏から解釈しておいてよろしゅうございますか。

 

国会会議録検索システム

○高橋(幹)政府委員 いわゆる交通混雑しております市街地の部面と、それから交通混雑していなくてもいわゆる道路の幅員等の状況で必ずしもこの原則が守られないといいますか、この原則どおりできないところの道路がわりあいに多いのではなかろうか、こういうふうに解釈していただいてけっこうです。

 

国会会議録検索システム

道路幅の問題などから、キープレフトといっても無理な場所が多いよねということも認めているようです。
原則通り(自転車は左側端、車はその右横)に出来る場所は少ないだろうということ。

 

本当は片側1車線道路でも、イメージ的にはこんな形で、一つの車線内で仮想の車両通行帯にしたかったけど、

道路幅がかなり広くないと、無理。
そもそも道路幅が広かったら、自転車専用通行帯を設置する方法もあった。
日本の実態として広い道路はそんなにないから、実態としては下図のようになってしまうケースのほうが多いだろうねということは政府も認めていること。
後述しますが、この時代はまだ歩道もほとんどなかったようで、歩行者事故が多いため歩道建設を急いだ背景もあります。

無理にでも左側端を空けることで自転車の通行路を確保しようという話ではないです。

 

ちなみに旧道路交通法(昭和35-39年)ではキープレフトの概念がないわけですが、旧法19条はこのようになっています。

(並進する場合の通行区分)
19条
当該道路の左側部分の幅員が3メートルを超える道路においては、自動車(自動二輪車及び軽自動車は除く)及びトロリーバスは当該道路の中央寄り又は左側部分の中央を、自動二輪車及び軽自動車及び原動機付自転車は当該道路の左側部分の中央を、軽車両は当該道路の左側端寄りを、それぞれ通行しなければならない。ただし、追越しするとき、第27条若しくは第40条第2項の規定により一時進路を譲るとき、第34条第1項、第2項若しくは第3項の規定により道路の左側若しくは中央に寄るとき、又は第40条第1項の規定により道路の左側に寄るときは、この限りではない。

イメージ的にはこんな感じ・・・でしょうか。

旧道路交通法では車は中央寄り、もしくは左側の中央部分を走ることとなっていたけど、国際条約に合わせてキープレフトの概念を適用するために新法では車も左側寄りに変更されたわけです。
ただまあ、3mの幅員程度で、車と自転車が並進できるわけもないので、実際には努力目標に近かったんだろうと思われます。
事実、旧法19条には罰則規定がありません。
左側とか中央寄りとか、どこまでどうという定義が出来ないからではないかと。

 

あと道路交通条約にはこのような規定もあります。

第11条 運転者は、行き違うとき又は追い越されるときは、自己が進行する方向に適応した側の車道の端に出来る限り寄らなければならない。

【行き違うとき】というのはこういうことだと思いますが、

衝突を避ける意味でも、お互いに左端に寄るべきという条約を落とし込むと、旧法19条のように車が中央寄りというのはマズイ。

 

ちなみに旧道路交通法では、車両の優先順位が明確化されていました。

第18条 車両相互の間の通行の優先順位は、次の順序による。
1 自動車(自動二輪車及び軽自動車を除く)及びトロリーバス
2 自動二輪車及び軽自動車
3 原動機付き自転車
4 軽車両

少なくとも自転車のために左端を空けておく・・・という発想ではなく、速度が遅い自転車はなるべく左端にいさせることで、速度が速い自動車を優先させる発想だったのかと。

 

さらに道路交通法成立以前の道路交通取締法では「道路を通行する歩行者又は車馬は、左側によらなければならない」となっていて、原則としては左に寄ってキープレフトすることが主流だったようです。
旧法19条のように一つの車線内で区分したかったんでしょうけど、国際条約との兼ね合いでなかなか難しくなったのかもしれません。

 

昭和35年~39年までは、一つの車線内で車は【道路の中央寄り、又は左側部分の中央】、自転車は左側端となっていた。
国際条約に合致させるためには中央寄りとするのはマズイので、車も左側寄りと変更された。

つまり国際条約にあった法律に変更する必要が生じたから法改正して今のようになったというだけの話です。

左側と左側端の定義

車両通行帯のない、片側一車線道路(歩道アリ)の話です。

 

18条1項の話。
左側、左側端と出てくるわけですが、そもそも左側端ってどこまでなの??左側ってどこまでなの??という定義はありません。

(左側寄り通行等)
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。

先ほども書いたように、車の【左側に寄る】は、左側端を空けた上でなるべく左に寄るものと解釈されます。

とはいえ、左側、左側端ってどこまでなのよ??という疑問は常について回る。
左側端についても、必ず空ける義務があるのか?という疑問が出てくる。
まあ実態として、車が左側端を全く空けずに走ることは不可能なのですが。

 

これについて、執務資料道路交通法解説(2018)、注釈道路交通法ではこのようになっています。

つまり、軽車両は左側端に寄って通行するために必要とされる道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道)の部分を除いた左側部分の左端に寄ってということである。

 

野下文男 道路交通執務研究会(2018)、執務資料道路交通法解説、東京法令出版

「道路の左側に寄って」とは、文字通り道路の左側部分の左のほうに寄ってという意味であり、具体的には、軽車両が道路の左側端に寄って通行するために必要とされる道路の部分を除いた道路の左端に寄ってということである。

 

道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房

結局、具体的にどれくらい左側端を空けるべきかは書いてありません。
左側端を空けた上で左側に寄ることだと書いてあるけど、左側端を空けずに車が左側によると違反なのか?についてはよくわからない。
一般論として、自転車のために左側端を空けた結果、センターラインを越えたら本末転倒。

追越しするためにこうなるのはわかりますが、常に左側端を空けて通行しろというのは無理があるというか、17条4(左側通行の原則)に違反する。
キープレフトの立法趣旨は、左に寄ることで対向車との接触を避けることと、真ん中を空けて追い越しをしやすくすることですし。
道路幅が狭いところではどうやっても左側端を空けることが出来ないところもあるため、常に左側端を空けておく義務までは課していないことは明らか。

 

なのでこれでも許される(当たり前)。

 

結局不明なのは、左側の範囲に左側端も含まれるのか?それとも左側と左側端は別の領域なのか?というところ。
ここで18条1項の除外規定を見てみます。

①追越しをするとき
②第二十五条第二項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき(道路外に出るための右折)
③第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき(交差点での右折)
④道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき

25条1項(道路外に出るときの左折方法)と34条1項(交差点における左折方法)の【左折する前に出来る限り左側端に寄れ】が除外規定に含まれていないわけです。
当たり前ですが④のところに左側端が含まれることはありません。
やむを得ない場合というのは、一般的には条文規定が明確ではないものを指すので、条文として規定されている左折前の左側端寄りがここに含まれていないわけです。

 

もし【左側に寄って】の範囲に左側端が含まれていないなら、18条1項の除外規定に含まれるはず。
そうじゃないと違反になってしまいますし。

 

左側⇒左側端に移動できるようにするには、18条1項の除外規定に入っていないといけない。

18条1項の除外規定に25条1項と34条1項が含まれていないということは、【左側に寄って】の範囲に左側端も含まれるからと解釈できるので、左側端も左側の一部と捉えることが出来る。

 

まあそもそも、左側端は左側ではないなんて、日本語として成立しませんし。

決してこういう解釈ではない。

基本的に同じ道路交通法の中では、特別な注釈が無い限りは、同じ用語は同じ定義になります。
【左側】が出てくる条文だと、例えば緊急車両の優先の項目があります。

(緊急自動車の優先)
第四十条 交差点又はその附近において、緊急自動車が接近してきたときは、路面電車は交差点を避けて、車両(緊急自動車を除く。以下この条において同じ。)は交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となつている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあつては、道路の右側。次項において同じ。)に寄つて一時停止しなければならない。
2 前項以外の場所において、緊急自動車が接近してきたときは、車両は、道路の左側に寄つて、これに進路を譲らなければならない。

もし左側端は左側の範疇ではないなら、救急車を通すために左側端まで寄ると違反になるわけですが、当然そんなバカな話も無い。

 

ちなみに27条の2では進路を譲る義務があります。

 

(他の車両に追いつかれた車両の義務)
第二十七条 
2 車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第十八条第一項の規定にかかわらずできる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

ここでいう【進路を譲る】にはケースバイケースで一時停止または徐行まで求められると解釈されています。
原付は左側寄り通行でいいとされていますが(18条1項)、それをさらに限定的に左側端まで寄ることを求めていると解釈できます。(左側端は左側の一部)

 

以上の理由から、【左側】には【左側端】も含むため、厳密な法解釈としては左側端を常に空けておく義務までは課していないとなるわけです。
左側端を空ける義務を課すなら、【自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側(左側端を除く)に寄つて】と書かれていないと成り立たない。
これについても解説があります。

もっとも、厳密に述べるならば、「道路の左側」は「道路の左側端」を含むので、「道路の左側端に寄って通行する」ことは、「道路の左側に寄って通行する」こととなる。したがって、当該道路を軽車両が通行していない場合、自動車及び原動機付自転車は、道路の左側端に寄って通行することも差し支えない(もっとも、自動車や原動機付自転車は、軽車両に比べて走行速度も速いので、あまり左側端に寄り過ぎると交通安全上適切とはいえない)。
そもそも「キープレフト」の原則は、道路の中央部分を追越しのために空けておくという考え方によるものであり、道路の幅員が不十分な場合には、自動車等は相対的に左側端に寄ることになるであろうし、幅員が十分であれば、左側端側にそれなりの余裕を持って通行することとなろう。また、現実に軽車両が通行しているときは、自動車等は左側端に寄り難く、相対的に道路の中央寄りの部分を通行することになろう。このように「道路の左側に寄って」とは、あくまでも相対的な概念であり、具体的な場所が道路のどの部分を指すかは、道路の幅員及び交通状況によりある程度幅があるのである。

 

道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房

当たり前の話として、車は必ず自転車分の左側端を空けて通行しろというものではないです。
かなり流動的な概念というか、その場その場で扱いが違うのが18条1項のキープレフトの原則。

このような状況で、車がまっすぐ突っ込めば自転車を轢いてしまいますが、

自転車がいるなら、そりゃ中央寄りに避けて走るだけだよね、と当たり前の説明になっています。

このケースは後述しますが、先行車との距離が迫ってから進路を変えれば追越し、それ以前に進路を変えていれば追い抜きです。
このケースで、常に自転車が通行できる左側端を空けて走ろうと思えば、車はセンターラインぎりぎりまで迫ってますが、常に左側端を空けてセンターラインぎりぎりを走る義務はさすがにない(危険すぎる)。

 

なので解釈が割れる可能性はありますが、ハッキリしていることがあるとすれば、必ず自転車分の左側端を空けておく義務まで課していないというところですかね。
ただし実態として、左側端を全く空けずに車が通行することも不可能というか危険(縁石に擦るなど)。
ちなみに18条1項の「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」の解釈は、執務資料道路交通法解説、注解道路交通法ともに「道路の損壊、道路工事等」としています。

 

と、いろいろ書いてきましたが、自転車が通行できる幅をってどれくらいなのよ??と判断が割れそうなポイントもある。
逆に言うと、ロード乗りにとっても左側端がどこまでなのかはわからないので、なんとなくこの辺だろみたいな自己流判断で通行するしかない。
道路幅次第では左側端を空けることが困難ですが、その道路幅ってどれくらいからなのよ??というところもある。
無理にセンターラインのギリギリまで寄ってでも左側端を空ける必要があるの??という疑問も出てきます(センターラインを越えていなければ17条の4には違反しません)。

立法趣旨は真ん中を空けることだよね??といくらでも矛盾が出てくる。

 

こういう状態でも、

車は【左側に寄って】を満たしているので、違反とは言えない。
なにせ、具体的に左側端を何m空けろとは定義していませんし、そもそも左側端を空けることを義務とはしていない。

 

これだけいくらでも解釈が成り立つわけじゃないですか。
どうするのが正解なのよ?となるわけです。
でも安心してください。
18条1項は罰則がありません。

 

つまり絶対的義務として課しているのではなく、訓示規定に過ぎない
立法趣旨はあくまでも道路の真ん中を空けることなので、左側端(自転車の通行位置)を無理にでも確保せよという義務はありません。
訓示規定に過ぎない理由としては、どこまで行けば左寄りなのかが明らかではないし、どこまでが左側端なあのかもわからない。
左側の範囲に左側端も含まれてしまうから、取り締まること自体が不可能だからです。

 

定義が曖昧でいろんな解釈が成り立つ条文に罰則を作ることは不可能です。
これも国際条約に加盟以前なら、車は中央寄り(もしくは左側の中央)、自転車は左側端となっていたのでわかりやすかったけど、国際条約に合わせる段階でこのような意味不明な条文が誕生してしまったとというところでしょう。
法律って条文だけ読んでもイマイチ分からないことがあって、立法趣旨から見ないと何をしたくて作った条文なのかがわからないことも。
旧法19条のようになっていれば、左側端まで車が寄って通行していると違反といえますが、旧法19条も曖昧な要素があるので結局罰則はなかった。
なので現18条についても、曖昧過ぎるので罰則はありません。

 

キープレフトで検索すると、ネット上ではオートバイ乗りの記事がそれなりにヒットします。
キープレフトだと車の危ない追越しに遭いやすいから、わざと真ん中を走るという意見も。

これも、【自転車が通行に必要な左側端を空けて左に寄っている】とみなせなくもないので、即座に違反だと言える根拠もない。
左側端はどこまでなのかすら不明ですし。
ただし本来の立法趣旨からすると、車が追越ししやすいようにキープレフトなのでちょっと違う気もしますが、どちらにせよ罰則がない訓示規定。
まあ、後続車がヤバい人の場合、煽り運転に遭うリスクはありますが。

逆に、やたら低速で走る原付おばさんとか、左側端を通行していることも見かけます。

原付は左側端ではなく左側寄りとなってますが、左側の範囲に左側端が含まれる以上、違反と言えるものではない。
そもそもそこは左側端なのか?左側なのか?という問題もありますし。
まあ低速原付の場合、追いつかれた車両の義務に備えているという見方も成立します。

 

つまり、こういうこと。

18条1項の【左側に寄って】というのは、左側端を空けた状態でも違反ではない。
左側端に近いところを通行したとしても、【左側に寄って】の範囲だから必ずしも違反ではない。
左側端を必ず空ける義務までは課していない。
・そもそも罰則がない訓示規定に過ぎないので、義務ではなく努力目標に近いものかと。

つまりは、車が左側端まで寄っていたとしても必ずしも違反とは言えないし、左側端を空けていても左寄りだと認めますよというだけの規定です。
何が何でも自転車の通行位置を確保せよという規定ではありません。
国会議事録にもあるように、自転車の通行位置を確保したいなら自転車用の通行帯を設けるという区分も想定出来たけど、道路幅などの問題から自転車専用通行帯は作っていないとも言える。
ちなみにですが、この時代は左追越しによる違反がそこそこ問題視されていたっぽいですね。
キープレフト本来の趣旨は、左側に寄ることで対向車との接触を避け、右から追越ししやすくなるというもの。
そういうのが背景にはあるんでしょうし。

 

○説明員(宮崎清文君) 一般的な統計では、先ほど局長が申し上げましたように、ちょっとございませんが、交通違反の交通切符の項目としては左側追い越しが出ておりますので、特定なサンプル調査はできるかと思いますので、至急調査いたしましてお答え申し上げます。
それから、もう一つつけ加えさしていただきますが、左側追い越しの違反でございますが、先ほど先生がおっしゃいました事例の中には、追い越しではございませんで、追い抜きの場合もあろうかと思います。つまり、ちょっとややこしくなりますが、現在法律で禁止しております追い越しは、前車のうしろにいた後車が横へ出て追い越す場合でございます。後車がもともと前車と、はずれておりまして、まっすぐ参りました場合は、かりに前車を抜きましても、これは法律でいう追い越しにはなりませんので、その場合には罰則は加わりません。

国会会議録検索システム

 

左側端を空けることが可能な道路幅なのに、無意味に左側端まで寄って通行するのはいかがなものかと思います。
そもそも歩道の縁石に擦ってしまうなど危険性がありますし、無意味に左側端に寄る人はさすがにいないかと。

 

例えばこのような感じの時。

センターラインとの距離が50センチ、車と歩道の間が80センチあったとします。
一般的な道路では路肩が50センチなので、80センチというと路肩1.5倍程度ということ。

 

80センチだと、先行車の速度が遅ければ、すり抜け目的で突っ込んでくる自転車がいるかもしれません。
私は絶対にしませんが。
センターライン側の50センチというのは、一般的にはぎりぎりラインです。
それ以上右に寄って通行すると、危険領域。

 

この状態から、さらに車が右に寄ることで自転車の通行路(左側端)を空ける必要があるかというと、当然ありません。
車が危険領域に入ってまで左側端を空けろなんて、そんなバカな話はない。
センターライン側は最低でも50センチは欲しいところ。

 

ただこれが、歩道側(左側端):センターライン側=70センチ:60センチになったら違反なのか?
60センチ:70センチだと違反なのか?
50センチ:80センチだと違反なのか?
こういうのって明確な基準がない上に、目分量ですので正確にわかりようがない。
人それぞれ、必要だと思う感覚量が異なるわけですし、今正確に何センチなのかなんてわかりっこないので、何となくの感覚で走るしかない。

 

これは信号待ちで停止中の画像。
正確には計測していませんが、恐らく歩道の縁石~黒い車のボディ当たりの距離なら80センチ程度(?)。お互いに走行中にこの隙間で追い抜きする人がいるのかは不明ですが、たぶん車が渋滞気味でノロノロ運転の状態なら、突っ込む人がいるかも。
どうせサイドミラーにぶつかって破壊するオチなので、車のドライバーからしたらマジで勘弁。

どちらにせよ、これでも18条1項の【左側に寄って】には反していません。

 

なので異常なレベルで左側端に寄っている場合はいかがなものかと思いますが(左折前を除いて)、法の趣旨はあくまでもセンターライン側を空けることが主で、自転車にすり抜けさせるために空けているわけではないので、一般的・常識的な位置にいる限り問題となることはありません。
ましてや、すり抜けさせやすくすることが法の趣旨ではないので、自転車側が文句をつけるのは筋違いもいいところです。
むしろ法の趣旨は、キープレフトすることで右側からの追越しを促しているわけで、どうしても車より前に出たいなら、法律通り右に進路を変えて右から追い越せばいい。

 

ちなみにですが、追越しの定義はこうなります。

二十一 追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。

4要素をすべて満たしたのが追越しです。

要素 意味
1 追いついて 法26条の車間距離まで迫ってから
2 進路を変えて 進路変更と車線変更の定義は別です
3 側方を通り
4 前方に出る

 

 

道交法の【進路変更】の概念。
ずいぶん前に書いた記事についてメールを頂いたのですが。 関係ない部分もあるので、まとめて書きます。 進路を変える=車線を跨いで移動することなので、書いている内容は間違いではないか? 例えばこういうのが、道交法での【進路変更】に当たっていない...

 

なのでこれだと、追い付いてから進路を変更しているので、左追越しで違反になります(実態として取り締まりされているかは怪しいですが)。

こちらは追いついていないので追越しではなく追い抜きなので違反ではない。
追いついて=法26条の車間距離に迫った場合=前後の車体が重なる位置関係。

こちらは追いつく前に進路を変更しているので追い抜きになります。

まあ、こんな狭いところに突っ込んでいくロードバイク、まともではないなと思いますが。
けど、実際に突っ込んで死亡事故が起きていることもあるので、突っ込む人は突っ込むのでしょうか?

 

トラックの左横をすり抜けて死亡事故。果たして誰の責任なのか?
読者様より、トラックの左横をすり抜けて事故が起こったケースを教えてもらいました。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); この件は全く知りませんでした。 状況のまとめ 事故の状況...

 

こういうのは違反かどうかよりも、そのプレイが安全なのかどうかという観点がないと事故ります。

 

ちなみにですが、車両通行帯がある道路でのキープレフト(第一通行帯義務)は罰則があるのと、18条2項(歩道がない道路の場合)には罰則があります。

2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。
(罰則 第二項については第百十九条第一項第二号の二)

※訓示規定とは、違反した場合は違反に過ぎず、違法とは言えないものです。
一種の道徳的な役目とも言えますし、努力目標とも言えます(広義で言えば義務ですが)。
ただし18条1項については、そもそも何がどうなれば違反なのかが明確ではなく、法を厳密に解釈すれば解釈が割れる要素が大きいため、違反と言える状態が何なのかが不明だから訓示規定に留まっているものと思われます。

 

例えばこれも、左側端を空けて左に寄っているから違反とは言えない。

 

これも左側の範疇なので、違反とは言えるかは疑問。

どのみち、罰則がない訓示規定なので、あまりにもどちらかに寄り過ぎていれば危険だということで注意される可能性はあっても、罰則はありません。
車が左に寄り過ぎなら縁石に擦る可能性があるし、右に寄り過ぎていれば対向車と衝突する危険がある。

 

あと、この条文の本来の趣旨を見る限り、基本的な考えは、【対向車との接触をさけ、追越ししやすくするために真ん中を空けること】になります。
これが18条のキープレフトの基本概念です。
自転車と車、どっちが速いかは明らか。
車が自転車を追い越ししやすくするために、自転車を左側端にしたというほうが、立法趣旨に合致するわけです。
もし自転車が左側端ではなく、車と同じ左側だった場合、車が追越しすることが難しくなる可能性がある。
なので速度差が異なる車両を道路上でどのように円滑に進行させるか?という観点が主で、自転車の通行位置を保護するための条文というには無理がある。

 

なぜこの条文が出来たのかまで考えないと、たぶん意味を取り違える結果になるのかなと。

第1項の規定の違反行為については、罰則が設けられていない。これは、この規定による通行区分は、道路一般についての車両の通行区分の基本的な原則を定めたものであり、また、道路の状況によっては、道路の左側端又は左側といってもそれらの部分がはっきりしない場合もあるので、罰則をもって強制することは必ずしも適当ではないと考えられるからである。(従前の通行区分の基本的原則を定めた旧第19条の規定についても、ほぼ同様の理由により、同じく罰則が設けられていなかった。)。

 

道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房

ちなみにですが、18条1項に関係する判例が一応あります。

各種車両の交通頻繁な箇所では、最高速度時速30キロメートルの原動機付自転車は、本条の立法趣旨を尊重し、軽車両同様できるだけ第一車線上の道路左側端を通行して事故の発生を未然に防止すべきである。

昭和48年1月19日 福岡地裁小倉支部

どのような内容の裁判なのかは不明ですが、ロードバイクも意味もなく道路の左側端以外を走行して何らかの事故を起こした場合は過失にはなります。
原付は法令上は左側端に寄って走行する義務はないですが、速度が出ない実態からみてこのようにしているのかもしれません。

 

自転車乗りも左側端の解釈を広げて、ここまで真ん中寄りを通行しているケースは普通にあるわけで(峠の下りだとこういうラインを走るロードバイクは多いような気がします。個人的にはもう1車体分は左に寄るべきと思いますが)、

車のほうからしても、左側端を空けるといってもどれくらい空けるべきかの判断は人それぞれ違うでしょうし、国会議事録にもあるように、そもそも18条1項の規定が適用できる道路はそんなに多くないんじゃないですかね。
かなり広めの道路じゃないと、この規定通りのことを実現することは不可能で、現実的には状況判断して最も安全に走れるラインを選択するしかない。
動画のロード乗りも、左に寄り過ぎると危険だと思うからこういうラインを選択しているんでしょうけど(ちょっと真ん中過ぎるかなと思いますが)、18条の立法趣旨からすれば、後続車に追越しさせやすいようにするために左端に寄れとなっている。
けど左端は異物なども多いし危険なので、あえてこういうラインなのかなと。

 

※車両通行帯がある道路では、関係ない話です。

 

まあ左側に寄っていても、この隙間をすり抜けようとする自転車もいるわけで(走行中の話ではなく信号待ちの話ですが)、

車のドライバーに同情する部分もあります。
ミラー破壊しても、どうせ自転車は逃げていくわけですし。
そもそも信号が赤なので、無理にすり抜けて前に出る理由なんてないんですよね。
左折前に左に寄せていたなら、ウインカーを出していればすり抜けされなかったのかというと・・・微妙。

 

ママチャリは実質的に無法地帯みたいになってます。

自転車乗りの話

だいぶ話が長くなりましたが、冒頭のロードバイクの件に戻ります。

繰り返しますが、片側1車線道路・歩道アリの道路に限定しています。

 

このような主張があった場合、正解でしょうか?不正解でしょうか?

車道の左側端は自転車が通る場所だから、車は左側端をあけて走らないといけない

【走らないといけない】という義務があるかどうかの話。
当然不正解です。
理由はすでに書いた通りで、何が何でも左側端を空ける義務はないし、道路の中央を狭めてまで左側端を空ける義務はない。

こんな義務があった日には、衝突事故多発。
立法趣旨がどこにあるのかという話で、自転車の走行ラインを保護する目的が主ではない。

 

【左側端までは寄らなくても、左寄りになっていると認めますよ】と、【左側端を必ず空けなければならない】は意味が違う。
けどここを勝手に妄想して、【左側端を空けて左に寄ること】だったのが、【左側端を空けておかなければならない】という義務があるかのように錯覚する。
自転車乗りの立場からすると左側端を空けておいてくれたほうが嬉しい気もしますが、それを義務だと勘違いして車のドライバーに怒りをぶつけるとかはさすがに人としてあり得ない。

 

冒頭のロードバイク乗りの話ですが、赤信号で停止した時に、左側端のわずかな隙間に進入し(左足は歩道に乗せて)、先行車の窓を叩いて呼び出していたんですよ。

いろんな人
いろんな人
左に寄りすぎだよ。
もっと右側に寄れよ!!
幅寄せするな!!

 

その後ろから見ていた私とすると、先行車の位置は極めて常識的。
むしろそれ以上右に寄ったら、センターラインにかなり接近するので危ない。

 

今考えるとこのロードバイク乗りの人、【左側端を空けるのがキープレフト】だということを知っていて、それを絶対的な義務だと思い込んでいるんじゃないかなと思いまして。
立法趣旨から検討すれば、優先されることは道路中央の確保。
中央を確保するからキープレフトと呼ばれているにも拘らず、自転車の走行位置(左側端)を空ける義務があると思い込んでいるんじゃないですかね。
たぶん無理すればあと30センチくらいは先行車が右に寄ってもなんとか大丈夫でしょうけど、そもそもはロードバイクがすり抜け(追い抜き)しやすくするための規定ではないし、訓示規定なので努力目標みたいなもん。
無理して左側端の自転車通行位置を空ける義務までは課していない。

このとき後ろから見ていて、ホント嫌だなと思ったのは、思いやりの無さ。
やや渋滞気味で、記憶では時速15キロ程度(?)でノロノロ進行していた気がしますが、すり抜けする人のために右に寄れなんてメチャクチャ。
右に寄れば先行車は対向車と衝突して爆死リスクが高まるわけで、なんでリスクを負ってまですり抜けに協力しないといけないのか?という話ですよ。
このように仮想の車両通行帯風に規定しているのも、速い車両が追越ししやすいようになので、速い=車が優先される。

 

左側端は自転車だけのスペースではないわけです。
自転車だけのスペースだと勘違いしている人がいるから、こういう間違いが起こるのかなと。
左側端は自転車乗りの聖域ではない。

 

罰則がない訓示規定にとどまっている理由を推測すると、左側端とか左側とか、どれくらいという匙加減を規定することは不可能だからだと思います。
道路幅や車両幅によっても変わりうるし、立法趣旨はセンターライン側を空ける趣旨なので、もうちょっと右に寄っても安全と思う人もいれば、これ以上右に寄るのは危険だと考える人もいる。
ドライバー感覚で、この程度左側端を空けておけば十分だろと考えても、自転車乗りがその程度では足りないと思うかもしれない。
どこからが違反なのかを具体化できない以上、罰則を設けるわけにはいきません。

 

こういうのも、本来はお互い様であることを理解した上で、混雑具合や道路幅などから自然と秩序が保たれていくものですが、意味不明な権利主張とか義務がどうとか言い出すと、おかしくなる。
全然左に寄ってないし、幅寄せもしていない車に対して、クレームつけるとか恥そのもの。
権利だとか義務だとか、おかしな方向で勘違いしているんだろうなと思うと、正直後ろで見ていてイラっとしましたが、私が後ろから怒鳴りつけると火に油を注ぐ状態にしかなりませんので、感情を出さずに渋滞している事実を伝えるだけ。

 

権利とか義務とかばかり主張していると、どこかの大炎上した人と大して変わらないような気もします。
訓示規定に過ぎない努力目標を、やたら強調して何とかしろと言っていた車椅子の方がいましたが・・・実態を見て譲歩すべきところは譲歩しないと前に進めない。

 

自転車のために左側端を空けておく義務があるなんて間違った解釈をすると、車が違反していると勝手に思い込んで、妨害されていると被害妄想を膨らませて、車のドライバーにクレームを入れるという謎事態に陥ります。
そもそも18条1項は訓示規定に過ぎない上に、どうすると違反になるのかが明確ではない。
道路幅と車の位置を見れば、車がそれ以上右に寄るのは危険だろという配慮もなく、左側端を空けることを強要するというクソ事例です。

ちなみにこのロード乗り、若者ではありません。
そこそこのお年の方に見えましたが、法解釈を間違うと義務があるかのように錯覚して、自分中心に陥る典型例かと。
あのとき、車のドライバーの人、まさに困惑している雰囲気が出てましたが・・・かわいそう。
ロード乗りは嫌われることが多いですが、義務がないことを強いるようなプレイをすれば、そりゃ嫌われるだろうよと・・・

 

まあ現実問題としては、ロードバイクは左側端といっても、路肩を走ればグレーチングとかごみの散乱などで危険ですし、路肩を走っている人もいないかと。

 

ちなみにですがこの話は片側一車線、歩道アリの道路です。
こういうイメージ。

片側一車線で歩道と車道の区別アリなので、白線は車道外側線になります。
車道外側線は目安に過ぎないので、白線から歩道の縁石までも車道扱いになります(一部で車道ではないとする判例もありますが)。

 

なので理論上はどの車両も通行可能ですが、車が左に寄り過ぎれば擦ったり危険なので、一般的には推奨されません。

 

歩道がない道路の場合は、自動車(二輪を除く)は制限が掛かります。

車両制限令(路肩通行の制限)
第九条 歩道、自転車道又は自転車歩行者道のいずれをも有しない道路を通行する自動車は、その車輪が路肩(路肩が明らかでない道路にあつては、路端から車道寄りの〇・五メートル(トンネル、橋又は高架の道路にあつては、〇・二五メートル)の幅の道路の部分)にはみ出してはならない。

※車両制限令の自動車の定義は、二輪車を除くとなります。

 

路側帯がある場合は、路側帯は自転車のみ通行可能ですが、ロードで路側帯走る人もいないかと。

 

車両通行帯がある道路での白線は、車両通行帯最外側線となるので、白線の外側を走ると通行区分違反となります。

 

車は左側端を空けて走る義務がある、なんて覚え方をすると、おかしな権利主張に繋がってみたり、その結果トラブルを起こすバカまで出てくるので、中途半端な知識で主張すると他人に迷惑をかけるという最悪の事例でした。
18条の解釈では割れる要素はあるにしても、どちらにせよ訓示規定なので義務とまでは言えないんですよね・・・
そもそもどうなると違反なのかすら不明な条文。
先行車にクレーム付けて大渋滞を起こすとか、人としてアウトですから。

 

さらに発展して、自転車ナビラインを自転車の聖域と勘違いしている人もいます。
全然違いますから。

 

自転車道、自転車通行専用帯、自転車ナビラインの違いってわかりますか?
先日の国道16号、相模原市の自転車道の記事ですが、 かなりの反響がありまして、車道をロードバイクが走れないのはおかしいと感じた人が多いようです。 法に従うならば、自転車道の入り口と出口に注意で、車道⇒自転車道⇒車道となるので、合流点は要注意...

 

自転車レーン(自転車専用通行帯)についても、左折車は通行可能です。

 

自転車通行帯と、左折自動車の関係性。自転車レーンは必ずしも自転車専用ではない。
ちょっと面白い話を教えていただきました。 これ、本当にそうなの??という話だったのですが。 車両通行帯 この青い部分が、いわゆる自転車レーン、正式には自転車専用通行帯ですね。 これの道路交通法上の規定はこちらです。 (定義) 第二条 この法...

 

自転車の左側端通行

最後に自転車全般の話。
車両通行帯が無い道路では、ロードバイクは左側端を走るようにとなっています(18条1項)。

左側端というのがどこからどこまでなのか、規定はありません。
何となくこれくらいかなというイメージはあっても、厳格にいうならば片側1車線+歩道と車道の区別アリの道路の場合、車道外側線の外側(路肩)も車道になるわけです。
そうなると左側端=路肩を走ることが義務なのか?というと、当然そんなバカな話もない。

 

これもどこからどこが左側端なのか明らかではないわけですが、それと同様に車の【左に寄って】というのも、どこからどこまでなのかが規定されているとは言えない上に、必ず左側端を空けて通行する義務を課しているとも言えない。

 

ロードバイクだって左側端を自己流に解釈して、これくらいが左側端かな?という匙加減で走行しているのに、車には厳格に適用しろなんてバカな話はないわけで、こういうところも含めてお互い様なんだと思うんですね。
私なりの感覚としては、片側1車線道路+歩道アリの道路であれば、左車線を3分割か4分割するイメージで、その中の一番左が左側端と言える範囲かなと思います。

走行ラインはこの辺??どちらにせよ、個人差というか考え方の差も出る。
もっと左に寄って白線付近を走るべきと考える人もいるかもしれないし、もうちょっと右寄りにすることで、強引な追越しされたときに左側の退避スペースを作ろうと考える人もいる。
どちらにせよ、道幅と交通量なども含めて相対的に決まる面もあるし、絶対にココとする根拠は何一つない。
だから車に対しても自転車用の通行路を空けておく義務なんて課してないわけです。

 

そういえば先日見かけたロードバイクは、なぜかずっと路肩を走ってました。
路肩はガラス片とか多い上に、グレーチングの問題もあるので全くオススメしませんが、どちらにせよこの左側端というのは明確な定義が無いモノ。
明確な定義も無いモノだから罰則が無い訓示規定なのに、車に対してもっと右に寄れなんていうのは、人として無いわーと思うわけですよ。
そもそも、極めて常識的な位置を走っている車でしたし。

 

あえて一つ言えるとしたら、昭和39年の国会議事録にもあるように、自転車専用通行帯を優先して作る道路行政を敷いていれば、今みたいな意味不明な状態にはなっていなかったのかもしれませんね。
昭和45年に自転車の歩道通行が解禁されて、警察も自転車は歩道に行くように促してきたわけですが、

 

法改正 背景
S35 道交法成立、自転車は車道のみ
S45 自転車の歩道通行解禁 車の交通量増加と事故の多発
自転車は歩道へという謎ムードが広がり定着。警察も【自転車は歩道のほうが安全だ!】などと謎の指導を始める
S53 自転車横断帯の新設 歩道通行が当たり前のような施策
H20 改正道交法により自転車の歩道通行要件を改訂(13歳未満、70歳以上、標識の有無など) 歩道での自転車事故の多発
歩道での事故が多いので、【やっぱ原則として自転車は車道なんだよ!】と警察庁が広報し出す
H23 警察庁が【多くの普通自転車の歩道通行が念頭に置かれている普通自転車通行指定部分の指定がある場合を除き、自歩可の交通規制が実施されている歩道をつなぐ自転車横断帯は撤去すること。 】という指針を発表。
H24 自転車ナビマークの出現(警視庁)
H25 自転車の路側帯通行は左側に限定(路側帯の逆走禁止)
H28 国土交通省が「自転車ネットワーク計画策定の早期進展」と「安全な自転車通行空間の早期確保」に向けた提言を発表

昭和40年代初頭って、そもそも歩道がほとんどなかったらしい。

御指摘のとおり、わが国の交通死者の中に占める歩行者の比率というのは、諸外国と比較してみますと、日本とイギリスが三六、七%、アメリカやフランスは一九%程度というように、イギリスも同じでありますが日本は非常に多いようでございます。私どもも、道路交通上一番弱い立場にあるのは歩行者と自転車利用者であるという観点から、昭和四十六年から今年度まで実施いたしております交通安全施設の整備事業におきましても、また一般の道路改築事業におきましても、この間歩道の設置に非常に努力をいたしてまいりました。数字を若干挙げさせていただきますと、昭和四十二年に歩道のある道路の延長がわずかに五千五百九十キロという統計がございます。いろいろ努力をいたしまして、四十九年度末でこの延長が三万九千キロにふえております。なお御指摘のように、まだまだ歩道の未整備による、いわゆる自動車と歩行者とが混合交通をしておるということから起こる歩行者の死亡事故が後を絶ちませんので、来年度から新たに発足させます交通安全施設整備五カ年計画におきましても、最大の重点を歩道の設置及び自転車道の設置に置きまして、私ども、計画でございますが、できますならば五十五年度、五年後の歩道設置率を現在の倍に持っていきたいのですが、いろんな関係で六万七千キロぐらいを予定しておる、これは大体七割増しというような感じでございます。こういうことで、今後とも歩道の設置、自転車道の設置に重点的な施策を施していきたいというふうに考えております。

 

国会会議録検索システム

歩道が少なく歩行者事故が多かったから、歩道建設を急いだ・・・ということ。
確か政府は【自転車を歩道に上げたのは失敗だった】みたいな談話を出していたと思うのですが(記憶おぼろげ)、もし昭和40年代に歩道のほか自転車レーンをしっかり作っていれば、今とは全く違う状況だっただろうと・・・

 

まあ、そこまで予見しろというほうが無理があるかもしれませんし、歩道建設を急いだこと自体は正解なので、先人を責めてもしょうがないですが、自転車は歩道禁止、自転車レーンをガッツリ作るぞ!という意見があったらなお良かったんでしょうね(自転車道も重点的施策に含まれてますが・・・そんなにあるのか??)。
そうであったら、幅寄せするな!なんて声も出ないわけですし。
無いものねだりになってしまうけど。

 

恐らくですが、昭和40年代って自転車と言えばロードバイクではなく、ママチャリじゃないですか。
時代的にロードレーサーだ!みたいなツッコミは要りません。

 

昭和45年に自転車の歩道通行が解禁されて、さらに歩道がどんどん出来たので、自転車はほぼ歩道に行ったんじゃないですかね。
そうすると18条1項のキープレフトについて、車のドライバーも自転車スペースの左側端ガーとか考える必要性が無くなる。

 

どちらにせよ、18条1項は訓示規定なので義務を課しているとまでは言えません。
より正確に書くと、訓示規定でも一定の義務を課しているものとも言えますが、そもそも18条1項については曖昧な要素が多く、何をどうすれば確実に違反と言えるのかが明確ではない。
間違った解釈をして、車のドライバーに対し、法的に義務が無いことを強要するのはホント良くない。
それじゃいつまで経ってもロードバイクなんて理解されないので、譲り合いの精神をまずロードバイク側から示すべき話だと思うんですね。

 

どうしても車よりも前に出たいなら、右側から追い越せばいいわけですし。

補足

ネット上で18条のキープレフトの解釈を調べると、なかなかのトンデモ論が出てきます。
18条1項では【車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き】とあることから、片側1車線道路はそれぞれに方向が指示されている⇒車両通行帯になる⇒18条1項の規定はセンターラインがない道路限定なんだと・・・

 

これはトンデモ論の最たる例。
道路交通法2条。

七 車両通行帯 車両が道路の定められた部分を通行すべきことが道路標示により示されている場合における当該道路標示により示されている道路の部分をいう。

道路交通法4条。

(公安委員会の交通規制)
第四条 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる。この場合において、緊急を要するため道路標識等を設置するいとまがないとき、その他道路標識等による交通の規制をすることが困難であると認めるときは、公安委員会は、その管理に属する都道府県警察の警察官の現場における指示により、道路標識等の設置及び管理による交通の規制に相当する交通の規制をすることができる。
2 前項の規定による交通の規制は、区域、道路の区間又は場所を定めて行なう。この場合において、その規制は、対象を限定し、又は適用される日若しくは時間を限定して行なうことができる。
3 公安委員会は、環状交差点(車両の通行の用に供する部分が環状の交差点であつて、道路標識等により車両が当該部分を右回りに通行すべきことが指定されているものをいう。以下同じ。)以外の交通の頻繁な交差点その他交通の危険を防止するために必要と認められる場所には、信号機を設置するように努めなければならない。
4 信号機の表示する信号の意味その他信号機について必要な事項は、政令で定める。
5 道路標識等の種類、様式、設置場所その他道路標識等について必要な事項は、内閣府令・国土交通省令で定める

以上から、車両通行帯は専用の道路標示を使い、公安委員会が指定して初めて効力を発揮します。
車両通行帯の設置基準は道路交通法施行令にあります。

4 法第四条第一項の規定により公安委員会が車両通行帯を設けるときは、次の各号に定めるところによるものとする。
一 道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に二以上の車両通行帯を設けること。
二 歩道と車道の区別のない道路(歩行者の通行の用に供しない道路を除く。)に車両通行帯を設けるときは、その道路の左側端寄りの車両通行帯の左側に一メートル以上の幅員を有する路側帯を設けること。ただし、歩行者の通行が著しく少ない道路にあつては、路側帯の幅員を〇・五メートル以上一メートル未満とすることができる。
三 車両通行帯の幅員は、三メートル以上(道路及び交通の状況により特に必要があると認められるとき、又は道路の状況によりやむを得ないときは、一メートル以上三メートル未満)とすること。

以上の理由から、車両通行帯は
・公安委員会が指定した道路
・最低でも片側2車線が必要(2車線とも一方通行は可能)

 

センターラインがある片側1車線道路は、車両通行帯になるわけがありません。

 




コメント

  1. クライン より:

    以上のルールは、道路上を対向する車両同士の進路を分け、かつ、道路の中央部分を空けておくことで、①対向車同士の擦れ違いを円滑にし、②同一方向に信仰する車両同士の追越しを容易にしようとするものである。

    (中略)

    「キープレフト」の原則を定めた条約9条第2項(b)に対応するためには、旧第19条及び第20条を廃止し車両通行帯の設けられた道路における通行区分を定める本法第20条第1項本文の規定を置けば足りるわけだが、そもそも道路の中央部分を追越しのために空けておくという「キープレフト」の考え方は、通行帯の設けられた道路に限らず、およそ道路一般に適用される普遍的な思想であったので、車両通行帯の設けられていない道路における「キープレフト」についても、旧第19条を改正する形で第18条の左側寄り通行の規定を置いたのである。

    道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房

    上記文の「信仰」は「進行」の間違いですか?
    それとも立花書房の間違いですか?

  2. 通りすがり より:

    「左側」「左側に寄って」「左側端」等いろいろ言い方が出てきますが
    道路の「左側」は十七条四項にて定義されています。

    「左側に寄って」とは十七条五項二号のような道路も想定した文言になっています。

    • roadbikenavi より:

      17条4項で定義されているのは「左側部分」であって、18条1項でいう「左側に寄って」とは違う概念ですよ。

      18条1項でいう「左側に寄って」とは、17条4項の「左側通行義務」を前提にして「道路左側部分の左側に寄って」と解釈することは明らか。

      • 通りすがり より:

        「左側部分」だけだと十七条五項二号のような道路は走ると違反になります
        単線道路の場合右側に寄って走るなってことです

        • roadbikenavi より:

          17条5項2号は大型車など物理的に困難な場合の例外規定なので(特に左折時など)、18条1項の原則とは関係ありません。
          17条5項2号の例外により道路の左側部分の通行が困難な場合には、18条1項但し書き「その他の事情によりやむを得ないとき」と捉える考え方もできますし、そもそも18条1項は17条4項の原則の下での規定だと捉えることもできますが、何を主張されたいのでしょうか?

          • 通りすがり より:

            五項二号は単線道路を主に想定した条文です
            物理的困難な場合はもうそれは特殊車両なので四十七条の領分です
            「道路の左側に寄って」としか明記されていません。
            走行車線でもなんでもなくあくまで「道路」の「左側」でしかありません。

          • roadbikenavi より:

            5項2号センターラインがない生活道路のような場合のみならず、こういうケースも含まれます。

            https://roadbike-navi.xyz/archives/38596/

            47条は駐停車の場合なので何ら関係ありません。

            なお判例でも示されていますが、18条1項の「左側に寄って」とは片側二車線の「車両通行帯がない道路」でも適用される概念ですし(複数車線と車両通行帯が別概念なことはわかりますよね?)、なぜしきりに「単路」にこだわるのかよくわかりませんが、結局、何を主張されたいのでしょうか?

            18条1項の概念を理解するには、昭和35年の旧19条、昭和39年改正のジュネーブ条約など全て理解してないと厳しいと思いますが。

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