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恐らく、言葉の意味を理解してないからこうなる。

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読者様から、こちらのHPに記載されている内容をどう思うか?と質問を頂きました。

 

バイクすり抜け問題:よくある誤解

 

オートバイのすり抜け行為についての解説のようです。
正直なところで言いますと、用語の定義と解釈をわかっていないためにこうなるんだろうなと。

 

このHP、長らく更新もされてないようですし、内容としてはメチャクチャな部類です。
理解しないといけない項目は主にこれ。

 

・【追いつく】という言葉の解釈
・追越しと追い抜きの違いの把握
・18条1項のキープレフトの意味
・車両通行帯の意味

 

このあたりをきちんと捉えていないと、全ての解釈を間違うという典型例。

言葉の定義と解釈

追いついたの意味

追越しの定義は法2条1項21号にあります。

二十一 追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。

【追い付いた場合】をどう解釈するかですが、26条に【車間距離の保持】、27条に【他の車両に追いつかれた車両の義務】があります。
26条と27条から追突を避ける趣旨(26条)と追越ししやすくする趣旨(27条)があるので、道路の進行方向に対して前後の車体が一部もしくは全部重なった状態が【追い付いた】となります。

なお、法の条文では先行車が停止中か走行中かを分けていないように読み取れますが、あくまでも車間距離は走行中の前後車両が追突しないための趣旨であることや、27条の追いつかれた車両の義務は停止中の車両には求めていないことから、先行車が停止中の場合には【追い付いた】には該当しないこととされています。

追越しと追い抜きの違い

追越しは今の4点をすべて満たす場合のみです。

 

①追いついた
②進路を変え
③側方通過
④前に出る

 

進路を変えずに先行車の前方に出る行為は追い抜きです。
進路を変えずに前に出るには、追い付いていない状態も成立します。
この定義については、昭和39年3月31に宇都宮簡裁で判示されています。

18条1項のキープレフトの意味

18条1項では、このようにしています。

(左側寄り通行等)
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。

これの意味はこう解釈されます。

具体的には軽車両が道路の左側部分に寄つて通行するために必要とされる道路の部分を除いた道路の部分の左はしに寄つてということであり、また前記法条の軽車両の観念上の通行区分である「道路の左側端に寄つて」とは路肩部分を除いた道路の部分の左はしに寄つてという意味であると解するを相当とする。

 

静岡地裁浜松支部 昭和42年(ワ)193号

車、オートバイ、原付は、軽車両通行分の左側端を空けた上で左側に寄る。
ただし法律解釈上、左側の範囲には左側端も含んでしまっているので、本来の意味としてはこうですが、

こう捉えても違反ということは出来ません。

もっとも、厳密に述べるならば、「道路の左側」は「道路の左側端」を含むので、「道路の左側端に寄って通行する」ことは、「道路の左側に寄って通行する」こととなる。したがって、当該道路を軽車両が通行していない場合、自動車及び原動機付自転車は、道路の左側端に寄って通行することも差し支えない(もっとも、自動車や原動機付自転車は、軽車両に比べて走行速度も速いので、あまり左側端に寄り過ぎると交通安全上適切とはいえない)。
そもそも「キープレフト」の原則は、道路の中央部分を追越しのために空けておくという考え方によるものであり、道路の幅員が不十分な場合には、自動車等は相対的に左側端に寄ることになるであろうし、幅員が十分であれば、左側端側にそれなりの余裕を持って通行することとなろう。また、現実に軽車両が通行しているときは、自動車等は左側端に寄り難く、相対的に道路の中央寄りの部分を通行することになろう。このように「道路の左側に寄って」とは、あくまでも相対的な概念であり、具体的な場所が道路のどの部分を指すかは、道路の幅員及び交通状況によりある程度幅があるのである。

 

道路交通法研究会 注解道路交通法【第5版】、立花書房

18条1項は道路状況により解釈が割れる上に、常に左側端を空けて通行するとセンターラインを越える恐れもあるので、罰則も無い訓示規定になっています。
そのため、判例でも道路状況や事故状況で割れます。

各種車両の交通頻繁な箇所では、最高速度時速30キロメートルの原動機付自転車は、本条の立法趣旨を尊重し、軽車両同様できるだけ第一車線上の道路左側端を通行して事故の発生を未然に防止すべきである。

 

昭和48年1月19日 福岡地裁小倉支部

【左側に寄って】の原付に対して、軽車両と同様に左側端に寄って通行すべきと判示。

 

静岡地裁浜松支部の判例では、軽車両通行分の左側端2mを空けて通行していた車に対し、キープレフト違反はなかったとしている。

東京地裁の判例では、左側に1.5mの余地があり、車線の真ん中を通行していた二輪車に対してキープレフト違反があったと認定している。

原告車両から見て衝突位置の左側に、車線の半分以上である少なくとも1.5m以上のスペースを残して直進進行してきたものであるから、左側寄り通行義務(道路交通法18条1項)に違反した過失もあるというべきであり、このことが本件事故発生の一原因になっていることは否定し難い。

 

東京地裁 平成19年1月21日

それぞれの状況において変わり得るので、18条1項には罰則がありません。
事故が起きた場合に過失となるかが判断される可能性はあります。

明確に間違いな点

先ほどのHPから【追い抜き】というところに飛びます。

 

この方の理論では、車両通行帯がない道路の場合、追い抜きとはキープレフト違反を伴った追越しだと説明されています。

 

例えばこういうケース。

先行車が車、後続車がオートバイだとします。

 

同一車線内ですが、前後の車体が重なっていないので追い付いていないわけですが、これ、どっちもキープレフトに反するとも言えない。

車両 言い分
軽車両の通行分を空けた上で左側に寄っていた
オートバイ 軽車両がいなかったので、追突を避ける趣旨で左側端まで寄っていた

これはどちらもキープレフト違反ではないですし、そもそも18条1項には罰則がない。
車やオートバイのキープレフトって、考え方次第でも変わりうる。
なので解釈の違いであってどちらも違反とは言い切れない。

 

こういうケースではどうでしょうか?
先行車がやたらセンターライン寄りを通行していれば、後続車はそのまま追い抜き出来る。

先行車が厳密に言えばキープレフトに違反しているとも言えますが、どちらにせよ18条1項に罰則はありません。
後続車については何ら違反ではない。
要は先行車の位置次第でも、後続車はキープレフト違反にならずに追い抜き可能。

 

この方の追い抜きは、キープレフト違反を必ず伴うことになっているようですが、そもそもキープレフトと判例を理解していないことが原因だと思います。

 

こういうケースではどうでしょうか?

自転車は左側端に寄って、オートバイは軽車両通行分を空けた上で左側に寄って通行していた。
その状態でオートバイが側方を通過して前に出るのは、これは追越しではなく追い抜き。

 

キープレフトを満たしたまま追い抜きは普通に成立する。
根本的な誤りはここにあるのかと。

車両通行帯での追い抜き

車両通行帯を走行中の場合は右側の車両通行帯に車線を変更して、追い越さなければなりません。同一車線内の追い越しは認められていません。これは道路交通法第20条第3項によります。このことから車列間のすり抜けはこの道路交通法第20条第3項の違反となることがわかります。

 

バイクすり抜け問題:よくある誤解

車両通行帯であれば、追越しするときは右側の通行帯から、と決まっています。
そもそも、複数車線=車両通行帯ではないのですが、

 

正しい車両通行帯の考え方と、自転車乗りは違反なのかについて検討。
先日も書いた件です。 片側2車線道路で、左第1車線のど真ん中付近を走行しているのですが、これが違反になるのかどうかについて検討します。 事実確認・法確認から 調べたところ、この道路は府道13号京都守口線の守口市内のようです。 ・片側2車線道...

 

同一車線内で【追い抜き】してはいけないとする条文はどこにもないので、安全運転義務違反になるような速度域・側方距離ではない限り、別に構いません。

これでも何ら違反ではありません。

同一車線に一つの車両しか走れない?

軽車両を含め車両全般はキープレフトと車両通行帯走行の点から、1車線に1台しか走れません

 

バイクすり抜け問題:よくある誤解

まず、車両通行帯がない道路から検討します。

自転車とオートバイの関係性で言うと、自転車は左側端、オートバイは左側端を空けた上で左側に寄ることなので、事実上はこうなったとしても違反ではありません。
黄緑が原付の場合には、27条1項の規定により加速してはいけない義務が生じるのですが、好ましくはないもののこれは追越しではなく追い抜きなので、事実上併走みたいになったとしても取り締まる条文がありません。

 

しかし現実論として、だったら後続オートバイはなんで前に出ようとしたんだ??という意味不明な状態になりますし、あまり考える必要もありません。

 

車両通行帯の場合、車線内で左に寄せる義務がないため、同一車線内でも追い抜きが成立する余地は普通にあります。

とは言え、車両通行帯は高速道路以外だと、交差点付近の指定通行区分やイエローライン規制の箇所、専用通行帯がある場所などに限定されます。
ほとんどの一般道は、交差点付近以外は複数車線であっても車線境界線。

 

なのでそもそもあまり考える必要も無いですが、交差点付近では安全運転義務違反や速度超過、イエローラインや進行方向別通行区分などに違反しない限り、同一車線内でも追い抜きは成立する。

走行中か否か?

どこにも走行中とは書かれていません。また信号待ちや渋滞で止まっている車はいつ動くかわからない「走行中の車」であります。走行中にたまたまスピードが0になってしまっただけである目的の場所に向かって走行しているいるのです。

 

バイクすり抜け問題:よくある誤解

私も前は、条文だけを見れば先行車が走行中だけに限っていないのでは?と思っていましたが、【追い付いた】というところから26条・27条を検討する必要が出るため、結局は先行車が走行中に限定しているのが追越しだとなっています。
条文に書いていないだけで、他条の趣旨と併せて検討しなければならないわけです。

 

信号待ちや渋滞で止まっている車が【走行中】というのは、明確に間違い。

十七 運転 道路において、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)をその本来の用い方に従つて用いること(自動運行装置を使用する場合を含む。)をいう。
十八 駐車 車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。
十九 停車 車両等が停止することで駐車以外のものをいう。

運転については判例もありますが、走行中のことを指しています。
車両が信号待ちや渋滞で停止しているのは、走行中ではなく【停止中】です。
速度ゼロで走行中というのは、トンチ合戦ではないので、法律に則って定義を見るべき話。

 

なかなかの珍論炸裂中という感じですが、この方は複数の道交法解説書を読んだほうがいいのかなと。

すり抜けは推奨しませんが

道路交通法上、違反だからすべきではない行為と、違反ではないけど危険だからすべきではない行為があって、両者は分けて考えるべきと思っています。
よく、

 

読者様
読者様
教習所でこう習った!

 

こういう意見は耳にしますが、そもそも教習所では厳密な法解釈を教えているわけでもなくて、違反ではないけど危険な行為も違反だと教えるケースも多いのが実情。

 

同一車線内では追い抜きは成立しないなどと珍論が出ることもありますが、それなら自転車と車の関係で、

これは両者ともにキープレフト違反(18条1項)もなく、追い付いてもいない状態で進路を変えずに追い抜きしてます。
この追い抜きが成立しないという珍論を掲げるのもいかがなものかと。

 

で、すり抜けについては、基本的に危険度が高いケースが多いのでお勧めしていません。
その上で、側方距離が近すぎるとか、追い抜き時に高速度であれば安全運転義務違反に問われる可能性はあります。

 

こういうのも珍論を掲げる前に、きちんと複数の解説書などを検討して法の条文との整合性を見ていけばわかりそうなものですが、法を厳密に解釈した場合はすり抜けは違反にはならない。
イエローラインを越えたり、速度超過があったり、車両通行帯最外側線を超えれば違反となる可能性はありますが、違反だからダメな行動と、違反ではないけど危険度が高いからやめたほうがいいプレイは分けることが大切。

 

後者については、マナーの領域なんですね。
違反ではないので。

 

道路上でマナーが不要、法律を守ればそれでいいと考える危険思想もあるようですが、マナーがないと事故るんです。
そういうこと。

 

法律を理解していないと、こういうケースでも、

 

正しい車両通行帯の考え方と、自転車乗りは違反なのかについて検討。
先日も書いた件です。 片側2車線道路で、左第1車線のど真ん中付近を走行しているのですが、これが違反になるのかどうかについて検討します。 事実確認・法確認から 調べたところ、この道路は府道13号京都守口線の守口市内のようです。 ・片側2車線道...

 

自転車乗りは、車両通行帯と勘違いしているから、第一通行帯の中ならどこでもOKと思い込んでいる。
しかし複数車線だから車両通行帯というわけでもないので、実態はキープレフト違反(18条1項)に抵触しているだけのこと。

 

けどまあ、18条1項には罰則が無いので、こういう自転車に対しては取り締まることが出来ず、注意止まりになる。
けど事故った場合には過失になります。

各種車両の交通頻繁な箇所では、最高速度時速30キロメートルの原動機付自転車は、本条の立法趣旨を尊重し、軽車両同様できるだけ第一車線上の道路左側端を通行して事故の発生を未然に防止すべきである。

 

昭和48年1月19日 福岡地裁小倉支部

確か判例を求めていたはずですが、判例上は、第一車線のできる限り左側端を走るように求めていますね。
【軽車両と同様】だそうです。

 

教習所で習ったからとか、自分は経験も長いからとか、何の根拠にもならない理由で珍論を掲げる人もいますが、上の車両通行帯の件なんて、いろんなものを調べないと理解できないこと。
私もきちんと理解するのに1年くらいかけて調べましたが、常識とされることを疑う力がないと、いろんな分野で間違いを犯すだけなのかと。

 

リンク先の記事ですが、冒頭でこのように記しています。

すり抜け容認派の方たちは同じような主張で自己を正当化しようとします。多くは道交法の一部だけを都合良く解釈していたり、ひどい場合は全く理解していないことに基づきます。自己の発言の結果、事故にあう人や違反として取り締まられる人が出る可能性を考えた上で責任をもって発言されている方はどれほどおられるでしょうか。

私はすり抜けについて、危険だからすべきではないと考える派なので、容認派ではありません。
けど法律解釈は別問題。

 

容認しないために法解釈を捻じ曲げると、法解釈をきちんとわかっている人が出たときには対抗できなくなります。
法律上は違反ではなくても、マナーや自己防衛としてはすべきではない。
マナーや自己防衛の考え方は人それぞれ違うので、法律上問題ないからいいんだと考える人がいてもおかしくはない。

 

なので単なるマナー論なんですよ、すり抜け問題は。
もちろん、方法によっては違反になりうる余地はありますが。

 

ということで、以上で回答とします。

 




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