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同意書なんて基本無意味。

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ロードバイクの世界では、車間距離を詰めたドラフティングはそこまで珍しいものではないわけですが、レース以外では車間距離保持義務違反に問われる可能性があります。
まあ、実態として取り締まりしているかどうかは別ですが。

同意書があればOK?

先行車と後続車が至近距離まで詰めて走っていたとして。
こういうケースでは、基本的に違反に問われるのは後車のほうです。
先行車には車間距離をコントロールする余地がほとんどないので、車間距離保持義務は後車になる。

 

先行車がもしもですよ。
もっと詰めてこい、風よけに使え!と後続車に言った結果、後続車が過失により先行車に接触して事故に遭ったとする。
一般的に、自転車同士では吹っ飛ぶのは後続車のほうです。

先行車は後輪に体重が乗っているので、吹っ飛びづらい。
後続車は操舵輪の前輪が持っていかれるので落車する。

 

ただまあ、先行車が爆死する可能性がゼロというわけでもない。

 

世の中、いろんなことを考える人がいるらしいのですが、【車間距離を詰めた走行の結果起こった事故については、一切の損害賠償請求権は放棄する】みたいな同意書を事前に交わしたら問題ない、という謎理論があるらしいです(聞いた話)。

 

同意書があるので、免責にできるという謎理論が通用するのでしょうか?

当然無効

この場合、道交法26条に反する車間距離での走行の結果として生じた損害は請求できない、という同意があったとみなされるのかというと、当然ですがそんな同意書は無効。

第90条
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

公序良俗に反する合意事項は無効なので、当然ですが意味を成しません。

 

これ、判例でも明らかにされているのですが、スキューバダイビングで事故死したケースでも、同意書の効力が争われています。
スキューバダイビングの場合、事前に【インストラクター等の責任を問えない】みたいな同意書を書いていると思いますが、

人間の生命・身体のような極めて重大な法益に関し、一切の責任追及を予め放棄するという免責同意書は、少なくともその限度で公序良俗に反して無効

不法行為&怪我や命に関わるような同意があっても、基本は無効。

 

レース中だとどうなのかですが、レース中の事故や怪我については免責・・・と思われがち。
レース中のルール違反があったことが事故の原因だと判断された場合には、損害賠償請求を認めた判例もあります(横浜地裁 平成10年6月22日)。
また東京高裁判決では、このようになっています。

スポーツ競技中、ルール違反さえなければ常に違法性が阻却されると解することはできず、当該スポーツの性格や事故の生じた具体的状況に即して検討すべき

 

東京高裁 平成30年7月19日

実際のところ、同意書で免責だと合意していたとしても、それが法律上の効力があるか無いかは全く別問題ということですね。
レース中でもルールや慣習に則って走行している分には、事故が起きたとしても正当業務による違法性阻却事由になるでしょうけど、東京高裁判決ではルールだけにとどまらず、スポーツの性格や事故の具体的状況を考えて判断すべきとしているところがポイント。
レース中に、手で押して落車させれば損害賠償の理由にもなり得るし、ルール内でもマナー違反と呼ばれるようなプレイがあった場合には、その都度考えましょうということですかね。

まあ、レースではない公道走行で、車間距離を詰めることへの合意と、その結果起きた事故に対する免責なんて合意しても無意味でしょうけど。

 

ちなみにですが、同意書が無効であることと、損害賠償が認められるかどうかもまた別問題だったりします。
同意書自体は有効だけど、損害賠償は認められない(不法行為責任が無いものと解釈される)こともあるでしょうし。

 

ただまあ、ロードバイク同士が接触した場合、一般的には吹っ飛ぶのは後車のほう。
車間距離を詰めて危険なプレイをしたほうが吹っ飛ぶシステム(?)なので、ある意味では自爆行為とも取れます。

 

先行車に、後ろに付くことを強要された結果として接触事故になり、後者が落車して怪我をしたと想定します。
これは後車の責任が100%になるでしょう。
嫌なら車間を空ければ済む話だし。

あんまり書きたくは無いですが

自己責任でどうぞ、という言葉ほど無責任なものは無いと思っているのであんまり書きたくは無いですが、私は無駄に車間を詰めるプレイはしません。
痛い目に遭うのは後車ですから。

 

見知らぬ人が後ろにベタ付きしてきた場合は、何らかの方法で先に行ってもらいます。
信号待ちでわざと歩道に乗り上げて先に行かすでもいいでしょうし、徐々に減速していって後ろに付きたくないと思わせれば済む話だし。
間違っても、至近距離で屁をこいたりすることはしませんw

 

相手に攻撃する意思をもって後続車に向けて屁をこいた場合、暴行罪は成立する余地があるのでしょうか?
暴行罪は有形力の行使ですが、屁を見舞ったところで相手には心理的ダメージしか与えることが出来ませんし、暴行罪にはならないような気がするw

 

他人がドラフティング走行している現場を第三者としてみることはありますが、違法であれば警察が注意するなり摘発すればいいはず。
けどこれも現場レベルの警察官に聞いたことがあるのですが、自転車の車間距離不保持の摘発事例は聞いたことないし、そんなもんを取り締まりしていないと思う・・・けど法律に則って車間距離は安全に取りましょう!と当たり前のことしか言われませんw

 

26条の車間距離ですが、明確な基準があるわけでもありません。
判例上はこのようになっています。

必要な距離とは、追従距離であり車両等の種類、構造、速度、性能、道路の状況、昼夜の別、見通しの状況、積載量、制動操作の運転技術等の諸条件によって異なるので、これを一律に決定することは困難である。

 

昭和30年3月10日 名古屋高裁

条文だとこうなります。

(車間距離の保持)
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

先行車が突如速度ゼロになったことを想定して(壁になったようなイメージ)、その状態でも衝突せずに停止できる距離を空けるというのが条文趣旨。
あえてややこしい点を挙げるとしたら、自転車の場合は車幅が狭いわけで、急激な進路変更を伴えば衝突を避けることができるわけですが、これはまた別の問題になるので省きます。

 

での話になりますが、【警視庁管内自動車交通の指示事項】として、乾燥した平坦舗装路面での基準があります。

速度(Km/h) 車間距離(m)
30 9
25 8
20 6
15 5

まあ、警察も自転車の違反に対しては、罰則を取ることに消極的というか、信号無視、逆走、無灯火、イヤホン、携帯使用、傘さし運転程度しか取り締まりしていないような気がする。
今後創設予定とされる、自転車の少額違反金制度ってどういうところまで適用にするんでしょうかね?
個人的には期待しているのですが・・・

 

先日、読者様と自転車道についてメールでやり取りしていたのですが、せっかく自転車道が出来たにもかかわらず、ストラバの記録を見ると平然と車道を通行しているロードバイクが多いと。
これも難しい面があって、法解釈次第では通行義務が無いと解釈できうる自転車道もあるし、そもそも自転車道の存在に気が付かないとか、自転車道の通行義務があることを知らないケースもある。
免許制ではない自転車に対し、自転車道の通行区分違反を取れるのか?という疑問も出てくる。

 

道交法における【自転車道】の法的意義。
近年、自転車道を道路に作ろうとする動きがそれなりにあって、ある意味では歓迎だしある意味では迷惑な部分もあるのが本音。 その話は置いといて、道路交通法上の自転車道の解釈については、正直危うい部分が大きいと思っています。 道路交通法上の【自転車...

 

自転車の車間距離については、実態としては事故でも起きない限り問題視されていないのが実情なのかもしれません。
同意書を交わしたとしても、法的には何ら効力がない可能性が高いので、無意味。

 

車間距離の規定は道交法、つまりは特別刑法の規定なので、同意があったことと違法かどうかは何ら関係ありません。
事故が起きてしまった場合の当事者間の損害賠償請求権も同意書で消滅するとは思いませんが、そんなことよりも、そもそも危険性があることをしないというのが鉄則なんでしょうね。




コメント

  1. カモがネギしょってる より:

    公道で極端に車間を詰めるとすれば道交法に引っ掛かるので、警察に行って車間距離の法を守らなくても良いという同意書の作成が必要になりますね。同意してくれるとは思えませんが。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      それは絶対に無理でしょうね。
      犯罪を見逃す契約を結びたいと言ったら、危険人物とされて監視対象になるかもしれませんw

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