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道路上の信頼の原則。

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法理の一つなんですが、信頼の原則というものがあります。

 

信頼の原則を表現すると、このようになります。

交通関与者は、ほかの交通関与者が交通規則その他の交通秩序を守るであろうことを信頼するのが相当な場合には、たとえほかの交通関与者の不適切な行動のために結果を発生させたとしても、これに対する責任を負わない

うーん、これだとまだわかりづらいかも。
簡単にいうと、予見可能性の範囲を限定するための考え方だと思えばいいです。
道交法では様々な注意義務がありますが、それは予見できなくね?というところまで予見して運転しろというのもおかしい。

 

例えば70条には安全運転義務が定められています。

(安全運転の義務)
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない

状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法とありますが、その範囲は必ずしも明確ではない。
36条4項には、交差点での関係性が定義されています。

4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

【特に注意】というのも、どの範囲まで注意義務があるのか不透明。
それこそ、横断歩道を渡り切ったように見えたヨボヨボの爺さんが、実は50m5秒台の俊足の持ち主で、突如横断歩道をUターンするように戻ることも想定して注意せよと言われたら、永久に通行できませんよね。
【出来る限り】というのも、どこまでが回避義務なのか、範囲が明確とは言えない。
明確ではない場合に、恣意的に拡大解釈される恐れもあるわけです。
こういうのに対し、予見可能性や回避義務の範囲を限定しようとするのが信頼の原則です。

 

こういうのは実例で説明したほうがわかりやすい。

信頼の原則を認めた事例

まずは最高裁判例、平成3年11月19日判決。
民事の損害賠償です。

右折待ちの車両がいるにもかかわらず、その右側をセンターラインを越えて進行して、対向直進車と衝突した事例。
要は直進車側から見て、右折待ちの後ろから飛び出てくる車両がいることを予見できるのか?というところが争点になっています。

道路交通法三七条は、交差点で右折する車両等は、当該交差点において直進しようとする車両等の進行妨害をしてはならない旨を規定しており、車両の運転者は、他の車両の運転者も右規定の趣旨に従って行動するものと想定して自車を運転するのが通常であるから、右折しようとする車両が交差点内で停止している場合に、当該右折車の後続車の運転者が右停止車両の側方から前方に出て右折進行を続けるという違法かつ危険な運転行為をすることなど、車両の運転者にとって通常予想することができないところである。前記事実関係によれば、上告人は、青色信号に従って交差点を直進しようとしたのであり、右折車である郵便車が交差点内に停止して上告人車の通過を待っていたというのであるから、上告人には、他に特別の事情のない限り、郵便車の後続車がその側方を通過して自車の進路前方に進入して来ることまでも予想して、そのような後続車の有無、動静に注意して交差点を進行すべき注意義務はなかったものといわなければならない。そして、前記確定事実によれば、本件においては、何ら右特別の事情の存在することをうかがわせるものはないのであるから、上告人には本件事故について過失はないものというべきである。

 

最高裁第3小法廷 平成3年11月19日(民事、損賠賠償)

これは当たり前のこと、と言いたいところなんですが、原審(高松高裁)では直進車にも注意義務があったとして過失を認めていました。
上告審では、直進車はこんなもん予見できないし無過失ということになっています。

 

一般的に、右直事故の場合は直進車にも過失が付きます。

これは理由があります。

根拠法 条文
直進車 36条4項 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
右折車 37条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

直進車にも注意義務があるので、無過失にはなりません。
最高裁判例のケースでは、右折待ちの車の後ろ、第二列から突如突破してきたわけで、そんなもんを予見しろというほうが無理。
これが信頼の原則というものです。

 

サッカーの試合だったら、突如飛び出してきてゴール!でしょうけど、道路上では第二列から飛び出しは許されませんし誰も予見できません。

 

続いては信号機と信頼の原則の判例。

本件の事実関係においては、交差点において、青信号により発進した被告人の車が、赤信号を無視して突入してきた相手方の車と衝突した事案である疑いが濃厚であるところ、原判決は、このような場合においても、被告人としては信号を無視して交差点に進入してくる車両がありうることを予想して左右を注視すべき注意義務があるものとして、被告人の過失を認定したことになるが、自動車運転者としては、特別な事情のないかぎり、そのような交通法規無視の車両のありうることまでも予想すべき業務上の注意義務がないものと解すべきことは、いわゆる信頼の原則に関する当小法廷の昭和四〇年(あ)第一七五二号同四一年一二月二〇日判決(刑集二〇巻一〇号一二一二頁)が判示しているとおりである

最高裁判所第三小法廷 昭和43年12月24日(刑事、業務上過失致死傷、業務上過失傷害)

これは当たり前のことですが、赤信号を無視して交差点に進入する車がいることまで予見する注意義務なんて無いですよという判例です。
ただし【特別な事情が無い限り】と限定しているので、状況次第では変わりうるということですね。

 

ここで話が少し断線します。
大津の園児事故ってあったじゃないですか。
交差点で直進車と右折車が衝突し、直進車が吹っ飛んで歩道にいた園児に当たり死亡事故に至った件。
右折車は直進車を妨害してはいけない義務があって(37条)、直進車は注意義務がある(36条4項)。
右折車は既に実刑で確定していますが、直進車は一度不起訴処分で決まった後、検察審査会に不服申し立てされています。

これもある種の信頼の原則じゃないかと思うのですが、直進車の注意義務がどこまであるのか?についてはなかなか難しい。
状況次第で変わるんでしょうけど、無制限に注意義務があるわけではなく、徐行を求められているわけでもない。

4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意しかつできる限り安全な速度と方法で進行しなければならない

状況に応じた出来る限り安全な速度と方法なので、ケースバイケースでどうすべきか考えましょうということになるわけです。
自転車が直進の場合、対向車からすると二輪車の距離感がつかみづらいという問題もあるので、ロード乗りが事故を避けるには直進時も念のため減速しておいた方が確実。
これは過失がどうのこうのというよりも、二輪車は事故に遭うと爆死する可能性が極めて高いという実態を避けるということです。

 

右直事故を避けるため、ロードバイクがするべきこと。
ヤフーの記事で、オートバイの右直事故が取り上げられていました。 2019年の全国の交通事故死者数は3215人。その中で2輪車が510人でともに減少傾向にあるが、それでも1日当たり約1.4人のライダーが亡くなっている。さらに2輪死亡事故の約3...

 

右直事故は相手の錯覚的要素が大きいのかも。
俳優がUターンして右直事故を起こした件は皆さんご存知のことと思いますが、2019年に全ての車両におけるデータとして、事故原因が【右折時】のものは何とびっくりの3万1488件もあるそうです。 一日あたりに換算すると毎日約86件も起こっている事...

 

ほかにもちょっと面白い事例なんですが、警察官ではない私人が赤旗をもって交通整理している交差点での事例。
最高裁第1小法廷 昭和48年3月22日。

 しかしながら、右Bによる交通規制が、道路交通法四二条にいう交通整理にあたらないことは、原判決の判示するとおりであるが、右Bが北方から本件交差点に進入する車輛に対し赤旗により停止の合図をしていたものである以上、東方から同交差点に進入する車輛の運転者としては、北方から進行してくる車輛の運転者が右Bの停止の合図に従うことを信頼してよいのであつて、北方から進行してくる車輛の運転者が右Bの停止の合図を無視し同交差点に進入してくることまでを予想して徐行しなければならない業務上の注意義務はないものと解するのが相当である。

 

最高裁第1小法廷 昭和48年3月22日(刑事、業務上過失傷害)

なぜ私人が交通整理をしているのかは謎ですが、本来であれば信号機がない交差点なので徐行義務がある。
私人がしている、赤旗を使った停止の合図を無視する車両がいることは予見できず、私人の交通整理を信頼していいのだという判例です。

 

次の判例ですが、本来求められている徐行義務を怠ったとしても、それ自体が罪の成否に影響を与えないと判断された判例。

このようにみてくると、本件被告人のように、自車と対面する信号機が黄色の燈火の点滅を表示しており、交差道路上の交通に対面する信号機が赤色の燈火の点滅を表示している交差点に進入しようとする自動車運転者としては、特段の事情がない本件では、交差道路から交差点に接近してくる車両があつても、その運転者において右信号に従い一時停止およびこれに伴なう事故回避のための適切な行動をするものとして信頼して運転すれば足り、それ以上に、本件Aのように、あえて法規に違反して一時停止をすることなく高速度で交差点を突破しようとする車両のありうることまで予想した周到な安全確認をすべき業務上の注意義務を負うものでなく、当時被告人が道路交通法四二条所定の徐行義務を懈怠していたとしても、それはこのことに影響を及ぼさないと解するのが相当である。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和48年5月22日(刑事、業務上過失致死傷)

徐行義務を怠っていても、それ以上に予見不可能な高速度で交差点に進入してくる車がいるとは想定できないよね?というところで無罪となっています。

本件交差点では、Aは、国道上の交通状況如何にかかわらず、必ず一時停止のうえ安全を確認すべく、本件のように、時速約六〇キロメートルという速度のまま、交差点に突入することが道路交通法上許容されることはありえなかつたのであり、かつ、Aにおいてこのように適法な運転をしていさえすれば、被告人の徐行の有無に関係なく、本件衝突の発生するおそれはまつたくなかつたのであるから、被告人の徐行しなかつたことは、本件の具体的状況のもとでは、なんら事故に直結したものといえず、これをもつて不注意ということもできない。
原判示のような注意を被告人においてしなければならないとすれば、一時停止などを定めた道路交通法の趣旨は没却されることになるといわなければならない。

被告人が徐行義務を怠っていたけど、そもそも相手方が適法な運転をしていれば事故は起きていないよね?というのが判決理由です。

 

左右の見通しが効かない交差点で徐行義務があるのに怠った判例はほかにもあります。

 このような状況の下で,左右の見通しが利かない交差点に進入するに当たり,何ら徐行することなく,時速約30ないし40キロメートルの速度で進行を続けた被告人の行為は,道路交通法42条1号所定の徐行義務を怠ったものといわざるを得ず,また,業務上過失致死傷罪の観点からも危険な走行であったとみられるのであって,取り分けタクシーの運転手として乗客の安全を確保すべき立場にある被告人が,上記のような態様で走行した点は,それ自体,非難に値するといわなければならない。
しかしながら,他方,本件は,被告人車の左後側部にA車の前部が突っ込む形で衝突した事故であり,本件事故の発生については,A車の特異な走行状況に留意する必要がある。すなわち,1,2審判決の認定及び記録によると,Aは,酒気を帯び,指定最高速度である時速30キロメートルを大幅に超える時速約70キロメートルで,足元に落とした携帯電話を拾うため前方を注視せずに走行し,対面信号機が赤色灯火の点滅を表示しているにもかかわらず,そのまま交差点に進入してきたことが認められるのである。このようなA車の走行状況にかんがみると,被告人において,本件事故を回避することが可能であったか否かについては,慎重な検討が必要である。

(中略)

そうすると,上記②あるいは③の場合のように,被告人が時速10ないし15キロメートルに減速して交差点内に進入していたとしても,上記の急制動の措置を講ずるまでの時間を考えると,被告人車が衝突地点の手前で停止することができ,衝突を回避することができたものと断定することは,困難であるといわざるを得ない。

 

最高裁判所第二小法廷 平成15年1月24日(刑事、業務上過失致死傷)

徐行義務違反という違反行為があっても、徐行していても事故を回避できなかった可能性があるよね?ということで無罪になっている判例です。
運転者に徐行義務違反(注意義務違反)を認めて非難しつつも、回避不可能ということ。

 

信頼の原則というのは、このように予見可能性と回避義務を限定的に見る役目になります。
無制限に、

いろんな人
いろんな人
時速70キロで信号が無い交差点に進入する車も予見すべきだよね!
読者様
読者様
対向車が実は酔っ払いで、フラツキ走行する可能性も予見すべきだよね?
いろんな人
いろんな人
左折ウインカーを出している車が、実はフェイントで右折する可能性も予見すべきだよね?
読者様
読者様
歩道を普通に歩いているヨボヨボおじいさんが、突如自慢の俊足を披露してUターンし横断歩道を突破する可能性もあるよね?

 

予見性とか回避義務を無制限に認めると、あり得ないような事態が起こる。
横断歩道から遠ざかる方向に歩いている、杖を突いたおじいさんが、実は50m5秒台の俊足の持ち主で、Uターンして横断歩道を突破する可能性も予見すべきだ!とか言われても、無理がある。

 

当たり前ですが、無罪というのは刑事事件の話なので、民事上の過失がどうなるかは別問題です。
無罪だから無過失となるとも言えませんし。

 

結構勘違いしやすい点なんですが、刑事事件では道交法違反があったかどうか、自動車運転処罰法に反する過失があったかが争点になります。
民事で損害賠償を請求するときは、民法709条により不法行為責任を問うわけで、必ずしも道交法違反だけが過失となるわけでもありません。

 

信頼の原則が適用されない事例

こちらは刑事事件の最高裁判例です。

4歳の幼児がバスを降車後、バスの後方から道路に飛び出して横断しようとして対向車に撥ねられてしまった事件です。
この事故については、信頼の原則を適用すべきではないとしています。

記録によれば、被告人がバスを下車した被害者の姿を衝突の直前まで発見していなかつたことが認められるし、また、幼児のとび出しを予見しうべき具体的状況が存在したことを認めるに足りる証拠もないのであるから、原審が、被害者が四才の幼児であることを理由にして、信頼の原則の適用を否定したのは、正当ではない。しかし、記録によれば、本件事故現場付近の道路および交通の状況からみて、バスを下車した人がその直後において道路を横断しようとすることがありうるのを予見することが、客観的にみて、不可能ではなかつたものと認められるのであるから、かりに、被告人が右のような交通秩序に従わない者はいないであろうという信頼をもつていたとしても、その信頼は、右の具体的交通事情からみて、客観的に相当であるとはいえないというべきである。したがつて、本件において信頼の原則の適用を否定した原判断は、その結論において、相当であるといわなければならない。

 

最高裁第3小法廷  昭和45年7月28日(刑事、業務上過失致死)

一般的に子供と高齢者には信頼の原則が適用されないという面もあるのですが、最高裁はそこについては否定。
否定した理由は、【幼児のとび出しを予見しうべき具体的状況が存在したことを認めるに足りる証拠もない】からですね。

 

その上で直後横断が予見不可能ではなかったということで信頼の原則を否定しています。

 

ちょっと変わった事例ですが、時差式信号機だけど【時差式】と表示が無い場合、自分が対面している信号機から対向車の信号機を信頼してもいいのか?という判例もあります。

所論は,本件交差点に設置されていた信号機がいわゆる時差式信号機であるにもかかわらず,その旨の標示がなかったため,被告人は,その対面信号と同時にA車の対面信号も赤色表示に変わりA車がこれに従って停止するものと信頼して右折進行したのであり,そう信頼したことに落ち度はなかったのであるから,被告人には過失がないと主張する。しかし,【要旨】自動車運転者が,本件のような交差点を右折進行するに当たり,自己の対面する信号機の表示を根拠として,対向車両の対面信号の表示を判断し,それに基づき対向車両の運転者がこれに従って運転すると信頼することは許されないものというべきである。

 

最高裁判所第三小法廷 平成16年7月13日(刑事、業務上過失致死)

時差式信号に【時差式】と表記する義務もないし、自分が対面している信号機から対向車の信号機もそうだろうと信頼することは許されないという判決です。
個人的にはそんなところを信用して右折開始とか怖すぎるのですが、これも法学者の中では意見が割れるようです。
こちらのリンク先に、解説があります。

 

https://core.ac.uk/download/pdf/144438818.pdf

 

あえてこの判例を使ったのは、こういうところから信号機を推測して右折進行するドライバーもいるわけで、青信号だから安全に渡れると思ったら事故に遭うリスクはゼロではないということです。
自転車の場合、車と衝突すると爆死するか大怪我するかのどちらか。
自分が青だし、直進車優先の原則だと思って安全に進行したつもりが、対向右折車はロードバイクが赤信号で停止するだろうと勝手に思い込んでいる可能性もあるということです。

対向右折車側は、赤信号になるところだから対向車も赤信号だろうと勝手に決め付けている。
実態は時差式信号で、対向右折車は赤になりかけ、直進ロードバイクは青ということも十分あるわけですし。

刑事と民事の差

信頼の原則ですが、刑事と民事では意味合いが変わります。
刑事では、被告人の利益を守るためにある。
民事では、どちらかというと被害者の過失を減じる目的の意味合いが強いと思います。

 

民事と刑事では、民事のほうが注意義務が大きいため、民事のほうが信頼の原則の適応範囲は狭くなります。
刑事は国家が罰則を与えるわけで、注意義務も民事よりは限定的。
ちょうどこういう報道がありました。

おととし自転車で転倒し、道路に倒れこんだ当時87歳の男性を車ではね、そのまま逃走しました。

男性はその後、病院で死亡しています。

9日開かれた判決公判で、静岡地裁の鈴木悠裁判官は「自転車の転倒を瞬時に予知できた可能性は認められない」と過失運転致死については無罪としました。

一方でひき逃げについて「命が奪われたことは軽く見ることはできない」と指摘し、執行猶予付きの有罪判決を言い渡しました。

 

Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。

過失致死については無罪になっていますが、民事上では過失がゼロとなるわけでもありません。

 

民事責任って、それこそ自転車が転倒することも予見して側方距離を取るべきだったみたいな話になる可能性もあります。

信頼の原則というよりも

本来この信頼の原則というのは刑法上の概念で、それが民事でも適用される傾向にはありますが、結局のところ事故が起きてから問題になるだけのこと。

 

自転車の場合、事故が起きると大怪我するか爆死します。
生身の人間と金属の塊がぶつかれば何が起こるかはわかることですし、誰でもわかるシステムです。

 

事故って大怪我したり、死んでから信頼の原則で無過失だとか言い出しても始まらない。
相当な注意を持っていないと、自転車は爆死するシステムになっています。

 

結構勘違いしやすいポイントなんですが、相手方に道交法違反行為があったとしても、こちら側の安全運転義務や前方注視義務などは消えません。
要は予見可能なのか、回避不可能な状況なのかなど総合判断されるもの。
通常予見できないようなことまで注意するというのは無理がある。

 

また、子供や高齢者相手には信頼の原則が通用しないことにもなっているので、結局のところ相当な注意を払っていないと、事故を回避することは出来ないということですね。

ちなみにですが、歩行者が横断歩道を赤無視して通過して、ロードバイクが青信号で進入して衝突しても、過失割合はゼロにはなりません。
歩行者は交通弱者だという観点から信頼の原則が働かないという面もありますし、そもそも車両には前方注視義務や安全運転義務がある。

 

どこまでが通常予見できるのか?ということと、回避可能性がどこまであるのかを限定するのが信頼の原則。
それこそ、徐行義務を怠っても回避可能性を否定する判例もある。

 

Aが違反が無く、Bに違反があった場合、Aの過失は問われないということでもない、みたいな簡単な原理なのかというと、ちょっとそれも違う。
加害者側の過失が顕著なときには、被害者に軽微な違反があったとしても無過失になる可能性もゼロではない。
そもそも、ロードバイクの場合は事故に遭うと被害が甚大なのは予想できるので、過失割合がどうとかよりも、事故に遭わないためにはどこまで予測しておくべきか?という観点のほうがいいと思います。

 

予見不可能な違反とか、回避不可能な違反の場合はしょうがないよねで済ますのか、判例上よりもはるかに高い注意をもって乗るのかの違い。

 

過失割合がどうとか、犯罪なのかとかも大切なんですが、そもそも事故に至らないようにするにはどうすべきなのかなんでしょうね。
下記アイテム系を装備するのも大切だけど、結局のところ普段から観察しておかしな動きをする車両には注意するとか、そういうところなんでしょうね。

 

交通事故の被害者になってしまった場合、相手方保険会社は

読者様
読者様
動いていたから90:10で。

動いていたからというのは、安全運転義務を指すのですが、こういうのはちゃんと聞けば一瞬で解決します。

管理人
管理人
この事故について具体的にどのような注意義務があり、どのような回避行動を求められていたのですか?

 

70条の安全運転義務違反については、以下のような判示があります。

道路交通法七〇条の安全運転義務は、同法の他の各条に定められている運転者の具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられたものであり、同法七〇条違反の罪の規定と右各条の義務違反の罪の規定との関係は、いわゆる法条競合にあたるものと解される(最高裁昭和四五年(あ)第九五号同四六年五月一三日第二小法廷決定・刑集二五巻三号五五六頁参照)。すなわち、同法七〇条の安全運転義務は、他の各条の義務違反の罪以外のこれと異なる内容をもつているものではなく、その構成要件自体としては他の各条の義務違反にあたる場合をも包含しているのであるが、ただ、同法七〇条違反の罪の構成要件に該当する行為が同時に他の各条の義務違反の罪の構成要件に該当する場合には、同法七〇条の規定が同法の他の各条の義務違反の規定を補充するものである趣旨から、他の各条の義務違反の罪だけが成立し、同法七〇条の安全運転義務違反の罪は成立しないものとされるのである。
つぎに、同法七〇条の安全運転義務違反の罪(ことに同条後段違反の罪)と他の各条の義務違反の罪とは、構成要件の規定の仕方を異にしているのであつて、他の各条の義務違反の罪の構成要件に該当する行為が、直ちに同法七〇条後段の安全運転義務違反の罪の構成要件に該当するわけではない。同法七〇条後段の安全運転義務違反の罪が成立するためには、具体的な道路、交通および当該車両等の状況において、他人に危害を及ぼす客観的な危険のある速度または方法で運転することを要するのである。したがつて、他の各条の義務違反の罪の過失犯自体が処罰されないことから、直ちに、これらの罪の過失犯たる内容をもつ行為のうち同法七〇条後段の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすものについて、それが同法七〇条後段の安全運転義務違反の過失犯としても処罰されないということはできないのである。

 

最高裁判所第一小法廷 昭和48年4月19日

これは刑事事件での判示なので罪となってますが、民事でも安全運転義務違反がどうのこうのと保険会社から言われます。
動いていた以上、安全運転義務があるのだと。

 

けど70条違反が成立するには、他人に危害を及ぼす【客観的に危険といえる速度か方法】が必要なわけで、漠然と安全運転義務違反だと言われても、客観的な危険性を指摘できないなら70条違反が成立しない。
だから具体的にどんな予見性があって、どんな回避行動が求められていたのかを説明できない限りは成立しないわけです。

 

普通に過失割合はゼロに出来ます。
弁護士とかも特に要りませんし、判例が無くても0:100に出来ますが、このあたりは道交法をきちんと理解していないと難しいかもしれません。
勉強しておくといつかいいことありますよ、マジで。

 

【動いていたから】と過失がつくわけではない話。
交通事故に遭った時に、加害者側の保険屋から示談交渉があるかと思います。 明らかに相手が悪いような案件でも、 こういう話が出てくることは正直多いです。 動いていたから過失?というのは、厳密に言うと間違いなのですが・・・ 例えば 例えば、十字路...

 

民事の損害賠償は道交法違反だけにとどまらずに民法の不法行為責任を追及されるわけで、道交法違反が無かったことが無過失となるわけでもありません。
なのでややこしいところですが、

 

・どこまで相手方の違反行為を予見できるのか?
・回避義務がどこまであるのか?

 

こういうことを考えれば済む。
ただそれだけの話です。

 

まあ、事故に遭わないように普段から観察して注意せよということですね。
ザックリ言うと。




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