自転車を後ろから、バイクで足蹴りするという愚行。これは何の違反になるのか?

結構前のニュースですが、こういうのがありました。

https://www.news24.jp/articles/2021/01/19/07806355.html

これ、実際にこういう現場を見てしまったことがあります。
よくもまあ、そんな危険プレイをするなと・・・

リンク先の記事でもありますが、

道路交通法違反になりうるような危険な行為

微妙に濁されているのもポイントというか。
この事例では、恐らくスピードが50キロとか出ているのでは?とあります。

意外と難しい安全運転義務違反

こういうトリッキーなプレイに関しては、70条の安全運転義務違反に問われることになります。

(安全運転の義務)
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作しかつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない

なりうるような、と濁されているわけですが、70条違反はあまりにも抽象的な規定なので、どこからが違反と言えるのかが明白でもない。
立法当時の国会でも、この条文の濫用はダメですよという決議がなされているくらい。
何でもかんでも当てはめると、警察が恣意的に捕獲するための材料にされかねませんし。

難しいポイントは、【危害を及ぼさないような速度と方法】という部分。
実際に危害を及ぼしたかどうかではなく、及ぼす可能性で成立する。
速度と方法というのもポイント。

というのも例えば住宅街で、時速100キロで走行した場合、普通に危険ですよね。
けどこの条文で摘発することは出来ず、単に速度超過の違反のみになる。

70条安全運転義務は、ほかの条文で規定されている違反行為には成立しないという大原則があります。

道路交通法七〇条のいわゆる安全運転義務は、同法の他の各条に定められている運転者の具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられたものであり、同法七〇条違反の罪の規定と右各条の義務違反の罪の規定との関係は、いわゆる法条競合にあたるものと解するのが相当である。したがつて、右各条の義務違反の罪が成立する場合には、その行為が同時に右七〇条違反の罪の構成要件に該当しても、同条違反の罪は成立しないものと解するのが相当であるから、前記のような事実関係のもとにおいては、道路交通法四二条、一一九条一項二号の罪のみが成立し、同法七〇条違反の罪は成立しないものといわなければならない。

最高裁判所第二小法廷 昭和46年5月13日

そして客観的に危険といえる状況も必要。

七〇条後段の安全運転義務違反の罪が成立するためには、具体的な道路、交通および当該車両等の状況において、他人に危害を及ぼす客観的な危険のある速度または方法で運転することを要するのである

最高裁判所第一小法廷 昭和48年4月19日

時速30キロ程度であっても、その方法と速度の組み合わせなら客観的に危険だよね?というなら違反が成立する。
逆に、こういうバイクで足蹴りして自転車を押す行為が、時速10キロ程度でも成立するのかは怪しいですが・・・

70条でいうところの速度というのも、速度超過の違反があるかどうかの話でもなくて、その方法と速度でブレーキやハンドルをきちんと操作できるのか?というところになってくるわけです。

安全運転義務違反とされるのは、おおよそこのあたり。
・前方不注意
・操作不適(ブレーキとアクセルの踏み間違いなど)
・安全速度違反
・漠然運転、動静不注視

安全速度違反というところがポイントなんですが、例えば最高速度50キロ道路でも、道路の状況次第では40キロで走行するのが危険にもなりうる。
70条では道路状況に応じて安全な速度と方法で運転せよとなっているので、速度超過が無くても成立します。

50キロ制限道路で渋滞しているときに、狭いところを時速30キロで通過すれば、【安全な速度と方法】ではないかもしれない。
制限速度内だし追い抜き自体は違反ではないにしろ、ほかの条文で明確に禁止されていなくても危険であるなら違反と言える可能性があるけど、客観的に危険といえることが必要になってくる。

信号無視して突破すれば危険だけど、違反としては信号無視になる。
ロードバイクがドラフティングと称してかなり車間を詰めて走行していれば危険ですが、これも違反としては車間距離保持義務しか成立しない。
逆走自転車は危険ですが、違反としては左側通行義務違反しか成立しませんし。

法条競合時は多条優先の原則があるからですね。

危険行為はマジ勘弁

ずいぶん前に、一台の原付に4人くらい乗っているのを見たことがあって、その時は私が疲れていて残像なのかと思ったほどでした。
けどこれも乗車定員の違反が成立するだけなのかと。
危険ではありますが。

冒頭で挙げたリンクについても、実際に見かけたとして即座に違反と言えるのかは微妙なんだと思います。
バイクのほうは行政処分で反則金を課すことは出来るでしょうけど、自転車のほうを起訴できるのかは怪しい。

毎年、箱根駅伝の最後尾ってこんな感じです。

誰がどう見ても並走違反ですが、事実上はお咎めナシ。
交通規制は最後尾の白バイまでしか掛かっていませんが、この方々に左側端通行だとか車間距離だとか言い出すと、大渋滞になるからなのかなと思いますが、警察も自転車に対してはホント寛容ですよね。
違反だからと即座に摘発されるわけでもないわけですが、中には恐ろしい考えを持って自転車に乗る人もいるので、危険行為はマジで勘弁。

例えばこれ。
原付が自転車を牽引しています。

これが何の違反になるのかというと、牽引違反になるかどうかというところ。

(自動車以外の車両の牽けん引制限)
第六十条 公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、自動車以外の車両によつてする牽けん引の制限について定めることができる。

東京都道路交通規則

(自動車以外の車両のけん引制限)第11条 法第60条の規定により、自動車以外の車両(トロリーバスを除く。)の運転者は、交通の頻繁な道路においては、他の車両をけん引してはならない。ただし、けん引するための装置(堅ろうで運行に十分耐えるものに限る。)を有する原動機付自転車又は自転車により、けん引されるための装置(堅ろうで運行に十分耐えるものに限る。)を有するリヤカー1台をけん引するときは、この限りでない。

交通の頻繁な場所に当たるかどうかの問題が出るわけで、即座に違反を取るのかもやや怪しい。
けどまあ、交通が頻繁ではない道路であれば構わないとも取れるわけで・・・

面倒なのは、法で明確に禁止していないならOKと捉えるような人たちがいることですよね。
自転車に吹き流しをつけて走行すれば、後輪に絡まって爆死する恐れもあるし、外れたら後続車の車輪に巻き込んで爆死する恐れも十分ある。
そういうところに違反を取れるのかというと、即座に違反よりも注意指導で済ますことにはなると思いますが。

まあ、危険行為を思いついてしまう人って、道路上にはいます。
不安定な二輪車に乗る身としては、疑わしきは近づかずしかないのかもしれません。
巻き込まれて爆死したくないし。