前提条件について違う見方をしてみると。

まあまあどうでもいい話してもいいですか?笑

前提条件

最近手挙げ横断が、交通の方法に関する教則(道路交通法108条の28)に復活したことについて批判的な人もいるんだなぁと思う今日この頃。
まあ、人それぞれ考え方はあると思うのですが、ちょっと気になったものを見つけて。

横断歩道時に歩行者に渡る意思を表明させる「手挙げ横断マナー」を普及させようという警察の動きがあります(注1)。警察庁の考えでは

手を挙げている=渡る意思がある

手を挙げていない=渡る意思がない

と歩行者に意思表示させることで、自動車の運転手にそれが伝わり、停止率を向上させる狙いなのでしょう。

http://traffic-philosophy.blog.jp/archives/28643429.html

警察は、手を挙げていない人=渡る意思がない、とは発表していないと思うのですが、例えばですよ。

・手を挙げている = 渡る意思をより明確にしている
・手を挙げていない = 渡るかどうかは不明

前提条件を変えると、それ以降の話も全部変わると思うんだよなぁ・・・と。

手を挙げていない=渡るかどうかは不明なので、道路交通法38条に基づき、徐行義務と一時停止義務がある。
けど人間うっかりもあるので、手を挙げることでより車からの被視認性を高めている。

手を挙げていない=渡る意思がない、と解する時点で全部話がおかしくなっているような。

38条の規定では、

当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前で停止することができるような速度で進行しなければならない。

※自転車を省きました。

【横断しようとしている歩行者がいないことが明らかな場合を除き】なので、横断しようとしている人がいるかどうか不明な場合は、【明らかな場合】ではないので徐行義務がある。
ただまあ、判例とか見ていると植物の死角に入って見えないケースとかもあって、本来はそういうことまで想定して徐行義務があるはずなんですがなかなか守られてもいない。

手を挙げることで横断意思をより明確にしただけのことであって、手を挙げていない人=横断意思がないと解する時点で論理の飛躍なんじゃないですかね。

こういうのを見ていて思うんですが

最初に立てた理論が間違っていると、それ以降も全部間違うことは想定されること。
教則でも、手挙げを義務としているのではなくて推奨行動程度にしている。

なので買い物袋で手が塞がっているとか、障害その他で手を挙げることが出来なくても、車の義務は何も変わらない。
けど事故は起こるので、歩行者側の自衛策としては手挙げも有効だよね?というだけのことだと思うんですね。

手を挙げていない=横断意思がない、というわけではないので。

そもそも、教則ってどこまで一般の人に認知されているのかもわかりませんが、手を挙げていない人=渡る意思がない人としたいわけではないので、批判するポイントがずれているようにしか思えない。

ここ何年か警察もやたらと横断歩行者妨害の違反を取ってますが、それが功を奏しているのか多少は改善している、んですかね。
JAFのデータについても、そもそもサンプル数が少ないのであまり意味があるとは思っていないのですが。
取り締まりと広報で明らかな結果を出せているとは思っていない。

それを補完する役目として手挙げ横断の推奨だと思うのですが。。。

執務資料道路交通法解説をみると、38条の解説だけに20ページ以上を割いてます(p365ー387)。
38条1項の規定はこうなっています(便宜上、前段と後段を分けます)。

(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。
この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

38条1項前段は徐行義務で、イエローラインを引いたところが徐行義務の除外規定。
横断しようとする歩行者等がいないことが明らかな場合のみ徐行義務が無くなるわけですが、道交法の解説書では判例を交えて、どのような場合が【明らかではない場合なのか】を検討している。

判例を見ていると、植木や信号機柱の陰から歩行者が突然飛び出てきたとかのケースもあるのですが、本来、植木などでよく見えない環境であれば【横断歩行者がいるかどうかが不明】⇒【明らかな場合ではない】なので徐行義務がある。
後段の一時停止義務の言い訳で多いのは、

いろんな人
いろんな人
一時停止すると後続車に衝突されそうで怖い
いろんな人
いろんな人
一時停止したところ、後続車に衝突された経験がある

これも本来、単に後続車の車間距離保持義務違反(27条)なはずですが、こういう言い訳が横行する。
まあ、事故に遭いたくない気持ちはわからんでもないですが、オカマ掘られた経験がある人にとっては、後続車を信頼できない気持ちもわからんでもない。

解説書でもこれだけページ数を割いて説明するくらい、【明らかな場合】の解釈が割れる恐れがあるわけで、むしろ法改正して除外規定を削除したほうがいいのではないでしょうか?
つまり、横断歩道に近づくときは常に徐行義務があることに変えてしまう。

それか踏切と同じように、信号機が無い横断歩道では常に一時停止義務を課すか。
そんな法整備がされるとは思いませんが、【明らかな場合】というのがドライバーの主観になってしまうから違反が横行するとも言えるので、本気で何とかしたいなら法改正したほうがマシなのかもしれません。
大渋滞が起こるだけでしょうけど、本来の姿でいうならそっちの方が自然なのかも。

道交法ってある種では分かりづらい面と、ドライバーによって恣意的に解釈されうる恐れがあると思ってまして、例えば合図(54条)についても危険回避のためにやむを得ない場合には鳴らしてもいいことになっているわけじゃないですか。
けどそれが具体的にどういう場面を指すのか、具体的にどういう場面ではやむを得ないに該当しないのかがハッキリしない。
ハッキリさせないことで、あえて幅広く解釈できる余地を残しているのかもしれませんが。

判例解釈では、危険回避のためにやむをえない状況について、客観的・具体的な危険が迫っている場合などとなってますが、それがどういう場面なのかはドライバーの良心に委ねているとも言える。
京都府には独自の自転車条例がありますが、どういうのが違反なのか例示列挙している。

(自転車利用者の責務)
第3条 自転車を利用する者は、道路交通法その他の法令の規定を遵守するとともに、次に掲げる事項を励行すること等により自転車の安全な利用に努めなければならない。
(1) 交差点内を通行しようとするときは、必要に応じ一時停止又は徐行をするなど車両及び歩行者に注意して運転をすること。
(2) 携帯電話、イヤホン又はヘッドホンを使用しながら運転をしないこと。
(3) 歩行者の通行の頻繁な歩道及び路側帯(以下「歩道等」という。)では自転車を押して歩くこと。
(4) 歩行者が通行している歩道等においては、傘を使用しながら運転をしないこと。
(5) 歩道等を通行する歩行者に対し、自己の進路を確保する目的で警音器を使用しないこと。
(6) 前各号に掲げるもののほか、他人に危害を及ぼし、又は迷惑をかけるような運転をしないこと。
2 自転車を利用する者は、その利用する自転車を定期的に点検し、必要に応じ整備をするよう努めなければならない。

具体例を挙げつつも、6で具体的に挙げていない事項についても違反になりうることを示しているのですが、道交法ももうちょっと具体例を挙げた例示列挙を使ったほうが分かりやすいのではないですかね。
38条の【明らかな場合】についても、ドライバーの主観で明らかだと思って徐行もしないわけで、客観的に明らかとは言えない場合にのみ警察が取り締まる。
具体的にどういうのが明らかで、どういうのが明らかではないなのかを列挙するとか、そもそも信号機が無い横断歩道では常に一時停止義務を課すとか、法律自体でももうちょっとできる余地があるのでは?と思う。

実際のところ警察が常に取り締まることも出来ないわけですし、手挙げ横断に反対なのであれば、むしろ法改正して分かりやすくしたほうがいいんじゃないかと。
でも、信号機が無い横断歩道で常に一時停止義務を課すとどうなるんでしょうかね。
こういうのこそ、電動キックボードのように期間限定で実証実験しても面白いと思うのですが、さすがに難しいんですかね。
電動キックボードの実証実験をするよりもよっぽど有意義と言ったら怒られそうですが、一定の周知期間を設けて、信号機が無い横断歩道では全ての車両が一時停止する義務がある(除外規定なし)という実験は出来ないのでしょうか?

ついでに38条の解釈

38条の話。

(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

マーカーで引いたところの解釈について判例があります。

車両等が当該横断歩道の直前に到着してから、その最後尾が横断歩道を通過し終わるまでの間において、当該車両等の両側につき歩行者との間に必要な安全間隔をおいた範囲をいうものと解するのが相当であり、歩行者との間に必要な安全間隔であるか否かは、これを固定的・一義的に決定することが困難であるから、具体的場合における当該横断歩道付近の道路の状況、幅員、車両等の種類、大きさ、形状及び速度、歩行者の年齢、進行速度などを勘案し、横断歩行者をして危険を感じて横断をちゅうちょさせたり、その進行速度を変えさせたり、あるいは立ち止まらせたりなど、その進行を妨げるおそれがあるかどうかを基準として合理的に判断さるべきである。

福岡地裁 昭和52年9月14日

ややこしいのは【その進路の前方】。
これ、車両の進路の前方なのと、あくまでも歩行者と衝突しないための規定なので、解釈としては車幅を指しているんですね。
つまりは車幅+歩行者との安全間隔を求めている。

執務資料道路交通法解説だと、この安全間隔を1mとしているのですが、さすがに1mということは無いと思う。
この1mというのは、要は車が横断歩道を通過し終わった瞬間に、横断歩道上にいる歩行者との距離が1mという意味。

警視庁道交法だと

歩行者が自動車の前方の左右いずれかの側に5mくらいの距離に接近して来れば、それは進路の前方を横断しようとする歩行者である。

解釈がいろいろ割れているようなのでややこしいですが、信号機が無い横断歩道があるときは徐行すべきだし、渡ろうとしている歩行者がいるときは一時停止しておけば、事故リスクはかなり下げられる。
法解釈については、読めば読むほど難解な部分があるのですが、違反かどうかという観点は置いといて、事故を起こさないためには徐行して停止しておけばいいというのが鉄則なんでしょうね。

38条の大原則を判示している判例もあります。

歩行者は、車両等がその横断歩道に近づいてきていても、これを横断しても差し支えないものであり、これを保護する目的で同規定は車両等の運転者に対し一定の状況、すなわち歩行者が横断し、又は横断しようとする場合には、横断歩道直前で一時停止すべきことを義務付けている。
車両運転者としては一時停止しなければならない状況の発生をあらかじめ明確に予知することは困難であるから、一時停止を必要とする状況の発生が予想される状態のもとにおいては、その状況がいつ発生するか分からないことを念頭において、これを備え速度を調節すべきことを同規定は、その前段に定めている。したがって、同規定から車両運転者が速度調節を必要としないのは、そのような状況発生の蓋然性が認められない場合、すなわち自車が横断歩道の手前に接近した際に、その横断歩道の進路左側部分を横断し、又は横断しようとする歩行者のないことが明らかな場合に限るというべきである。そして同法が横断歩道を横断しようとする歩行者保護を重視する趣旨からすれば、右蓋然性は必ずしも光度のものである必要はなく、自動車運転者はその蓋然性が存する以上、その事態の発生を考慮に入れて横断歩道を通行し、事故の発生を未然に防止すべき義務を負う。

福岡地裁宮崎支部 昭和55年4月15日

ただまあ、実際には車が来ているのに横断開始すると死んでしまうんですよね。
法律を守らないドライバーが悪いという点は法が裁くわけですが、死んでしまえば意味がないわけで、法的義務はないものの歩行者も自衛策を講じないと酷い目に遭うよ、ということなんだと思うんですが。

法律は法律で大事ですが、その法律を信じて行動すると痛い目に遭うことも多いのが道路交通法。
信号機が無い横断歩道で車が猛スピードで突っ込んできているのに、法律通りに横断開始すればどうなるかは明白ですし。

けどまあ、手を挙げていない=渡る意思はない、と解釈するのはさすがに違うと思う。
単に、より明確に渡る意思を示しただけのこと。

法律を守れ守れというのは簡単ですが、どんな法律でも守らない奴は多々いますからねぇ・・・

山梨県甲州市勝沼町の国道20号で、交通取り締まり中だった警察官が、公用車を運転していた県警交通部の50代の男性警視に対して、速度違反により停止を求めました。
しかしこの警視は、警察官に「別の取り締まりをしている」などと話し、摘発に応じず、警視は現場からそのまま車で走り去りました。
その後の日下部警察署の調べで、警視が速度違反をしていたことが改めて判明し、違反切符が交付されたということです。
なお、この日は秋の全国交通安全運動期間中でした。

https://news.yahoo.co.jp/articles/cfea971508547e24eb32233ad5d7471da27f4292

ネタなのか?と思うレベルの報道ですが、交通部の警視が守らない上に言い訳して逃走ですからねぇ・・・
これで一般人に守れ守れと言っても説得力もないし、そういうドライバーもいるんだという前提で道路上を歩かないと危険。

どうでもいい話ですが今日、原付をノーヘルで、ナンバープレートを隠し、スマホを操作しながら乗っているアホをみましたw
既に多数の違反を犯している奴に38条守れと言ったところで意味があるとも思えないですが、守らない奴を前提に生きていくことって大切。




コメント

  1. 琵琶湖の東側住民の より:

    私は手挙げ横断推奨に、どちらかといえば反対です。その理由がまさに、冒頭のHPみたいに「手を挙げてなければ渡るつもりがない」と勘違いするドライバーがいそうだからです。
    「手を挙げて無くても止まらなければならない」の周知徹底とセットじゃないと、変なトラブルが起きそうでなりません。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      これなかなか難しいのですが、判例を見ていると【車両が原則や一時停止しなくても、歩行者は横断を開始して構わない】みたいに書いてあるのもあります。
      確かに法律上はそうですが、それでは事故が減りませんし。

      そもそもなんですが、常時一時停止を義務化したほうがむしろ分かりやすいのかもしれません。

  2. jukka より:

    佐川は車の後ろに横断歩道は常に止まりますとステッカーを貼っているしそれが全ての車両が守るようになっても大丈夫じゃないですか?

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      私も特に問題は無いと思いますが、道交法改正しないと出来ないので議会がどう見るかはまた別ですし。