どこまでが車道なのか?という判例を検討する。

ウィキペディアの【車道外側線】のページをみると、車道外側線の外側は車道であるとした判例と、車道ではないとした判例で見解が割れていることになってます。

まあ、このようなことがなぜ起こるのか?という話。

車道外側線の外側は車道ではない?

車道外側線の外側は車道ではないとした判例から見てみます。
判例は大阪高裁、平成14年1月25日(2審)。
まずは判決から、事件の概要の一部を。

第2 事案の概要
1(1) 本件は,控訴人らが被控訴人に対し,「被控訴人が普通乗用自動車で,信号機の設置されていない本件事故現場の交差点を左折する際,左後方に対する注意を怠る等したため,同車を左後方から直進して来た控訴人A運転の自動二輪車に衝突させて,同自動二輪車を損壊するとともに,控訴人Aに重傷を負わせた。」旨主張し,控訴人Aに関しては自賠法3条に基づき,控訴人Bに関しては民法709条に基づき,その損害の賠償を求めている事案である。
なお,控訴人Bは,控訴人Aの叔父であり,控訴人Aが乗っていた自動二輪車の所有者として,その価格の賠償を求めている。
(2) 原判決は,「控訴人Aは,通行を禁止された路側帯を,前方注視を怠った状態で進行していたのであるから,本件事故について大半の責任がある。しかし,被控訴人の側にも,渋滞の際,控訴人Aのような運転をする者が少なくなく,予見できない状況とはいえない以上,左折に当たり,自車をできる限り左に寄せて走行させるとともに,左後方に対する注意を尽くすべきであるのにこれを怠った過失があり,3割程度の過失が認められなければならない。」旨判示し,7割の過失相殺をした。
(3) 控訴人らは,7割の過失相殺がされたことを不服として,本件控訴に及び,被控訴人も自己の側に過失はないとして附帯控訴に及んだ。

控訴人の、控訴理由の一部を引用します。

3 控訴人らの控訴理由
(1) 原判決が「控訴人Aが,通行の禁止された路側帯を通行していた。」旨認定したことが誤りであること
ア 道路交通法2条1項3号の4は,路側帯を「歩行者の通行の用に供し,または,車道の効用を保つため歩道の設けられていない道路または道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路部分で,道路標示によって区画されたものをいう。」と規定している。
イ 控訴人Aが進行していた道路の左側には歩道が存在するので,第1車線の車道外側線の左側部分も車道である。したがって,控訴人は,車道左端を進行していたに過ぎないから,何ら過失はなく,原判決には明らかな誤りがある。
(2) 原判決が「被控訴人が本件交差点手前約25.7メートルで左折の合図をした。」旨認定したことが誤りであること

1審判決は、通行禁止の路側帯をオートバイで通行したとしているけど、そもそも歩道があるんだし路側帯ではないよね?というところを控訴理由にしている。

これに対する2審判決がこちら。

オ(ア) ところで,控訴人Aが車道外側線の左側部分を走行していたことは,同控訴人においても自認するところである。
(イ) 同部分の左側(外側)には歩道が設けられているので,控訴人らが控訴理由で主張しているように,同部分が路側帯に当たるとはいえない(道路交通法第2条3の4号参照。)。
(ウ) しかし,「道路標識,区画線及び道路標示に関する命令」第5条別表第3は,車道外側線を「車道の外側の縁線を示す必要がある区間の車道の外側」と定義し,道路交通法17条1項本文は「車両は,歩道又は路側帯と車道の区別のある道路においては車道を通行しなければならない。」旨の通行区分を規定し,さらに,同法2条1項3号は,車道について「車両の通行の用に供するため縁石線若しくは柵その他これに類する工作物又は道路標示によって区画された道路の部分をいう。」旨定義している。これら法令の規定からすると,車道外側線の左側部分は,車道とはいえないことが明らかであり,したがって,車道ではない,このような部分を車両で通行することは通行区分に違反し,特別の場合を除いて許されないものと解すべきである

大阪高裁、平成14年1月25日

まず1審判決は、歩道があるにもかかわらず路側帯だと認定して、オートバイが路側帯通行した違反による過失を認めているわけですよ。

管理人
管理人
裁判所ってこんなもんです。

歩道があるので、路側帯のわけが無いんですよねw

三の四 路側帯 歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によつて区画されたものをいう。

なんでこんな認定されているのやら・・・

ついで2審では、車道外側線が標識令(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令)において、このように定義されていることから、車道外側線の外側は車道ではないと認定している。

別表第三(第五条関係)

種類番号設置場所
車道外側線103車道の外側の縁線を示す必要がある区間の車道の外側

で、2審も間違いなんです・・・
まず、道路交通法の車道の定義。

三 車道 車両の通行の用に供するため縁石線若しくは柵その他これに類する工作物又は道路標示によつて区画された道路の部分をいう。

問題は標識令の規定。
上で書いた車道外側線は別表第3(5条関係)で規定されているのですが、5条は道路標示ではなく区間線の規定。

第五条 区画線の種類及び設置場所は、別表第三のとおりとする。

道路標示の規定は、標識令だと7条になる。

第八条 道路標示の分類は、規制標示及び指示標示とする。

車道外側線は区画線であって道路標示ではないので、2審でも法解釈と事実認定を誤っているわけです。

区画線ですが、主に関係するのは道路構造令。
つまりは道路の作り方の規定。

道路標示は交通規制に関わるので、道路交通法の規定なんですね。

道交法での車道の定義は、縁石など工作物か、道路標示で区画された部分。
なので区画線の規定を持ってきて、車道外側線の外側は車道ではないと認定している時点で間違い。

歩道がある場合、道交法での車道は歩道の縁石まで。
白線までのところは、道路構造令の車道

道交法の車道と、道路構造令の車道は範囲が違います。
あくまでも走り方について争っているので、関係するのは道路交通法のほう。

裁判って、こういうもんですよ。
1審も2審も法解釈を豪快に間違っているという・・・

つまりこういうこと、

1審の裁判長 【オートバイは路側帯を走れないのに走った!過失である!!】

いろんな人
いろんな人
歩道があるから路側帯ではないよねw

2審の裁判長 【車道外側線は標識令で、車道の外側だとしている!だから過失だ!】

いろんな人
いろんな人
区画線と道路標示を混同しているよね。
ちゃんと道交法2条を見なよ。

世の中、こんなもん

ちゃんと判示されている判決はこうなっています。

なお、所論は、車道外側線から歩道までの幅約一・二メートルの部分は、総理府・建設省令第三号「道路標識、区画線及び道路表示に関する命令」第五条、第六条、別表第三、第四により、車道ではなく、単車の通行は許されないから、岩田車の通行可能な部分は約〇・五メートルしかないのに、原判決が、車体幅約〇・五八メートルの原動機付自転車の通行には支障のない状態であったと認定したのは誤りである、と主張する。

しかし、車道外側線は、道路構造令(昭和四五年政令第三二〇号)でいう車道と路肩とを区別するために両者の境界に引かれた区画線であり、その線の外側、すなわち車道外側線と歩道との間の部分も道路交通法上は車道にほかならないから、車両がそこを通行することは何ら違法ではない

大阪高等裁判所 平成3年(う)320号

こちらではきちんと、区画線だということを理解して判決を出している。

ウィキペディアによると、車道外側線の外側が車道なのかどうかについて判例が割れているとあります。
問題なのは判決の中身であって、最初に取り上げた大阪高裁の判例は明確に誤りがある。
なのであまり意味を成さないわけです。

世の中、判例があればそれが全てだと思う人もいるみたいですが、所詮は裁判所なんてこんなもんです。
もちろん、こういう間違いが起こらないようにしっかり主張することも大切。
高裁の場合、口頭弁論は1回限りなので、その中でしっかりとした控訴理由書や答弁書を出さないと、裁判官がおかしな認定をしてしまいますので・・・

1審でどのような主張をしたのかは不明ですが、1審では歩道があるにもかかわらず路側帯と認定されている。
酷い話ですよw

ちなみにこれ、最高裁に上告したのかどうかはわかりませんが、しても受理されるかどうか怪しいんですね。
最高裁で判決がひっくり返る確率なんて1%以下だし、そもそも上告の場合は憲法違反その他、上告受理申立ての場合は法令解釈に重要な事項を含む場合に出来ますが、受理するかどうかは最高裁の一存になってしまう。

上告上告受理申立
高裁判決が憲法に違反する

判決に理由を付せず、又は理由に食い違いがある

法令解釈に重要な事項を含む場合

判例違反

しかも控訴人が求めている額が1億を超えているので、上告提起の印紙代だけで70万弱かかります。
弁護士費用はまた別にかかるわけだし、受理されるかどうか怪しい案件に100万以上突っ込むというほうが難しい。

日本の裁判は実質二審制と言われますが、おかしな判決が出ないように主張しておかないと、こういうケースではつらいですね。
なお、国道43号の交差点手前で事故が起きているようなので、もしかしたら車両通行帯だった可能性もあるといえばある。
ただし信号機が無い交差点とあるので、複数車線であっても恐らくは車両通行帯ではないのではないかと。

車両通行帯だった場合には、外側線は車両通行帯最外側線(規制標示)になるので、その外側を走ると違反です。

事実認定の間違いで過失割合が大きく変化しうるので、ある程度詳しく知っておいたほうがいいわけですが、そもそもは事故が起きないように注意してロードバイクに乗るというほうが正解。
事故さえ起きなければ、こんな細かいところまで知る必要もないですし。

ここ最近ホント疑問に思うんですが、判例を出さない限りは信じないとかそういう人もいる。
判例ってこういう感じで、明らかに間違いと思うようなものも普通にあります。
事実、これを否定する判決が出ている以上はほぼ意味を成さない。
判例を神格化するかのような人もいるし、判例の読み方を分かっていないがためにおかしなところを引用する人もいる。
なんなんでしょうかね?




コメント

  1. 前田亮 より:

    最近凄く疑問だったんですけどめっちゃ広い路側帯に車体の半分以上入れてわざわざ自転車通さないように嫌がらせする奴ら結構いますけどこういう記事見るとやっぱり違反ではないんですね笑
    必死で追い抜いてすぐ左折とかする奴らも多いしホントに愛知に住んでると死亡事故ずっとナンバーワンも心から納得します!笑

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      間違いやすいところですが、路側帯の場合は車の通行は禁止です。
      歩道があって車道外側線との距離が広い場合、という意味だと思いますが、法律上は車道なので通行禁止ではないんですよね。