うーん、微妙な問題だよなと思う件。
サイクリングロードは道交法では歩道と車道の区別が無い道路になる。
そうすると自転車は左側端、歩行者は右側端通行義務がある。
以前、車が自転車を追越すときにクラクションを使ってもいいのかという判例を紹介されていましたが、あれによると自転車に違反行為があるときには警音器を吹鳴してもよい?と解釈できる余地があるじゃないですか。
そうするとサイクリングロードいっぱいに広がって歩いている歩行者がいた場合、道交法では違反なので、ベルを鳴らしてもいいと解釈できるのでしょうか?
法律の専門家ではないんですがw
とりあえず思うことを。
サイクリングロードのど真ん中にいる歩行者
まず法律関係を整理しておきます。
サイクリングロードは、基本的には道交法では道路に該当します(歩道と車道の区別が無い道路)。
荒川だと上流域と下流域で若干意味合いが変わりますが、どちらも道交法では道路とみなして構いません。
正式名称 | 道交法での定義 | |
下流 | 緊急用河川敷道路 | 道路(一般交通の用に供するその他の場所) |
上流 | 埼玉県道155号さいたま武蔵丘陵森林公園自転車道線 | 道路(道路法に規定する県道) |
誰がどう見ても歩道と車道が区別されていないので、歩道と車道の区別が無い道路になります。
その上で、歩行者は右側端通行義務、自転車は左側端通行義務があるとみなせる。
第十条 歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄つて通行することができる。
第十八条 車両(トロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて、軽車両にあつては道路の左側端に寄つて、それぞれ当該道路を通行しなければならない。ただし、追越しをするとき、第二十五条第二項若しくは第三十四条第二項若しくは第四項の規定により道路の中央若しくは右側端に寄るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、この限りでない。
その上で、歩行者の横を通過する際には安全間隔保持義務がある。
第十八条
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。
まずはここまでが法律の前提。
警音器の使用はこれ、ですね。
第五十四条 車両等(自転車以外の軽車両を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、次の各号に掲げる場合においては、警音器を鳴らさなければならない。
一 左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上で道路標識等により指定された場所を通行しようとするとき。
二 山地部の道路その他曲折が多い道路について道路標識等により指定された区間における左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上を通行しようとするとき。
2 車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない。
要は道路標識で警笛鳴らせがあるときには吹鳴義務があるし、それ以外の場合は危険防止でやむを得ないとき以外は鳴らしちゃダメという規定です。
おかしな位置を歩いている歩行者にベルを鳴らしてもいいのか?
以前、車が自転車を追越すときにクラクションを使うことについての判例を紹介しています。
この判例は車両対車両の関係性なので、車両対歩行者の関係性にそのまま適用してもいいのか?という疑問はあります。
車が追い越すときの判例でいうと、こうなってます。
現場は公安委員会によって指定された警音器を吹鳴すべき場所ではなく(道路交通法54条第1項参照)、また同条2項但書の「危険を防止するためにやむを得ないとき」というのは単に安全確保という消極的な理由にすぎない場合ではなくて、危険が現実、具体的に認められるような状況下でその危険を防止するためやむを得ないときというほどの意味であるが、本件におけるように単に交差点付近で先行自転車に接近しこれを追い抜く場合に、状況の如何を問わずに常に必ず警音器を吹鳴すべき義務ありとは右方の趣旨からみて到底考えられないのであり、さらに具体的諸事情を考慮し、そのような状況のもとで危険が具体的に認められる場合にのみ警音器吹鳴義務があるものと考えるべき
いわき簡裁 昭和42年1月12日(刑事)
同2項但書によって警音器を吹鳴すべき義務を負担する場合は、危険が現実具体的に認められる状況下で、その危険を防止するため、やむを得ないときに限られ、本件におけるように先行自転車を追い抜くにあたって、常に警音器を吹鳴すべきであるとは解されず、追い抜きにあたって具体的な危険が認められる場合にのみ警音器を吹鳴すべき義務があるものと解される。
奈良地裁葛城支部 昭和46年8月10日
違反があるから鳴らしてもいい、というのではなくて、具体的な危険性が認められる場合のみ吹鳴してもいいというのが54条2項の但書だとしています。
要は自転車が歩行者を追い抜き、追越しする際に具体的な危険性があるなら鳴らしてもいいと解釈できる余地はあるのですが、18条2項では車両側に安全間隔義務を課していることを考えると、ベルを鳴らしてもいいと言えるほどのタイミングってサイクリングロード上ではほぼないんじゃないですかね。
第十八条
2 車両は、前項の規定により歩道と車道の区別のない道路を通行する場合その他の場合において、歩行者の側方を通過するときは、これとの間に安全な間隔を保ち、又は徐行しなければならない。
で、車が歩行者の横を通るときに、歩行者の挙動がおかしいと思ってクラクションを数回使用してみたという判例もあるにはあります。
サイクリングロードは事実上、歩道に近いような存在にはなっていますが、道交法では車道と歩道の区別が無い道路。
なので歩道とは異なり、歩行者に絶対的な優先権があるわけではないですが、18条2項により車両は歩行者に対して保護義務を課している。
なので歩道とは異なり、ベルを歩行者に絶対に鳴らしてはいけない・・・とまでは解釈できないと思いますが、事実上はほとんど鳴らす必要まではないのではないかと思われます。
実態としていいますが、確かにサイクリングロード上では歩行者には右側端通行義務(左側端も可)があるのですが、実態としてはきちっと寄って歩いているわけではないですよね。
そういう状況でもロードバイクには安全間隔保持義務か徐行義務があるわけですが、殆どのサイクリングロードって狭いので、実態としては安全間隔&徐行義務があると思っていい。
歩行者も歩道の延長上みたいな感覚で歩いているわけなので、下手にベルを使うと違反かどうかはさておいて、トラブルになることもあると思うんですよ。
特に近年、歩行者にベルを鳴らすのは違反だということはそれなりに知れ渡っていますし。
これは厳密にいうと歩道上の話とは言え、事実上は歩道に類する状況になっているのがサイクリングロードですし。
なのでサイクリングロードいっぱいに広がっている歩行者がいて前に進めないときは、
通らせてもらってもいいですか?
この方が無難だと思いますよ。
強いて言うなら、サイクリングロード上でなぜか寝転がっている歩行者がいるときとかにはベルを使うことは違反だとは思いませんが、そもそも寝転がっている時点で何らかの異変が起きていると思うので、救護してあげたほうがいいでしょうし。
例えばですよ。
子供がサイクリングロード上で、周囲に親がいるようにも見えず、なぜかこんな状態で座っていたとする。
こういうのもベルを鳴らしてもいい、という解釈も成り立つのですが、そもそも、この状況で親が周囲に見えずに子供が座っていたら、普通は心配して停車して声掛けますよね。
どうしたの??誰かと一緒に来たの??みたいな。
こんなちっちゃい子にベルで威嚇する必要もないし。
子供が見えた時点で減速しながら周囲の様子をみて、やっぱおかしいと思ったら停止する人のほうが多いんじゃないかと思いますが・・・
迷子??事件??どうしちゃったの??と心配しますわな。
で、サイクリングロードのど真ん中を歩行者が歩いている場合、厳密にいえば10条に違反していると言えますが、具体的客観的危険性があるとまでは言えないので、最徐行して警戒しながら横を通るしかないと思います。
ベルを鳴らすのは・・・違反でいいんじゃないですかね。
サイクリングロードってなぜかロードバイクを嫌って敵視している人もいますし。
徐行もせずにすぐ横を通り抜けるバカどもがいるからなんですが・・・
その結果としてクギのバラマキ事件も起きてますし、トラブルになるのでベルは使わないほうがいいですよ。
問題はこういうのですよね・・・
境川中央ランナー(Sakaigawa Riv. Center Runner)と呼ばれる方ですが、わざと真ん中を走るとか、走るときの腕の振りで殴る真似をするとか、何度も警察が出動していると噂される方。
歩行者の特権を勘違いしているとしか思えません。
こういうのは鳴らしたとしても違反が成立するとは思いませんが、法的にではなくトラブル防止のために鳴らさないほうがいいのは明らかですよね。
鳴らしたら恐らく近づいてきてトラブルになることは予見できますし。
実際にこの方に幅寄せされて落車&大怪我した人もいると聞きますが・・・
減速したり停止したりして、関わらないほうがいいことは明らか。
歩行者が幅寄せする時代なので、暴行罪ではないのかと思うときもありますが、交通弱者という立場を間違った方向で活用している事例なのかと。
ということで回答になっているかどうかはわかりませんが、
・具体的客観的危険性が迫っているときには鳴らしたとしても違反ではない可能性はある
・けど、殆どの場合は違反になることや、トラブル防止のためにはやめたほうがいい
・どうしても前に進みたいけど厳しいときは、声を掛ける
こういうのって拡大解釈して、具体的客観的な危険性だぜ!と鳴らす奴が出そうなのであんまり書きたくはないのですが、事実上、鳴らして問題ないケースってほぼ無いんじゃないでしょうか。
2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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