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交通取締が変わったかもしれない判例。

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判例を調べている段階でちょっと面白いのを見つけました。

 

車の交通違反は、原則として切符を切り反則金を支払えば刑事訴追されないシステム。
赤信号無視で違反切符を切ろうとしたけど、本人は黄色で通過したと思っているので拒否し、パトカーの車載カメラを見せてくれと頼んだけど警察官が「そんなものはない」と答えたことから最高裁まで争われた判例があります。

日本の交通取締理が変わったかもしれない判例

判例は最高裁 令和元年6月3日。

(1) 被告人は,平成27年7月12日午後8時11分頃,大阪府内の道路において,赤色の灯火信号を看過してこれに従わないで,停止線を越えて普通乗用自動車(以下「被告人車両」という。)を運転して進行した。同所付近で交通取締りに従事していた警察官らは,上記事実を現認したことから,直ちにパトカーを発進させて追跡を開始し,被告人車両を停止させた。警察官らは,被告人に対し,赤色信号無視を現認したなどと告げて降車するように求めたが,被告人が,黄色信号だったと主張して違反の事実を認めず,降車を拒否し,運転免許証も提示しなかったこ
とから,被告人を道路交通法違反(信号無視)の現行犯人として逮捕した。
(2) 被告人は,交通取締りの現場や逮捕後に引致された警察署で,警察官らに対し,対面信号機が赤色であったことを示すパトカーの車載カメラの映像(以下「本件車載カメラ映像」という。)の提示を求めたが,警察官らは,その映像が存在するにもかかわらず,そのようなものはないと言って拒否した。警察官らは,被告人を釈放した後,交通反則切符を作成し,被告人に対し,交通反則告知書の記載内容及び交通反則通告制度について説明したが,被告人が「信号は黄色や」などと上記主張を繰り返し,交通反則告知書の受領を拒否したことから,本件を受領拒否事件として処理することとした。
(3) 被告人は,検察官から取調べを受けた際も,対面信号機は黄色であったと主張したが,その後,本件車載カメラ映像を見せられると,赤色の灯火信号を看過した事実を認め,交通反則通告制度の適用を求めた。検察官は,平成28年4月5日,被告人を起訴し,第1審裁判所は,公判期日を開いて審理した上,同年6月14日,公訴事実どおりの事実を認め,被告人を罰金9000円に処する判決を言い渡した。

本人は黄色通過だと思っていて反則告知書の受領を拒否。
パトカーには車載動画はないと嘘をつかれたけど、検察での取り調べでは、車載動画を見せられた。

 

そこで初めて赤信号無視を認めたが、検察対して反則金制度の適用を要望。
検察は今更そんなこと言いだしてもダメだよと、サクッと起訴したという事案です。

 

1審では違反事実を認めたものの、大阪高裁に控訴します。
ここで大阪高裁が画期的な判決を出してしまう。

2 原判決は,被告人が交通反則告知書の受領を拒んだのは,本件車載カメラ映像が存在するにもかかわらず,そのようなものはないと言って提示を拒否した警察官らの不誠実な対応が一因を成しているというべきであるからそのことを棚に上げ,一旦交通反則告知書の受領を拒んだ以上その効果は覆せないなどとして,道路交通法130条2号に当たると解するのは,信義に反するものであり,被告人が本件車載カメラ映像を見せられた後,速やかに交通反則告知書受領の意思を示した本件のような場合は,被告人が一旦交通反則告知書の受領を拒むという事態があったとしても,同号に当たらないと解するのが相当であるとする。

結局のところ、反則告知書を受け取り拒否した理由は、車載カメラがあるにもかかわらず、警察官がそんなものはないと言った不誠実な態度が原因だから、悪いのは警察官の姿勢にあるという判決を出してしまったんですねw
大阪高裁は公訴棄却にした。
つまりは裁判自体を打ち切りにするとしたわけです。

 

これの何が画期的な判決なのかというと、これが通ってしまうと、今後は交通反則を取るときに、運転者が車載動画の提示を求めてきた場合、応じないと問題になる。
けど最高裁が全否定したという判例です。

しかしながら,上記の事実経過のとおり,被告人は,警察官らが交通反則告知書の記載内容及び交通反則通告制度について説明をした際,赤色の灯火信号を看過した事実を否認して交通反則告知書の受領を拒否したのであるから,道路交通法130条2号に該当する事由があることは明らかである。なお,被告人が赤色の灯火信号を看過したことを示す証拠である本件車載カメラ映像の提示を求めたことに対し,それが存在するにもかかわらず,警察官らがそのようなものはないと述べたことがあったとしても,交通反則通告制度においては,同号該当性を否定する事情とはならないというべきである。したがって,第1審裁判所が不法に公訴を受理したものということはできない。

 

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/695/088695_hanrei.pdf

今まで通り、イチイチ車載動画を見せる必要もないし、検察で動画を見せられてから「認めます。反則金でお願いシャス!」というのは認められないということが確定したわけです。

ある意味では画期的なんですが

違反金制度は刑罰ではなく行政処分なので、毎回動画を見せて確認させてとなると時間を食う。
なので警察官の現認で切符を切り、イチイチ車載動画を見せる必要はないことが確認されたとも言えるわけですが、正直なところゴネる人がいるならその場で見せたほうが早いと思うw
大阪高裁が画期的な判決を出したせいで、最高裁まで関わることになるわけですから。

 

けど全ての人が動画を見せろと言ってくるとやっぱり無理が出てくるし、迅速な処理をするという点では今のままが合理的なんですかね。

 

世の中いろんな裁判がありますが、最高裁ってほとんどが上告棄却か不受理。
けどゴネる人に対しては、動画を見せたほうが早いと思う。

 

けど法律上、警察官が車載動画を見せる義務も無いし、反則告知を拒否する以上は起訴されてもしょうがない。
最初に素直に違反事実を認めていれば違反金の支払いで済むものが、前科に変わるのだからなかなかの判例です。

 




コメント

  1. 鉛の巨人 より:

    速度取締は機械の表示やプリントアウトを示して告知していますが、信号無視は基本的に現認警察官の「目」で違反を確認しており、ドライブレコーダーの映像等は訴訟に発展した場合の補強証拠にすぎません。
    この観点からは、ドライブレコーダーの映像を示して告知、というのはちょっと基本から離れすぎた運用になってしまいます。
    将来なんらかの制度として確立し、パトカー内の装置類もそれに対応(誤って別画像を見せない工夫等)ができたならもちろん映像での取り締まりもありえるのでしょうが…

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      この判例はそれなりに注目されまして、大阪高裁判決が確定していたら取締する際にドラレコを見せないと問題になりうるところでした。
      なかなかおかしなところで争いが起きますが、興味深い判例です。

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