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「もらい事故はもらいに行く人がいるから起こる」

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このような意見を言っている方がいらっしゃったので。

うーん、そうなのか??

もらい事故

もらい事故というのは一般に、過失割合が0:100になる事案を指します。
例えばですが、信号待ちで停車中に後方から追突されるとか、歩道を歩いていたら車が突っ込んできたとか。
駐車場に置いといた車に突っ込むのもそうですね。

 

「もらい事故はもらいに行く人がいるから起こる」

 

この前提、本当にそうでしょうか。
もらい事故というのは、もらいに行くから起こるわけではなくて、避けようがないから起こるんだと思います。
民事での過失割合というのは、民法709条による予見義務と回避義務の違反について争っているわけですが、回避可能性が否定される=0:100になる=もらい事故というケースがほとんどなので、避けることが不可能という判断。
頂きたくもないプレゼントを強制的に受け取ったような話。

 

もらいに行くわけでもなくて、勝手に突っ込んでくるのがもらい事故だと思っていたので、ちょっと驚きました。

 

それこそ、先日取り上げたスケボー事故の判例なんて、回避可能性はゼロなのでスケボー側に過失100%ついてますが、横断歩道を赤信号無視してスケボーで高速度進入する人がいることを予見して回避するのは不可能だという判断です。
渋谷区の片側3車線もある道路で、赤信号を無視して高速度でスケボーで突破する奴がいるとは通常予見できませんし、最大限の回避行動を取ったとしても回避できない。

 

優者危険負担の原則。強い人が大きな注意義務と責任を負う。
先日もちょっと上げた事例ですが、 これは優者危険負担の原則なので、しょうがないです。 優者危険負担の原則 簡単にいえば、強者が弱者よりも大きな注意義務を負い、大きな責任を負っているという原則なので、基本強者のほうが過失が大きくなる原理です。...

 

0:100なのでもらい事故の一種ですが、これも「もらいに行く人」という考えなのだろうか?
赤信号停止中に後方から追突されるのももらい事故ですが、これについては回避可能性は全くない。
強いて言うなら、おうちの中から出ないとか、後方にバズーカ砲でも仕込んでおいて瞬時に爆破するとか以外には回避可能性はないと思いますが(←もちろん違法だし過剰防衛です)、もらいに行かなくても勝手にやってくるものは回避しようがない。
駐車中の車なのに突っ込まれて事故というのももらい事故ですが、1㎜も動いていない状況では何ら回避できる余地もない。

 

もらい事故って避けることが不可能なものも普通にあるので、「もらいに行く人」という点については賛同できませんが、運転が上手い下手のテクニック論で片づける問題ではないと思う。

 

道路上にはテクニシャン以外は認めない人なのだろうか?
テク肉シャンもいるし、非テクニシャンもいる。

 

ちなみにこちらのツイッターの方、せっかくこのようなご批判を頂いたので、

この方の「何を言っているのか分からない点」についてご指摘させていただきました。
上の記事については、書けない事情がある点についてはボカしている関係上、これだけ見ても理解できないとは思いますよ。
リンク先を追う気にならなかったそうですので、そこについては残念です。
何を言っているのか分からないとのお話ですが、ほぼ真実はないんだそうです。
何を言っているのか分からないのに真実は無いと言い切れるのは、私には理解に苦しむ点ではありますが。

 

とりあえず、もらい事故はもらいに行かなくても起こるものもあるので、「何を言っているのか分からない」という話でした。
ロードバイクで信号待ちしているときに、後方から車が突っ込んできたらもらい事故ですが、「もらいに行っている人」というお考えであれば賛同できる余地を見つけることが出来ません。

ついでにですが

先日の記事。

 

脳内道路交通法違反と注意義務。
読者様2名から、これの情報を頂いたのですが・・・ まあ、よくわかりませんが というご意見がある模様。 そもそも論でいうと 事故未遂現場を見ると、歩道が無くて車道と路側帯が白線で分かれているわけです。 ロードバイクの通行位置は、路側帯の中にあ...

 

個人的にはこれ、注意していれば予見することは可能な案件だと思って見てますが、それは私が普段から左追い抜きをしない、路側帯通行をしないから。
それなりに経験値を積んでいるから言えることであって
、経験値が乏しい人であれば予見できないことも普通にある。
自転車は車道を通行する義務がありますが(17条1項)、路側帯を通行することも「できる」存在なのでややこしい(17条の2)。
けどどちらにせよ、この状況で万が一事故が発生した場合、過失割合は0:100が基本線です。

判例を見る限り、路側帯通行の自転車だからと言って特別な保護があるわけでもないし、自転車も車両である以上は一定の注意義務もあるし、ロードバイクは一般のママチャリよりも過失が加重されやすい傾向にあることを踏まえると、裁判官によっては5%程度は過失を付けるんじゃないかと思ったりしますが、争っても0:100が濃厚な案件で保険会社が示談に応じないということも想定しづらい。
なので0:100が基本線。
歩行者同様の保護となると、降りて歩いているか、歩行者同然の速度である場合に限られてくると思う。
どちらにせよ、車の合図不履行と路側帯一時停止義務違反のほうが重過失になるので、保険会社は吹っ掛けてくるでしょうけど最後は折れるかと。

 

で。
法的な側面は先日書いた通りで、車の合図不履行(53条1項、3項)、路側帯を横切るときの一時停止違反(17条2項)という道路交通法違反。
自転車については路側帯の中を通行しているわけですが、道路交通法的には道路外に左折する車両は歩道もしくは路側帯に入るときには一時停止義務があるので、合図出して一時停止義務を果たしていれば事故が起こることはありません。

 

これらの法律上の義務をきちんと踏まえた上で、自己防衛としてどう考えるのかについては全く別問題。
経験を積んでいる人や、注意能力に長けた人であれば、先行車が謎の減速をしている時点で不審な動きと察知すると思いますが、なんにせよ危ないと思った結果から学ぶことってそれなりに多いと思う。
そもそもは先行車の合図不履行と路側帯を横切る前に一時停止義務を果たさない結果なので、非難する点と学ぶ点を混同するのは違う。

 

経験値を積んでいる人が、

いろんな人
いろんな人
こういうところにも注意すると事故に遭いにくいよ

 

教えてあげることについては有益だと思うし、危ない体験談を見てみた人が学ぶというのであればそれはそれですが、上手い・下手のテクニック論に転嫁させてみたり、もらう奴が悪いみたいな論点にするのはちょっと違うと思う。
もらいたくて直進しているわけではなくて、勝手に突っ込んでくるわけだから。
法律上の義務と自己防衛論を混同している。

 

ちなみに自己防衛の話をすると嫌がる人もいらっしゃるようですが、予見能力と回避能力が高い分には損することは無いでしょうけど、低いことで損害を受ける人がいるのであれば、どういうところに注意するといいのか教えてあげることは有益と考えています。
第三者が動画を見て、左追い抜きは危険性があると認識することも、自分自身の安全性を高める一助になるし。
世の中いろんな方がいらっしゃいますし、それこそ子供に教えるのと同じ。
法律論よりも先行するからおかしくなるだけだと思いますが、両者は分けて考えるべきこと。
ちょっと話は変わりますが、センターライン超えが0:100と思い込んでいる人もいらっしゃるのかなと思うことがあったので。
センターラインを越えて進行してきた車と、センターラインを越えていないオートバイの衝突でオートバイ側にも過失を付けている判例もあるので、センターライン超えだから常に0:100というわけでもありません。
過失が付くということは予見性と回避義務を認めていることになるのですが、もちろん一般的にはこのケースは0:100です(17条5項の規定による場合は、一定の過失が付くことがあります)。
詳しいことは以前も書いた気がしますが、狭い道路でバスかなんかの大型車がコーナーリングを通過するときには必然的にセンターラインを越えますが、確かセンターラインから80センチくらい離れたところを通行していたオートバイと衝突。
オートバイがもっと左に寄って通行していれば防げた事故だとして過失を付けています。
前に誰かがメールしてきた「左側端から2mは軽車両の通行分!」という謎理論を採用すればオートバイは18条1項に反していないことにもなりそうですが、オートバイに過失が付いた理由は18条1項です。
こういうのは法律上も予見可能で回避可能なので、一律でセンターライン飛び出しを予見する義務が無いと考える人がいたらヤバイと思う。

もらう人がいるからもらい事故が起こるという論調だと、それこそちょっと前に遭ったバス事故の件なんかもそう捉えられてしまいかねないですが、

北九州市小倉北区で8月28日夜、西日本鉄道の路線バスが自転車の女性(70)をはねて死亡させた事故について、同社は31日、「事故の原因は乗務員の前方不注意」と認める異例のコメントを発表した。インターネット上で相次ぐ女性への誹謗(ひぼう)中傷や臆測を打ち消すためだという。

事故は28日午後8時15分ごろ、同区高浜1丁目の国道3号で発生。男性運転手は小倉北署の調べに「事故直前にブレーキを踏んだが、間に合わなかった」と話した。

西鉄はドライブレコーダーや運転手への聞き取りから自転車は道路に飛び出すなどしておらず、運転手の前方不注意が原因だと判断したが、ネットでは「自転車側に問題があると思う」「70のおばあちゃんが夜に自転車に乗る方が危ない」などの投稿が相次いだ。

 

バス事故犠牲者へのネット中傷やめて 西鉄が異例コメント | 西日本新聞me
北九州市小倉北区で8月28日夜、西日本鉄道の路線バスが自転車の女性(70)をはねて死亡させた事故について、同社は31日、「事故の原因は...北九州市小倉北区で8月28日夜、西日本鉄道の路線バスが自転車の女性(70)をはねて死亡させた事故につ...

報道を見ている限り、上手い下手のテクニック論で回避できる事故なのか?ということについては疑問。
疑問というよりもテクニックの話ではない。
バス会社自身が認めているように、事故の原因は運転者の前方不注視なのだから、自転車が18条1項に反する通行位置ではない限り何ら過失があるとは認められない。
西鉄バスは異例とも言える発表をしていますが、あまりにもネット上で叩く人がいるので「自転車には全く非はなかったものと考えている」と書面で発表している。
これももらい事故の一種ですが、これももらう人がいるから起こるという発想であれば、弱者保護の精神を軽視しているのではないだろうか?

 

法律は不可能を可能にするわけではないし、人それぞれ能力とか経験値は異なる。
能力が高い人に合わせて、自己防衛しなかったことが原因みたいに非難するのは違うと思う。
こういうところに気をつけるとより安全だよね!という話であれば別ですが。
ちょっと前に、時速20キロで運転しているときに、3mあれば止まれるとか寝言を語る人を見てビックリしたのですが、

 

制動距離と判例。ロードバイクが停止できるまでの距離って??
自転車の制動距離と判例というのは、正直見たことがありません。 なかなか一般化しづらい要素でもあるし、そこまで真剣な検討がされているとも思えない。 車については判例があります。 停止距離と判例 例えば車道において、急に歩行者が飛び出してきたと...

 

そもそも人類には不可能な領域なのですが(笑)、自分と同じことを出来ない人を非難する材料にするのはバカげている。
法律は一般的な基準にて回避義務を求めていると言えますが、法は不可能を強いるものではない。
むしろ不可能な領域を出来ると思い込んで過信している人のほうが危険。

 

話は戻ります。
先日のツイッターの動画を見ていて思うのですが、法律上の義務の話がまず先行すべきであって、自己防衛としての話はまた別。
経験値が少ない人もいるわけなので、叩くというのはちょっと違うと思う。
あと、道交法を理解していない人が、「追越しは右側からだろ!」ということについては、まずは勉強した方がいいと思う。
道交法は確かに難解ですが、一年くらいかけて執務資料とか注解道路交通法とか、判例とかも見ればそれなりに理解度は高まる。

 

それこそロードバイク買ったばかりの人とか、どこに注意すべきかわからずにヒヤリ体験とか事故体験をすることは誰でもあると思うのですが、その体験を共有することで事故防止に役立てるというのであれば理解できる。
けど世の中、経験値が低いとか防げない人もいるのだから、叩く材料にしてみたり、「もらう人がいるから起こる」というのは発想としてどうかと思う。
ただまあ、個人的にはどういう目的で動画をアップしたのかについてはちょっと気になるところ。
運転者の違反を追求したいのであれば警察を呼べばいいし、同情を買いたいのであれば正直なところ非難が殺到するのは目に見えている。
それほど、道交法を理解していない人も多いので。

 

私自身、最低限の配慮を施した動画を世間に公表することについては、むしろすべきことと思ってます。
最低限の配慮というのは、ナンバープレートとか特定できそうな要素を隠すことです。
わざわざナンバーを晒す人については、私の感覚では理解に苦しみますが、ああいうのはそれを晒して何をしたいのだろう?
処罰して欲しいのであれば警察に行けばいいし。
危険な運転に関わる動画をみることで、こういうケースもあるのかと気が付く人もいるかもしれないし、それはそれで自己防衛の一助にはなりうる。
また、ドライバー側としてのうっかりミスしないようにと、戒めにもなりうる。

 

犯罪事実について処罰して欲しいのであれば動画を持って警察に行けばいいし、何の目的で動画を公開し、どう捉えるかが大切だと思うのですが。

あえて書きますと、道交法で違反ではないことが、すなわち安全な行動とは限らないというのが大原則なのかなと思います。
それこそすり抜けの最中にいきなりドアが開くこともありますし。
個人的には予見能力と回避能力がないと自転車は生きていけない存在と思ってますが、法律論と自己防衛は分けないと、何に対して批判しているのかすら意味が分からなくなる。

 




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