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自転車への危険行為で暴行罪、というのはどの程度からなのだろう?幅寄せの判例を元に。

自転車への幅寄せは暴行罪!とよく言われます。
実際のところ、判例があるのかというと全く見当たりませんw
もちろん、判例検索ソフトでは全ての判例を収録しているわけではないのですが、重要な判例はほぼ抑えてあります。

暴行罪は刑法なので、刑法38条の規定により故意じゃないと成立しません。
確定的故意のほか、未必の故意でも成立するのですが、似たような概念で認識ある過失というのもあります。

認識ある過失未必の故意
犯罪になる可能性があることを認識しながらも、大丈夫だろうと思って行動したけど、結果的にその判断は間違いで犯罪が起きてしまった。犯罪になる可能性があることを認識しながら、結果的に犯罪が起こっても構わないとする状態。

過失の場合には暴行罪は成立しません。

で、有力な判例をいくつかピックアップしたのですが、車やオートバイへの幅寄せで暴行罪を認めた判例はあるものの、基本は傷害罪の判例です。
というのも、暴行致傷=傷害罪なので、暴行の故意が認定できるならば傷害罪になる。
よくある交通事故の判例って、過失運転致死傷罪です。
これは「過失」による怪我や死亡を招いた事件なので、前をしっかり見ていなかったとか、操作ミスをしたとかそういう理由による事故。

とりあえず運転行為における暴行の故意が、どのような観点で認定されているのか見ていきます。

自動車運転による暴行罪の判例

東京高裁 昭和50年4月15日

これは幅寄せを暴行罪と認めた著名な判例です。

原判決挙示の各証拠を検討し、これを総合すると、本件の客観的事実関係、すなわち、現場附近の道路状況、被告人車(車両重量7590キログラム、左右各後輪ダブルタイヤの大型貨物自動車)および被害車(車両重量2965キログラムの普通貨物自動車)のそれぞれの車種や形状、被告人車は、当該高速道路環状線内回り車道の右側車両通行帯を、北の丸トンネルを通過したのちは約60キロメートル毎時の速さで、竹橋方面から千代田トンネル方面に向け進行中、同トンネルより約300メートル手前の地点で、同じ通行帯上を約50キロメートル毎時の速さで先行していた被害車に追いついたが、左側車両通行帯の車両の流れに切れ目がなく、被害車を追い越すことができなかつたため、速度を被害車と同じ程度の約50キロメートル毎時まで減じたうえ、約200メートルにわたつて被害車に追随した頃、左側車両通行帯に入り得る状況になつたので、被告人は、約60キロメートル毎時に加速し、自車を左側車両通行帯に移行させたうえ、右側通行帯を進行中の被害車を追い越そうとしたが、自車が同通行帯で直進態勢に入つてから間もなく、同通行帯の中央部分を十分通行できるのにかかわらず、あえて自車の進路をかなり右に寄せ、両通行帯を区分する黄線を大きく踏み越えて右側通行帯に進入し、被害車の左側面に急激に接近するに至つたこと、その際両車の間隔は一時約30センチメートルにまでせばまつたが、被告人は、その頃、並進状態になりつつあつた被害車の運転席をのぞき込もうとして脇見をしていたため、折柄差しかかつていた左カーブに即応してハンドルを操作することができずに、自車を被害車に衝突させ、その結果、被害車が中央分離帯のガードレールを突き破つて対向車線上に暴走し、対向車と正面衝突をするに至つたこと、以上のことは、原判決認定のとおりである。右のような事態の推移に徴すれば、被告人が被害車を追い越すに当たり、自車を被害車に意識的に近づけたことが原因し、両車が異常に接近して、本件衝突事故が発生したことは明らかである。

そこで被告人が、自車を被害車に異常に接近させた理由について検討するに、被告人は検察官に対し、「この時点ではいらいらしていて、先行車に対しこの野郎という気持があつたから、いやがらせのため幅寄せをする気持のあつたことは否定できない」旨、「右側車線を走つていながらモタモタしている感じを受けていたので、正直なところ、いやがらせのため幅寄せをしてやろうという気持があつた」旨、「黄色の実線が引かれていることは判つていたが、左側車線を進行していた車がスーツと前に出たので、このチヤンスに前車の前に出ようと考えた」旨、「イライラした気分だつたので、接近して行つて驚かし、ブレーキを踏ませ減速させてやろうという気持のあつたことは事実である」旨、「4,50センチメートルまで寄つたら左にハンドルを切つて直進するつもりであつた」旨それぞれ供述し、いわゆる幅寄せをしたことを終始認めているところ、相手車両の被害者とすれば、北の丸トンネルを出たところは制限速度が50キロメートル毎時ではあるが、黄色の進路変更車線の始まる手前附近は制限速度が40キロメートル毎時であり、被告人車の前示幅寄せが行われたところは進路変更禁止区間に属しており、被害車が前記の区間を約50キロメートル毎時で直進していた限り、被害車としては、その走行方法につき、被告人から注意を受けるべき理由は全くないにもかかわらず、被告人が、高速道路上において並進車両と接近するという危険な方法をとつてまで相手車両の運転者に対しその運転方法を改めさせようとし、しかもその際、左カーブに差しかかつていることさえ忘れていたということは、当時、被告人がよほどいらだち、冷静さをも失つていたことの証左にほかならないのであつて、これらに鑑みれば、被告人の前記検察官調書の記載は、右のような被告人の当時の心理状態をかなり的確に表現したものとして信用性が高いというべきである。所論は、右の供述記載は、検察官の著しい誘導と強要による自白であつて、信用性および任意性において疑わしいものがある旨強調するけれども、各調書を仔細に検討し、かつ他の証拠や被告人の原審および当審の各公判廷における供述と比照してみても、その信用性および任意性が疑わしいとしてこれを排斥すべき理由は見当たらない。

以上によると、被告人は、被害車の走行の仕方が被告人からみて緩慢にすぎるとして、これにいやがらせをし、更に文句を言つてやろうという気持で、追い越しに当たり、自車を被害車にその間隔が約30センチメートルになるまで接近させた、つまりいわゆる幅寄せをしたものと認めるのが相当で、被告人が弁明するように、単に被害車の運転手に注意を与えようとしたにすぎないものとは到底考えられない。なお、所論は前方にカーブのある本件現場の状況のもとでは、直ちに衝突を避けるための措置をとることが通常であるのに、被告人がこの措置に出でなかつたことからみても、被告人がいやがらせのため幅寄せをしたものとは考えられない旨主張するが、しかし被告人は検察官に対し普段から左カーブのあることは知つていたが、前記追い越しを企てた時点では、被害車に気をとられ、その運転席をのぞきこんでいたため、これを忘れていた旨供述しており、右供述と前記異常な事態の推移に鑑みれば、被告人において回避措置をとつていなかつたからといつて、これをもつて前叙幅寄せの認定の妨げとなるものではない。

而して、本件のように、大型自動車を運転して、傾斜やカーブも少なくなく、多数の車両が2車線上を同一方向に毎時5,60キロメートルの速さで、相い続いて走行している高速道路上で、しかも進路変更禁止区間内において、いわゆる幅寄せという目的をもつて、他の車両を追い越しながら、故意に自車をその車両に著しく接近させれば、その結果として、自己の運転方法の確実さを失うことによるとか、相手車両の運転者をしてその運転方法に支障をもたらすことなどにより、それが相手方に対する交通上の危険につながることは明白で、右のような状況下における幅寄せの所為は、刑法上、相手車両の車内にいる者に対する不法な有形力の行使として、暴行罪に当たると解するのが相当である。即ち被告人としては、相手車両との接触・衝突までを意欲・認容していなかつたとしても、前記状況下において意識して幅寄せをなし、相手に対しいやがらせをするということについての意欲・認容があつたと認定できることが前記のとおりである以上、被告人には暴行の故意があつたといわざるを得ないのである。したがつて、この点に関する原判決の認定に誤りはない。

さらに所論は、原判決は、被告人の行為について暴行の故意と過失行為の競合を認めることにより、行為全体を一個の故意犯として評価しているとして、これを非難するけれども、原判決は、被告人に暴行の限度で故意があつたとし、その暴行行為の際に原判示のような過失行為のあつたことを認定することにより、右暴行行為から本件傷害ないし致死という結果が発生するに至る具体的な因果関係を示し、かつ、右の結果について被告人に責任のあることを明らかにしたものと解されるのであつて、原判決が、被告人に衝突やそれに伴う傷害等の結果に対する意欲・認容があつたとしているのではないことは、判文上明らかであり、右の点に関する所論は採用できない。

東京高裁 昭和50年4月15日

暴行の故意の認定として挙げているところをピックアップします。

いわゆる幅寄せという目的をもつて、他の車両を追い越しながら、故意に自車をその車両に著しく接近させれば、その結果として、自己の運転方法の確実さを失うことによるとか、相手車両の運転者をしてその運転方法に支障をもたらすことなどにより、それが相手方に対する交通上の危険につながることは明白で、右のような状況下における幅寄せの所為は、刑法上、相手車両の車内にいる者に対する不法な有形力の行使として、暴行罪に当たると解するのが相当
相手車両との接触・衝突までを意欲・認容していなかつたとしても、前記状況下において意識して幅寄せをなし、相手に対しいやがらせをするということについての意欲・認容があつたと認定できることが前記のとおりである以上、被告人には暴行の故意があつたといわざるを得ない

この判例は1審でも暴行の故意を認めているのですが暴行による傷害致死罪で有罪となっています。
1審でも同様になっていますが、その後示談が成立したことや、遺族から寛刑を望む上申書が提出されたことを考慮し懲役2年6月⇒懲役2年に変更されています。

要は接触や衝突の意思まで持っていなくても、相手方の運転に支障をもたらすような行動で、相手方の危険を誘発するような幅寄せであれば暴行の故意として認めていると取れます(この判例では接触も起きています)。

福岡地裁小倉支部 平成14年6月3日

こちらは平成になってからの判例ですが、幅寄せではなく後方から車間距離を詰めて結果として死亡事故に至った事例です(接触などは無し)。

まずは事実認定の一部を。

被告人は,上記追跡開始後,本件車両の速度を上げて被害車両との距離を縮め,追跡開始地点からy方面へ約160メートル付近で車間距離約17メートルにまで追いついた。
このころ被害者は後ろを振り返り急加速したが,本件車両も時速約80キロメートルまで速度を上げて車間距離を縮めた。
被告人は,被害車両との車間距離が縮まると,運転席の背もたれから背中を浮かし,やや前屈みの姿勢になって運転に集中し,追跡開始地点からy方面へ約400メートル付近で両車の車間距離は約2.5メートルまで縮ま
り,本件車両が減速することにより約10メートルほど離れ,再び時速約80キロメートル程度に加速することにより約2.5メートルに縮まることを2,3回繰り返した。

福岡地裁小倉支部 平成14年6月3日

ついで判決文の抜粋です。

上記事実を前提に,本件における傷害致死罪の成否を判断するに,同罪にいう暴行とは,人の身体に対する不法な有形力の行使をいうところ,人の身体に接触しない場合でも,その有形力の行使が暴行に該当することがあり,自動車を走行させることによる暴行も成立すると解される。しかし,自動車の運転は,それ自体常に重大な事故を生ずる可能性を内包する行為である一方,社会の多くの場面で日常生活上不可欠なものであって,交通事故を発生させるおそれのある危険な運転行為は,通常,それ自体道路交通法により,それによって死傷の結果が発生した場合には業務上過失致死傷罪(刑法211条),危険運転致死傷罪(同法208条の2,本件後の平成13年法律第138号により新設)等によって律することが予定されているものであるから単に危険な運転行為であるからといって直ちに暴行に該当すると解するのは相当でない。前記自動車運転に関する諸事情を考慮しつつ,前記暴行の意義に従い解釈すると,自動車を走行させることが暴行に該当するというためには,当該自動車を直接相手方の身体又はその乗車車両に接触させるか,接触させた場合と同程度に相手方の身体に対する具体的危険を発生させたことを要すると解すべきである。
本件のような追跡行為の事案においては,必ずしも双方の車体の直接的接触を要しないものの,追跡の態様,道路状況,走行距離,車間距離,速度等に照らし,相手方車両をして反対車線に進出するなど危険な回避行為をしなければ接触が避けられない状況に追い込む行為であると客観的に認められる場合には,相手方に対し傷害の具体的危険を生じさせたものとして,暴行に該当すると解すべきである。

この点,本件において,追跡開始地点から本件事故現場付近までの国道200号線は,信号機が1か所設置されているものの,片側1車線であって交互通行や車線変更は行われておらず,道幅も狭いとはいえないこと,特に急なカーブもないこと,犯行当時は深夜で比較的交通量が少なく,雨も降っていなかったことに照らし,比較的運転の容易な道路状況であったと認められる。また,追跡行為の態様は,普通乗用自動車で自動二輪車を追跡するというものではあるが,専ら後方から車間距離を狭めたにとどまり,幅寄せ等それ自体で車両の安定性を著しく損なう態様のものではなかったこと,追跡開始地点から本件事故現場付近までの走行距離は約560メートルないし600メートルと長距離とはいえないこと,最接近時の車間距離は約2.5メートルとかなり接近したものであるが,追跡中この距離にまで接近したのはごく短時間にとどまること,時速80キロメートルという速度は,制限速度50キロメートル毎時をかなり上まわり通常より危険性も高まっているとはいえるが,その速度自体からその場所において著しい危険が生じていたとは考えられず,追跡中常にこの速度が維持されていたわけではないこと,上記道路状況や追跡状況のもとで,被害者が追跡を避けるため高速度のまま脇道に入り,しかも後方を振り返り,たまたま駐車していた車両に衝突するという事態は,被告人にとって予想外のものであり,一般的にも,被害者が後方を振り返り,駐車車両に衝突するという点は,容易に予測しえないことなどの事情に基づき総合的に判断すると,被告人の運転行為は,被害車両をして反対車線に出るなど危険な回避行為をしなければ接触が避けられない状況に追い込むまでには至っておらず,本件車両を被害車両に接触させた場合と同程度に被害者の身体に対する具体的危険を発生させるものであったとまでは認めることができない
なお,被告人が,被害者を畏怖させるなどのいやがらせ目的で追跡行為をしたとしても,畏怖させる行為(脅迫)と暴行とを同視することはできない。また,被告人の所為が,本件後の平成13年法律第138号により新設された刑法208条の2第2項前段に該当しうるとしても,同条項をその施行前の本件に適用できないのはもちろん,同条項に規定する運転方法が全て暴行に該当するものではなく,上記各事情に照らし,被告人の運転行為をもって傷害致死罪にいう暴行に該当すると解することはできない。
3 なお,暴行を伴わない無形的方法による傷害罪(その結果的加重犯としての傷害致死罪)が成立するためには,故意の内容として具体的な傷害結果発生の認識,認容を必要とすると解すべきである。この点,被告人は,追跡を開始する際,「こかしちゃる」,「殺しちゃる」,又は「くらわしちゃる」といった被害者に危害を加える内容の独り言をつぶやいたことが認められるものの,このような言葉は往々にして憤激の感情表現として発せられるもので,かかる発言から直ちに被告人が被害者に危害を加え,あるいは殺害するなどの意思を有していたと推認することはできず,本件全証拠によっても,被告人が,未必的にせよ,被害者を路上の障害物に衝突させるなどして傷害を負わせる結果を認識認容していたと認めることはできないから,本件において無形的方法による傷害罪(その結果的加重犯としての傷害致死罪)も考えられない。

福岡地裁小倉支部 平成14年6月3日

福岡地裁小倉支部の判例でいうと、自動車の運転に係る暴行の故意が成立する要件を以下のように示している。

自動車の運転は,それ自体常に重大な事故を生ずる可能性を内包する行為である一方,社会の多くの場面で日常生活上不可欠なものであって,交通事故を発生させるおそれのある危険な運転行為は,通常,それ自体道路交通法により,それによって死傷の結果が発生した場合には業務上過失致死傷罪(刑法211条),危険運転致死傷罪(同法208条の2,本件後の平成13年法律第138号により新設)等によって律することが予定されているものであるから,単に危険な運転行為であるからといって直ちに暴行に該当すると解するのは相当でない

交通事故を発生させるような危険行為は道交法やその他で処罰可能なことを挙げ、危険な運転だから即座に暴行罪とすることは相応しくないと述べている。
高速道路での話ではなく、片側1車線道路で制限速度50キロ道路です。
しかも被害者は顔見知りで、危険行為をしている間は知り合いであることに気が付いていないという・・・
50キロ制限道路で、時速80キロで車間距離約2.5mまで詰めることを2,3回繰り返したそうですが、裁判所は故意の暴行罪は成立しないとしている(なお加害者は、暴行と傷害の意思はなかったと供述しているので否認事件です)。
時速80キロの車間距離2.5mって超危険領域だと思いますが、これでも暴行は成立しないとしている。

「自動車の運転は,それ自体常に重大な事故を生ずる可能性を内包する行為である」ということと、「交通事故を発生させるおそれのある危険な運転行為は,通常,それ自体道路交通法により,それによって死傷の結果が発生した場合には業務上過失致死傷罪,危険運転致死傷罪等によって律することが予定されているものである」というところから、自動車運転における暴行罪の成立要件を絞っているとも取れる。
この判例では許された危険の法理によって検討しているものと思われますが、自動車運転の特殊性を考慮しているのかもしれません。

必ずしも双方の車体の直接的接触を要しないものの,追跡の態様,道路状況,走行距離,車間距離,速度等に照らし,相手方車両をして反対車線に進出するなど危険な回避行為をしなければ接触が避けられない状況に追い込む行為であると客観的に認められる場合には,相手方に対し傷害の具体的危険を生じさせたものとして,暴行に該当すると解すべきである

単に危険だったというだけでは成立せず、「危険な回避行為をしなければ接触が避けられない状況に追い込む行為であると客観的に認められる場合には,相手方に対し傷害の具体的危険を生じさせたものとして,暴行に該当すると解すべきである」とある。

許された危険の法理
社会的に有益あるいは不可欠な行為は,それが法益侵害の危険を伴うものであっても許容されるとする理論。その行為から実害が発生したとしても,結果回避につき相当な措置がとられていれば違法ではないとする。

運転自体が危険性を持つという前提の下、どこからが妨害の故意とみるかについては、判例上では結構要件が厳しくなっている。
単に危険だったという行為だけでは暴行の故意が成立していない。

東京高裁福岡高裁小倉支部
相手車両の運転者をしてその運転方法に支障をもたらすことなどにより、それが相手方に対する交通上の危険につながること

相手車両との接触・衝突までを意欲・認容していなかつたとしても、前記状況下において意識して幅寄せをなし、相手に対しいやがらせをするということについての意欲・認容があつたと認定できること

危険な回避行為をしなければ接触が避けられない状況に追い込む行為であると客観的に認められる場合

本件車両を被害車両に接触させた場合と同程度に被害者の身体に対する具体的危険を発生させるもの

畏怖させるなどのいやがらせ目的で追跡行為をしたとしても,畏怖させる行為(脅迫)と暴行とを同視することはできない

両者では若干認定要件が違うのですが、東京高裁は幅寄せ、福岡地裁小倉支部は後方からの煽りです。
ただまあ、時速80キロで車間距離2.5mまで詰めることが2,3回というのが暴行ではないというのは、どうなんですかね?
接触させるのと同程度の具体的危険とあります。

被告人の運転行為は,被害車両をして反対車線に出るなど危険な回避行為をしなければ接触が避けられない状況に追い込むまでには至っておらず,本件車両を被害車両に接触させた場合と同程度に被害者の身体に対する具体的危険を発生させるものであったとまでは認めることができない

福岡地裁小倉支部 平成14年6月3日

神戸地裁姫路支部 平成15年2月20日

この判例は暴走族狩りと称して、オートバイ2名に車で幅寄せした事件です。
暴行と傷害については未必の故意を認定してますが、殺人の故意は認めませんでした。

(ただし暴行と傷害については被告人が認めている)

まずは事実認定から。

(3) 被告人は,蔑視していた暴走族が無事に逃走する一方で,最後の接触の際に自車が壊れてしまったことに腹を立て,ますます気持ちが高ぶり,加速して逃走した暴走族を追いかけたところ,1台の自動二輪車(Xが運転,Yが後部に同乗。)が路地を右折したため,この自動二輪車にねらいを付け,この路地を右折して追いかけた。この路地は,南北に通じ,車道の幅約4メートル,車道東側の有蓋側溝約1.85メートル,車道西側の有蓋側溝約0.4メートルで,最高速度が時速30キロメートルに規制されたアスファルト道路(アスファルト道路と有蓋側溝は平面
上一体となっていて,いずれも車両が走行できる状態であり,これらを合計すると約6.25メートルの幅員となる。)で,この路地の東側には,高さ約2.15メートルのコンクリートブロック塀が存在していた。
(4) 被告人は,加速してX運転の自動二輪車を北から南へ追尾している際,ヘルメットをかぶっていない二人の者がこの自動二輪車に乗車していることを分かっていたが,この自動二輪車に追いつくや,なおも被害者らを怖がらせようと,この自動二輪車が自車とコンクリートブロック塀の間にいる状態で,時速約70キロメートルの速度で,コンクリートブロック塀方向に幅寄せを開始し,約30メートル進行して自車左側面がコンクリートブロック塀の縁石まで約1.5メートルに迫った地点で,自車左側面を自動二輪車の右側面に衝突させた。その直後,被告人は,このままでは被害者らを自車とコンクリートブロック塀との間に挟み込んでしまうと危険を感じ,ハンドルを右に切ったものの,前記衝突地点からなお約30メートル進行して被告人車両の左側面がそのままコンクリートブロック塀の約50センチメートルのところまで近付いた地点で,右へ行き,コンクリートブロック塀から離れていった。Xは,被告人車両と衝突した直後,バランスを崩して縁石に自動二輪車をぶつけ,その後約6.5メートル走行した後,再び縁石に自動二輪車をぶつけるとともにコンクリートブロック塀にもぶつけて転倒した。

神戸地裁姫路支部 平成15年2月20日

そもそも,本件のような幅寄せ行為は,例えば,鋭利な刃物で相手の身体の枢要部を突き刺したり,普通乗用車であえて轢過するような,その身体に致命傷となるような直接的な攻撃を加え,かつ,殺人行為としての類型性もある行為と異なり,自らの行為により相手を死に至らしめる可能性を認識するにはいくつかの段階があるといえるのであって,冷静に考えれば認識できることでも,高揚した気分の中では死の結果までは認識できないこともあり得る。本件においては,まず強度のものとはいい難い接触が場合によって相手を転倒させる可能性を認識し,それに続いて,強打,重傷,死亡といういくつかの段階を認識しなければならない被告人の当初の意図,認識が主として相手をビビらせることであったことからすると,接触から始まる因果の流れの究極にある相手の死亡という結果は,その認識上相当な飛躍があるというべきである。そのような飛躍的認識を,自動二輪車に追いついてから衝突するまでわずか1.6秒程度に過ぎない(31.3m÷19.4m/s)一瞬の間に,しかも,興奮し冷静さを欠く精神状態の中で,これを抱き得たかは相当に疑問といわざるを得ない
(3) 他方,被告人は,警察に出頭した平成13年6月18日当初から,相手の自動二輪車を「こかしてやろう」「転倒させてやろう」との意図があったことを認めるとともに,被害者らが死亡するかもしれないことを認識していたかのように述べ,その後,これとほぼ同旨を述べる供述もそれなりに見られる。
しかし,
ア 転倒させる意図に関する部分について,被告人は,捜査段階の後半では,この「転倒させる」意図のあったことを明確に否定し,その後の検察官の取調べにおいても,「相手をビビらせる,すなわち,相手に恐怖感を与えようという気持ちから幅寄せを続けていった」などと供述するにとどまっており(検110),「転倒させる」意図があったということで一貫しているわけではない。また,未必的殺意に関する部分についても,同月19日の調書では「被害者を転倒させ,大きな怪我を負わせるかも知れないとは思ったが,死亡するかも知れないということまでは
考えていなかった」旨述べており(検157),同年7月4日には「ビビらせてやろうとは考えていたが,転倒させる気もなかった。常識で考えれば,場合によっては転倒し,死亡するかもしれないことも考えるであろうが,その当時はそこまで考えていなかった」旨述べている(検96)のであって(なお,検察官に対する供述調書の中には,犯行時において,明確に死亡することを認識していたとの記載はない。),被害者らの死亡を意識していたかどうかについての供述についても必ずしも一貫していない。
そして,被告人の殺意に関する一連の供述を子細にみると,「私の兄も単車で転倒する事故で死亡しておりますので,怪我ではすまず,場合によっては死亡してしまうという事は十分判っておりました」(検86)などというもので,必ずしも,幅寄せ行為当時の現実の心理状態を具体的に語るものではなく,一般的認識を語っているに過ぎない表現も散見される(検85,88,93など)。これらが真に殺意を自白した供述とみることができるかどうか疑問の余地がある。
イ もとより,通常は,被疑者の言い分をそのまま録取することから信用性が高いはずの自首調書(検86)において,「転倒させる」意図があったこと及び未必的殺意があったことを認めるかのような供述をしている点は,それなりに重視すべきであるが,被告人は,警察に出頭したものの,当初は,暴走族から逃げる際の事故であった旨を述べていたが,警察官から現場の痕跡との矛盾を指摘されたことから,ついに族狩りを行ったことなど本件の大筋を自白するに至ったもので,警察官から追及が行われた結果によるものであることは明らかであり,自首調書を特に信用できるとするための前提を欠いている。被告人の公判供述からも窺われるように,警察官の理詰めの追及に対して,合理的に反論することができず,やむなくこれを認めたことも十分に考えられる。
以上のことからすると,被告人の捜査段階における転倒させる意図に関する部分及び殺意に関する自白部分をたやすく信用することはできないというべきである。
4 以上の諸点に照らすと,本件犯行時に被告人が被害者らの死の結果を未必的にも認識し,これを認容して犯行に及んだとするには未だ合理的な疑いを抱かざるを得ず,殺人の故意を認めることはできないのであって,本件行為の客観的態様等からすると,被告人は,上記の幅寄せ行為に際して,被害者らの自動二輪車と接触する可能性を認識しながら,あえてこれを敢行したものというべきであり,せいぜいこれにより傷害の結果が生じることについての未必的な認識の限度で故意が認められるというべきである

神戸地裁姫路支部 平成15年2月20日

この判例はそもそも殺意があったかどうか?についてなのですが、このようになっています。

本件公訴事実は,X及びYに対する殺人未遂であるところ,被告人は,本件犯行時,Xらが死亡するかもしれないことを認識したことも,死んでもいいと考えたこともない旨供述し,弁護人も被告人には殺意がなく,傷害罪が成立するに過ぎないと主張し,当裁判所は,判示のとおり,Xに対する傷害及びYに対する暴行の限度で認めた

神戸地裁姫路支部 平成15年2月20日

暴行と傷害については認めているので、そこまで参考になるというわけでもないですが、一応こういう判例もあるということで。

東京高裁 平成12年10月27日

執拗なあおり運転を繰り返したことで故意と認定されたものもあります。
この判例では約13.7キロに渡って並進、後方からのクラクションやパッシングを浴びせた判例です。
時速約100キロで最接近したときの車間距離(前後)は2.2~2.4m、併進時に最も接近したときで両車のドアとドアの間隔が約26センチ、加害車両は2,3回被害車両の窓ガラスを2,3回手で叩いている。
あと、直接的な暴行もあったようです。

被告人の被害者に対する当初の直接的暴行と脅迫的言辞、被告人車両による追跡の態様、被告人車両の大きさなどの事実を総合すれば、被告人が被告人車両で被害車両を追跡した行為は、被告人の運転操作の瞬時の遅れやわずかな狂いがあれば、被害車両との追突、接触を惹起しかねないものであって、当初の直接的暴行等と相俟って、被害者を周章ろうばいさせるには十分なものであり、被害者に運転を誤らせるなどして、被害者や被害車両の同乗者の負傷を伴う交通事故を引き起こす危険性が極めて高いものであったと認められる。そして、このような追跡行為は、それ自体被害車両の乗員の身体に向けられた不法な有形力の行使、すなわち暴行に当たると解するのが相当である。

東京高裁 平成12年10月27日

この判例は1審でも暴行(傷害罪)と認定されているようですが、暴行には当たらないとして控訴した事案です。

東京高裁 平成16年12月1日

この判例は最短1m以下まで接近させて幅寄せを約3キロに渡って執拗に行った判例です。
最高で時速約100キロまで達し、最短1m以下の幅寄せを行い、強引に追い越して割り込みし、約15分間、距離にして約3キロに渡って執拗に追跡した。
被害車両に向けて直接の殴打、足蹴りなども行っています。

この判例も幅寄せによる暴行と、それによる傷害致死を認めています。

福岡地裁 平成14年9月19日

この判例は、集団暴走しているオートバイが車の横を通過した際に、車に接触。
車の運転手が激高して追跡。
オートバイに幅寄せし、実際に体に対する暴行を加えて死亡させたという事件です。

被告人の幅寄せ行為は、オートバイの後方から本件車両を時速約80キロメートルで走行させ、ハンドルを2,3回小刻みに切って、本件車両の左側面をオートバイの右側面に接近させ幅寄せし、オートバイ前方に向け、次第にその進路を塞ぐ形で、本件車両を進行させて、オートバイを停車させようとしたものである。
この点、オートバイは、車体の幅約0.75メートルの、走行安定性に劣る自動二輪車であり、片側1車線でその幅が3.3mで、右にゆるやかに湾曲している道路を、時速70キロないし80キロメートルほどの高速度で走行している。そのような状態で、車体の幅約1.78mの本件車両と並走するだけでも危険性が高いことは十分認められる上、上記の幅寄せにより、オートバイは車線脇の幅約0.5mの路肩部分を走行することを強いられている。
このようなオートバイ及び本件車両の走行状況、本件犯行現場の状況等を考慮すると、被告人の幅寄せ行為によって、被害者の運転操作にわずかでも狂いが生じれば、本件車両や歩道の縁石等との間で接触するなどして転倒し、その結果、被害者が障害を負うことなどの事態が生じる危険性が高いことは、容易に予想できる。
したがって、被告人の幅寄せ行為が。人の身体に対する有形力の行使に当たることは、十分認定できる。

福岡地裁 平成14年9月19日

この事件では幅寄せと実際に掴んだ行為について暴行と認定していますが、接触させる意図まではなかったとしています。

それ以外では、津地裁令和元年11月5日の判例とかもありますが、こちらは傷害容疑となっています。

あとはちょっと特殊かもしれませんが、執拗な幅寄せをした事件でも過失傷害罪として起訴され有罪になっている事案もあります。

(事実)
被告人はA運転車に割り込まれたという腹立ちから「幅寄せ」を企て、折から車両の交通量も多くまして、自車後方には被害者運転の自動二輪車が追従中とあって、彼此の運転操作が僅かに程度を失するだけでも直ちにA車との接触を生じかねず更に第二第三の事故へもつながりかねない「幅寄せ」のごときはこれを差し控えるべき業務上の注意義務があるのにこれに反し、外側車線に復帰走行中のA車を追い、同二丁目五番先において自車を間近く隣接させ同車を道路左端に追い詰めつつ時速5,60キロメートルで暫く並進した上更にその前方へ廻り込むべく加速して左転把し、もって執拗に「幅寄せ」を続けた過失により、これを振り切って逃れたいという気持ちにかられて増速右転把したA車との間に軽い接触を生じてしまい、狼狽して右に急転把し後続の被害車両に衝突、同人を対向車線にはねとばした上対進の普通乗用車に衝突させて頭蓋骨骨折等の傷害を負わせ、死亡させたものである。

(補足)
被告人車とA車の接触経緯については、すぐ後ろに追従して終始を目撃しているBの供述等を主たる根拠に判示の如きものと認められるところ、これをもって弁護人は、被告人車の幅寄せに対しかえってA車の方から接触してきたものであって被告人に過失はないという。

しかしもともと、「幅寄せ」は走行中の相手車にことさら接近してその運転者に接触の危惧と不安を抱かせ威圧する狙いで行われ、必然相手方の心理的動揺と恐怖を誘発することになるものであって、自らが僅かにその度を越すだけでも、或は、心理的動揺と不安乃至恐怖に起因するがための僅かな不適切操作を相手方に誘い出すだけでも、直ちに相互の接触を生じかねない重大な危険性をもち、まして間近に他の走行車があるときはその結果が第二第三の重大事故に進展しかねないものであること目に見えている。本件において被告人がしたような執拗な幅寄せにおいてはなおのことである。それゆえ、特に本件の具体的状況の下では被告人は判示のような幅寄せを控えるべき業務上の注意義務を負うものであって、被告人にはその違反がある。

東京地裁八王子支部 平成元年(わ)第540号

これについては、被告人が幅寄せした車両と、被害車両が異なるということです。
割り込んできた車に幅寄せをしていたら、いろいろミスって後続のオートバイに衝突したという話なのかと。
この場合であれば、幅寄せという暴行を働いた被害者と、死亡した被害者が一致しないのでこうなるのかと思いますが。

あとは平成25年以降、自動車運転死傷処罰法があるので、危険運転致死罪(妨害運転)として有罪になるケースも出ています。

(危険運転致死傷)
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

最近だとこの事例があります。

被害車両が走行車線に入ると一転、急加速して走り寄った点、安全に車線変更するだけの余裕があったのに接近した点を示し「バイクの安全な通行を妨げる可能性を認識しながら、あえて危険な接近をしたと強く推認できる」と、妨害目的があったと結論付けた。

https://www.chunichi.co.jp/article/379764

ドラレコの映像から、被害車両を妨害する目的があった故意が推認できるとなっています。

逆にこちらの事件では同じく幅寄せのような状況ですが、過失運転致死傷での起訴となっています。

冒頭陳述などによると、会社員の男は2020年12月13日午前3時50分ごろ、伊勢崎市の北関東道西行きで追い越し車線を走行し、車内に設置したタブレット端末の操作に気を取られて漫然と運転。左後ろで走行車線を走り、会社員の男の車を抜かそうと接近してきていた相生町の女性の車に気付かずに左斜めに進み、女性の乗用車をガードレールに衝突させ、女性2人を死亡、2人に重軽傷を負わせたとされる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/603341156c54afee9d53ddf35a69239450ba9f79

被害車両に接近するという行為自体は同じようなものですが、前者は妨害目的の故意なので危険運転致死(妨害運転)、後者は過失運転致死傷となる。
結果だけ見れば被害者死亡という点や被害車両に接近させた点は同じでも故意と過失では法定刑は異なります。

あと民事ではいくつかヒットしますが、民事はそもそも犯罪かどうかの認定ではないのであまり意味を持ちません。
ホームレスが乗る自転車に警察官が幅寄せして転倒させて・・・というのもありますが、これも幅寄せが問題になったのではなくて、公務執行妨害で制圧する際に被害者を骨折させているという事件(平成27年6月23日 大阪高裁)。
その他だとこれも民事ですが、自転車乗りがスポーツドリンクを吐き出した際に、車に当たって、車のドライバーが低速至近距離で追撃したみたいなのはありました。
これは参考になる要素を見いだせなかったので割愛。

まあ、いろんな事情はあるのでしょうけど、なんだかなぁと思う判例は多いのが実情です。

その他、幅寄せをおこなっても「過失」運転致死罪で立件されている事件はありますし、業務上「過失」致死罪で有罪になるケースもあるので、幅寄せの全てを故意犯として捉えているわけではありません。

いろいろ見ていくと

さて質問です。
これは暴行罪の故意を認定できるでしょうか?

次にこれ。
これはトンネル内で自転車と車が接触した事故ですが、暴行の故意と傷害を認定できるでしょうか?

まず最初の幅寄せ映像。
これ、幅寄せしたのは兵庫県警の覆面パトカーです。
一般的な感覚からしても、警察が覆面パトカーで、故意に一般車に幅寄せするというのは考えにくい。
バスが先行している状況で、右車線から覆面パトカーが追越しして前に出ているのですが、見落としというのも考えにくいので、高速の出口で出ようとして焦った?とかなんでしょうか?
どちらにせよ車線変更による幅寄せの結果、バスを危険な目に遭わせたことは事実。
それが故意なのか過失なのかを検討しないと暴行が成立するかしないかわからない。

一般的に考えれば、警察官が職務中に幅寄せする理由もないですし、故意を認定するのは無理がある。
けどこれが県警ではなく一般人だった場合、純粋な見落としによる車線変更なのか、不注意によるものなのか、出口で出たくて焦った結果なのか(ちょっと前まで左車線にバスがいたことは理解していたけど、焦った結果それすら分からなくなった)、嫌がらせ目的など故意の幅寄せなのかを立証しないといけないわけです。
危険だったという結果だけに着目して故意を認定することはできない。
これを一般人がやってしまった場合に、被害者目線でいえば幅寄せ後逃走しているとも取れてしまいますが、何ら犯意がなく出口が見えて焦った結果、左車線にバスがいることが頭から抜けてしまい、進路変更した瞬間にヤバイ!と気が付いたけど、高速道路なので停止するわけにもいかずそのまま走ってしまったという状況だった場合、故意である証明は困難。
怪我人が出たら過失運転致傷罪とかに問える余地はあるでしょうけど。

警察官が職務中に故意の幅寄せ(暴行)を行うというのはまずないだろうということは理解できるとして、では一般人が同じプレイをした場合、故意の認定は可能でしょうか。
出口を見逃していて焦ったとか、前方不注視とか、そういう理由で結果的に幅寄せになったとしても暴行罪に問われる・・・なんてことは当然あり得ない。、

ただこれ、一応は非接触驚愕事故ですよね。
超危険で大惨事が起きても不思議ではないですが、覆面パトカーは救護義務を果たさずにそのまま通過。

さすがにバスのほうは救護義務違反として処分するように求めたようですが、警察内だからという事情もあるでしょうけど、「その必要はなかった」となめた回答をしている。
その後どうなったのかは知りませんが、故意の暴行罪が成立しないにしても、進路変更禁止違反(26条の2第2項)と救護義務違反は成立する。

(進路の変更の禁止)
第二十六条の二
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。

微罪に近いですが・・・
ちなみに進路変更禁止(26条)は妨害運転罪の構成要素でもありますが、これも妨害意思を立証しない限り成立しません。

次にトンネル内で接触事故。
これも見落としによるものだと思いますので、過失運転致傷がせいぜい。
これの故意をどのように認定するのか?というと、故意である自供があれば別かもしれませんが、そもそも動機すら不明なので客観的に故意の暴行と傷害を認定することは無理かと。
同じように、自転車のすぐ横を至近距離で通過してしまったとして、前方不注視(わき見等)の結果だった場合でも暴行罪として処罰されなくてはいけないのでしょうか。

判例を見ればわかるように、故意の暴行罪の成立を認めたと言っても、傷害罪、傷害致死罪ありきの暴行の認定であったり実害が出ているものしか正直なところ判例が見当たらない。
超至近距離で危険だったけど、事故に至っていないという判例については見つかりませんでした(ただし、略式起訴で終了している事案もあると思われるので、全く存在しないのかについては不明です)。

実際のところ、自転車に対する幅寄せの判例は民事以外では見つかりませんでした。
何らかの事情で前方不注視(わき見運転など)により、自転車のことを見逃した場合であったり、単に下手なだけとかでは故意ではないことは確か。

暴行罪は有形力の行使で、故意であることは必須要件になりますが、実際に警察官の側頭部を殴ったけど故意性が否定されて無罪になっている事件もあります。

被告人がこのような心理状態にあるとき、同巡査の手が被告人の胸の内ポケットから、それまで見せることを拒み続けてきた前示小冊子などを取り出そうとするような気配に、思わず同巡査に向つて被告人の手が飛んだのではないかとの疑念を持つても敢えて強弁とは言い難いと考える。敷延すれば、同巡査の手が被告人の胸にのびた時、それまで既に被告人は前示のように相当程度の肉体的精神的な心理学上に所謂刺戟を受けていて、これも心理学上に所謂相当興奮の状態にあつたとの疑いがあり、一般的に言つて、普通の心理状態にある場合においてすら、突然の攻撃的刺戟を感知した場合、これに対して無意識の反撃的動作に出ることがあるのは、経験則上からも心理学上からも是認されるところであろうから、まして既に前示度々の各刺戟によつて相当興奮状態にあつたと疑える被告人は、同巡査の右待機室における刺戟的行為によつて、さらにその興奮の度を高め、これが導火線ともなつて、ここに咄嵯に、同巡査に向つて、内ポケット内のものを取られまいとする強い潜在意識を抱きつゝ、無意識の防禦的反撃動作に出たのではないかと疑われるのである。

これを要するに、被告人はその右手拳の甲をもつて同巡査の右側頭部に一撃を加えた事実は明らかではあるが、それは被告人の思わずに出でた挙動、換言すれば、それは心理学上に所謂反射的行為ではないかとの疑いがあり、そうだとすれば、その時被告人に刑法第208条に規定する暴行罪の成立に必要な「暴行の意思」ありとするには疑いありというに帰するのである。

東京地裁八王子支部 昭和46年10月15日

明確な有形力の行使をしたとしても、暴行の意思がない限りは暴行罪とならない。
自動車運転の場合、許された危険の法理もあるので、暴行の故意の認定はなかなか難しいのではないかと思うのですが、福岡地裁小倉支部のように時速約80キロで車間距離2.5mで追撃している判例でも暴行の故意を認めていない。

ずいぶん前にある警察官と話したことがあるのですが、例えば左折巻き込み事故ってありますよね。

仮に自転車が怪我もしくは死亡に至った場合、一般的には過失運転致死傷罪に問われるわけですが、見落としによる過失なのか、行けると思ったけど実際はダメだったという過失なのか、それとも嫌がらせなど暴行を加える目的での故意なのかをどうやって認定するのでしょうか?
そりゃ捜査していく段階で、何らかの理由で被害者に恨みを持った人間が自爆覚悟による事件だったとかそういう事情があれば別でしょうけど。
危険運転致死傷罪に該当するようなことがあれば別ですが。

仮に「危険だった」という事実のみで暴行罪が成立するとなると、上の動画の覆面パトカーについても暴行罪が成立し、トンネル内事故の件も故意の暴行による傷害罪が成立しなければならない。
左折巻き込み事故も、未遂であれば暴行罪、事故に至っていたら故意の暴行による傷害罪が成立しなければ整合性が保てなくなる。
それこそ、逆走自転車を暴行罪にするのか?
何でもかんでも暴行罪と傷害罪が成立しかねない。
けど自動車運転における暴行罪の成否は、許された危険の法理を元に、その範囲を限定的に見ていると取ることができる。

上のトンネル事故では、衝突の際に一切の減速はないですが、当たり前の話として執拗に追い掛け回した形跡もない。
「はい終わり」のケースでは執拗に追い掛け回してハイビームなどをし、衝突させたので故意だということが理解できるわけで。

ちょっと前にブルベだかキャノンボールだかしている人が当て逃げ事故で重傷・・・みたいなのがあったと思いますが、あれがその後どうなったのか知りませんが、過失運転致傷なのか、故意の暴行による傷害罪なのかについては、故意であることを立証できるなら傷害罪でしょうけど、大型車が自転車のことを把握していなかったことが原因であれば過失でしかない。
執拗に追い掛け回したとか、先行自転車の行動を把握していたことが明らかであれば別でしょうけど、単なる見逃しだった場合にはどうするのでしょうか?

こちらで挙げた判例についても、刑事上の処分がどうだったのというと過失運転致傷と道路交通法違反(救護義務違反)です。
夜間、自転車通行禁止の区間の左端を、前後ともライトをつけて走行していた自転車に対し、後方から接触した事故です。

これは以前もちょっと紹介したと思いますが、自転車通行禁止区間を走行し、後方から衝突された事故です。 判決では自転車が通行禁止区間を走行した...

古い判例ではこのようなものもあります。
この判例は被害者に直接向けていない投石が暴行罪の故意となるかの判例です。

論旨は被告人Aの投石は被害者Bにこれを的中させろ目的でなく同人を驚かしてやる目的で同人の5,6歩手前を狙つて投石した或は投石した石かBに当るかも知れないという程度の認識わあつたとしてもそれを否定する認識の方
が相当強く働いて居ると見るべきであり認識ある過失と見るのが相当であると<要旨第一>いい暴行の事実を否定するのであるが暴行とは人に向つて不法なる物理的勢力を発揮することで、その物理</要旨第一>的力が人の身体に接触することは必要でない。例えば人に向つて石を投じ又は棒を打ち下せば仮令石や棒が相手方の身体に触れないでも暴行は成立する。群衆の中に棒を揮つて飛込み暴れ廻われば人や物に衝らないでも暴行というに十分である。して見ると右暴行の結果石や棒が人の身体に衝りこれに傷を負わせることは暴行の観念から離れ傷害の観念に移行包攝せられるものというべきである。記録によると被告人等は同僚で仲良しである被害者Bを驚かす目的で悪戯けて夜間同人に向うてその数歩手前を狙うて4,50m手前から投石したことが認められるが石は投げた所に止るものでなくはねて更に同方向に飛ぶ性質のものであるから数歩手前を狙つて投げても尚Bに向つて投石したといい得るし投石の動機がいたづらであつても又その目的が同人を驚かすことにあつても投石行為を適法ならしめるものでないから右被告人等の投石行為はBに向つて不<要旨第二>法の物理的勢力を発揮したもの即ち暴行を為したものといい得る。而して傷害罪は暴行がありその結果傷害が</要旨第二>生ずれば即ち成立し傷害の結果に対して認識することを要しないことは己に幾多の判例の示すところであるから仮令被告等がその投石がBには衝らないであろうと予想していたとしても、これは傷害の結果に対する認識に関することで傷害罪の成立には影響がない。論旨は投石の場合その人が身体に衝るまでを暴行の観念に包含せられるものとし被告人等に石がBに衝ることを予想しなかつた理由で暴行の意思を否定するのであるが右の理由からしてこれを採用しない。但し右の予想なきことは犯罪の成立には影響ないとしても犯情には重大なる差異を生ずるものであるが記録によると被告人等には投石がBに衝るかも知れぬという未必の故意があつたものと認められる。原審公判廷において被告人等はこの点を否定しているか人に向つてその数歩手前に投石すれば或は人に衝るかも知れぬと予想するのが常例であり特別の事情なき限り衝らないと思うとは条理に反し採用し難い。論旨はそれ故に理由がない。

東京高裁 昭和25年6月10日

この判例は4,50m手前から被害者の前方に投じた石が跳ねて被害者に命中している事案ですが、傷害罪成立のための暴行の故意の認定です。
被害者の供述は「石がたくさん飛んで来たので横を向いて姿勢を低くしたとき一間半か二間程先に落ちてはね返つたのが当りました」とあるように、多数の石を被害者前方数メートルを狙って投げた事件。
取り調べ段階では当たっても構わないとする未必の故意を自供しており、公判段階で否認に転じたケースです。

この判例から類推した場合、車が自転車の横スレスレを通過したとして、運転者が

読者様
読者様
いや、当てる気はありませんでしたよ。

このように言い訳されたとしても、【不法な物理的勢力を発揮】と捉えて、「認識ある過失」を否定し暴行の有罪に持ち込める・・・と考えがちなんですが、そこまで単純な話ではない。

というのも投石って、投石自体が危険行為ですがそもそも社会的に有益な行為でもないし、必要不可欠な行為でもない。
しかも軽犯罪法1条11号に抵触するような危険行為。
言い換えるなら元々社会的に容認されていない危険とも言える。

対する車の運転は、運転行為自体が危険性を秘めつつも、社会的に有益な行為で必要不可欠という理由で、一定の範囲で認められている(許された危険)。
そのため、許された危険の法理の中では、故意と過失の判断が難しくなり、かつ厳格にならざるを得ない。
他の車両や人間に車が向かう行為全てが有形力の行使でかつ未必の故意だという判断になると、パトカーが幅寄せした行為についても、暴行罪が成立しかねない。
接触が無くても暴行罪が成立するという点ではこの判例の価値はありますが、運転行為と投石では根本的な前提を異にするので、この判例を以って運転に係る暴行罪にそのまま適用できると考えるのであれば安易。

この許された危険の法理を説明しているのが、福岡地裁小倉支部の判例ですが、

自動車の運転は,それ自体常に重大な事故を生ずる可能性を内包する行為である一方,社会の多くの場面で日常生活上不可欠なものであって,交通事故を発生させるおそれのある危険な運転行為は,通常,それ自体道路交通法により,それによって死傷の結果が発生した場合には業務上過失致死傷罪(刑法211条),危険運転致死傷罪(同法208条の2,本件後の平成13年法律第138号により新設)等によって律することが予定されているものであるから単に危険な運転行為であるからといって直ちに暴行に該当すると解するのは相当でない。前記自動車運転に関する諸事情を考慮しつつ,前記暴行の意義に従い解釈すると,自動車を走行させることが暴行に該当するというためには,当該自動車を直接相手方の身体又はその乗車車両に接触させるか,接触させた場合と同程度に相手方の身体に対する具体的危険を発生させたことを要すると解すべきである。

福岡地裁小倉支部 平成14年6月3日

運転による暴行罪の成立要件を限定的に解釈している。
運転による暴行罪の成立は判例上でもずっと限定的に捉えられてきたというのが通説だったと思うので、故意の立証など簡単にできると語る人を見ると、かなり疑問。

車に対して80センチの幅寄せを行い、暴行罪で逮捕された事例はありますが、この事例は2キロに渡って幅寄せと、クラクション11回を繰り返したので故意である立証は容易です。
その後どうなったのかはわかりません。

上で挙げた判例は全て最終的に怪我とか死亡に至っている判例ですが、古い判例(東京高裁)を除くと、故意の認定として執拗な行為なのか、反復性・継続性をある程度基準にしているとも取れる。
故意である立証で簡単なのは、反復継続。

例えば、自転車の速度に合わせて、至近距離のままそれなりの距離を並走。

何度もハンドルを切って幅寄せを繰り返す

走行に適さない路肩のエプロン部まで追いやる。

至近距離の追い抜き、前方塞ぎを繰り返すなど。

故意ではないことを立証できる要素として、あまり強く働くものではないですが回避行動を取ったかどうかも一つの判断材料にはなり得ます。
判断ミスで左折被せ巻き込み未遂みたいになっても、車が間違えた!ということで一時停止するとか。
これは経験がありまして、交差点のちょっと前で追い抜きされて、おいおいと思っていたら、彼女も判断ミスだったことをわかったようで、一時停止して謝罪されたことがあります。
こういうのは単なるミスなことが理解できる。

上で挙げた判例をまとめます。

判例様態暴行罪の成立
東京高裁 昭和50年4月15日200m追従した後、車両通行帯のイエローラインを大きく超えて、右側の通行帯に進入し、最短30センチまで側方距離が縮まった。最終的には衝突し被害車両を対向車線に進出させて対向車と衝突。
福岡地裁小倉支部 平成14年6月3日走行距離が600m程度、時速約80キロで、前後関係が最短約2.5mまで狭まることを2,3回繰り返し、被害車両は最終的に脇道に高速度のまま退避し衝突事故。×

畏怖させる行為(脅迫)と暴行とを同視することはできない

神戸地裁姫路支部 平成15年2月20日時速約70キロの速度で,コンクリートブロック塀方向に幅寄せを開始し,約30m進行して自車左側面がコンクリートブロック塀の縁石まで約1.5mに迫った地点で,自車左側面を自動二輪車の右側面に衝突させた。被害者はは,被告人車両と衝突した直後,バランスを崩して縁石に自動二輪車をぶつけ,その後約6.5m走行した後,再び縁石に自動二輪車をぶつけるとともにコンクリートブロック塀にもぶつけて転倒
東京高裁 平成12年10月27日時速約100キロで最接近したときの車間距離(前後)は2.2~2.4m、併進時に最も接近したときで両車のドアとドアの間隔が約26センチ、加害車両は2,3回被害車両の窓ガラスを2,3回手で叩いている。
あと、直接的な暴行もあり。
東京高裁 平成12年10月27日最高で時速約100キロまで達し、最短1m以下の幅寄せを行い、強引に追い越して割り込みし、約15分間、距離にして約3キロに渡って執拗に追跡した。
福岡地裁 平成14年9月19日時速約80キロメートルで走行させ、ハンドルを2,3回小刻みに切って、本件車両の左側面をオートバイの右側面に接近させ幅寄せしオートバイは車線脇の幅約0.5mの路肩部分を走行することを強いられる。
津地裁 令和元年11月5日車間を詰められた被告人が、約4キロに渡って幅寄せし、時速約68キロでハンドルを右に切って第1通行帯から第2通行帯にはみ出し走行し、被害車両に衝突させた

執拗に繰り返しているものや、対向車線に進出させるほどの幅寄せを行ったもの、繰り返し幅寄せし通行に適さない路肩のエプロン部まで二輪車を追いやったものなどがありますが、一方で時速80キロで車間距離2.5mまで詰めた判例では暴行とは認めませんでした。

自動車事故のほとんどが過失として処罰されてきたのも、許された危険の中では故意の認定が困難だからだと理解しています。
このように側方通過の距離が近いだけのケース。

加害者が故意を認めていて略式起訴というのであれば別ですが、略式だと判例として出てこないのでどの程度あるのかは分かりません。
よそ見などで自転車の存在を見落としていた、違うところを注視していて見落とした、危険な側方間隔になっているとは一切思っていなかった、などでは故意ではなくなる。
まあ後述しますが、警察って結構強引に供述を引っ張ろうとしますけど。

自転車乗りとしてはクソ怖いので止めてと思いますが、こういうのが故意の暴行だと判断できる要素って、正直難しい。
脇見などの要因で前方不注視だった、という状況を打ち消せない以上、単に近かったというだけでは無理がある。
これで接触や、非接触驚愕事故があれば過失運転致死傷の問えるでしょうけど、故意である立証がないと暴行罪とか傷害罪とか傷害致死には問えない。

危険だったけど実害はなかった、というケースって判例を調べる限りでは見かけない。
理屈の上では成立するようなことでも、可罰的違法性の問題から起訴まで至らないケースもあるとは思うので、客観的危険性があれば警察も話は聞くと思いますが。

実際のところ、いわゆる幅寄せで暴行罪として書類送検まで持ち込むことは出来ると思いますが、前方不注視の結果、超至近距離で追い抜きしてしまったのか、ちょっと近いかなと思ったけど危険性があるとまで言えないだろうと軽信して追い抜きしたけど実は近かった(認識ある過失)というケースでは、故意である立証が困難になってしまう。
上の判例のように、執拗に幅寄せを何キロにも渡って繰り返したとか、明確な故意性を立証できる場合であれば別でしょうけど、単に近いというだけでは故意にはならない。
それこそ、覆面パトカーが結果的に幅寄せしたことが故意の暴行罪になるのか?というと、違うでしょう。
トンネル内事故を故意の暴行による傷害罪だとするのも、ムリでしょう。
仮にあのトンネル事故、自転車と接触せずに側方間隔30センチくらいのところで通過されたとして、自転車の存在を見落としていたというのであれば超危険行為とは言え暴行の故意は成立しない。
自転車が見えてから明確に「寄せた」というのであれば多少のチャンスはありますが、これも交差点手前などで左折を予定していた&何らかのミスがあったとなると故意とも言えない。

暴行罪単独でも当然成立する余地はありますが、暴行罪って約7割が不起訴です。
相手が暴行事実を認めているのであれば、略式起訴になるので判例として表に出ることもありません。
ただし暴行罪全体のデータを見る限り、略式まで行かずに不起訴事案のほうが圧倒的多数。

なので、接触もなく、事故に至っていないけど暴行罪として有罪になったケースってどの程度あるのかはわかりませんが、有罪に持ち込みたいのであれば相当ハードルは高いと思います。
特に相手が否認しているケースとか。
書類送検については刑事告訴が受理されたら必ずしなければならないことなので(刑訴法242条)、書類送検自体には特別な意味はありません。
どのような基準で不起訴にしているかも不明ですが、書類送検されて検察官の取り調べまで行けば、一定の圧力を掛けることになるとも言えますし、不起訴になれば意味が無いと思う人もいるかも。

個人的には、刑事告訴したりするのってちょっと手間がかかるので、安全運転義務違反など交通反則制度を利用して行政処分を下したほうがより迅速に解決するのではないかと思うのですが、現行規定では基準が無いので道交法の中で二輪車に対する側方通過の規定を明確にしないと話にならないと思う。

例えば先日見かけたこういう事例。

確実に違反だと言えるとしたら、左折方法違反(34条1項)。

(左折又は右折)
第三十四条 車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない

これは確実にアウトですよね。
34条1項の方法通りにできる限り左側端に寄って徐行していれば、本来は起こりえないので。
ただまあ、こういう危険な運転が34条1項の違反だけとなると、ちょっと切ない。

このような追越し・追い抜き時の側方間隔が近すぎるというケースでは、

追越し方法違反(28条4項)もしくは安全運転義務違反(70条後段)が成立するというのであれば話は分かりますが、これだけで暴行罪と言える故意をどうやって立証するのか?
近いというだけで暴行が成立するなら、それこそ上で挙げたトンネル内事故は暴行による傷害とか成立しないと辻褄合わないですし。
近かったけど接触に至っていないのが暴行罪(故意)で、衝突なり接触事故に至ったのが過失致死傷罪というのも普通に考えておかしい。

念のため書きますが、多車線道路における追越し方法違反(20条3項)はほとんどの場合成立しません。
一般道では交差点手前や専用通行帯がある場所以外では車両通行帯がないので。https://roadbike-navi.xyz/archives/26935/

なので個人的には二輪車に対する側方通過について、道交法で具体的距離を明記して取り締まったほうがいいのでは?と思っているのですが、二輪車側が受けた恐怖と、実際に下される刑罰(反則制度含む)の度合いが釣り合っていないようにも思う。
仮に左折時に被せるように追越し&左折プレイをされた場合、34条1項の違反だとすると、刑事罰は二万円以下の罰金又は科料。
反則金制度だと普通車は4千円です。
被害者が受けた恐怖と全く釣り合いが取れない。

刑事告訴って結構面倒で手間がかかるので、簡便な方法で取り締まりできる反則金制度の中で解決できた方がいいと思う。
過去3度刑事告訴したことがありますが、正直手間がかかるので面倒です。
1件は特別法によるものですが、検挙歴も判例も前例がないからダメと言われましたが、2ヶ月くらいかけて説得して条件付き受理まで持ち込んだものの、条件がその分野に精通した専門家の一筆を添えることことだったので面倒になって取り下げ。
これについては相談した弁護士さんも、どうやって説得したんですか?と興味津々のようでしたが、費用対効果がまるで合わないので無しにしました。
どの弁護士さんも一筆だけという形では受任できないので、代理人として委任する形じゃないと責任取れないのでお受けできないと言われたこともあるのですが。
まあ、警察を説得する段階で飽きてしまったという事情もありますがw
2件目は相談レベルで持っていきましたが、犯罪として成立しているけど捜査するわけにいかないということで却下。
これはちょっと特殊過ぎる事案なのですが、警察が裁判に介入する恐れがあるので、関わりたくない気持ちはわかる。
実質的被害者が存在しないということも一因ではありますが。
この事案は、単なる興味本位で聞きに行った面もあるので、個人的には犯罪が成立すると言われただけでも満足なんですが、確かに警察が介入すると相当ややこしいことになるのも確かなこと。
3件目は書けません。

どちらかというと書類作成が面倒なんですが、暴行罪は映像証拠があれば話は聞いてもらえるとは思うので、入り口は広くとも有罪に持ち込むハードルは高いと思う。
まあ、刑事告訴は受理しない傾向にありますが、そこは強気に交渉すれば何とかなる可能性はあるのでいいとして。
事実上不起訴連発なのと、否認されたときにどうやって故意を客観的に立証するのかは謎です(ただし警察さんが強引に故意であることを吐かせることもあります)。

なので個人的には、刑事告訴とかあまりお勧めしていませんが、それでもしたい人は有罪に持ち込むには相当なハードルがあって、実質的にはほぼ不起訴であることを理解した上でやった方がいいと思う。
変な期待をしていると、後になって後悔する人もいそうなので。

まあ、警察や検察が動いて事情聴取が始まれば、相手に一定のプレッシャーは掛けられるという点はあります。
20代の頃、参考人という扱いで10時間弱事情聴取されたことがあるのですが、昔お世話になった人が、ある資格を持っていないと出来ないプレイをした。
それが資格なしだったことが発覚して、昔から不自然なことが無かったか聞きたいということで突如警察から電話が来たというどうでもいい案件でして、私自身は物理的にその犯罪に関われないので何ら嫌疑はありませんw

この犯罪、日本で適用事例が無いとのことで警視庁が大騒ぎしたのですが、最大で罰金10万円(?)だかのクソどうでもいい案件に、10時間弱拘束され、知っていることは全部話せと迫られ、私には何ら容疑がないはずなのに容疑者であるかのように扱われ、出来上がった調書は私が語っていないことばかりというクソ体験をしたことがありますw
あまりに面倒なので途中、

管理人
管理人
ぶっちゃけ言ってもいいですか?

たぶん刑事さんは、何か隠された情報を私が語り出すサインだと思ったんでしょうね。
この瞬間、刑事さんの目が輝いたというか、キランと光りましたから。

ただね、私が「ぶっちゃけ」といったのは、何ら嫌疑もない私にクソ扱いするなら協力する義理が無いから帰りますというサインだったんですよw
なのでそのまんま伝えたら、急に態度を変えて協力してくれと言ってくるし、それでいて出来上がった調書には【〇〇は昔からカネの羽振りがよく、けど一方では嫌われていた】とか書いてある。
私が語ったのは、【ややぶっきらぼうで誤解を生む面はあるけど、学生時代に何度も定食屋で昼飯を奢ってもらったり、飲みに連れて行ってくれたりしたので恩義もあるし悪い人だとは思わない】ですよw
これが「カネの羽振りがよく嫌われていた」に変わるんだから、そりゃサインしませんよと強く言ったら、「じゃあ最初からやり直しだ!調書を作り直すからもう何日か来てもらうぞ!」と怒鳴られる。
この1件以来、参考人という扱いでは警察に協力しないことに決めています。

ちなみに羽振りがいいと入れたい理由は、警察側は盛大なドラマを作りたかったようで(←皮肉です)・・・創作って怖いですよねw
この事件は私が聞いている限りでは起訴猶予だったようですが、警視庁が大騒ぎしたからにはなんとしてでもドラマを作り上げるという執念は感じました。
私は何度も「腹が減った」と暗にかつ丼を要求しましたが、すべて無視されています(そもそもかつ丼の提供は買収に当たる恐れもあるのでできないですが)。
取り調べってこんな感じで進むわけで、それなりにプレッシャーは掛かるでしょうけど、噂ではこの被疑者の人は何か月も掛けて事情聴取があったとか。

実際、いまだに取り調べってこんなんですよ。

こちらの事例は結構有名ですが、今月最高裁で判決が出ますよね。

捜査が入れば、自白強要されるので書類上は故意になるしかないとは思いますが。

ネットで検索すると、自転車に対する幅寄せの判例もあるとか出てくるのですが、サッパリ見つかりません。
民事だったら50件くらいはヒットしますが、民事は犯罪事実を争うわけでもないですし、あまり意味はない。
自転車に対する幅寄せの判例があるとネットにある一方、判決年月日や原審がどこなのかすら出てこないというのも、本当に存在するのかは怪しいですが、恐らくはそういう事例があっても略式起訴で終わっているか、不起訴なんだろうとは思われます。

ネットで見る限り書類送検まで持ち込んだという話は出てくるものの、その後の話も出ていないのでどうせ不起訴なんでしょう。
この手の話って、略式起訴で有罪になっているケースもあるのだろうと思いますが、暴行罪は不起訴率も高い。
故意なのか脇見などの不注意なのか、立証することは困難。
警察も謎の脅しみたいなの使って故意だったことにしたがるのは目に見えてますが。
あいつら、平気で自白強要と誘導尋問しますからw

こういうのをあたかも簡単に出来ることのように語る人には正直なところいかがなものかと思うこともありますが、なぜ妨害運転罪が道交法に創設されたのか、妨害運転致死傷罪などが別に存在するのかなどを考えれば理解できると思う。

単に下手なドライバーと、嫌がらせと、判断ミスをどうやって見分けるんですかね。
何ら暴行の故意が無いけど、下手なだけで有罪になってみたり、ミスしただけで有罪になるというのはさすがに法治国家としてあり得ない事態なので、ここは分けるしかない。
ぶっちゃけた話、判断ミスとか、下手なだけで交差点に近づいているのに自転車を追越し&左折しようとする車なんて普通にいる。
以前、そういう状態で車のドライバーに謝られたこともあるのですが、距離感ミスっているだけなんで、それは当然のように暴行の故意ではない。
わざわざ窓開けて謝ってきたくらいなので純粋にいい人なんだろうなと思ったけど、そういうのも許せないというのであれば単に心が狭い人なんじゃね?と思ったりする。

どの道、接触が無かったケースでは映像証拠が無いと話にならないので、必要だと思う人はドラレコを装備するしかない。
相手が認めていて略式起訴で有罪というなら別ですが、否認事件だとかなりハードルが高いようにしか思えないですが、通行に適さない路肩のエプロン部まで退避しないと避けられない幅寄せとか、近づいてきてからハンドルを切って寄せたとか、故意であることが客観的に推認できる程度は無いと難しいと思う。