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車両通行帯でも自転車は左端を走ることが通常とする判例。

まあ、何度も書いているように一般道には車両通行帯なんてほぼ無いのですがw

メールで質問を頂いていた件なのですが、 確かにいろんな記事にとっ散らかっているのも事実なので、全部まとめます。 用語...

車両通行帯は、交差点手前か、専用通行帯くらいしかありません。

そのことは置いといて、自転車と車の事故の判例がありました。

片側2車線の車両通行帯での事故

判例は福岡地裁久留米支部 令和2年6月12日です(控訴棄却、福岡高裁令和2年12月8日)。

片側2車線の車両通行帯の第1車線を通行する自転車と、後続車の衝突事故の判例です。
なお、法定の車両通行帯なのかはやや謎ですが、ここを争っている判例ではありません

この道路、元々は有料道路だった歴史があるようで、現在の制限速度は60キロですが飛ばす車が多い様子。
元々有料道路だった関係もあるんでしょうけど、歩道はなく路側帯もちょっとある程度。
事故当時は雨、かつ深夜の事故。

このような状況で、後続車が時速約70キロで進行中に、前方に左側端を通行する自転車を発見。

後続車はそのまま追越しできると考えて進行したものの、6m弱の地点で自転車が右方向45度に進路変更。
その結果起こった事故です。

なおこれは第1事故で、実際には第2事故も起きているのですがそこは省略します。

原告(自転車側)の主張

(ア)自転車の走行は道路交通法にのっとったものであること

自転車は軽車両であり、原則として車道を通行しなければならず、第1事故現場は、車両通行帯が設けられた片側2車線の道路であるから、道路交通法上、自転車は、道路の左側端から数えて1番目の車両通行帯を通行するべきであるが、その際、左端に寄る必要はない(道路交通法17条、18条1項、20条1項)。したがって、自転車は、第1車線内であれば、どの位置を通行してもよく、第1車線内で多少ふらつき、又は第1車線内で左端寄りの位置から車線中央付近に位置を変更して走行したとしても、道路交通法にのっとった走行方法であって、何ら過失がない

(イ)被告車が追越しの際に第2車線に車線変更しなかったこと

道路交通法20条3項によれば、車両通行帯が設けられた道路で他の車両(自転車を含む)を追い越すときは、1つ右の車両通行帯を通ってそうこうしなければならないにもかかわらず、被告車は、自転車を追い越す際、第2車線に車線変更せず、第1車線を走行したまま追い越そうとしたから、この点に過失がある。

その他、後続車が回避行動を取らなかったこと(減速する等)、後続車が大型車でありより高度な注意義務が課されていることなどを主張しています。

ここに関わる裁判所の判断です。

自転車は、後方から接近してくる被告車の動静に注意を払わず、何らの合図もなく、突然、斜め約45度の角度で右方向に進路変更して被告車の右前まで移動したのであるから、この点について、自転車にも過失が認められる。

この点について、原告は、道路交通法上、自転車は、第1車線のどこでも自由に通行することができるから、第1車線内での進路変更は過失に当たらない旨主張する。しかし、本件道路のような、高速で走行する自動車が多く、中央分離帯のある片側2車線の幹線道路を自転車が通行する場合、自動車と自転車の速度差は一般道よりもさらに大きく、自転車は、常に後方から進行してくる自動車に追い越されることになり、自転車が後方から直進してくる自動車の前に進路変更すれば、自動車と衝突する可能性は極めて高いのであるから、自転車は第1車線の左寄りの位置を通行するのが通常であり、これを前提にほかの車両も通行するものである。したがって、本件道路においては、自転車が第1車線内で右寄りに進路変更する際には、後方から高速度で走行してくる自動車の動静に注意しなければならないことは当然であって、これに対する注意を欠いたことは、自転車運転者の過失となるというべきであり、道路交通法上は走行方法が違法でないからといって、その過失を否定することはできない。

福岡地裁久留米支部 令和2年6月12日

当たり前ですが車の過失のほうが大きいです。

中型車である被告車が自転車に接触すれば生死に関わる事故になること、本件事故時は雨天であったから、自転車が滑ったりふらついたりする可能性が高いことに照らすと、自転車の動静に注意し、これを追い越すにあたっては、第2車線に車線変更するなどして、自転車との間隔を十分開ける必要があったにもかかわらず、自転車がそのまま直進すると軽信し、自転車を避けるための進路変更等を全くせず、減速することもなく、漠然と直進した結果、自転車と衝突したのであるから、この点について過失が存ずる。
確かに、自転車は、突然、右方向に進路変更したものであるが、被告車が、車線ないし進路を変更していれば、自転車との接触を避けることは可能であったから、自転車の突然の進路変更をもって、被告の過失を軽く見ることはできない。

福岡地裁久留米支部 令和2年6月12日

もちろんですが時速70キロという点も問題視されています。
高裁では控訴棄却されて判決確定していますが、多少の文言が追加されていて、自転車に関わるところだとここでしょうか。

「進路」とは、当該車両の幅に相当する道路の部分であり、車両(自転車を含む。)は、他の車両通行帯に進行方向を変える場合のみならず、同一車両通行帯内であっても、みだりに進路を変更することは禁止されている(道路交通法26条の2第1項)。

福岡高裁 令和2年12月8日

まあ、これは当たり前のことですが。
ざっと見た感じでは、そもそも法定の車両通行帯であるようには見えないのですが、まあそこは争いが無かったようなのでそういうもんです。

こういう判例を見ていると思うのですが、やはり二輪車に対する側方通過をする際の距離については、道交法の中で明確に示した方がいいと思う。
ちなみにこの判例、自転車:車=30:70です。
自転車の過失の大要素は、進路変更違反(26条の2第2項)になるかと。

ちなみに、控訴審では、自転車側が横風による影響等も主張しているようです。
これについてはこのようになっています。

控訴人が挙げる上記要因は、いずれも推測の域を脱していないし、仮に天候、道路状況等の要因によって、自転車のハンドルを確実に操作出来ない状況に至っていたのであれば、自転車の搭乗(運転)自体を差し控えるべきである(道路交通法70条)

福岡高裁 令和2年12月8日

これは一般的な注意義務になると思いますが、状況に応じた速度で乗ることや、ハンドルが持っていかれるような状況であれば載らないという選択肢を行使すべきこと。

ちなみに下記動画の道路は片側2車線ですが、車両通行帯ではありません。
仮に車両通行帯であったとしても、同一車線内でみだりに進路変更することは違反です。

どんどん右寄りに移動していますが、そもそも車両通行帯ではないので18条1項のキープレフト違反であると同時に、進路変更違反でもある。
事故回避義務とか知らない人なんでしょうかね?

中途半端に法律を理解すると間違う典型例かもしれません。

メールで質問を頂いていた件なのですが、 確かにいろんな記事にとっ散らかっているのも事実なので、全部まとめます。 用語...

法で定めるべきこと

上の判例はそもそも、なんで自転車が進路変更はわかりません。
まさかどこかの人のように、ブロックしたかった・・・わけではないと思うのですが。
雨が降っていて後続車の音を聞き逃したのかもしれないし、雨によりハンドル操作を誤ったのかもしれないし。
ただまあ、どちらせによ二輪車への側方通過に明確な距離規定があればこのようなことにはなりません。
時速70キロのまま、同一車線内で追い抜きしようとしたのだろうと思われますが、その速度域では仮に側方間隔1mあっても相当怖いです。
けど道路状況から検討しても、右に寄る理由があるようにも思えず。

ちょっと話は変わりますが、仮に後続車の音を聞き逃した結果だとして。
音楽聞きながら自転車に乗る人って、周りの音が聞こえているとよく言いますが、物理的に聞こえているのと、認識として聞こえているのって違うと思っているので、お勧めしません。
必要とする情報は、自分で認識している音。
けど道交法上では、イヤホンやヘッドホンで音楽を聴いているだけでは違反にならず、安全に必要な音が聞こえない状態になって初めて違反になる(71条6号)。
以前、ハンズフリー通話について疑義があったので聞いてみたのですが、自転車のハンズフリー通話を禁じている都道府県は基本的に無い。
違反となるのはイヤホンやヘッドホンと同じで、「安全に必要な音や声が聞こえない状態」になって初めて違反になる。

けど歩道を走りながらハンズフリーで通話している自転車とか、どうみても危ないんだよなぁ・・・
聖徳太子並みの実力が無い限り、周囲の音をきちんと認識し、視野も確保したまま、自転車に乗って電話することが可能だとは思わないけど、私の能力値が低いだけでできる人は出来るんですかね。
やろうとも思わないけど。

けど事故を起こすと、違反ではなくても過失にはなり得ます。
いまだに道交法違反がなければ過失がないと思っている人もいますが、それは一部の要素に過ぎない。

仮に車両通行帯であれば、道交法上は第1通行帯の中であればどこでも走っていいと言えますが、民事上では

自転車は、常に後方から進行してくる自動車に追い越されることになり、自転車が後方から直進してくる自動車の前に進路変更すれば、自動車と衝突する可能性は極めて高いのであるから、自転車は第1車線の左寄りの位置を通行するのが通常であり、これを前提にほかの車両も通行するものである

まあ、当たり前のことです。
第1通行帯ならどこでもいいんだ!なんて考えでブロックするために進路変更するのはそもそも違反になりかねない行為。

ただまあ、車の方も時速70キロも出すのであれば、相応の側方距離を取るべきこと。
法律上、具体的な規定が無いことが最大の原因だと思っているのと、暴行罪というのは事実上成立する可能性が極めて低いことを考えれば、やはり道交法の中で二輪車に対する側方間隔を規定するべきではないでしょうか?
こんな事故は本来、双方が気をつけていれば何ら問題ないわけなので、もったいない事故だなぁと思う。
車の暴行罪の判例とかを見ていても、イキッてるオートバイを見つけたから追撃したら死んでしまった。
けど実はそのオートバイ乗りは知り合いだった・・・みたいな切なすぎるものもある。

暴走族狩りと称して事故を起こした判例とか、イラっとしたから幅寄せして死亡事故を起こした判例とか、ちょっとの我慢があれば何も起きないと思うのですが・・・