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自転車の車間距離。先行自転車が急ブレーキして衝突した場合の過失割合は?

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自転車同士の衝突については、判例が車ほど多くありません。
自転車同士の事故だと、対向方向での衝突が多いですが、自転車同士が同一進行方向にあり衝突した判例もあります。

自転車同士が同一進行方向で衝突

判例は京都地裁平成24年3月7日。
幅員4mほどの生活道路で、原告も被告も60代。

 

先行自転車(被告)が時速11キロ程度で進行中に、前かごから荷物が飛び落ちて、やや左にハンドルを切り急停止。
後続自転車(原告)がそこに突っ込んで起こった事故です。

被告には、安全を確保するために特に必要とされる事情がないのに、後続車の進行を妨害するような急ブレーキをかけたものとして、道路交通法24条違反の過失が認められ、被告は、原告に対し、民法709条に基づく責任を負う(なお、原告は、明示的には道路交通法24条違反の主張をしていないが、原告の車間距離及び停止距離を問題にしており、原告の上記主張に、急停車により走行妨害されたとの主張を予備的に含むものと解して差し支えないものと考える。)。

 

一方、原告は、前方を進行する車両の状況を注視せず、車間距離の保持を怠った過失が認められ、両者の過失を考慮すれば、原告の過失を7、被告の過失を3とするのが相当である。

 

京都地裁 平成24年3月7日

急ブレーキを掛けたことには争いがなく、原告の主張は「被告の進路妨害」、被告の主張は「原告の車間距離保持義務違反と前方不注視」。

 

先行自転車30%、後続自転車70%としています。
なお、車間距離は約7m、先行自転車が急ブレーキを掛けてから停止するまでの制動距離は約3.6mとなっています。

 

この判例で注意すべき点があるとしたら、先行自転車が急ブレーキを掛けた事情でしょうか。
「安全を確保するために特に必要とされる事情がないのに」とあるように、仮に歩行者の直前横断などの事情があれば、急ブレーキ違反が成立しない。

(急ブレーキの禁止)
第二十四条 車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。

危険防止のためやむを得ない事情とは言えないため、先行自転車にも30%の過失をつけています。
仮に24条違反が認められない状況であれば、基本は0:100か10:90程度かと思われます。

自転車の車間距離

車間距離保持義務は、先行車が突如速度ゼロになったときでも衝突しないだけの間隔を求めており、先行自転車の制動距離は一切考慮されません。

(車間距離の保持)
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

実際のところ、法律上の解釈で言うならば、ロードバイクが時速30キロで走行している場合、車間距離は普通車基準でだいたい2台分程度を求めている(乾燥路面)。
判例では以下のようになってます。

必要な距離とは、追従距離であり車両等の種類、構造、速度、性能、道路の状況、昼夜の別、見通しの状況、積載量、制動操作の運転技術等の諸条件によって異なるので、これを一律に決定することは困難である。

 

昭和30年3月10日 名古屋高裁

上の判例では空走時間を1秒、摩擦係数を0.55で計算していますが、時速30キロで計算すると停止距離は約12m。
仮に摩擦係数0.8で計算したら10m。
理屈の上ではロードバイクが時速30キロで走行する場合、最低でも10mくらいは車間距離を空けていないと違反と言えますが、この理屈で言えば、ほとんどのグループライドは違反ですかね笑。

 

なお上の判例では、先行自転車は事故現場が住宅街であることから、自らの過失を10%減じるべきという主張もしてます。
これの意味ですが、生活道路は歩行者の飛び出しが普通に予見されるからという意味だと思われます。

被告は、本件道路は住宅街にあることから、被告に道路交通法24条の違反があるにしても、被告の過失を10%減じるべきであり、被告の過失は2割にとどまると主張する。しかし、本件事故現場は、住宅街にあるとはいえ、本件道路の東側はフェンスに囲われた駐車場であり、歩行者等が本件道路を横断することはあまりないことからすれば、被告の過失を10%有利に斟酌すべき事情にあたると解することはできない。

 

京都地裁 平成24年3月7日

確かに生活道路だと、歩行者が急に横断することはあるから、先行自転車が急停止することも考慮した車間距離を保持すべき注意義務があるとも言えますが、フェンス張りの駐車場だから関係ないよね?ということで否定してます。

 

昭和30年名古屋高裁判例でも、「見通しの状況」「道路の状況」により左右されるとしてますが、確かに一律で何mという車間距離を求めているわけではなく、状況次第ではさらに車間距離を取るべき注意義務があるとも言える。

 

車間距離保持義務違反は、あまり厳格に取り締まりしているわけじゃないのと、自転車の場合は全くに近いレベルで取り締まりしていないのが実情。
実際には、車間距離保持義務違反って高速道路くらいしか問題視されてないんですけどね。
車間距離保持義務違反は、距離の認定もしないと違反を取れないため、反則金制度がない自転車&一般道ではなおさら取り締まりしてないに等しい。
自転車のように反則金がない場合、車間距離を認定しないと起訴出来ませんし。

 

ただまあ、自分が車間距離違反していることを述べつつも、他人のロードバイクについてやたらと車間距離違反だと糾弾するような人もいるので、なかなか凄い世界だなと思ったりします。

 

自分は良くても他人は許さん!という人もいますからね笑。

 

なお、このように事前に同意書を書いたとしても、法律上は無効になります。

 

同意書なんて基本無意味。
ロードバイクの世界では、車間距離を詰めたドラフティングはそこまで珍しいものではないわけですが、レース以外では車間距離保持義務違反に問われる可能性があります。 まあ、実態として取り締まりしているかどうかは別ですが。 同意書があればOK? 先行...

 

ロードバイクでは走行テクニックとしてドラフティングがありますが、公道でドラフティング走行した結果、怪我や死亡に至っても、事前に同意書を取っておけば免責される・・・なんてことは全くあり得ない話。
違法なことをした結果、死んだり怪我をした場合には当然刑事も民事も責任を問われるし、公序良俗に反する同意書は民法90条により無効。
法律をわかってなくても普通の感覚を持っていれば理解出来るかと。

 

実際のところ、自転車の車間距離が問題になるのは、事故が起きたときくらいしかありません。
事故防止のため道路交通法を守るわけですが、自転車については警察も甘い。

 

まあ、事故を回避出来る程度の車間距離は必須ですね。

 

けどロードバイクの場合、車間距離を詰めた後続自転車が吹っ飛ぶシステムなので、ある意味では車間距離を詰めた後続自転車の自業自得とも言えるのかと。

 

ちょっと話は変わりますが、「免責同意」について。
サイクルイベントやレースでは、事故が起きても主催者は免責されるみたいな同意書を提出していることは一般的。
ただまあ、主催者が管理責任や注意義務違反を問われた判例もあります。

 

主催者側の賠償責任を否定した判例でも、免責同意は無効と判示されてるものも珍しくはない。

 

よくサイクルイベントやレースにて、リカンベントバイクが参加不可になっているのを見かけますし、DHバーは禁止というのも一般的。
こういうのって走行挙動が異なる自転車を混在させることの事故リスクを最大限回避したい主催者側の気持ちが出ていると思うのですが、仮に混在させて事故が起きたときに、主催者が被害者から訴えられるリスクもある。

 

「走行挙動、走行性能が異なる自転車を混在させてサイクルイベントを開催し、主催者は事故回避のための管理責任や注意義務を怠った過失がある。事実、他のサイクルイベントではリカンベントバイクを禁止しているか、出走順番を変えて混在しないように注意義務を果たしている。」みたいな訴えをされたときに、裁判所が主催者側の責任を認めるかどうかは別として、純粋に「面倒」だからなのではないでしょうか。
訴訟提起されたら弁護士立てて弁護士費用もかかるし、勝っても負けても一定の金銭的負担、労力が発生する。

 

面倒なことは最初から排除しておいたほうがハッピーというだけなのかも。

 




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