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横断歩道を歩行者専用信号機に従って横断する自転車は、38条1項の優先的地位はないとされた判例。

今回の判例は、現実的にはよくある「横断歩道外斜め横断自転車の判例」です。
歩道から飛び出てくる自転車の判例ですが、今まで挙げてきた自転車事故の判例とちょっと違います。

こちらにまとめ直しました。 先日このような記事を書いたのですが、 記事でも書いた...

横断歩道外を歩行者用信号機に従って横断

判例は神戸地裁令和元年9月12日です。
原告が自転車、被告はタクシー会社(Bはタクシー乗務員)。

まずは事実認定。

ア 通称◯◯幹線と呼ばれる東西道路は、対面通行式の幹線道路で、本件図面のとおり、東行車線は3車線、西行車線は4車線であり、東行車線と西行車線との間は中央分離帯で区切られている。東行車線の幅員は9.8m、西行車線の幅員は12.5m、中央分離帯の幅員は2.4mである。
本件交差点は、△△から阪急b駅に向かう南北道路と東西道路が交差する交差点である。

イ 被告車は、南北道路の北側(△△側)から南に向かって進行し、東西道路に左折進入するに当たり、本件交差点の手前で信号待ちのために停止し、自車対面信号が青色に変わったが、本件横断歩道は通行人が多いので、通行が途切れるのを待って本件交差点を左折し、左折が完了して本件横断歩道を通過し、東西道路の第2車線に進入して東方向への進行を開始したところ、原告が、被告車左斜め前の路外から東西道路に進入し、北東から南西に向かって本件横断歩道方向へ斜めに進行して被告車の直前を横切ろうとしたため、原告自転車の前部と被告車の前部が本件衝突地点(本件横断歩道東端から6.2mの地点)で衝突し、原告は、原告自転車とともに転倒した。

文章からイラスト化してみました(細部の間違いなどがある可能性。正確性は保証しません。)

これに対して、裁判所の判断。

道路交通法上、自転車は軽車両に該当し(同条2条1項11号)、車両として扱われており(同項8号)、交差点における他の車両等(同法36条)との関係においても、車両に関する規定の適用により、四輪車や単車と同様の規制に服する(自転車の交通方法の特例が定められているものは除く。)。交差点を左折する四輪車にもその進行にあたっては前方を確認すべき注意義務があることは当然であるが歩行者用信号規制対象自転車であっても、横断歩道では歩行者が横断歩道により道路を横断する場合のような優先的地位(同法38条1項)は与えられておらず、また、他の車両との関係においてはなお安全配慮義務(同法70条)を負うと解されるから、安全確認や運転操作に過失がある場合は、自転車の運転者は、相当の責任を負わなければならない。

前記認定のとおり、本件事故は、原告が、東西道路に本件横断歩道が存在するにもかかわらず、これを通らずに被告車の左方斜め前方から東西道路に進入して同道路を斜め横断しようとしたために、本件交差点を左折後に本件横断歩道を通過して第2車線に進入して直進しようとしていた被告車の直前を横切ろうとしたことから被告車と衝突したものである。
自転車が道路交通法上車両として取り扱われていることからすれば、本件衝突地点をもって、原告が横断歩道を横断する歩行者と同一の保護範囲内にあるということはできないし、本件衝突地点が横断歩道の直近であるということもできない。また、被告車に設置されていたドライブレコーダーの画像によれば、原告自転車が歩行者と同程度の速度で走行していたとは認められ難く、歩行者の一般的な歩行速度よりは相当速い速度で東西道路に進入したと認められ、一方で、被告車が原告自転車と比較して高速度で走行していたと認めることはできない。しかも、被告車は衝突直前にはすでに本件横断歩道を通過して第2車線に進入し、直線走行への態勢を取っている。本件事故は、その直後に原告自転車が飛行車の直前を横切ったことによって発生しているが、原告が原告自転車の右方方向から、走行してくる車両に注意していた様子は一切うかがわれない。

一方、ドライブレコーダーの画像によると、Bは、主として被告車の右方(本件横断歩道付近)に気を取られていた様子がうかがわれ、自車前方の確認が十分ではなかったことも認められる。
このような事故態様からすれば、本件事故は双方の過失が相まって生じたものというべきであり、その過失割合は、原告が本件事故当時70歳であったことを考慮しても、原告40%、被告60%とみるのが相当である。

神戸地裁 令和元年9月12日

この判例では、横断歩道を歩行者専用信号機に従って横断する自転車には38条1項による優先的地位はないことと、安全運転義務(70条)を負うことがまず確認されています。

その上で、自転車が取った横断方法は横断歩道を横断したとも、横断歩道の直近とも認められず(衝突地点は横断歩道の端から6.2m)、高速度進入、注視義務違反などを認定。

この判例で意味があるのは、歩行者専用信号機に従って横断歩道を横断する自転車には38条1項による優先的地位はないと確認されたところでしょうか。
これは38条の解釈からすれば当然なのですが、仮に横断歩道上を横断していた場合、横断歩道外よりは過失が下がると思われますが。

こちらにまとめ直しました。 先日このような記事を書いたのですが、 記事でも書いた...

勘違いしてはいけないこと

道路交通法38条1項は、横断歩道を横断する歩行者と、自転車横断帯を横断する自転車に対する優先規定。
横断歩道を横断する自転車に対しては、車両は38条1項による一時停止義務を負いません。

(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

ですがこれは38条だけを見た場合の話で、事故を起こせば車道を通行していた車両は安全運転義務違反や、過失運転致死傷罪に問われます。
なので38条による一時停止義務が無くても、事故を起こせば犯罪になるのでなるべく自転車を優先させたほうが安全かと。

ただしこれ、自転車ユーザーが勘違いしていることは多いと思うんです。
横断歩道を横断した以上、歩行者同然に扱われると勘違いしている人は多い。

横断歩道を横断する自転車には優先権がないことは自転車ユーザーが知っておかないと、事故リスクが高まりますし、事故の後の民事でも痛い目を見る可能性があります。

一応、国家公安委員会の「交通の方法に関する教則」によると、このように記されています。

道路を横断しようとするとき、近くに自転車横断帯があれば、その自転車横断帯を通行しなければなりません。また、横断歩道は歩行者の横断のための場所ですので、横断中の歩行者がいないなど歩行者の通行を妨げるおそれのない場合を除き、自転車に乗つたまま通行してはいけません

本来は横断歩道に歩行者がいる場合、25条の2第1項により自転車に乗ったまま横断するのは違反。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない

「おそれ」だけで成立しますが、だいぶなあなあになっているのも事実。
歩行者を実際に妨害しない限り違反になることは事実上ありませんが、横断歩道を横断する自転車には優先権がないことは、知っておかないとダメだと思う。

もちろん横断歩道外から横断する場合には、より危険性が高まるのでやめたほうがいいかと。
以前もチラっと書きましたが、

まあまあどうでもいい話なんですが、ちょっとこれは酷いなと思うことがありまして。 ええと、これは完全に間違い。 道路外に出る方...

手信号出したら自転車が道路外に右折することが優先で、後続車は妨害したらいけないと警察のTwitterに絡んでいた人すらいますが、逆です。
優先順位間違って覚えていたら、大事故リスク。
まあ、警察のTwitterに対して、間違った法律解釈を披露する腕前についてはいろいろヤバいと思うけど。