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古い判例における「横断しようとする歩行者」。

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横断歩道関係で古い判例を一つ。
横断しようとする歩行者」に該当するかを争った、純粋に道路交通法違反容疑の判例です。

横断しようとする歩行者

弁護人の論旨第一点および被告人の論旨(いずれも事実誤認)について。

 

原判示事実は、原判決がかかげた証拠により、十分に認めることができ、記録を精査しても、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認の疑いはない。

 

所論は、被告人は本件道路左側部分の中央部のあたりを時速約30キロで進行し、本件横断歩道手前約30mの地点で、左側道路から横断歩道に一歩足をふみ入れた老人を発見した、老人はそれからさらに一歩位前に出てから足を横に開き、ステッキをついて完全に立ちどまり、県庁方向からの車の流れや右側信号の方を見ていた、被告人は走りながらこの老人の動向を見守り、老人が自分の安全を考えて横断を一時あきらめ、進行してきた被告人の車を含めた十数台の車両を進行させ終り、信号により車両のとだえた後に横断歩道を渡ろうとしているものと判断し、スピードを約20キロに落し、安全を確認しながらそのまま停止することなく、車道左側部分の中央部を、被告人の立止つているところとかなり余裕をおいて進行したものであり、なお、老人の停止していた個所のすぐ先の左側には貨物自動車が3台停車していたので、老人は何らの危険を感じないで停止していたし、また、本件犯行を現認して、被告人を検挙した警察官は、右貨物自動車のために、老人の行動を明瞭に確認することのできない状態にあつたのである、と主張する。
そこで考察するに、原判決挙示の証拠中、証人の原審公判廷における供述を総合すれば、

 

(1)  歩行者である老人は、横断歩道によつて、古町通りから、白山公園入口に向けて車道を横断するため、歩道から横断歩道に2、3歩足をふみ出したが、被告人の車を先頭に十数台の車両が進行してくるのを見て、その場に一時停止したものの、その際別段歩道上に引き返すような素振が見受けられなかつたことが、明らかであり、右事実に徴すれば、右老人は、横断歩道によつて、古町通りから白山公園入口に向けて車道を横断しようとしたものであるが、被告人の車を先頭に十数台の車両が進行してくるのを見て、横断に危険を感じ、その安全を見極めるため、一時停止したにすぎないものであつて、歩道上に引き返すような素振を見せる等外見上明らかに横断の意思を放棄したと見受けられるような動作その他の状況が認められない以上、直ちに横断の意思を一時放棄したものとは認められないこと、

 

(2)  被告人は一時停止することなく、歩行者である右老人の直前1.5mないし2mのところを通過したこと、

 

(3)  右老人が立止つていた個所のすぐ先の左側には貨物自動車が停車していた、事実がなかつたこと、

 

(4)  警察官は、被告人および右老人の行動を近距離から現認し、被告人が横断歩道直前での一時停止を怠つたものと認めたので、同人を検挙したものであること、

 

をそれぞれ認定することができ、右認定に反する被告人の原審公判廷における供述は、信用することができないから、右主張を採用することができない。論旨は理由がない。

 

弁護人の論旨第2点(法令適用の誤り)について。

 

所論は、道路交通法第71条3号にいわゆる、「横断しようとしているとき」とは、歩行者が横断意思を有し、現実にその外形的行為、状況からその意思が明らかに感知せられる場合をいうものであるところ、前述のように、本件老人は、しばらく待てば信号の変化により、車の進行がとだえるので、それまで横断をさしひかえようとして、そこに立ちどまり、車の進行を見ていたものと考えられるから、このような場合にまで右法条を適用するのは誤りであると主張する。そこで考察するに、右法条にいわゆる「横断しようとしているとき」とは、所論のように、歩行者の動作その他の状況から見て、その者に横断しようとする意思のあることが外見上からも見受けられる場合を指称するものであるが、論旨第一点において説示したとおり、老人が横断歩道で立ちどまつたのは、そのまま横断すれば危険であると考え、その安全を見極めるためにしたものにすぎず、横断の意思を外見上明らかに一時放棄したものとはいえないから、この場合は、前記法条にいわゆる「横断しようとしているとき」に該当するものというべきである。そこで右主張もまたこれを容れることができない。論旨は理由がない。

 

東京高裁 昭和42年10月12日

まず当時の法律から確認します。

(運転者の遵守事項)
第七十一条 車両等の運転者は、車両等を運転するときは、第六十四条から第六十六条まで、前三条及び第八十五条第三項に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を守らなければならない。
三 歩行者が横断歩道により道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)を横断し、又は横断しようとしているときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにすること。

当時の38条は交差点における歩行者の保護になっていて、現行38条1項の原型は71条3号でした。

 

ポイントになるのは、ここ。

歩道から横断歩道に2、3歩足をふみ出したが、被告人の車を先頭に十数台の車両が進行してくるのを見て、その場に一時停止したものの、その際別段歩道上に引き返すような素振が見受けられなかつたことが、明らかであり、右事実に徴すれば、右老人は、横断歩道によつて、古町通りから白山公園入口に向けて車道を横断しようとしたものであるが、被告人の車を先頭に十数台の車両が進行してくるのを見て、横断に危険を感じ、その安全を見極めるため、一時停止したにすぎないものであつて、歩道上に引き返すような素振を見せる等外見上明らかに横断の意思を放棄したと見受けられるような動作その他の状況が認められない以上、直ちに横断の意思を一時放棄したものとは認められない

逆説的な解釈になりますが、「歩道上に引き返すような素振を見せる等外見上明らかに横断の意思を放棄したと見受けられるような動作その他の状況」があるなら「横断しようとする歩行者」ではないとも読み取れる。
一歩踏み出した引き返す素振りをみせたら、「横断しようとする歩行者」ではない?のか?

 

あえてこれを出した理由はこれ。

 

くだらない。
横断歩道ネタって、どーも何か違うんだよなあと。 「信号の無い横断歩道の歩行者の皆さん…お願いがあります... 貴方のために止まった車に...道を譲らないで下さい... 譲った後に貴方が横断したら...運転者は『横断歩行者等妨害等』の違反にな...

 

外見上明らかに横断の意思を放棄したと見受けられるような動作があれば、「直ちに横断の意思を一時放棄したもの」となりうることを示唆している。

 

手で歩行者が車に対して「先に行って」と促して進むのは、本当に違反ですかね。
今すぐ横断する意思は、一時放棄できる。

 

一時放棄なのか一時保留なのかは別問題かもしれないけど、どうも気持ち悪い。
手で先に行ってと歩行者が促して、ではお先にと進むのは、本当に違反ですかね?
もちろん、一時停止までして何度か歩行者の意思を確認した上での話になるけど。

 

ちなみにネットでみた話なんですが、一時停止後に歩行者が手で先に行けと促すから先に進んだら警察に捕獲されたという人。
歩行者の人が警察官に「人の善意を点数稼ぎの道具にするな!」と一喝した結果、無罪放免になったらしい。
気合いと凄みで切符の有無が変わるなら、そもそも違反にすべき話ではない。

とはいえ

わざと横断歩道の前に立ち、横断しないというオシャレな遊び方があるらしいけど、本当に下らないよね笑。

 

単なる妨害としか思えないけど。

 

道路交通法違反は、今の時代だと反則金制度がある以上、純粋に道路交通法違反を争った判例は昭和40年代初頭以前のものばかり。
民事の判例になると、なかなか不思議な解釈をする判例もありますが、

 

すみません、横断歩道と自転車の判例、一部訂正。
ずいぶん前に、道路交通法38条と自転車についての判例を書いてますが、 重大なミスがあり一部訂正します。 訂正 上の記事の中で、名古屋地裁平成23年10月7日について、自転車に対して38条の義務を認めた!みたいに概略を書いていたのですが、すみ...

 

これについては、キーワードだけピックアップして簡略化するという手抜きをした天罰です。
本当にすみません。
まさか歩道を横切る車について、38条1項の概念を流用して主張する判例があるとは思いもよらず。

 




コメント

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