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自転車が横断歩道を横断する優先権はない。しかし事故を起こして怪我をさせてもいいわけではない判例。

以前こちらの記事にも書いていますが、

こちらにまとめ直しました。 以後、追加は下記にしていきます。 先日このような記事を書いたのですが、 ...

道路交通法上、横断歩道を横断する自転車には38条の優先権はありません。
だからといって事故を起こせば犯罪に問われます。

かなり古い判例です。

横断歩道での自転車と車の事故

判例は昭和56年5月10日、東京高裁です。
業務上過失傷害罪の控訴審。
状況は車道も横断歩道も双方青信号、車が左折、自転車が横断歩道を横断というケース。

なお自転車横断帯はありません。
自転車横断帯は昭和53年改正道路交通法により規定されましたが、本件事故は改正後になります。

被告人は、同交差点に進入前赤色信号のため前車に続いて停止した際、左前方約13.9mの交差点入口付近に同じく信号待ちのため停止中の被害者の自転車を認めたが、やがて青色信号に従って発車し、交差点に進入したころには、被害者の自転車も交差点左側端に添って左折進行し、交差点出口に設けられた横断歩道付近まで進んでいたので同車はそのまま◯✕方向に進行するものと考え、以後その動静を注視せず、安全を確認しないで従前の速度のまま進行し、前記のとうに事故の発生に至ったことが認められる。

こんなイメージかと。

信号待ちで停止していた状況ですが、車の発車後速度は約10キロとなっています。

道路交通法12条1項は横断歩道がある場所での横断歩道による歩行者の横断を、また、同法63条の6は自転車横断帯がある場所での自転車横断帯による自転車の横断義務をそれぞれ定めているので、横断者が右の義務を守り、かつ青色信号に従って横断する限り、接近してくる車両に対し優先権が認められることになるのであるが(道路交通法38条1項)、本件のように附近に自転車横断帯がない場所で自転車に乗ったまま道路横断のために横断歩道を進行することについては、これを容認又は禁止する明文の規定は置かれていないのであるから、本件被害者としては横断歩道を横断するにあたっては自転車から降りてこれを押して歩いて渡るのでない限り、接近する車両に対し道交法上当然に優先権を主張できる立場にはないわけであり、従って、自転車を運転したままの速度で横断歩道を横断していた被害者にも落度があったことは否定できないところであり、被害者としては接近して来る被告車に対して十分な配慮を欠いたうらみがあるといわなければならない。しかしながら自転車に乗って交差点を左折して来た者が自転車を運転したまま青色信号に従って横断歩道を横断することは日常しばしば行われているところであって、この場合が、信号を守り正しい横断の仕方に従って自転車から降りてこれを押して横断歩道上を横断する場合や横断歩道の側端に寄って道路を左から右に横切って自転車を運転したまま通行する場合に比べて、横断歩道に接近する車両にとって特段に横断者の発見に困難を来すわけのものではないのであるから、自動車の運転者としては右のいずれの場合においても、事故の発生を未然に防ぐためには、ひとしく横断者の動静に注意をはらうべきことは当然であるのみならず、自転車の進路についてもどの方向に進行するかはにわかに速断することは許されないのであるから、被告人としては、被害者の自転車が同交差点の左側端に添いその出口に設けられた横断歩道附近まで進行したからといって、そのまま左折進行を続けて◯✕方向に進んでいくものと軽信することなく、同所横断歩道を信号に従い左から右に横断に転ずる場合のあることをも予測して、その動静を注視するとともに、自車の死角の関係からその姿を視認できなくなった場合には右横断歩道の直前で徐行又は一時停止して右自転車の安全を確認すべき注意義務があるものといわなければならない。

昭和56年6月10日 東京高裁

業務上過失傷害罪なので、道路交通法の義務に無くても、予見可能なものを回避しなかった場合には有罪になります。

道路交通法38条による優先権が横断歩道を横断する自転車には無くても、日常的に横断歩道を横断する自転車がいるわけで「予見可能」。
自転車が左折したからといって、そのまま左折進行すると勝手に決めつけるなドアホ!という判例です。

業務上過失傷害罪(現在は過失運転傷害罪)は、予見可能なものを回避しなかった場合には有罪になります。
予見可能といっても、無制限に予見義務があるわけではないですが、日常的に見かけることは予見可能になる。
横断歩道を自転車に乗ったまま横断する奴は普通にいる以上、自転車がそのまま左折進行すると勝手に決めつけることなく、最後まで見極めろという話ですね。

意味としては

以前から書いているように、道路交通法の義務と強者弱者の関係性が逆転するのが、横断歩道を横断する自転車。
道路交通法上の義務でいうなら、自転車には優先権がないため車に一時停止義務はありません。
しかし事故回避義務はあり、車と自転車が衝突すればどうなるかは目に見えている以上、業務上過失傷害罪としては有罪になります。

この自転車については、道路交通法の義務を果たそうとするならば
・横断歩道で進路変更する前に一時停止し、手信号で合図。
・自転車に乗ったままでは優先権がないため、降りて歩行者になる。

このように道路交通法の義務としては自転車にも多々課されていますが、現実的には誰もしてませんし、仮に自転車が義務を果たさなくても後続左折車の注意義務は変わらない。

この自転車が横断歩道を横断するのではなく、交差点を直進していれば何も起きなかった可能性はありますが、私が「自転車横断帯は守らないほうがいい」という理由はこれ。
左折巻き込みリスクが高まる自転車横断帯に向かう理由がない。

法律上は義務ですけど笑。
そういや「昭和55年東京高裁に判例がある」と書いていたサイトさん、なぜか滅亡してますよね。

結構前に読者様から指摘いただいていた件があります。 上記リンクにあるようにそういった横断帯は交差点...

探しても判例が見つからないし(結局三社の判例検索使いましたが)、判例があるとは1mmも思っていませんが笑。

車には大きな注意義務が課されているのはもちろんのこと、自転車も横断歩道にて優先権がないことは知らないとまずいかと。

なお、平成22年東京高裁で過失運転致死の判例がありますが、基本的な構成は同じです。

こちらにまとめ直しました。 以後、追加は下記にしていきます。 先日このような記事を書いたのですが、 ...

38条の義務はないけど、予見可能なので回避義務違反があれば有罪です。
ちなみに降りて押して歩けば歩行者になりますが、横断歩道が赤信号の場合には当たり前ですが38条による優先権はありません。
信号を守って横断する場合のみ優先されます。

当たり前過ぎて書く必要もないけど、脳内道路交通法を作成するアホもいますから。

なお、自転車横断帯がある場所を信号に従って横断して、同じく左折車と衝突した事故の判例の中には、業務上過失傷害罪は無罪になっている事例もあります(
平成15年12月15日東京地裁)。
この判例は控訴審で破棄差戻しになり、東京地裁で無罪確定。
道路交通法38条違反があることと、過失運転致死傷の成立は別問題なのでご注意を。






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判例集

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