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赤信号無視の自転車、回避可能なのですかね。

世の中にはいろんな事故がありますが、赤信号無視して横断する自転車に対して回避可能なのか?と疑問を感じる判例がありました。

赤信号無視の自転車

判例は令和2年1月29日、大阪地裁。
自転車横断帯を赤信号で横断開始したことにより起こった事故です。

今回はいつにも増して雑なイラストになります。
まあ正確に書かないと「デマ」呼ばわりされるみたいだけど、イラストの正確性は保証しません。

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東行車線は4通行帯あり、第一通行帯と第四通行帯はそれぞれ左折・右折専用通行帯。
第二&第三通行帯は直進専用です。

第四通行帯は右折待ちの大型車がいて、車道の信号機は直進可能な矢印が出ていた状態。
すみません、ついついイラストを手抜きしてしまいました。
またデマ呼ばわりされるのかと思うと気が重いですが。

で、第三通行帯がやや混雑していて、第二通行帯の車両が「追い抜き」して前に出たところ、赤信号無視して自転車横断帯を横断した自転車と衝突した事故です。

特におっ?と思うような判示をしているわけではないですが、主張がちょっと気になりまして。

車の主張 自転車の主張
内容1 自転車の信号無視 車の高速度進入
内容2 交差点内安全確認義務違反
内容3 横断歩道等手前における追い抜き禁止違反(38条3項)

判示においては、以下の過失が認められています。

車の主張 自転車の主張
内容1 自転車の信号無視 の高速度進入
内容2 交差点内安全確認義務違反
内容3 横断歩道等手前における追い抜き禁止違反(38条3項)

自転車の信号無視、車の交差点内安全確認義務違反が認められてますが、高速度進入は証拠なし、38条3項は適用外と判示されてます。

38条3項はこれ。

(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条
3 車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(軽車両を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない。

交差点手前30mでの側方通過禁止の違反について主張しています。
要は第三通行帯を進行していた車両を追い抜きしたという話。

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ただしこれ、なんでこの主張をしたのか疑問がありまして。

2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない。

2項で「横断歩道等が赤信号の場合」を除外しています。
それと同時に「次項において同じ」なので、そもそも関係ない。

何か意図があるのか、見落としなのかはわかりませんが、当然この主張については採用されません。
主張の意図については、訴状や準備書面を見ないとわからない面はありますが、単純に法律の適用条件を見逃した可能性もあるし、「違う意図」がある場合もあります。

違う意図というのは、例えば「交差点手前で追い抜きをするほど、交差点進入前の安全確認義務を怠っている」という方向に持ち込みたいとか、「高速度進入」の根拠にしたいとか。
民事の過失って道路交通法の義務違反のみを争っているわけではないので、交差点進入行為そのものについての安全確認を怠っていた一つの証拠にしたい可能性もありますが、判決文を読んだ限りでは単純に法律の適用条件を見逃したのか、他に意図があるのかについてはよくわかりません。

けどさすがに38条1項の義務違反は主張していない模様。
当たり前ですが。

裁判の難しいところは、主張の意図が裁判官に伝わらないと意味がないこと。
私がやっていた訴訟でも、正直なところ行政側が主張している内容の意図がわからない点がありまして、裁判官も意図がわからなかったらしく、何度か意図を確認されてました。
「原告の○という主張については争わないが、それと同時に✕でもある」みたいな主張を繰り返してましたが、法律上、○と✕が同時に成立することはあり得ない。
争わないのか争っているのか、さっぱりわからない。

まあ、口頭の説明を聞いても、私も裁判官も首を捻るばかりだったのですが(笑)、裁判官も意味がわからなかったみたいなので、私にはもっとわかりません笑。
具体的内容は書けませんが「赤信号だけど青信号でもあった」みたいなレベル。

よくわからないけど争っている前提で次回準備書面で反論してみたら、「原告は、被告が主張していないことを創造している」とか反論されましたが、いやいや、あんたらが主張している内容がどっちにも取れるから裁判官も首を捻るばかりなんだよ!と言いたかったです笑。
どちらにせよ、上の判例としては38条3項の義務違反を主張したが、法律の適用はないと判断されただけになります。

交差点内安全確認義務は、36条4項に基づく注意義務だと思われますが、4通行帯もあり右折車が大型車で右側の視界が効かないわけで、この事故を回避するとしたら「予め徐行」する以外には方法がないと思う。
右折レーンに大型車が停止していた場合、直進車は一時停止できる程度まで徐行しないとダメになってしまいますし。
自転車横断帯もあり自転車は歩行者よりも速度が速いことを考慮すれば、判示の義務を果たすなら横断歩道&自転車横断帯の手前でほぼ一時停止レベルにならない限りは回避不可能なんですけどね。
車道は青信号、横断歩道等は赤信号なのに。

それは道路交通法において、本当に求められていることなのかは疑問。

もちろんのこと

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過失割合は車が30%。
この手の事故では、民事責任上では車が無過失になることは原則ありません。
この事故を回避するには、交差点手前から徐行する以外にはないと思いますが、36条4項は具体的な通行方法を規定していない。

4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない

法律の規定する趣旨から言えば、交差点に入る前には相応の注意義務があるわけで、何も考えずに無減速でかっ飛ばす行為はダメ。
ただまあ、幹線道路で赤信号無視して横断する自転車を予見することはなかなか厳しい。

信号無視した自転車であろうと事故を起こしていい理由はないので、事故を起こした以上は民事上の責任を負うわけですが、何度も書いているように、民事の過失は道路交通法違反を争っているわけではないため、よほどのことがない限りは交通強者に過失がつきます。
強いていうなら、交通の頻繁な道路でスケボー&信号無視して0:100のケースとか、横断歩道以外を横断した事故で車を無過失にした事例もあるにはありますが。

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先日もちょっと上げた事例ですが、 これは優者危険負担の原則なので、しょうがないです。 優者危険負担の...

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ちょっとこのあたりは特殊なケース。
横断歩道以外を横断した事故の判例は、無過失の立証を認めた珍しいケースです。
この判例については、車側がかなり念入りに無過失を立証しています。

冒頭の判例、某県の方針だと第一当事者は車、第二当事者は自転車になるんでしょうね。
怪我をしたほうを第二当事者にすると断言してましたから。
どっちが悪いのかは明白かと。

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警察庁や政府などが毎年、交通事故の統計データを公表しているじゃないですか。 あれ、前から疑問に思っていたことがありまして、某警察本部数ヶ所...

第一当事者がどうのこうのの統計データ、本気で無意味っぽい。
そんなもんを引用して語る人もいるけど、無意味なデータです。
民事の過失割合って、通常の注意義務を果たしただけでは防げない事故まで防ぐ義務を課しているわけですが、強者がよりリスクを負担するというのが原則になります。
それが必ずしもいいこととは思いませんが、そういうシステム。
車やオートバイがより高い注意義務を負うことについては当たり前のこととしても、何ら難しくもない「信号を守る義務」を果たさない人を守るための注意義務なのかは疑問。

ちなみに信号無視した理由についても書いてありますが、ここは本筋から離れてしまうのでやめときます。






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