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法律を知り守ることは、自分を守る手段になる。

自転車って法律守らない人多いよね?という評価が定着しつつある今日この頃。
古い判例ですが、ドロップハンドルの自転車についての判例です。

見通しが悪い交差点

※画像は判例とは関係ありません。

判例は東京高裁、昭和48年9月13日。
見通しが悪い信号機がない交差点で、自転車と車が衝突した事件です。

一、責任原因

被控訴人が昭和(略)、その所有にかかる自家用普通乗用車(以下本件自動車という)を運転し、東京都東村山市(略)道路上を西部新宿線踏切方面から西部多摩湖線踏切方面に向って進行中、同番地東村山浄水場角の交差点に差しかかった際、右道路と交差する道路を自転車に乗って左方向から進行してきて右交差点中央付近で右折しようとした亡被害者(当時満14才)と衝突した結果同人が頭蓋底骨折の傷害を負い、右傷害により死亡したことおよび被控訴人が本件自動車を所有し自己のため運行の用に供していた事実はいずれも当事者間に争いがない。
従って、被控訴人は自動車損害賠償保障法第3条により控訴人らに対し、右事故による損害を賠償する義務がある。

二、過失相殺

本件交差点が交通整理の行なわれていない見通しのきかない交差点であること、亡被害者はドロップハンドルといわれる自転車に乗り、友人とともに他の友人3名と離れて迂回路をとったため、本件北進道路を進行し右交差点を右折して進行する友人3名に追いつこうとしていたことは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫を綜合すると、本件事故現場は、東西に走る通称水道道路と南北に通じる道路の交差点で、被控訴人が本件自動車を運転し西進した水道道路は幅員約8mで道路北側約1.50mを除きアスファルト舗装の歩車道の区別のないほぼ直線の道路であり、これと交差する南北に通じ亡被害者が北進した道路は、交差点の南方浄水場方向は巾員7.30mで北方野口町方向は巾員3.60mの歩車道の区別がなく未舗装の道路であること、浄水場は高さ1.80mの鉄柵が施されているため交差点を中心とした場合被控訴人の進行方向からは左方、亡被害者の進行方向からは右方の見通しがきかない状況にあること、本件事故現場付近は本件事故当時いずれの道路も交通量の少ない閑散な道路であったこと、被控訴人は本件事故以前において何回か水道道路を通ったことがあり本件事故現場が交差点であることも見通しきかない場所であることを知っていたこと、しかるに、被控訴人は左方道路からの他車の進入について配慮することなく時速40キロメートルの速度のまま本件交差点を通過しようとし、左前方約11.40mの地点に被害者の自転車が交差点を右折しようとするのを発見して急遽急停車の措置をとったが間に合わず、同人の自転車に自車を衝突させ本件事故となったこと、一方被害者は友人と共に本件交差点に向け北進中、本件交差点を通過して水道道路を東進する友人をみつけこれに追いつくべく速度を時速30キロメートル位にあげ、次いで本件交差点を右折するため速度を落したまま一旦停止することもなく道路中央付近を右折しようとしたため水道道路を直進し交差点を通過しようとした被控訴人運転の本件自動車と衝突するに至ったものであることが認められ(る。)

要は見通しが悪い交差点で、車は時速40キロのまま通過しようとした。
自転車は時速30キロくらいのまま小回り右折をした。

これによる死亡事故です。

控訴理由ですが、以下の主張をした模様。
・自転車(控訴人)→交差点に先入したから優先権があると主張

・車(被控訴人)→「明らかに広い道路」だから優先権があり徐行義務はないと主張

以上を踏まえ、以下の判示。

本件交差点は被控訴人および被害者双方からみて他方の進行道路に対する見通しのきかない、しかも交通整理の行なわれていない場所であるから、被控訴人としては本件交差点を通過するにあたっては徐行すべきであるのに徐行せず漫然時速40キロメートルで本件交差点を通過しようとした過失があり、他方被害者も交通整理の行なわれていない交差点を右折するにあたり、道路の左側に寄らないで、しかも右側の見通しがきかないのに直進車両に対する注意を怠り道路中央付近を右折しようとした点に過失があり、本件事故は右双方の過失により発生したものというべく、被控訴人は自動車であり、被害者は軽車両を運転し、当時満14才の中学生であったことのほか前記認定の本件事故の経過を考慮するときは双方の過失の割合は5対5であると認めるのを相当とする。

被控訴人は、本件交差点通過に際しては自車に優先権があり、従って徐行義務は免除されていると主張し、その根拠として、自車の進行道路が被害者の進行道路より明らかに広いものであったというが、前記認定のように、被害者の北進した道路は本件交差点の北側は幅員3.60mであるが、南側すなわち被害者が進行してきた道路は幅員7.30mで、被控訴人が西進した道路は幅員約8.00mであるから道路交通法第36条第3項にいう「明らかに広いもの」とはいえないし、しかも見通しのきかない交差点であるから被控訴人の右主張は採用できない。

東京高裁 昭和48年9月13日

双方に徐行義務違反を認め、自転車には右折方法違反を認定。
車が主張する「優先道路」は却下、自転車が主張する「交差点先入」は証拠なしとして却下されています。

で、特別な法律解釈を判示しているわけでもない判例ですが、あとから一応法律の条文は挙げておきます。
なぜこの判例を挙げるかというと、要は何条の義務なのかを知らなくても、仮に「自転車の二段階右折」を知らなかったとしても、見通しが悪い→徐行したり一時停止して確認してから進行すればなにも起きなかったわけです。

「見通しが悪い」という時点で双方が警戒すべき。
見えない先に進むということはリスクでしかない。
本能的に警戒すべきポイントなわけで。

自転車は免許不要で乗れるし、電動キックボードも新たに法整備されたので、免許なし=道路交通法をきちんと理解していない人が車両に乗る機会が増える。
専門的に道路交通法を勉強する機会があるならベストですが、そうではなくても「見通しが悪い=警戒する」という単純な図式さえあればなんとかなる。

まあ、免許持ちが時速40キロで見通しが悪い交差点に突っ込むことについては、何のための免許なのやらと思うけど。
見通しが悪い→ハプニングポイント→徐行したり時には一時停止して様子を伺う、という単純な図式を怠れば事故発生リスクが上がります。

道路交通法

道路交通法は道路上での優先権や注意事項などルールを定めていますが、民事の過失割合は道路交通法違反と連動するわけでもありません。

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免許持ちはしっかり守ることが当たり前であるべきですが。
自転車のルールについてもそうですが、今後電動キックボードが免許なしでも乗れるようになるわけですし、最低限のルールを勉強する機会を義務教育レベルでしっかりした方がいいかと。

まあ、免許持ちの大人ですら「優先道路になるから徐行義務はない」などと主張するわけですが、「見通しが悪い」という時点で警戒して進行するのが当たり前にならないとね。

(交差点における他の車両等との関係等)
第三十六条
3 車両等(優先道路を通行している車両等を除く。)は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合において、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、徐行しなければならない。
4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。
(徐行すべき場所)
第四十二条 車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。
一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。
(左折又は右折)
第三十四条
3 軽車両は、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない