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対向右折車と左折車が衝突した判例。

先日ちょっと書いた件ですが、

こんなのが話題になっているようですが。 右折車と左折自転車 動画が切り取られているのでわかりづらいけど、自転車が左折、対向右折車...

自転車に違反がないとか、回避不可能とか語る人は道路交通法を理解していないのかと。
左折時には徐行義務がありますが、あれを徐行とみなすのはヤバい。
(なお、過失の大小で言うなら対向右折車がはるかに大きいですが。)

(左折又は右折)
第三十四条 車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない
二十 徐行 車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。

交差点で進行方向を変えるときには車両自体の不安定性と危険が大きいため徐行義務を課しています。

右直事故の判例は多々あるものの、右折車と左折車の事故判例はあまり多くはありません。
右折車と左折車が衝突する事故が起きた場合、どのような点を過失として見ているのか、判例を検討します。

右折車と左折車の事故

判例は東京地裁 平成31年3月20日。
右折車(原告)は貨物車、左折車(被告)は自動二輪車。
双方が赤信号で停止していた状態から青信号に変わり発進。
横断歩道直前で双方が一時停止していたものの、右折車が発進する際に左折オートバイを見落としていたため起こった事故です。

まずは事故の態様から。

原告普通貨物自動車は、本件交差点の対面赤信号に従い、停止線手前に先頭車として停止した。原告車は、対面信号機が青色になったため発進し、本件交差点内の右折車両停止線手前に停止した。原告車は、対向車(本件対向車)が左折したため、発進して右折を開始し、横断歩道手前に停止して横断歩道上の歩行者が通過するのを待った。このとき、原告車の左前方付近には、本件対向車が歩行者などの通過を待つため停止していた。原告は、横断歩道上の歩行者などがいなくなったため、右折できると考え、本件対向車の方を見ると、動く様子がなく、少し待っても発進しなかったため、道を譲ってくれるものと考えた。原告は、早く右折しようと思い、原告車を発進させ、時速約15ないし20キロで右折進行した

被告二輪車(普通自動二輪車)は、本件交差点の対面赤信号に従い、停止線の手前に先頭車として停止していた。その右方には本件対向車が停止していた。被告二輪車は、対面信号機が青色になったため本件対向車とともに発進して左折を開始したものの、横断歩道手前の本件対向車の左側付近に停止し、横断歩道上の歩行者などが通過するのを待った。被告は、横断歩道上の歩行者などがいなくなったため、左折できると考え、被告二輪車を発進させ、時速3ないし5キロで左折進行した

これにより、横断歩道上において、右折進行した原告車の左前部が、左折進行した被告二輪車の右側後部に衝突し、原告車は衝突してから制動をかけたことにより被告二輪車は転倒して停止した。

原告は衝突するまで、被告二輪車の存在に気がつかなかった。
被告は、左折進行するにあたり、左折車両が優先であったため右方のことは気にしておらず、衝突するまで、原告車の存在には気がつかなかった。

このような状況です。
車線数が不明なので、なんとなくのイメージになります(距離感、位置関係、車線数など正確ではないので注意)。

赤信号で停止していた状態から、

青信号になり、横断歩道の歩行者が通過しきった後。

くどいですが、車線数や距離感、位置関係は正確ではないので注意。

これに対して、以下のように裁判所が判示。

原告は、原告車を運転して本件交差点を右折進行するにあたり、本件交差点を左折しようとする車両等の進行を妨害してはならない(道路交通法37条)ところ、停止している本件対向車の左側から本件交差点を左折進行する被告二輪車がいることを予見できたにもかかわらず、原告車を発進させて時速約15ないし20キロで右折進行したことにより、原告車を左折進行する被告二輪車に衝突させたものであるから、左折車両の進行妨害の過失がある。そして原告が、衝突するまで被告二輪車の存在に気がつかなかったこと、停止していた地点から発進するにあたり、相当の加速をしたとうかがわれることに照らせば、原告の過失は重いというべきである。

他方、被告は、被告二輪車を運転して本件交差点を左折進行するにあたり、できる限り道路の左側端に沿って徐行しなければならない(道路交通法34条1項)ところ、車線中央付近まで進入して走行しているから、徐行しているとはいえ、左折進行方法違反の過失がある。

(中略)

これに対し、被告は、本件事故について、被告には結果予見可能性も回避可能性もなかったと主張する。しかし、被告は、本件交差点を左折進行するにあたり、右折進行してくる原告車の存在は予見できたのであって、かかる予見を前提として、原告車の動静をより注意していれば、あるいは原告車と進路が重ならないよう、より道路の左側端に沿って走行していれば本件事故は避け得たと認められる。そうすると、被告の上記主張は採用できない。

東京地裁 平成31年3月20日

当たり前ですが、左折車に優先権があります。

第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

左折車両には、できる限り左側端に寄り徐行する義務があります。

(左折又は右折)
第三十四条 車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない

同様に右折車にも徐行義務があります。

2 自動車、原動機付自転車又はトロリーバスは、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分)を徐行しなければならない。

双方の過失をピックアップします。

左折車右折車
過失左折時のできる限り左側端寄り通行義務違反(34条1項)左折車進行妨害(37条)
過失右折進行車への注視義務違反右折時徐行義務違反(34条2項)
過失左折進行車への注視義務違反

読んだ限りでは、右折車が発進時に急加速した点を重過失と見ているような印象です。
それと同時に左折車に対し左折方法違反を認定していますが、徐行(時速3~5キロ)していたことを考慮し軽度の過失と見なしています。
両者ともにお互いの存在に気がついていない点も問題視しています。

何のために徐行義務?

左折時、右折時ともに車両には徐行義務を課してますが、要は違う道路に向けて進行方向を変えるプレイ自体に危険性があるため、あらゆる不測の事態に備えるために「具体的危険の有無を問わず」徐行義務を課してます。

Twitterの件。
誰がどうみても悪いのは右折車です。
その上で、ロードバイクが34条1項の規定に基づき左折完了まで徐行義務を果たしていたら容易に回避可能。

二十 徐行 車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。

徐行=1m程度で停止できる速度。

これは右折車にも当てはまります。
いい、悪いの概念で言うなら右折車の過失が大きいのは誰でもわかるとして、回避可能か不可能かで言うなら、左折時徐行義務を果たしていたら容易に回避可能としか言いようがなく。
「いい・悪い」と「回避可能・不可能」は必ずしも一致しないということを理解できない人たちもいるんだろうな。
このように課された義務をクリアした上で回避可能性がないというなら話は別だけど、普通に義務違反が自転車側にもある以上は自らの過失により回避可能性を消しているわけなので。

「自転車に違反はない」とか、「回避不可能」とかいう人は普段からどんだけ義務を果たさずに乗っているのかわからないけど、右折車が進行妨害してきたとしても左折時徐行義務が消失するわけではない。
左折時徐行義務は具体的危険の有無にかかわらず、一律で左折完了まで課しているのだから(同様のことは右折車にも当てはまります)。

なお、徐行=直ちに停止できるような速度なので、四輪車とロードバイクでは制動力に差があり徐行として求められる速度は違う可能性もあります。

民事の過失はどういう点を見ているのかわかってないと、事故に遭ったら不利になることすらあります。
あとロードバイクの場合、一般的な自転車(ママチャリ)と同様に扱われることは少ないです。
時速30キロ以上の場合、原付同様に見られることが多い(原付の法定速度より高速進行しているから)。

さらにいうと、ブレーキングの遅れは「ロードバイクだから前傾姿勢で前方視野が狭かった→前方不注視」とみなされて過失扱いされることも珍しくはありません。

左折車と右折車の交錯の判例はさほど多いとは思いませんが、どういう点を過失として見ているかを知ることは大切です。

というよりも左折時徐行義務はロードバイクのみならず車の違反も多いわけで、きちんと取り締まりして徐行の大切さを広めていかないと、こういうのも防げません。

これは昔からアルアル話なのかもしれませんが、多車線交差点において、自転車は最左車線からしか直進できないことを知らないドライバーはそれなりにい...

「いい、悪い」と「回避可能、不可能」は必ずしも一致しないということを理解しないと。
自転車だから義務が消失するわけではないし、車のほうが高度な注意義務を負う点は間違いないのですが。




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