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車両通行帯か?車線境界線か?の判例。

執務資料道路交通法解説の18条の項目に、このような判例が掲載されてます。

各種車両の交通頻繁な箇所では、最高速度時速30キロメートルの原動機付自転車は、本条の立法趣旨を尊重し、軽車両同様できるだけ第一車線上の道路左側端を通行して事故の発生を未然に防止すべきである。

昭和48年1月19日 福岡地裁小倉支部

この判例、何回か書いているように片側二車線道路が車両通行帯なのか車線境界線なのかを争った珍しい判例です。

車両通行帯or車線境界線

このような混乱が起きる原因は、車両通行帯と車線境界線が標識令で同じだというところにある気がします。

この判例ですが、第一車線をトラック(被告)が、第二車線を原付(原告)が走行していました。
トラックが第一車線の先行車を追い越すときに、第二車線の原付を見逃して進路変更した際に衝突した事故です。

本件事故現場は道路左側が2車線になっており、そのうち、少なくとも事故直前の時点にあっては、道路中央線から遠い車線、即ち道路左側から数えて1番目の車線(以下便宜「第1車線」という)上を被告のトラックが、道路中央線に近い車線、即ち道路左側から数えて2番目の車線(以下便宜「第2車線」という)の梢第1車線寄りの部分を原告が、いずれも同一方向に、殆ど近接した状態で併進したこと、被告は第1車線上の他車輛を追越すため後方を確認したが、その確認状態が杜撰で不十分であったため原告に気付かず、事故現場直前約13.8mの地点で第2車線に進路変更のための方向指示器を挙げて追越にかかり車体が約半分第2車線に出たところで直進してきた原告に接触したこと、しかし右の第1、第2車線は道路交通法第20条所定の車両通行帯ではないこと、即ち、右両車線の中央を仕切る境界線は道路標識、区画線及び道路標示に関する命令別表第四(区画線の様式)(102)所定の車線境界線であって、道路管理者である建設省において便宜表示した記号にすぎず、之と若干まぎらわしい記号ではあるが、同命令別表第六(道路標示の様式)(109)1(1)所定の、公安委員会が危険防止のため設定表示した車両通行帯境界線ではないこと

被告側としては、車両通行帯なのに原付が第二通行帯を通行していたという違反があったと主張しているわけなんですよ。
それに対して、裁判所の判断がこれ。

右認定の事実に基づいて被告主張の原告の過失を考えるに、(中略)原告単車が第二車線を走行したことが違法であるとの点については、前示のとおり、右第二車線が車両通行帯ではない以上、原告が道路交通法第18条所定の道路の左側を走行したことに変りはないのであって同法律違反の所為ではなく、この点の被告の主張も失当である(なお、第二車線は高速道路における追越車線ではないから、追越以外に使っても違法ではない。)。

然し乍ら当裁判所は本件の場合、第二車線走行自体において過失の責任を免れないものと考える。即ち原告の第二車線の走行が仮令道路交通法上適法であるとしても、事故現場は各種車両の交通頻繁な箇所であるから、最高速度時速30キロメートルの原動機付自転車は、同法第18条の立法趣旨を尊重し、軽車両同様できるだけ第一車線上の道路左側端を通行して事故の発生を未然に防止すべきであり、(以下略)

昭和48年1月19日 福岡地裁小倉支部

この判例、執務資料に記載されている箇所だけ読んでも何を争った判例なのかさっぱりわかりませんが、片側二車線の道路について、以下の判断をしている。

①「原付の通行帯違反(第二通行帯通行)」を主張する被告に対し、公安委員会が意思決定した車両通行帯ではなく車線境界線だから失当だと判示

②車線境界線道路なので18条1項に従うが、原付は「左側寄り通行」だから第二車線走行を違法とまでは解せないことを判示

③18条1項の立法趣旨は、遅い車両を左側にして右からの追い越しを促す点にあるわけで、立法趣旨から考えるに速度が遅い原付は、交通量が多い場所では軽車両が通行する道路左側端を通行して事故を未然に防ぐべきと判示

執務資料に記載されている箇所だけ見ても、この判例の意味と価値はわからないと思う。

なお、他の18条に関する判例はこちら。

たぶんこの人、こちらに向けているのだと思いますが。 この人昨年、「自転車の幅は2mまで認められている」という謎メールをしてきた...

判例の意味

このように、複数車線が車両通行帯なのか車線境界線なのか?を争った判例はかなり少ないです。
まず18条1項には罰則がないので、刑事の判例はありません。
罰則がない=違反切符切られることもないので、行政事件(点数など)の判例もない。

裁判の常識として、当事者間で争いがないならそのまま認定されるわけで、車両通行帯か車線境界線かを争う人自体少ないのかと。
最近でもあるにはあるけど。

なお車両は車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて1番目の車両通行帯を通行しなければならない(道路交通法20条)が、本件道路について、車両通行帯(同2条1項7号)が設置されていることを示す証拠はない(車線境界線は、直ちに車両通行帯になるわけではない)し、右折を予定していたことを踏まえると、ただちに左側寄り通行等の規制に反していたともいい難い。
そうすると、被告において第2車線を走行していたこと自体に何らかの過失を見いだすことも困難といえる。

名古屋地裁 平成26年9月8日

ちょっと古い判例。

なお被告は亡Aに重大な過失の存ずる根拠の一つとして、原付自転車に登場していた同人が本件事故現場に設置されていた3本の通行区分帯中左端の第一通行帯を進行すべきであるのに(道交法20条1、3項、同法施行令10条1項2号)右端の第3通行帯を進行した旨主張するが、【証拠略】によれば本件事故現場に設けられている前記2本の白線は岡山県公安委員会が正式の車両通行帯として設置したものではなく、道路管理者たる建設省岡山国道工事事務所が通行車両の便宜を考慮して設けた事実上の車両境界線に過ぎないことが認められるから、両被告の主張はその前提を欠き理由がないものと言うべきである。

岡山地裁 昭和45年4月22日

ほとんどの判例で車両通行帯が公安委員会の意思決定を得ているかが書いてないのは、車両通行帯であることについての争いがないからです。

もう少し探せば判例はあるかも知れないけど、執務資料に記載されている判例は、掲載された一文だけをみても何の話なのかさっぱりわからない。

福岡地裁小倉支部昭和48年1月19日判決ってこういう意味です。
ちょっと前に車両通行帯関係でメール頂いていたのですが、あらためて記事にしておきます。
この件、法律を理解せずグダグダ語り出す奴とかいますが、グダグダ語るなら自分自身が考える内容を明確に判示している判例くらいは普通出すもの。
判例がないなら法律に則り検討するしかないよね。
法治国家なので。

結局のところ、18条1項に罰則がないから好き勝手にしているだけというところに落ち着くしかないのだけど、そんなんだから理解されないのかと。
ちなみにですが、左側端に寄りすぎることについては賛同しません。
立法趣旨から考えれば、左側から自転車が追い抜きできない程度に左側端に寄ることと解釈するしかないし。

道交法では、【道路の左側端に寄って】というほか、【できる限り道路の左側端に寄って】というのがあります。 これは両者で区別されるものですが、...

18訂版 執務資料 道路交通法解説
道路交通執務研究会(編集), 野下 文生 原著(その他)