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自転車の片手運転と安全運転義務違反。

まあまあどうでもいい話を。
自転車の片手運転が安全運転義務違反になるのか?という比較的どうでもいい話があります。

ちょっと前に「おにぎり食べながら運転すると安全運転義務違反」というネット記事もありましたが、それに関係して

読者様
読者様
ロードバイクに乗りながら補給食を取るのも安全運転義務違反?

というビミョーな質問をいただきまして。
結論からいうとコレです。

管理人
管理人
違反になるかはさておいて、危険性があることは避けておいたほうが無難。
信号待ちなどでどうぞ。

安全運転義務違反

安全運転義務違反の前に。
多くの都道府県では、公安委員会規則(道路交通法71条6号)で以下のような規定があります。
東京都の例。

(3) 傘を差し、物を担ぎ、物を持つ等視野を妨げ、又は安定を失うおそれのある方法で、大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車又は自転車を運転しないこと。

一部自治体では類似する規定の中で「交通のひんぱんな道路において」などと条件をつけてます。
問題なのは、なぜこの規定があるかという話。
このような判例があります。

判例はちょっと古いけど、出前のオートバイが片手運転したことから、安全運転義務違反罪(道路交通法70条)に問われたもの。

本件公訴事実の要旨は、

「被告人は、昭和42年(中略)ころ、(中略)の自宅店舗前から字尾札部八木橋までの約450メートルの道路において、自動二輪車を運転するにあたり、同区間の道路は幅員約5.5mで狭い舗装路であるうえ、一部は見透しが不良な曲線であり、かつ道路両側の随所に民家その他の造作等が道路側端に設置され、それらの蔭から出てくる横断歩行者等を直前において不意に発見することとなるような、危険な道路であつたのに右手でハンドルを操作し、左手に出前箱一個(長さ47センチメートル、高さ30センチメートル、巾26センチメートルのステンレス製、総重量約6キログラム)をさげ、あるいはこれを胸部前面に吊るように持ち、危急の場合には警笛吹鳴も、正確なハンドル操作も、又安全に急停止もできない状態で、毎時約20キロメートルの速度で同車を運転進行し、もつて道路及び交通の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で当該車両を運転しなかつたものである。というのである。

森簡裁 昭和42年12月23日

左手で出前の箱を持ちながら時速20キロでオートバイ
を運転した事実により、70条安全運転義務違反に問われた判例です。
結論からいうと、無罪

問題は、右のような運転方法が、周囲の状況に照らして、道路交通法第70条にいわゆる「他人に危害をおよぼ」すおそれのある運転方法かどうかである。このような運転方法は、一般的にいえば、通常の方法と比較して、より危険な方法であることは疑いない。また交通戦争という言葉さえきかれる今日、避けることが望ましい運転方法の一つであること、周囲の状況の如何によつて同法条違反の行為に該当することもありうること等は、いうまでもない(この点は、被告人、弁護人とも異論がないようである。)殊に、本件の場合出前箱の形状重量を考えると、一層その感が深い。

しかし、検察官も認めるとおり、本条のように必らずしも意義の明確でない取締規定の解釈に当つては、罪刑法定主義のたて前からいつても、拡張解釈は十分慎しまなければならず、当該事件の具体的諸状況に照らして、相当厳格に解釈する必要がある。そこで、事件当時の状況を検討するに、前掲各証拠を綜合すると、右事実のほか、次のような事実が認められる。すなわち、当時は気候のよい10月初旬の天候もよい昼間で、本件道路の右区間は格別損傷個所もない平坦な舗装道路で、舗装路面の幅員は少なくとも5.5m以上あつて、それ程狭くはなく、曲線はあるが比較的ゆるやかで、最も見とおし困難な個所でも、道路の中心線から同中心線を50m以上を見とおすことができ、複雑な交差点もなく、交通量は一般的にそれ程頻繁ではなく、特に事件当時は時間的に非常に閑散なときであつたこと、被告人は本件自動二輪車および同種の車について相当の運転経験を有し、このような運転方法で当該道路を何度も走行したことがあり、しかもその際事故等を起したことはないこと、警音器とライト上下の切替以外の装置はすべて右ハンドルあるいは左右の足によつて操作すべき個所に装備され、確実に操作することのできる状態であつたこと、被告人は170センチ以上の身長があつて、右自動二輪車に乗つたまま両足を地面につけてなお余裕があり、さらになんといつても当時の速度は、せいぜい毎時約20キロメートル程度であつたから、ほとんどいつでも確実に急停止等の措置もとれる状態であつたこと、被告人の本件走行距離は約415m程度にすぎなかつた等の事実が認められる。そのほか、義手を用いることを条件とされてはいるが片腕欠損者にも自動二輪車の運転が免許されており、飲食店のいわゆる出前のためのこの種運転方法について、その取締ないし行政指導の実情は一般に必らずしも徹底しているともうかがい難い。以上の諸事情を綜合して考えると、被告人の本件運転行為をもつて「他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなかつたもの」と認めることはできない。

(中略)

なお、検察官は警音器を吹鳴することができないような方法で運転すること自体が同条違反の行為に該当する旨主張する。しかし、本条の趣旨とするところは、運転者以外の者に危害をおよぼすおそれのある運転方法を禁ずる点にあると解されること、警音器の使用は、ハンドル操作等と異なつて必要な場合が限られ、その使用も制限されていること(同法第54条参照)、警音器は他の者に自車の存在を知らせて警告を与えるためのものであるというその性質上、警音器を使用することができなくとも、状況によつては声で知らせることもでき、一旦停止し、あるいは減速する等の方法で十分事故の危険を避けることも可能であること等を考えると、周囲の状況からみて、事故を防止するために警音器の吹鳴が是非必要であつたとか、その必要が十分予想されたのに、漫然警音器を使用しないで、あるいは使用することができない状態のまま運転進行した等のため、それが他人に危害を及ばすおそれのある運転方法と認められる場合は別として、本件のようにそれらの状況が認められない場合は、本条の違反に当ると解することはできない。

森簡裁 昭和42年12月23日

70条って拡大解釈禁止なので、具体的客観的に他人に危害を及ぼすおそれがない場合には成立しない。
危険性がある運転方法だから安全運転義務違反になるわけではない

似たような判例があります。
こちらは安全運転義務違反として有罪。

(罪となるべき事実)

被告人は昭和40年(中略)、原動機付自転車を運転し、紋別郡遠軽町大通り南四丁目附近の人車の往来が頻繁な交差点道路を右折するに際し、ハンドルから左手を離しこれに左官用こておよび手板を持ち、このためハンドルを確実に操作できない状態で時速約20キロで進行し、もつて他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転したものである。

遠軽簡裁 昭和40年11月27日

森簡裁は時速20キロ(オートバイ)で出前の片手運転で無罪。
遠軽簡裁は時速20キロ(原付)で左官用こてを持ち片手運転で有罪。

要はこの差がなんなのか?ですよ。
判決理由はこちら。

法70条は現実の具体的な状況が一つの構成要件要素となつていることを考えなければならない。すくなくとも、右70条にいういわゆる安全運転義務に反したというためには、道路交通及び当該車両等の具体的な状況からみて、他人の生命、身体に危害を及ぼすような虞れが、現に存在した場合でなければならない。従つて、まつたく人車の往来のない道路で、いかに乱暴な危険な運転をしたとしても、それだけでは本条違反とはならないのであり、他人に危害を及ぼす虞れのある客観的な状況を必要とするのである。もつとも本条は、現実に他人に危害を及ぼしたことも、具体的な危険が発生したことも必要としない。このような意味で本条は抽象的危険犯ということができる。

本件犯罪事実を認定した各証拠によれば、被告人が運転した原動機付自転車の左ハンドルには、ライトの切替スイツチとその下方にホーンボタンの装置のみがほどこされている。いわゆるノークラツチのもので、当時の状況としては、これらの装置を使用する必要はなかつたと考えられる。そうであれば、被告人には右装置の操作懈怠はなく、この点に義務違反はない。そこで被告人の左手離し運転の状態をみると平衡を失したり、ぐらつき、ジグザクな走行になつたわけではなく、免許証取得の年数からみてもとくに運転技術が拙劣であることもなく、また左手に下げた左官用の手板、こても1キロ程度の重量しかなく、道路も比較的平坦な、また狭隘という程でもなく、本件交差点附近をのぞきかなりまつすぐな状態にあり、すくなくとも判示交差点にさしかかるまでは人車の往来もさして頻繁でなかつたのであるから、かかる状況のもとでは、被告人の右行為をもつて他人に危害を及ぼす虞れがあつたとすることはできない

ところが被告人はそのまま走行を続け、遠軽町大通り南四丁目附近の交差点を右折して、ここで当時交通違反者公開取締中の警察官の指示をうけ停止したのであるが、この交差点は、北見方面と紋別方面を結ぶ幹線と岩見通りと西町とを接続する道路とが変則的に交差する四叉路で、車の往来も頻繁であり、またこの交差点の附近には、信号機の設置されていない横断歩道が設けられていて、人の往来も頻繁である。被告人はこの交差点を判示のような状態で、約20キロの速度をもつて通過したのであるが、かような交通繁雑な路上では、同一方向の車両等、対向車両等および横断中の歩行者との近接の度合も一段と高くなるから、これら人車との接触回避を要する事態も容易に生じうべき状況にある。このような場合被告人としては、いつでも両ハンドルを把握できるような体勢をもつて進行しなければならない安全運転上の義務があつたのに、判示のような状態で原動機付自転車を運転したところに法70条の違反があつた。

遠軽簡裁 昭和40年11月27日

この2つから言えるのは、結局のところ見通しがよくて交通量もまばらな状況で、出前で片手運転でも熟練した人が運転する分には安全運転義務違反には問えない。
遠軽簡裁判決についても、交差点部の片手運転については安全運転義務違反を認めているけど、交差点に手前については否定。

71条6号(公安委員会遵守事項違反)にわざわざ傘さし運転を禁じる条文を作ったのは、単に傘さしとか出前とかのみで安全運転義務違反にすることはできないし、かといってそれが危険な行為であることには変わらないから。

安全運転義務違反にはならないけど、危険性があるプレイを禁じるために各都道府県が「運転者の遵守事項」として定めたと考えればよい。
なお、法条競合の問題があるので、モノを持つなど片手運転について公安委員会遵守事項違反になるなら、安全運転義務違反にはなりません。

 しかしながら、道路交通法70条のいわゆる安全運転義務は、同法の他の各条に定められている運転者の具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられたものであり、同法70条違反の罪の規定と右各条の義務違反の罪の規定との関係は、いわゆる法条競合にあたるものと解するのが相当である。したがつて、右各条の義務違反の罪が成立する場合には、その行為が同時に右70条違反の罪の構成要件に該当しても、同条違反の罪は成立しないものと解するのが相当である。

最高裁判所第二小法廷 昭和46年5月13日

例えばこれ。
仮に公安委員会規則に「ものを持ち、、、」という規則がないと仮定します。
この片手運転が安全運転義務違反に問えますか?

見たところ、人も閑散としているこの状況では安全運転義務違反には問えない。
公安委員会規則はこのように安全運転義務違反に問えないけど止めてもらいたいプレイを規定したもの。

で。
以前ある県警本部に聞いたのですが、公安委員会遵守事項違反が禁止している「モノを持つ」ということはある程度継続的にモノを持つことを意味していると解釈されるので、走行中にドリンクを飲むことが71条6号に抵触するとは通常考えない。
ただし、例えば交通量が多い交差点を左折しながら片手でドリンクを飲むようなプレイがあれば、安全運転義務違反に問える余地はあります。

けど、そんな奴いないでしょ笑。
走行中にドリンクを飲むなら、何らブレーキングの必要性がない場面を自然と選んで飲みますよね。

逆走自転車が迫ってきているのを確認したのに、優雅にドリンクを飲みだすようなサイクリストはさすがにいない。

補給食も似たような話だと考えればよいです。

安全運転義務違反って、プレイそのものを禁じる規定ではなくて、現場の状況とプレイを合わせて検討するもの。
具体的プレイについて危険性があるなら公安委員会遵守事項で規定するか、道路交通法の条文で明確にします。
携帯電話なんかはそれですね。

ちなみに、自転車で妨害運転罪に問われたケースがありますが、70条安全運転義務違反による妨害運転罪になっています。

普段使っている判例検索サイトで自転車の安全運転義務違反について調べていたのですが、よーく見たらこれはあの有名な自転車あおり運転の判決文ですね...

対向車が迫っている状況にも関わらず、対向車線に飛び出すような動きをしたことが安全運転義務違反。

安全第一で

違反になるかどうか?というのはまあまあどうでもいい話だと思ってまして、例えば補給食については信号待ちで停止中にモリモリ食えばよい。
ドリンクも同様。

自転車が安全運転義務違反に問われた判例は詳しくないですが、安全運転義務違反として書類送検されたことに不服があり提訴した判例はあります。

以前から逆走自転車問題については何度も書いてますが、逆走自転車との距離があるときには、左端に寄せて停止して待ったほうがいいよと書いてきました...

逆走自転車が迫っているのに回避行動を取らなかったことを安全運転義務違反(道路交通法違反)、重過失傷害(刑法)となっていますが、不起訴。

世の中、違法ではないけど適切とも言えないことなんていくらでもあるわけ。
合法だけど好ましくもないプレイなんていくらでもあるけど、補給食うんぬんもそれに近いかと。

違反じゃなければ何してもいいみたいな発想は、危険としか思いません。

ちなみにロードバイクで走行中にマイ・レバーを弄る行為については片手運転ですが安全運転義務違反とも言えない可能性があります。
ただし、違う規定に抵触します。

(禁止行為)
第七十六条
4 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
四 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。

発射禁止の規定がありますから、アウト。
普通に損傷しますし。