PVアクセスランキング にほんブログ村

自転車の左追い抜き事故の判例。

何年か前の話ですが、ロードバイクが左から追い抜きしたことにより接触事故が起こり、先行していた大型車が無罪になった判決がありました。
確か読者様からメールで教えて頂いて、ネット上では「先行大型車が幅寄せしたのに無罪とは何事か!」みたいな意見がそれなりにありました。

この事故、被告人は一貫して幅寄せを否定していたはず。

ロードバイクが左から追い抜き

この判例は裁判所ホームページにもあります。
名古屋地裁 平成31年3月8日判決です。

概要としてはこんなイメージになります。
(なお、事故現場はわずかに左カーブしている様子です)

左側は防音壁、先行車は大型車。
約1mのスペースを、ロードバイクが時速36キロで追い抜きした事故です。

第3 過失の有無についての検討
1 前記第2の1のとおり,本件道路は,交通頻繁な国道で,西側に防音壁が設置され,その西方に歩道が整備されていることからすると,歩行者や自転車の通行が想定されていないものと認められる。
また,本件事故現場の第1車両通行帯は幅約3.8m,被告人車両は幅約2.49mであるから,被告人車両が第1車両通行帯の中央を走行した場合,被告人車両の左側面と外側線との幅は約0.6m,これに外側線と縁石までの幅約0.7mを併せても約1.3mである。証拠によれば,実際に,被告人車両と車両諸元が同一の大型貨物自動車を本件道路の第1車両通行帯に置き,被告人に本件事故時の走行状況を再現させて,同車両左側面と縁石との通行余地の幅を計測したところ約1mであり,自転車(28インチのロードバイク)に乗車した警察官に,同通行余地を走行させたところ,時折その着衣等が大型貨物自動車側面に接触するなど,安全走行が極めて困難な状況であったこと,本件道路の第1車両通行帯を通行する標準的な大型貨物自動車等を任意に抽出,調査したところ,車両左側の通行余地は約1mであったこと,本件道路を通過するロードバイクライダーを抽出し,第1車両通行帯を時速約35kmで走行する大型貨物自動車の左側通行余地1mの条件で,同車両の左側を追い抜いたり接近したりするか聞き取り捜査をしたところ,いずれの対象者も否定したことが認められる。
これらの事実からすると,被告人において,本件道路の第1車両通行帯を走行するに当たって,走行中の被告人車両左側面と縁石との間のわずか約1mの隙間を左後方から自転車等が進行してくることを予見して,その進路を妨害しないよう留意して進行すべき注意義務があるとはいえない

2 また,検察官は,被告人が,ハンドルを的確に操作して適正に進路を保持することなく,被告人車両を本件道路の左端に寄せて走行させた旨主張し,被告人はこれを否定しているところ,被告人があえて被告人車両を左端に寄せる理由は見当たらない。本件擦過痕に基づき,被告人車両が本件道路の左端に寄って第1車両通行帯外側線付近で被害者自転車に衝突したとするEの見解が採用できないことは,前記第2の3のとおりである。
なお,証拠によれば,本件道路は直線道路ではあるものの,わずかに左に湾曲しているため,第1車両通行帯の中央付近を走行するためには,本件事故現場の南方でやや左にハンドルを操作する必要があり,意図的に車体を寄せるつもりがなくても,車体が左右に振れることは十分あり得る。
一般に,自動車運転中に走行車線内で車体が若干左右に振れることは不可避であり,走行車線からはみ出すような場合はともかく,走行車線内で走行位置が若干左右に振れたことをとらえて,ハンドルを的確に操作し進路を適正に保持しなかったということはできない。被害者自転車においても,被告人車両同様,走行中に車体が若干左右に振れることは避けられないと
ころ,本件道路のように第1車両通行帯の外側線と縁石との幅が狭い場所を走行する際には,もとより被害者自転車のハンドルや被害者の身体が外側線から第1車両通行帯内にはみ出すことになるため,被告人車両が殊更左に寄らなくても,被害者自転車が被告人車両左側面と接触してしまう可能性は否定できない。
以上によれば,結局のところ,そもそも被告人がハンドルを的確に操作して進路を適正に保持することなく被告人車両を本件道路左端に寄せて走行させた事実は認められず,仮に,走行中に被告人車両の車体が若干左に振れたために本件事故に至ったとしても,被告人に結果回避義務違反があったとはいえず,被告人に過失は認められない。

名古屋地裁 平成31年3月8日

被告人が左にハンドルを切った(いわゆる幅寄せ)の証拠はなく、被告人自身も否定。
警察官の再現実験の結果でも左に防音壁、右に大型車、約1mの隙間を安全に通行することは困難な上、他の大型車の通行状況やロード乗りの意見聴取など様々な観点から検討されています。

もちろん、裁判で否定された証拠もありますが、事故はお気の毒とはいえ、これは刑事責任を問うべき事案なのか?については疑問。
道路状況と幅から考えて、時速35キロで進行していた大型車の左側を追い抜きする自転車があることを予見する義務があるのだろうか?と考えてしまいます。
なのでこのように判断されてます。

本件道路の第1車両通行帯を走行するに当たって,走行中の被告人車両左側面と縁石との間のわずか約1mの隙間を左後方から自転車等が進行してくることを予見して,その進路を妨害しないよう留意して進行すべき注意義務があるとはいえない

どう捉えるか

どう捉えるかについては人それぞれ感想は違うかもしれないけど、追い抜きだろうと追い越しだろうと後車に大きな注意義務があるとされます。
約1m、左右が壁という状況は追い抜きをすること自体に危険性がある。

当時、ネット上では「幅寄せしたのに無罪とは何事か!」みたいな意見はありました。
幅寄せした事実は無いし、左にハンドルを切る理由すらない。

どのような理由で自転車が追い抜きしようとしたのかはわかりませんが、個人的には「ギリギリ行けそうな感覚」なら思いとどまるほうがよいかと。
これは信号でも同じ。
自転車乗りの多くは、後続車に追い抜き、追い越しされるときには1.5mくらい側方間隔を取って欲しいと考えます。
この速度域で自転車が追い抜きする場合も同じで、十分な側方間隔を保持したまま追い抜きできる場合以外はしないほうがよいかと。

先行する自転車を追い越し、追い抜きするときに、側方間隔が近すぎて怖いという問題があります。 これについて、法律上は側方間隔の具体的規定はあ...