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歩行者が横断歩道で譲る。

なんか物凄く話題になってますよね、コレ。

歩行者が「先に行け」とした場合にどう判断されるのかについては、判例を見たことがありません。
そもそも、仮に争うにしてもどうせ不起訴がオチなので争えないという問題はありますが。

「横断しようとする歩行者」

歩行者が「先に行け」と促したにも関わらず、それが「妨害」に当たるのか?についてはまあまあビミョーです。
先に行けと言う人が「妨害された」と言うのは、日本語として不思議ですが。

「横断しようとする歩行者」に該当するかどうかを争った判例はあります。
昭和40年の出来事なので、当時の法律は71条3号(昭和38年改正)。

三 歩行者が横断歩道により道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)を横断し、又は横断しようとしているときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにすること。

判例は東京高裁 昭和42年10月12日。
認定された事実は以下の通り。

(一)  歩行者である老人は、横断歩道によつて、古町通りから、白山公園入口に向けて車道を横断するため、歩道から横断歩道に2、3歩足をふみ出したが、被告人の車を先頭に十数台の車両が進行してくるのを見て、その場に一時停止したものの、その際別段歩道上に引き返すような素振が見受けられなかつたことが、明らかであり、右事実に徴すれば、右老人は、横断歩道によつて、古町通りから白山公園入口に向けて車道を横断しようとしたものであるが、被告人の車を先頭に十数台の車両が進行してくるのを見て、横断に危険を感じ、その安全を見極めるため、一時停止したにすぎないものであつて、歩道上に引き返すような素振を見せる等外見上明らかに横断の意思を放棄したと見受けられるような動作その他の状況が認められない以上、直ちに横断の意思を一時放棄したものとは認められないこと、
(二)  被告人は一時停止することなく、歩行者である右老人の直前1.5mないし2mのところを通過したこと、
(三)  右老人が立止つていた個所のすぐ先の左側には貨物自動車が停車していた、事実がなかつたこと、
(四)  警察官は、被告人および右老人の行動を近距離から現認し、被告人が横断歩道直前での一時停止を怠つたものと認めたので、同人を検挙したものであること、

要は横断歩道を横断しようとして2、3歩横断歩道を進行したけど、止まってくれる気配がなかったので横断歩行者は「一時停止」して自己防衛した。
被告人車は横断歩行者の前1.5~2mを通過したという状態です。

これに対して裁判所の判断はこちら。

右法条にいわゆる「横断しようとしているとき」とは、所論のように、歩行者の動作その他の状況から見て、その者に横断しようとする意思のあることが外見上からも見受けられる場合を指称するものであるが、論旨第一点において説示したとおり、老人が横断歩道で立ちどまつたのは、そのまま横断すれば危険であると考え、その安全を見極めるためにしたものにすぎず、横断の意思を外見上明らかに一時放棄したものとはいえないから、この場合は、前記法条にいわゆる「横断しようとしているとき」に該当するものというべきである。そこで右主張もまたこれを容れることができない。論旨は理由がない。

東京高裁 昭和42年10月12日

まあ、これは当たり前に有罪です。
ただまあ、この判例で少し気になるのはここ。

横断歩道で立ちどまつたのは、そのまま横断すれば危険であると考え、その安全を見極めるためにしたものにすぎず、横断の意思を外見上明らかに一時放棄したものとはいえない

確かに判例のケースでは、横断歩行者は単に立ち止まっただけなので横断する意思があるのは明らか。
「横断の意思を一時放棄したと外見上明らか」なら同条項に言うところの「横断しようとしている」に当たらないと解釈できる余地も残している。

結局は

この手の問題って、否認事件として争うにしてもどうせ不起訴がオチ。
不起訴の場合、違反点数は消えません。
不起訴ならそれ以上争えない。

あとは行政訴訟として「ゴールド免許を交付せよ」という訴えは可能です。
「点数を取り消せ」という訴えはできません。
点数は行政処分には当たらないと解釈されるため、ゴールド免許を失った場合や、免停などになったときしか争えない。

ただまあ、

歩道上に引き返すような素振を見せる等外見上明らかに横断の意思を放棄したと見受けられるような動作その他の状況が認められない以上、直ちに横断の意思を一時放棄したものとは認められない

外見上明らかに横断意思を一時放棄したと認められる状況なら話が変わる余地は含ませているとも言える。

その一方、このような判例もあります。
この判例は歩行者が譲ったケースではないものの、「横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者」について判断されたもの。

南行車線が渋滞で停止車両があり、停止車両の隙間から横断歩道を横断しようとし、横断歩道の中央付近で姉が顔を出して反対車線を確認。
姉は横断を躊い横断歩道中央付近で立ち止まった。

車の運転者は時速8~10キロで進行していたものの、姉が横断中に立ち止まったことから横断歩行者がいないと考え進行。
弟(8歳)が姉の横から横断したために起こった事故です。

イメージ図(正確性は保証しません)。

このように横断歩道上を横断しようとしてその中央付近手前まで歩んできた歩行者が、進行してくる被告人車をみて危険を感じ、同歩道の中央付近手前で一旦立ち止まったとしても、横断歩道における歩行者の優先を保護しようとする道路交通法38条の規定の趣旨にかんがみると、右は同条1項後段にいう「横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者」にあたるというべきである。
そして、同女が横断歩道上の前記地点で立ち止まったとしても、前記認定のような当時の状況に徴すると、同女の後方からさらに横断者のあり得ることが予想される状況にあったのであるから、自動車運転者である被告人としては、同女の姿を認めるや直ちに、右横断歩道の手前の停止線の直前で(仮に、被告人が同女の姿を最初に発見した時点が、所論のように被告人車の運転席が停止線付近まで来たときであったとしても、事理は全く同様であって、その時点で直ちに)一時停止し、横断者の通行を妨げないようにしなければならなかったのである。

大阪高裁 昭和54年11月22日

まあ、事例が違いすぎるのであまり参考にはならないかもしれません。

けどこの「歩行者が譲る」件、私が聞いている範囲では原則として取り締まり対象にはしてない。
強いて気になるとすると、歩行者が既に横断歩道上に進出している点でしょうか。

けど、まあまあくだらないケースだなと思うのは、こんなものより取り締まるべきものはあるような。
争ってみせる!と思ってもどうせ不起訴なのですが。

警察の取り締まりって時に無理があるというか、こんなのもあります。

なかなか凄い訴訟だなと思う事例がありました。 原告席には、ロン毛を後ろで縛ってラフな服装の男性(40歳)が1人いた。代理人弁護士なしの本人...

耳を掻いただけなのに、携帯使用だとして違反を取られて争った事例。
ゴールド免許を交付せよという訴えのようです。
行政訴訟って勝訴率10%以下なので、基本的には勝ち目は低いですが、争うのは自由。

けどこの手の話、「横断歩行者が妨害された」ことと、「横断歩行者が先に行けと促した」ことを区別して考えることができない人もいるわけ。
後者を「妨害された」とみなすことが出来るのか?という話な。
先に行けと促す人は、堂々と自らが先に横断する権利もあれば、車を先に行かせる権利も当然持ち合わせている。
東京高裁 昭和42年10月12日判例では後者について「一時放棄」と表現しているが、一時放棄した歩行者は「横断しようとする歩行者」に該当しないとみなせる可能性はあるものの、結局のところ判例がない以上はかなり曖昧。

交通指導のオッサンが「先に行け」と促すケースについては、一時停止と確認までした上なら進んでも問題ないと思われます。

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個人的にはどうでもいい話題だと思うのですが、このような質問を頂きました。 たぶんこんなイメージかと。 ちょっと話が長...


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