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自転車横断帯を横断する自転車は、当たり屋になれるのか?

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だいぶ前に、横断歩道を横断した自転車と車の事故について、当たり屋の可能性を否定できないとして無罪(過失運転傷害)にした報道を引用しました。

 

当たり屋さんを防げない。
こちらのアンケートですが、 まあいつも通り、機材に関係ないアンケートは低調です笑。 ちょっと気になる意見があります。 民事の過失割合 頂いたご意見。 自転車側のフラツキも含めて、事故時の車側過失が100%になるなら数値規定なしでも良い。 民...

 

判決などによると、昨年8月、和歌山市内の交差点手前の停止線で、女性が一時停止をした後に左折をしようとしたところ、前方の横断歩道を左から右に横断しようとした自転車の男性が転倒し、左手などに全治4週間の負傷。

 

検察側は、女性が周囲の安全確認を怠り、男性を驚かせて転倒させたとして略式起訴したが、簡裁が「慎重な審理が必要」として略式不相当としていた。

 

「当たり屋」が示談金より保険金を狙う理由 | 東スポWEB
和歌山市で乗用車を運転中に自転車の40代男性を転倒させ、負傷させたとして自動車運転処罰法違反(過失傷害)の罪に問われた女性(43)に、和歌山簡裁が「男性は保険金目当ての『当たり屋』の疑いが極め...

気になって調べてみたところ、この判例は横断歩道と自転車横断帯が併設されたところの自転車横断帯を横断していた自転車と、交差点を左折した車の事故でした。

 

報道ってビミョーにいい加減ですよね。
とは言え、自転車横断帯を横断する自転車は道路交通法38条1項により極めて強い優先権を持つわけで、横断歩道を横断する歩行者と同等。
なのでちょっと驚きです。

自転車横断帯を横断していた自転車

※画像と事故現場は関係ありません。

 

この事故は非接触の驚愕事故です。
車は交差点を左折する前に一時停止規制に従い一時停止した後、横断歩道と自転車横断帯を確認してから進行したものの、自転車が左から右に横断したためブレーキ。
自転車は車の挙動に驚いて転倒し骨折。

※面倒なので過去のイラストを流用しますが、信号はない交差点で、自転車横断帯はあります。

 

目撃者はなく、加害者と被害者双方の供述と警察の現場検証のみが証拠です。
上で書いた事実のみを見れば、道路交通法38条1項後段の違反(妨げないようにしなければならない)と、自動車運転処罰法違反(過失運転傷害罪、自転車横断帯の左右を確認して安全を確認しながら進行すべき注意義務違反)が認められてもおかしくはない。

 

報道にもあるように、検察官の略式請求に対して裁判所が略式不相当として通常裁判になった事件です。

 

判決文にも、報道と同様の記述があります。

本件被害者のように2年間に5件の交通人身事故に遭う確率は概算58億3958万0953分の1という極めて低い確率となり、これは巷間で言われている「ジャンボ宝くじ」の1等に当たる当選確率である「1000万分の1」と比べても比較にならないくらい極めて低い確率であって、(中略)通常の常識ではちょっと考えられない、異常な交通事故遭遇頻度である。

 

平成28年7月25日 和歌山簡裁

もちろん、無罪の理由はこれだけではありません。
むしろこの理由は最後のダメ押し的なのかなという印象。

事故による傷害保険金等目当てに、自ら作為的に仕組んで転倒した偽装事故の疑いが極めて高く

 

平成28年7月25日 和歌山簡裁

要は驚いたという形を取り、自ら転倒した疑いが極めて高いという話です。

 

被告人に過失が認められないとして無罪を言い渡し、検察側は控訴せずに判決確定しています。
過去の事故についても当たり屋の可能性が極めて高いと判決文にありますし、警察や検察の取り調べも非難するような文言があります。

 

この件、道路交通法違反ではなく自動車運転処罰法違反ですから、行政処分として38条違反の加点がそのままなのかはわかりません(そもそも加点されたのかは不明ですが)。
普通の感覚だと点数も取消になるとは思いますが、行政って意外と変なところに意地を張り、別問題だと切り捨てることも無くはない。
なのでわかりません。

38条

執務資料道路交通法解説(東京法令出版)や道路交通法ハンドブック(警察庁交通企画課)によると、38条1項後段の「妨げないようにしなければならない」という中には、歩行者等の進行速度を変えさせるようなことも妨害なんだと説明されてます。

 

先日の件、かなり拡大解釈していらっしゃる方々がいてビックリするのですが、

 

そういやコレを見ていて思うこと。
先日のコレ。 法律論 対 感情論としか思っておらず。 法律論 対 感情論 違反否定派(法律論) 対 違反肯定派(感情論)の醜い争いとしか。 後段のみ抜粋するとこうなります。 横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者...

 

「危険を感じて事故回避のために歩行速度を変えたり立ち止まらせること」と、「車が一時停止して安全確保してあるにも関わらず、歩行者が先に行けと指示し、歩行者が歩行速度を変えたり立ち止まること」を同一に捉えて分けることができない方々もいらっしゃる。

 

前者はそのまま歩行を継続すれば事故に遭う蓋然性からした行動、後者は何ら危険がないにも関わらず歩行者の権利として先に行かせた行動。

 

理由を問わず「歩行速度を変えたり立ち止まった」という結果だけで妨害になるというなら、まあまあ珍事が発生します。
以下、あくまでも一時停止した上での検討です。

 

◯歩行者が普通に歩いてきたものの、ドライバーに気を遣ったのか小走りで横断する歩行者もいますが、「歩行速度を変えさせた」に該当して妨害(38条1項後段の違反)になる?

 

◯上判例のように、自ら作為的に転倒した行動が妨害(38条1項後段の違反)になる?

あんまりいい映像は見つかりませんでしたが、例えばこちらの0:10あたりから。

双方の車が一時停止してますが、歩行者(小学生)は横断歩道に進行した歩行速度から、途中から小走りになり「歩行速度を変えている」わけです。
これも妨害とみなすというなら、まだ法解釈が一貫しているなーと思いますが、普通の感覚なら「客観的危険があるから歩行速度を変えさせた」わけではなく、「何ら危険がない状況にも関わらず、歩行者が勝手に歩行速度を変えた(自由意思)」が正解。
当たり前ですが、ドライバーが違反に問われることはありません。
つまりは、「歩行者が歩行速度を変えた」というのは、歩行速度を変えたという結果論で違反になると解釈することは出来ない。
このあたり、執務資料に書いてある内容の意味を理解できない人もいるようですが。

 

前に挙げた弁護士さんのTwitter動画について、「車が歩行者に圧を掛けて歩行速度を変えさせた、立ち止まらせた」みたいな話を平然とする方々もいらっしゃる。
ではYouTube動画の小学生も、車からの圧により小走りを強いられた(歩行速度を変えさせた)という解釈になり、ドライバーに刑事責任を負わせるのですかね。

 

停止しなそうだから歩行速度を上げて小走りに横断歩道を横断したというなら、違反になる可能性はあります。
一時停止した上で歩行者が勝手に小走りになることについて、「歩行速度を変えさせた」としてドライバーの違反になるという理論なら相当ヤバいとしか思わないけどね。

 

・客観的危険があるから歩行速度を変えざるを得ない状況に追い込んだ→妨害

 

・客観的危険がないにも関わらず、歩行者の自由意思で歩行速度を変えた→何ら妨害にならない

この違いを理解できないのはかなり危ういと思う。

判例

ちなみにですが、仮に横断歩行者、横断自転車に過失があるとしても、それを以てドライバーの過失を否定して犯罪の成否に影響するわけではなく、量刑において考慮されるという判例があるわけで、上の判例は自転車が当たり屋の疑いが極めて強いから無罪というわけではありません。
ドライバーに過失がなく、さらに当たり屋の可能性が極めて高いとの判断です。

 

なので被害者が当たり屋だから絶対に無罪ということではありません。

 

まあ、詳しくは全文見たほうがいいかと。
当たり屋だろうと、ドライバーの過失が認められるなら話は別です。

 

けど、38条を病的に解釈する方々からしたら、38条1項により極めて強い優先権を持つ「自転車横断帯を横断した自転車」が保護されなかったクソ判例とでも捉えるのですかね。
読んだ印象としては、警察と検察が事件を創作したような印象すら受けますが。

 

報道では、横断歩道を横断した自転車との事故とあったので「ふーん」と思って見ていたのですが、自転車横断帯を横断した自転車を当たり屋の可能性が極めて高いと判断したことについては、ちょっと驚きです。

 

「驚かせて転倒させた(妨害)」と「作為的に転倒した」は当然別問題。
「危険回避のために歩行速度を変えさせた、立ち止まらせた(妨害)」と「一時停止して安全が確保されているにも関わらず、歩行者の自由意思で歩行速度を変えたり立ち止まった(妨害ではない)」は当然別問題。
後者まで違反に問えるなら、一時停止後に横断歩道を小走りで横断した歩行者がいた場合、ドライバーが無言の圧を掛けて歩行者を小走りにさせ妨害したという理屈すら成り立つわけで、バカなんじゃないかと思うところです。

 

自転車横断帯を横断した自転車が当たり屋の可能性が極めて高いと判断されるくらいなので、横断歩道を横断した歩行者が当たり屋扱いされる可能性も当然あり得る。

 

日本の道路交通法は「◯✕が優先だ」みたいな記述にはなってなくて、優先の反対側に「妨げてはならない」などと義務を課し、反対解釈から優先権を規定しているとされます。

 

38条については、一時停止と妨害禁止を並列的に課していることから「極めて強い優先権」と表現されますが、法解釈上、絶対的な優先権とまでは解釈できないらしい。
詳解道路交通法では「反射的効果」と呼んでますが、絶対的優先を規定するとこういうのも問答無用に有罪になったり、うまくこなして当たり屋的プレイで他人を犯罪者にすることが可能になりうるわけです。
まあ、横断する意思を一時放棄するという概念は昭和42年東京高裁判決でも示されていますし、横断する意思を一時放棄したことか明確ならば「横断しようとする歩行者」には当たらないかと。

繰り返し書いておきますが、被害者が当たり屋の疑いがあるから無罪になったわけではなく、過失が認められないから無罪。当たり屋の可能性は被告人の無過失を補強したようなイメージかと。

ちなみにこの裁判官、なかなか興味深い判決を出すみたい。

 通行トラブルで男性を負傷させたとして、傷害罪に問われた男性工員(23)に対し、大阪簡裁が有罪だが刑罰を科さない、刑を免除する判決(求刑・罰金30万円)を出し、確定したことが分かった。畑山明則裁判官は先に攻撃をしてきた負傷男性と同じ不起訴処分(起訴猶予)が相当と判断した。また、フィリピン人の母を持つ工員は日本語が不自由だが、検察が丁寧な捜査を尽くさなかったと批判した。
 判決は2月26日付で検察側は控訴しなかった。当初、検察は工員を在宅のまま略式起訴、大阪簡裁が罰金の略式命令を出したが、工員側が不服として正式裁判を請求していた。
 判決によると、工員は2013年6月2日午後10時25分ごろ、大阪市東住吉区の歩道で、男性の顔などを何度も殴り、左頬骨折などのけがをさせた。
 工員は直前、弟、妹と計3人でそれぞれ自転車に乗って通行中、歩いていた男性2人とすれ違い「ボケ」などと怒鳴られた。
 さらに2人のうち1人が追いかけてきて工員に詰め寄り、止めに入った弟の胸ぐらをつかんだ。工員は弟を助けようとしたが、負傷男性に胸ぐらをつかまれ、首を締め上げられた。苦しくなって負傷男性を殴り、さらに向かってこられたため顔などを殴打した。
 通報で事件を知った府警は任意で捜査し、検察は工員だけを略式起訴し、負傷男性や弟は起訴猶予とした。
 畑山裁判官はまず「先に攻撃をした負傷男性が返り討ちに遭った事件で自業自得だ」と指摘。工員の暴行は正当防衛をやや上回る程度の過剰防衛で「強い非難はできない」と判断した。
 また、工員は日本国籍を持つが大半をフィリピンで過ごし、タガログ語で生活していたため、日本語が不自由だ。警察の捜査段階ではタガログ語の通訳が付かず、比較的堪能な英語の通訳が付いた。
 畑山裁判官は「警察の調書は正確性に若干難点を抱えるが、それでも工員や弟の弁解や言い分に耳を傾けている」と指摘。そのうえで、捜査を引き継いだ検察官について「タガログ語の通訳を付けながら詳細に再聴取せず、単なるけんかと決めつけて不公平な処理をした」と批判した。最後に「今後このような遺憾な捜査が二度と行われないよう切に希望する」と付け加えた





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