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「幻惑ライト」とその責任。

先日の件。

ロードバイクなど自転車リアライトの点滅、違反ではないのか?という話が話題になっているようなのですが、これについては2つの条文から考える必要が...

話題になっていたのはこの件です。

法的な面のおさらい。

◯自転車リアライトの点滅自体は、違反とはみなされない(法52条1項、令18条、各都道府県の規則)
◯「幻惑ライト」であれば絶対的禁止事項になる(法76条4項7号、各都道府県の規則)

見たところの印象ですが、ハイパーフラッシュモードはやめたほうかいいです。
違法と言えるかは難しいけど、警察にいえば注意の対象にはなるかと。

リアライトの点滅ですが、過去にいくつかの警察本部に確認取っています。
点滅自体は違反ではありません。
使い方次第で幻惑させる場合が違反。

一応、ライトにより幻惑させたことについて刑事責任を問われた判例があります。

幻惑ライトによる刑事責任

幻惑させた側の責任

判例は東京高裁 昭和55年8月6日。
ハイビームにより対向車が幻惑され、運転操作を誤った事故について、ハイビームを使っていた側が刑事責任を問われた判例です。

被告人の注意義務の存否・内容を検討すると、本件事故時の状況は、要するに、被告人車両が時速60キロないし70キロで被害車両が時速80キロで、共に自車の右側部分が本件道路の中央線から約50センチ位自車線側(左側)に寄つた付近を対進して走行し、両車間の距離が約108m位に至つた際、被害者が被告人車の上向き前照灯に眩惑されて急制動の操作をしたため、両車の離合直前に、被害車両が右同様道路中央線寄りを進行していた被告人車の前面に急角度で進出し、両車が衝突するに至つたというものである。本件事故の直接の原因が被害者の急制動措置にあることは明らかである。
そこで、問題は、被害者が右急制動をかけ、本件事故が発生するに至つたことについて、被告人に過失責任があるか否かであるが、被告人に対しこれを肯定するためには、被告人の本件のような運転状況から、右の結果発生が一般的に予見可能な場合でなければならない。

本件の場合、まず、被告人の灯火の切り換え操作が時期を失した不適切なものであつたことは、既にみたとおりであるから、被告人車の上向き前照灯によつて、被害者が眩惑されるおそれのあつたことは、一般的に充分予見することが可能であつたということができ、したがつて、本件被害者を眩惑状態に陥らせた責任が被告人にあることは明らかである。

つぎに、自動車運転者が右のように眩惑状態に陥つた場合、本件被害者がなしたように、直ちに急制動をかけることが一般的に予見可能であるかどうかであるが、右の場合、これに対する被害者の運転方法として通常考えられるところは、直ちに減速すると共に進路を左寄りに変え(本件道路の片側幅員は約5.45mである。)、被告人車との間隔を保つて進行することである。しかしながら、右の措置は、自動車運転者が適切に運転操作をなす場合のことであつて、本件被害者のようにかかる措置をとることなく、直ちに急制動の措置にでることも、一般的にみて充分に予見することが可能であつたものというべきである。けだし、道路交通法52条2項が、一定の場合に自動車運転者に対して灯火の操作を義務づけているゆえんは、眩惑状態下における対向自動車の運転者が一時的に視力を喪失した場合、運転操作を誤り交通事故を発生せしめる危険性が極めて高いと予想されるためであると解すべきところ、本件の場合、被告人車両及び被害車両は、共に道路中央線に近接し、かつ、指定制限速度を上回るかなりの高速で対向接近していたのであるから、かかる状況下で、被害者が被告人車の前照灯に照射されて眩惑状態に陥つた場合、同人が衝突の危険を感じ、狼狽のあまり、前記のような適切な措置をとらず、直ちに急制動の措置に出るということは、なお一層容易に予想しうるからである。所論は、被害者が急制動をかけたのは、被害車両の速度(時速80キロ)及び走行位置(中央線寄り)から、運転未熟の同人が狼狽のあまり誤つてなしたものであつて、被告人に過失責任はない、というが、右所論の採用しえないことは、以上詳細に述べてきたところから明らかというべきである。また、所論は、被害車両が衝突直前に突如被告人側車線内に進出したのは、被害車両の制動装置が片効きであつたためか、または被害者の運転操作の誤りによるものであるから、本件事故は被告人の責任ではない、ともいうが、被害車両の制動装置が片効きでなかつたことは、原審証人の供述及び司法警察員作成の昭和52年2月23日付実況見分調書に徴し明らかであるのみならず、急制動操作により車輪の回転が停止した状況下の運転者は、通常運転制禦能力を失つているものとみるべきであり、したがつて、被害者が急制動をかけたのちにおける本件被害車両の一連の動きは、自然的因果の流れに過ぎないものであるから、いやしくも被害者に急制動の措置をとらせるに至つたことについて被告人に過失が認められる以上、被告人は本件の結果発生について過失責任を免れない筋合いであるといわなければならない(もつとも、以上みてきたところでも明らかなとおり、被害者の運転方法にも、走行速度、走行位置、急制動措置等に不適切な点が存在することは否定しえないが、右は、同人自身の過失責任として考慮されるべき事柄であつて、被告人の過失の成否になんらの消長をきたすものではない。)

以上の次第であるから、被告人が、本件現場で被害車両と離合しようとするに際し、原判示のとおりの注意義務を怠り、同車と前方約108mに対向接近するに至るまで前照灯を下向きにせず、道路中央線寄りを指定制限速度毎時50キロを上廻る高速で進行した点で、被告人に本件事故発生の過失責任があることは明らかというべきである。なお、原判決には、前記三の2で認定したとおり、被告人車の走行位置に関し、事実の誤認があるといわなければならないが、右の誤認は、被告人車の右側部分が道路中央線付近に位置していたか、それより50センチ位左側であつたかの差異に過ぎず、本件の場合、被告人の過失の成否に何らの影響を及ぼすものではない。

東京高裁 昭和55年8月6日

この判例は制限速度を越えて進行し、かつハイビーム状態により対向車のドライバーを幻惑させたもの。
幻惑させられた対向車が急ブレーキをかけたことによる事故ですが、減灯措置(ハイビーム→ロービーム)を取らなかった被告人に業務上の注意義務違反を認定し有罪(業務上過失傷害罪)にしています。

幻惑させられた側の責任

逆に、「幻惑させられた側」の刑事責任が問われた判例があります。
判例は東京地裁 昭和47年7月18日。

この判例は対向車のフロントライトにより幻惑されて前方注視が困難になった状態で、右から左に道路を横断した歩行者(横断歩道ではない)に衝突した事故(業務上過失致死)。
なお、被告人車も対向車も、フロントライトは「下向き」です。

事故のあらすじです。

被告人は、(中略)、約60キロメートル毎時の速度で北進し、前記事故発生現場にさしかかったところ、対向車が接近してくるのを認めたが、対向車も自車も前照灯を下向きにして走行していて、対向車の前照灯の光が目に入らないよう左側6分、右側4分くらいの配分で前方を注視して走行を続けたが、その際本件道路の右方や横断中の歩行者は認めなかったので安全にすれ違いができるものと考えて走行していたところ、本件事故現場より約50m手前の地点において、対向車が自車の正面に向かってくるように突然右転把して中央線寄りに進路を変更し、その際の同車の前照灯の照射方向が自車に向いたためまぶしくなり前方が見えにくい状況になったので、ブレーキを少し踏んで約50キロメートル毎時程度に減速して、事故地点より約25m手前で対向車とすれ違い、その直後右対向車の後方を右から左へ小走りで横断歩行中の被害者を4、5m前方の至近距離にて初めて発見したが、ブレーキを踏んだかそのいとまもないか位の瞬間のうちに、中央線より約半メートル左側の車線に入った地点(車道左側端より4.1mの地点)において、自車右前部前照灯付近および前面フロントガラス右端部分を被害者に衝突させ、よって同人を脳挫傷のため即死させた。

東京地裁 昭和47年7月18日

こちらの争点は、幻惑状態に陥ったときに一時停止するなどの注意義務があるのか?というところや、予見可能なのか?になります。
結果は無罪です。
理由は様々ありますが、被告人車からすれば直前横断、対向車からすれば直後横断。

したがって、自動車運転者がげん惑されず通常の運転状況下において前方を注視さえしていれば事故発生の予見が可能であり、結果の回避も可能であったことが必要であり、前方注視が全くできない状態のまま自動車の運転を継続していた際に道路上の歩行者に衝突させ死傷の結果を生じさせたとしても、前方注視をしていれば被害者を発見しうる状況にあったこと、そして回避措置がとり得る状況にあったことが確定されない限り過失行為ありということはできないし、右の前方注視が困難なまま運転を継続したという不注意な行為と結果発生について刑法上の因果関係を認めることもできないと考える。

(中略)

横断歩道またはその直近とか交差点等自車の進路を横切る歩行者や他の車両があり得ることが客観的に予見し得る特段の情況がない限り、歩行者が対向車の背後から自車の進路上に飛び出してくるかもしれないことまで予測して、その度毎に徐行するなどして事故発生を未然に防止しなければならない注意義務はないと解され

東京地裁 昭和47年7月18日

気をつけて頂きたいのは、幻惑させられた場合には注意義務がなくなるわけではなく、この事故については幻惑がなかったとしても予見義務も回避可能性もないということ。
対向車の直後横断になるため、道路右側から歩行者が横断開始したことを察知できない。

判決文にもあるように、仮に横断歩道だったら「幻惑させられて見えない以上は」、歩行者の有無を問わず一時停止して確認するまでは進行することは許されないでしょう。

点滅ライトと違法性

冒頭の件に戻ります。
自転車の点滅ライト自体は違法になるわけではなく、その点滅ライトに「幻惑効果」があるなら違法(道路交通法76条4項7号、公安委員会禁止事項違反)。
全部は調べていませんが、基本的にどの都道府県にも同様の規定があると考えてよいです。

実際のところ、Twitter映像について意見は真っ二つに割れている模様。

公安委員会禁止事項違反となる「幻惑ライト」については、結局のところ明確な基準はありません。
基準がないので、警察が得意とする「現場判断」という便利な単語に落ち着きます。

私の感想ですが、ハイパーフラッシュモードは夜間はやめたほうがいい
幻惑効果が高いと感じる人はそれなりにいるので。
点滅モードでも、ゆっくり点滅するモードと光度次第かと。

ハイパーフラッシュモードって、残像みたいになるので私の中では無し。
映像見ると、残像みたいになってますから。
ただし違法なのかというとビミョー。
自転車の違反については、まずは切符の前に注意指導がお約束。
注意指導に従わない場合には赤切符を検討する可能性があるくらいかと。

上で判例を2つ挙げましたが、どちらも対向関係についてのフロントライトにより幻惑したモノ。
同一進行方向の先行車のリアライトが眩しいという判例は、たぶん無いです。

だって車やオートバイのリアライトは、点滅出来ないので。
判例になりようがない。

けど、仮に先行自転車の点滅リアライトにより後続車のドライバーが幻惑させられた結果として事故が起きた場合、自転車も刑事責任、民事責任を負う可能性はあります。
なのでハイパーフラッシュモードはやめたほうがよい。
幻惑しない点滅頻度と光度があるはずだし。

ハイパーフラッシュモードのフロントライトも、同様にヤバいので無しかと。

「点滅ライトは違反ではない」というところだけに着目すると足りなくて、結局はこれ。

このたびは、警視庁に対する御意見をいただき、ありがとうございます。
夜間における自転車の点滅式ライトでの走行について、警視庁の取組を御説明します。
点滅式ライトの使用自体は道路交通法等に違反するものではありませんので、同ライトの使用のみをもって取り締まることはできません
なお、同ライトの角度や使用法等によっては、他の車両の運転者等をげん惑させるおそれがありますので、事故防止のため、引き続き、現場における指導を徹底して参ります。
今後とも、警視庁の活動に御理解と御協力をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
(警視庁)

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/10/30/10_06.html

点滅ライトなら何でもいいわけじゃなく、幻惑させる使い方、角度によっては違法。
実際のところ、対向関係においてはライトにより幻惑させたドライバーが刑事責任を問われた判例もあるわけで、まずは自分自身が喰らってみて不快感がないことが大前提。

ちなみに私のリアライトはこんな感じです。

基準がないということを、「自由」と捉えるのか、「自主規制」と捉えるかになりますが、最低限、「自分が喰らってみても問題ないレベル」にするのが当たり前かなと思います。

世の中いろんな人がいて、逆走自転車に対してVolt6000のような超高輝度ライトをハイビーム照射するような奴もいるらしい。

逆走という違反行為に対して、幻惑させる違法ライトを照射するという時点でお察し。
違反に違反で応酬するという頭が悪い人もいますが、その時点で「同類」でしかないんだよね。
しかも、暴行罪にもなりうる。

ライト問題って、ビミョーなんですよ。
考え方も捉え方も違うし、明確な基準もない。
けど、幻惑させたら道路交通法違反になるし、業務上過失致死に問われるリスクがあることも知っておいたほうがよろしいかと。

正直なところ、警察庁が基準を作り、さらにライトごとに認証するようなシステムがあったほうがいいと思う。
点滅ライトに不快感を示す人ってそれなりに聞くし、かといって点滅による被視認性の高さは事故防止になるし。
点滅リアライトと点灯リアライトのダブルは私もオススメしてますが、不快感を感じさせることが目的ではないし、ドライバーと対立構造を作りたいワケではない。
被視認性を高めながら不快感がない範囲で使うためには、それぞれ個人に委ねる運用は限界があると思う。