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妨害運転罪の話。

妨害運転罪が道路交通法に規定されてから何年か経ちました。
ぶっちゃけた話、妨害運転罪として起訴された事案ってさほど多くはないみたいです。
まあ、第一号と言われる事案が自転車だったことについては、嘆かわしいとしか言いようがなく。

普段使っている判例検索サイトで自転車の安全運転義務違反について調べていたのですが、よーく見たらこれはあの有名な自転車あおり運転の判決文ですね...

妨害運転罪

妨害運転罪は以下のように定義されています。

第百十七条の二の二
十一 他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者

イ~ヌまで10類型がありますが、詳しくは割愛。

つまりは3つの観点から考える必要がある。

①妨害意思の立証
②交通の危険を生じるおそれがある方法
③各類型違反の該当

問題なのは、警察も検察も立件することに積極的な雰囲気があんまりない。
特に、具体的事故が起きて死傷者がいないケースでは、起訴した事例が少ないような。

妨害意思については、妨害運転罪ではなく危険運転致死傷罪(当時の刑法208条の2)についてこのような判例があります。

これらの事実に照らすと,被告人が,車体の半分を反対車線に進出させた状態で走行し,C車両を追い抜こうとしたのは,パトカーの追跡をかわすことが主たる目的であったが,その際,被告人は,反対車線を走行してきている車両が間近に接近していることを認識していたのであるから,上記の状態で走行を続ければ,対向車両に自車との衝突を避けるため急な回避措置を取らせることになり,対向車両の通行を妨害するのが確実であることを認識していたものと認めることができる。
ところで,刑法208条の2第2項前段にいう「人又は車の通行を妨害する目的」とは,人や車に衝突等を避けるため急な回避措置をとらせるなど,人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図することをいうものと解される。しかし,運転の主たる目的が上記のような通行の妨害になくとも,本件のように,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識して,当該運転行為に及んだ場合には,自己の運転行為の危険性に関する認識は,上記のような通行の妨害を主たる目的にした場合と異なるところがない。そうすると,自分の運転行為によって上記のような通行の妨害を来すのが確実であることを認識していた場合も,同条項にいう「人又は車の通行を妨害する目的」が肯定されるものと解するのが相当である。

東京高裁 平成25年2月22日

パトカーの追跡から逃れるためにセンターラインを越えて進行した事件について、対向車が接近していることを察知していたことを以て妨害する目的と同義としています。
全く同じ趣旨の判例としては、令和元年12月20日熊本地裁にもありますが、この考え方によると妨害運転罪における「他の車両等の通行を妨害する目的」というのも、同様に「衝突等を避けるため急な回避措置をとらせるなど、人や車の自由かつ安全な通行の妨害を積極的に意図すること」と言っていいのかと。

自転車について妨害運転罪が適用された有名なコレ。

自転車でのあおり運転初適用 「桶川のひょっこり男」容疑で逮捕

この判例は裁判所ホームページにもありますが、さいたま地裁令和3年5月17日。
映像では10月5日とありますが、以下のようになっています。

第4 同年10月5日午後2時3分頃,自転車を運転し,埼玉県桶川市(以下略)付近道路を北本市方面から伊奈町方面に向かい進行するに当たり,D(当時32歳)運転の普通乗用自動車の通行を妨害する目的で,同道路対向車線上を時速約39ないし43キロメートルで対向進行してきた同車に対し,その直前で右に急転把して時速約19ないし20キロメートルで同道路中央線上に進出し,前記D運転車両に自車を接近させ,他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転し,もって同人運転車両に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法により運転し

第5 同日午後2時5分頃,自転車を運転し,埼玉県桶川市(以下略)付近道路を川島町方面から伊奈町方面に向かい進行するに当たり,E(当時44歳)運転
普通乗用自動車の通行を妨害する目的で,同道路対向車線上を時速約25ないし27キロメートルで対向進行してきた同車に対し,その直前で右に急転把して時速約17ないし18キロメートルで同道路中央線上に進出し,前記E運転車両に自車を接近させ,他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転し,もって同人運転車両に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法により運転し

さいたま地裁 令和3年5月17日

映像と時間が合っていないところは気になりますが、全て70条の違反による妨害運転罪としています。
理由はよくわかりませんが全てを70条の妨害運転罪として起訴したわけではなく、第二については70条違反のみ(妨害運転罪ではない)としています。
妨害意思の立証で楽なのは、反復した行為なのでそのような処理なのかと。

第2 令和2年3月18日午後7時9分頃,自転車を運転し,埼玉県上尾市(以下略)付近道路を桶川市方面からさいたま市方面に向かい進行するに当たり,同道路の車道を後方から時速約49ないし51キロメートルで同一方向に進行してきたB(当時49歳)運転の普通乗用自動車に対し,同道路左側から右に急転把して時速約21ないし22キロメートルで同車の直前の車道に進出し,前記B運転車両に自車を接近させ,もって他人に危害を及ぼすような速度と方法で運転し

さいたま地裁 令和3年5月17日

コレで安全運転義務違反になる理由は、要は対向車や後続車が危険回避のために急ブレーキや急ハンドルを強いられたからです。
急ブレーキや急ハンドルの結果、対向車や後続車のドライバーが死傷する可能性はありますから。

ところで

妨害運転罪が創設されてから、自転車への追い抜きやクラクション使用について、やたらと「妨害運転罪」だと主張する人もいる。
気持ちはわからんでもないけど、追い抜き時に側方間隔が近いことが即座に妨害運転罪になるわけではなく、安全運転義務違反(70条)が成立するのみで終わる可能性は普通に高いのが現状。
クラクション使用についても、警音器使用制限違反が成立する可能性はあっても、即座に妨害運転罪になるとは言えない。

例えばコレ。

幅寄せ(妨害運転罪)だと断言してますが、「寄せた」ようには見えませんし、安全運転義務違反が成立する可能性はあっても妨害運転罪はかなり難しい。
側方間隔が近いことだけで即座に妨害運転罪なん?
自転車乗りとしてされたくないプレイなのは間違いないとして、ちょっと安易。

なんか話の前提として、妨害運転罪の成立は揺るぎないみたいな書き方してるけど、どちらかというと妨害運転罪の成立はかなり難しい案件なので、前提から崩れているような。

こういうのって、法的な面を攻めるなら当然どのように扱われているかを知った上じゃないと、むしろバカを見る。
これ結構重要。
自転車同士の事案だけど、逆走自転車が突っ込んできたのだから俺は悪くない!と思っても、法律上は双方に違反がついて書類送検されたりする。

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以前から逆走自転車問題については何度も書いてますが、逆走自転車との距離があるときには、左端に寄せて停止して待ったほうがいいよと書いてきました...

先に仕掛けてきた逆走自転車が圧倒的に悪い!とは必ずしも認定されないように法律が出来ているし、ちゃんと知った上じゃないと「妨害運転罪!」と騒いだ側がむしろ妨害運転罪になる可能性すらある。
自転車のほうも、下手すると28条4項(追い越し)の妨害運転罪(117条の2の2第11号ホ)とか70条(安全運転義務違反)になる案件。

やられたらやり返せという法律ではないことを理解していないと話にならない。

妨害運転罪については、まだ判例も乏しいのが現状。
妨害運転罪(道路交通法)、暴行や傷害(刑法)、危険運転致死傷(自動車運転処罰法)など様々ありますが、非接触の危険運転(事故未発生)については警察もさほど重視していない。

先行自転車への追い越し、追い抜きは道路交通法の中できちんと側方間隔の規定を作るべきと考えてますが、要は基準となる具体的数字があるだけで簡単に違反を認定できる。
具体的数字がないから、警察も取り締まりしにくいし立件しにくいわけなので、ちゃんと規定を作るべきなんだけど、この手の話はなぜか賛同者は少ない笑。

簡単に取り締まり可能であることは、意外と重要。

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先行する自転車を追い越し、追い抜きするときに、側方間隔が近すぎて怖いという問題があります。 これについて、法律上は側方間隔の具体的規定はあ...

例えば、こんな基準とかでもいいよね。

先行自転車に不安定性がない 先行自転車に不安定性がみられる
側方間隔 最低1.0m 最低1.5m
速度差 10キロ以内 5キロ以内

この基準を満たさない側方通過は問答無用に道路交通法違反にして、さらに妨害運転罪になる要件は別に定める。
基準がないから法の適用に消極的になるわけで、ライン引いたほうが早いんだよね。


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