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横断歩道判例のお返事。

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こちらで書いた件について、いくつか質問を頂いていたので。

 

停止できるような速度とは。
えーと、こういうのはケースバイケースだと思いますが… 停止できるような速度 いくつか判例を挙げます。 まず、昭和46年改正前(前段の義務が明文化される前)の業務上過失致死傷の判例から。 現在の前段の義務は、元々業務上過失致死傷判例では当たり...

 

横断歩道上で停止するのでは?

読者様
読者様
昭和42年2月10日 東京高裁判決の事例だと、最徐行していたとしても横断歩道手前で停止することは不可能に思います。
横断歩道上で一時停止することになっても、違反にはならない?

これですね。

イメージとしては、対向車線が渋滞のため横断歩道右側が視認できない状況です(横断歩道上に車体後部を乗せて停止する車と、横断歩道上に車体前部を乗せて停止する車あり)。

 

仮に最徐行していたとしても、確かに横断歩道手前で停止することはできない可能性がありますが(被害者は6歳なので)、

管理人
管理人
こういうケースでは、最徐行していて歩行者を見つけて停止し事故を回避できたなら違反を取らないと思いますよ。
だって、横断歩道手前で停止しても見えないでしょ。

そもそも、渋滞とはいえ横断歩道上に停止する車両2台がダメダメですが、ダメダメ車両により加害車両にはより注意義務が加重されると考えるしかない。
ちなみに加害車両の速度は25~30キロ(指定最高速度は40キロ)で、被害者は6歳。

 

詳しくは書いてないけど、横断歩道上の隙間はかなり狭かったのだと思います。
子供の小走りまで考慮すると最徐行しながら横断歩道に接近するしかないです。

 

この判例は業務上過失傷害罪ですが、当時の71条3号(今の38条1項)はこれ。

三 歩行者が横断歩道により道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)を横断し、又は横断しようとしているときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにすること。

まだ過失犯の処罰規定がない時代なので、「歩行者に気がつかなかった」と言い訳すると道路交通法違反が成立しなかった時代です。
一審は最徐行を課すのは過当として無罪にしてますが、東京高裁は最徐行する義務があったとしています。

この交差点の東側に接して横断歩道が設けられてある以上、歩行者がこの横断歩道によって被告人の進路前方を横切ることは当然予測すべき事柄に属し、更に対向自動車が連続して渋滞停車しその一部が横断歩道にもかかっていたという特殊な状況に加えて、それらの車両の間に完全に姿を没する程小柄な児童が、車両の間から小走りで突如現われたという状況のもとにおいても、一方において、道路交通法13条1項は歩行者に対し、車両等の直前又は直後で横断するという極めて危険発生の虞が多い横断歩道すら、横断歩道による限りは容認しているのに対し、他方において、運転者には道路交通法71条3号により、右歩行者のために横断歩道の直前で一時停止しかつその通行を妨げないようにすべきことになっているのであるから、たとえ歩行者が渋滞車両の間から飛び出して来たとしても、そしてそれが実際に往々にしてあり得ることであろうと或は偶然稀有のことであろうと、運転者にはそのような歩行者の通行を妨げないように横断歩道の直前で一時停止できるような方法と速度で運転する注意義務が要請されるといわざるをえず、もとより右の如き渋滞車両の間隙から突然に飛び出すような歩行者の横断方法が不注意として咎められることのあるのはいうまでもないが、歩行者に責められるべき過失があることを故に、運転者に右注意義務が免ぜられるものでないことは勿論である。
しからば、被告人は本件横断歩道を通過する際に、右側に渋滞して停車していた自動車の間から横断歩道によって突然にでも被告人の進路前方に現われるやもはかり難い歩行者のありうることを思に致して前方左右を注視すると共に、かかる場合に備えて横断歩道の直前において直ちに一時停止することができる程度に減速徐行すべき注意義務があることは多言を要しないところであって、原判決がこのような最徐行を義務付けることは過当であるとしたのは、判決に影響を及ぼすこと明らかな根本的且つ重大な事実誤認であって、この点において既に論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。

 

昭和42年2月10日 東京高裁

管理人
管理人
なので最徐行した上で事故さえ回避出来れば、仮に横断歩道上で停止することになってもこういうケースでは違反を取らないと思われます。
これがレアケースなのかというと、そうではないと思いますが、そもそも「横断歩道を塞ぐな」。

似たような事例だと、このあたりかな。

 

横断歩道で歩行者に過失がつくケース。
横断歩道上で歩行者が事故に遭った場合、原則としては過失割合は車:歩行者=100:0。 ただまあ、歩行者に過失がつくこともあります。 歩行者に過失がつくケース 例えばこんな事故。 この場合、道路交通法の義務でいうとこうなります。 ○38条1項...

 

横断歩道を横断した自転車と、優先道路の判例。
以前こちらで挙げた福岡高裁の判例ですが、横断歩道を横断した自転車を優先道路の進行妨害(36条2項)としています。 一応、似たような判例はあります。 横断歩道と優先道路 判例は大阪地裁、平成25年6月27日。 イメージ図です(正確性は保証しま...

 

なお、前段の減速接近義務は「横断歩道に接近する際」の義務ですが、後段に一時停止義務を置いているため、横断歩道を通過し終わるまでは高度な注意義務があると解釈されていることは言うまでもなく。
民事では通過し終わってもまだ義務があるとする判例もあります。

道交法は、第38条において、「車両等は、歩行者が横断歩道により道路……を横断し、又は横断しようとしているときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」旨を、第38条の2において、「車両等は交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しようとしているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない」旨を定めているところ、交差点に横断歩道が設けられている場合においても、車両等が横断歩道に進入して停止している等の事情のため、横断歩道の全部若しくは大部分が塞がれ、歩行者が横断歩道上を通行することが不可能であるか若しくは多数の歩行者が信号の変わらない間に横断歩道内を安全迅速に通行、横断することが事実上困難な場合、換言すれば、横断歩道が本来の正常な機能を果し得ていない場合は、いわば、横断歩道がないに等しいか若しくはこれに近い事情にあるものと考えることができるのであって、かような状況の下では、信号がなお青であるかぎり、歩行者が横断歩道外の、その附近を通行することは、やむを得ないこと若しくは強いてとがめられないことというべきである。

 

他面、青信号により交差点を左折してかような状況下にある横断歩道を通過しようとする車両の運転者は、横断歩道附近の、反対車線上につらなって停車している車両の間等から信号に従い横断しようとする歩行者が現われることのあり得ることは容易に予想し得るところである。しかも、歩行者は、横断歩道が本来の機能を果し得ていないことにつき本来責任がないのに、このため横断にあたっていっそう大きい危険にさらされることとなることから考えれば、かような歩行者の安全横断を確保するために、車両の運転者の側にいっそう大きい注意義務を要求することが公平にかない、前記各法条の精神にもそうゆえんである。これらの諸点から考えれば、青信号により交差点を左折して右のような状況下にある横断歩道を通過しようとする車両の運転者は、信号に従い横断歩道外の、その附近を通行、横断しようとしている歩行者に対する関係においても、前記各法条の想定する場合に準じて、歩行者優先の見地の下に、かような歩行者が安全に通行、横断ができるよう注意を払う義務があるものと解するのが相当である。

 

この見地から考えるに、前認定の事実によれば、控訴人車が青信号により左折して本件横断歩道に差しかかった際、幅員約3.7mの本件横断歩道中通行可能の部分は人ひとりが通過できる程度の間隔に過ぎなかったこと、横断歩道上に停車するような車両が信号の変わるのを待たず前車との間隔をつめるためにさらに前進しないとは保しがたいこと、歩行者が横断にかかろうとした位置いかんによっては前記のような間隔があることすらこれを的確に認識することが困難な場合もありうることなどから考えれば、当時、本件横断歩道は、正常な、本来の機能を果し得ていなかったものと認められ、控訴人車の運転者としても、このことを認識していたか若しくは少くともこれを認識し得べき事情にあったものと認められる。従って、運転者としては、前記通行可能の部分附近を通過した歩行者の一団が自車の前方を通過した後においても、横断歩道附近の、反対車線上につらなって停車する車両の間等から信号に従い(当時信号がなお南北青を示していたことは、本判決において引用する原判決の認定するとおりである。)横断しようとする歩行者が現われるかもしれないことを考慮にいれて前方注意義務を尽すとともに、かような歩行者が現われる場合に備えて、何時でも停車できるような速度で進行する注意義務があったものというべきである。

 

しかるに、運転者は、本件横断歩道に差しかかった際、前記通行可能の部分附近を通過した一団の歩行者が自車の前方を通り過ぎたところから、もはや、信号に従い横断歩道附近を通行、横断しようとする歩行者が現われることはないものと速断し前方注意義務をおろそかにするとともに、不用意に加速し前記の速度で進行した結果、反対車線上につらなって停車する車両の最初の(横断歩道の東側において)きれ目から現われた被控訴人を避けきれず、本件事故を惹起するに至ったものであって、同人には、前記のような状況下において車両の運転者に要求される歩行者優先の見地に基づく注意義務を怠った点において、少なからぬ過失があったものというべきである。

 

東京高裁 昭和50年9月5日

何を争っていた?

読者様
読者様
大阪高裁の判例。
事故になった弟の話が出てきていませんが、詳細があればお願いします。
管理人
管理人
自分で探して読みましょう笑

というのは冗談。

対向車線が渋滞していたため、横断歩道に向かう際に徐行していた。
横断歩道の右側から歩行者が見えたものの、立ち止まったことからそのまま進行(時速8~10キロ)。
立ち止まった歩行者の後ろから弟がスキップしながら横断したため、車と衝突した判例です(加害車両の側面に衝突)。

 

なお、横断歩道の幅員が4.6m、長さ6.8mなので、まあまあ狭い道路な上、横断歩道の右側部分に1m強~2mの間隔を空けて2台の車両が停止していたとあるので、車両が横断歩道上にいたことになります。

 

この判例は道路交通法違反ではなく業務上過失傷害罪。
姉が立ち止まった点について、車が一時停止しなかったことが38条1項の違反になるのは疑いないと思いますが、道路交通法違反ではなく業務上過失傷害罪。
なので、姉の後ろから飛び出した弟との関係で過失を認定できるかになります。

 

徐行していたし、一時停止していても後ろから出てきた弟を発見不可能だったという主張を退けた判例です。
いくつかポイントはありますが、対向車線側歩道は花火大会で人がたくさんいたので歩行者の往来が予見可能だったことや、姉に対する一時停止義務違反と、仮に姉が横断完了したとしても、横断歩道右側が視認できない以上は、最徐行する義務があったという話。

 

このように横断歩道上を横断しようとしてその中央付近手前まで歩んできた歩行者が、進行してくる被告人車をみて危険を感じ、同歩道の中央付近手前で一旦立ち止まったとしても、横断歩道における歩行者の優先を保護しようとする道路交通法38条の規定の趣旨にかんがみると、右は同条1項後段にいう「横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者」にあたるというべきである。
そして、同女が横断歩道上の前記地点で立ち止まったとしても、前記認定のような当時の状況に徴すると、同女の後方からさらに横断者のあり得ることが予想される状況にあったのであるから、自動車運転者である被告人としては、同女の姿を認めるや直ちに、右横断歩道の手前の停止線の直前で(仮に、被告人が同女の姿を最初に発見した時点が、所論のように被告人車の運転席が停止線付近まで来たときであったとしても、事理は全く同様であって、その時点で直ちに)一時停止し、横断者の通行を妨げないようにしなければならなかったのである。

 

所論は、しきりに、横断歩道上、右側への見通しがきかない状態にあった点を強調し、一時停止しても、結果は同じだった旨主張するが、そこが、歩行者優先の横断歩道である以上、前記のとおり見通しが困難であれば、一層、安全確認のため一時停止すべきであり、更に進行するに際しても、最徐行するなどして横断歩道上の右方の安全を慎重に見極めつつ進行すべき業務上の注意義務があった

 

大阪高裁 昭和54年11月22日

 

2つの判例に共通するのは、結局「見えないなら見えないなりに最徐行する義務がある」ということ。
歩行者に注意不足があるにしても、このような状況では車両側に注意義務が加重されるわけ。

 

大阪高裁の判例は8~10キロでも発見できなかったわけなので、最徐行する義務があった。
そもそも、姉の時点で一時停止義務を怠ったし、そこからまだ見えにくいなら最徐行しながら横断歩道を通過する義務があるとした判例です。

 

これも「横断歩道を塞ぐな」なんですが、対向車が塞いだ以上は高度に注意する義務がある。
まあ、塞いだ対向車にも過失があるとは思いますが、だからといって自分の過失は消えないので。

 

この点、自転車は便利ですよね。
左側端通行している分には、右側との距離があるので。

 

この判例、姉が横断歩道真ん中で立ち止まったことが38条でいう「横断しようとする歩行者」に認定された点のみ紹介されてますが、「横断歩道の大部分を塞がれて1m強~2mの隙間を子供が横断した事例」なわけ。
法律解釈よりも一般人相手に説明する重要なモデルケースにしてもいいんじゃないかと思うのですが…
一時停止すべきだったのはもちろんのこと、この隙間を横断する子供があることを考えると8~10キロでも速すぎとも言えますし、そもそも「横断歩道を塞ぐな。塞ぐとこんな危険が起きますよ」という事例なので。

 

というよりも、38条2項の原理を対向車線まで拡大したほうがいいかも。
けど根本的なところは横断歩道の大部分を塞いだ対向車に原因があるとも言えます。
ちなみにこのケース、民事だと歩行者側にも過失をつけた判例があることに注意。

 

自分に置き換えて

言い方は悪いけど、判例って「先人たちの大失敗」なわけで、それを自分に対する糧に。
これとかもそう。

 

車が道路外→車道に進入する際の、歩道に対する注意義務。時速40キロ弱で歩道通行する自転車を予見せよ。
車が道路外の施設から歩道を横切って車道に進入する際は、歩行者を妨げてはならない義務があります。 自転車は一応、歩道を通行することが可能です。 ただし自転車が歩道を通行する際には原則として徐行義務があります(63条の4第2項)。 しかも歩道の...

 

時速40キロで歩道を走る自転車もどうかと思うけど、車が道路外から車道に出る時は、見通しが悪いなら一時停止だけでは足りず、一時停止と僅かな前進を繰り返す義務があったとしています。

 

古い判例で、こんなのがあります。
三叉路で方向転換する際に、助手がいない場合の注意義務について述べてますが、付近に成人者がいたら見張りを頼めとしています。

運転補助者なく狭い三叉路において車体転換をし、つづいて後進をしようとすると、自動車を右折もしくは左折させ、停止させ、後進させ、後進のまま右折もしくは左折することとなり、附近通行人は自動車の動きを十分に予測することができず、衝突の危険を持つということができ、又後進の際には、運転者自から車体の一方を警戒しても、その反対側及びその後方には当然死角を生じ、同様通行人と衝突の危険を持つということができる。そこで運転補助者なくして右の如き処置をなそうとする運転者は、その行為に出る前一旦下車して三叉路附近通行人の存否を確かめ、通行人ある場合は、これに対し、一旦進入し後進を開始する箇所、後進する方向等を具体的に指示して避譲せしめ、又附近に成年者もしくは成年者に近い者がいて、たやすく協力を求め得る事情にある場合には、少くとも車体転換が終る前後の間だけでも、右の如き処置をとることを伝え、幼児等が突然後進方向に現れないよう見張方の協力を依頼し、見張人が得られない時は、後進開始後数米毎に一旦停車し、運転しながら警戒した反対側に通行人が現れないかを確かめ、且つ極力徐行し、後進しながらも随時警笛を吹鳴させて通行人を警戒させる等のことをし、事故を未然に防止する業務上の注意義務があるということができる。

 

山口地裁 昭和35年2月11日

なんとなく勘で進むなという話になりますが、横断歩道も塞がれていて見えないなら、相応の努力をしなさいということ。

 

ていうか見えないなら、見えない原因を作り横断歩道を塞いだ対向車がサインを送るなどすべきなんじゃないかとすら思いますが、そもそも横断歩道を塞がなければこんなことにはならないとしか。

 

38条1項前段の減速接近義務は、必ずしも徐行である必要はないにしろ、徐行もしくは最徐行義務があったとしている判例は普通にあります。
ちなみに大阪高裁 昭和54年11月22日判決は執務資料にも抜粋が掲載されてますが、「そこ」を抜粋しても何の話なのかよくわからないような気がします。
本質的には、横断歩道の大部分を塞いで1m強~2mの隙間にしたところに問題があり、そのような状況でどのような注意義務があったかの話なので。

 

これらの判例から言えるのは3点。

①横断歩道上で停止するな。
②横断歩道右側が視認できない状況であれば最徐行義務があり、確認せずに勘を頼りに進行するな。
③横断歩道の大部分が塞がれ視認できない場合、単なる徐行では全くダメ。最徐行する義務がある。





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