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横断歩道を原付が横断しても。

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ちょっと前に書いた内容ですが、

 

ベストカーって大丈夫なのかな?
正直なところ、不可解過ぎてビックリする。 もうひとつの例外は13歳未満の子供(小学生を想定)と70歳以上の高齢者。私は乳幼児を乗せている自転車もここに入れてもいいと思う。 これらのケース、歩道の走行が条件なしで認められている。横断歩道を通行...

 

あとさ、「横断歩道を通行できる権利」。
全自転車は横断歩道を通行できるし、そもそもオートバイだろうと横断歩道を横断することを禁止する条文はない。
「他の車両や歩行者の正常な交通を妨害するおそれがない限り」横断歩道を横断することが禁止されている車両ってないんだよね(25条の2第1項)。

オートバイが横断歩道を横断しちゃまずいのでは?と疑問に思った方もいるようなので。

横断歩道は「歩道」ではない

横断歩道を歩道だと思っている人がいるようですが、横断歩道は歩道ではないです。

四 横断歩道 道路標識又は道路標示(以下「道路標識等」という。)により歩行者の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう。

横断歩道は「道路の部分」。
歩道の部分ではないです。

 

道路には車道、歩道、路側帯などがありますが、少なくとも歩道ではない。
横断という行為は「通行」の一形態なのは道路交通法上明らかなので、通行区分違反(17条1項)にも抵触しない。
なので25条の2第1項に抵触しない限りは、原付が横断歩道を横断しても違反にはなりません。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない

妨害する「おそれ」があるときなので、横断歩行者がいたら原付に乗ったまま横断すると違反になります。
なので、あんまり現実的ではありません。

道路交通法の横断とは

道路交通法の横断とは、道路進行方向に対し90°に近い角度で、道路の端から端に進行することを意味しますが、必ずしも道路の端から端に到達する必要はないと解釈されています。

「横断する」とは、車両が交差点以外の場所において、その道路に対し直角またはこれに近い角度で、道路の全部または一部分を横切ることをいう。

 

宮崎清文、注解道路交通法、1966、立花書房

「横断」とは、道路の反対側の側端または道路上の特定の地点に到達することを目的として、道路の進行方向に対し、直角またはこれに近い角度をもって、その道路の全部または一部を横切ることをいい、必ずしも道路の反対側の側端に到達することを必要としない

 

木宮高彦, 岩井重一、詳解道路交通法、1977、有斐閣ブックス

道路の端から端に到達する必要はないと解釈するには理由があります。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。

以下4行動について「正常な交通を妨害するおそれがあるときは」禁止しています。

 

①道路外への右左折
②横断
③転回
④後退

 

例えば、この画像が「コンビニから車道に進出し、道路反対側にあるガソリンスタンドに向かう」と仮定します。
つまりは「横断」です。

ひょこっと進出したところで、車道を正常に進行する車に急ブレーキを踏ませてしまったとしましょうか。
つまりは「妨害」です。

 

「横断=道路の端から端に到達すること」だと定義すると、この車は「横断未遂」であって、「横断」はしてないことになる。
そうすると、25条の2第1項は「横断してはならない」なので、違反が成立しなくなるんですね。
横断はしてないことになるので。
それが不合理なのは言うまでもなく。

 

転回について争われた判例でも、転回が完了しなくても転回する行為を開始した時点が転回だとしている。

 なお、道路交通法25条の2の1項は、横断、転回および後退の如き、交通の流れに沿わない車両の運転操作を放任するときは、歩行者又は他の車両の正常な交通を妨げ事故を発生させる危険が多いので、これを防止するためそれらの行為を規制しようとする趣旨であることから考察すれば、同条項にいう「転回」とは、同一路上において車両の進行方向を逆に転ずる目的でおこなう運転操作の開始から終了までの一連の行為を指称し、かかる目的で運転行為を開始すれば、方向転換が完了するにいたらなくても、同条項にいう「転回」に該当するものと解すべきである。これと同旨の見解に立ち、被告人の本件所為につき同条項違反の罪の成立を認めた原判断は相当である。

 

最高裁判所第二小法廷 昭和46年7月2日

そもそも、転回や道路外への右左折には必ず横断が含まれるし、昭和46年までは道路外への右左折を「左横断、右横断」と呼んでいました。
このあたりは道路交通法の歴史から考えないとわかりませんが、以前も紹介したように「スイッチバック式転回」も道路交通法上は転回だとする判例があります。

 

この判例は、「転回禁止」の標識がある道路にて、スイッチバック式転回、つまりは後退と右折をしたのだから違反にならないだろ!と主張したもの。

しかしこのように、スイッチバックすれば転回ではないという主張です。

道路交通取締法が禁じて居る転回行為とは車馬が従来の進行方向とは逆の方向に進行する目的を以て為す同一路上に於ける方向転換の行為を汎称するものであつて、型に為す所謂ユー・ターンを最も其の典型的なものとし、之を一回の操作により短時間内に完了するのを通常とするけれども、該方向転換の途上-主として前後左右の交通状況等を確認し其の安全を図る等のため-一旦停止、改めて進行を開始して方向転換行為を終るが如きものも之を其の目的から観察して一の転回行為と解するのを相当とするのみならず、更に、従来の進行方向の路上に於て一旦停止し附近の小路の出口等に後退の上改めて直進横断して右折し、其の進行方向を転換して逆方向に進行するが如きものも亦、其の目的の「転回」せんがためのみである以上之を転回行為と謂うに妨げなく、況んや其の路面の転回禁止区域内なることを知り乍ら敢て該地点に於て転回せんとし、右の後退、横断右折等合法的方法によつて右禁止を回避せんとするが如きは同法所定の転回禁止に触れる行為であると謂わねばならない。
而も同法第12条第2項による転回禁止区域内に於ては同法条第1項に於ける場合と異り、該区域内に於ける転回行為を絶対に禁止する趣意であり、該行為当時具体的に他の交通を妨害する虞れがあつたか否か、之に対応する措置が講ぜられたか否か等は毫も右違反罪の成立に影響を及ぼすものではないと解するのを妥当とする。

 

昭和27年6月13日 東京高裁

この判例では控訴人の主張がまあまあ面白いのですが、犯罪事実を争っているのにテストケース呼ばわりしてますし、現場検証のときに「ほら!官庁の車もスイッチバック式転回してるじゃん!」と悪あがき感が凄い笑。
以下、控訴人の主張。

第一点本件は東京都特別区公安委員会が「転回禁止No. U Turn」と表示した場所で「一旦小路にスイッチバツクしてから転回」したことが道路交通取締法第12条第2項の転回運転に該当するか否かというテストケースなのである。而して現在東京都に於ては直接のUターンは右法条に該当するが右のような方向転換は該法条に触れず禁止ないものと多くの運転手から解釈せられ現に本件実地検証の際にも僅か10分間位の間に判検事弁護士の眼の前で官庁用自動車である二台が相次いで併し何の連絡もなくその通り実演してスマシタ顔で平然と過ぎ去つたことが示す通り行われている点にテストケースたる所以があるのである。
形式的に之を論ずるならばその禁止の表示が「No. Uターン」となつていてとはなつていないこと同法第12条が「併進し又は後退し若くは転回」となつているので、ここに所謂「転回」とは「一度でやる∩型転回行為」を意味するのであるから何等違反しないといつて差支ない更に実質的に之を論ずるならば一旦車が停車して後続の車のいないことを確めてからスイッチバックして車の尻を小路につき込み、交通の安全を確めてから方向転換をするのである。この場合停車することも後退することも「他の交通の妨害にはならぬ限り」(同法12条第1項)差支ないのである。然るにスイッチバックは右にいう後退ではないので傾後方に尻を突込ことであるから「交通を妨害する虞」なき限り固より差支ない、運転手はスイッチバックの時、後続車の無いのを確めてからやるから固より何の交通上の危険もない。ここで車がスイッチバックして尻を小路に入れた時の状態から「転回」する時の状態を見れば車がその小路の奥から出て来て新に右転回をしようと思つて車の先を小路の先にノゾカセタ状態と少しも違いはないのである。右のように小路の奥から進行して来た車がその小路を出て右転回することが禁止されていないのに本件のようなスイッチバックの後に転回することを禁するという理由は毫も存在しないのである。交通安全を実質的に何等妨害するものでない点に於て両者差異はない。警視庁が之を変型的転回と称して運転手の教養講習に用いることは良い併しながら断じて違反事件として処罰することはできないのである。

 

昭和27年6月13日 東京高裁

こういう判例を積み重ねて、25条の2にある道路外への右左折、転回、横断は既遂(動作完了)ではなく、目的を持ってプレイを開始した時点で成立すると解釈します。

ついでに

ずいぶん前に信号の意味についてどこかで書いた気がしますが、えーとどの記事かわからんw

 

人の形をした信号の意味。

信号の種類 信号の意味
人の形の記号を有する青色の灯火 二 普通自転車(法第六十三条の三に規定する普通自転車をいう。以下この条及び第二十六条第三号において同じ。)は、横断歩道において直進をし、又は左折することができること。
人の形の記号を有する赤色の灯火 二 横断歩道を進行しようとする普通自転車は、道路の横断を始めてはならないこと

青信号の意味に、「横断歩道において直進をし、又は左折することができること」とあります。
以前これについて、路側帯通行自転車に対する意味を持つのでは?と書いたと思いますが、その意味で解釈しても間違いとは言えないものの、正式な解釈はこれ。

そしてこれも問題ありません。
理由は「横断後に右折」だから。

「横断」とは、道路の反対側の側端または道路上の特定の地点に到達することを目的として、道路の進行方向に対し、直角またはこれに近い角度をもって、その道路の全部または一部を横切ることをいい、必ずしも道路の反対側の側端に到達することを必要としない

 

木宮高彦, 岩井重一、詳解道路交通法、1977、有斐閣ブックス

赤信号の意味が「横断のみ」を禁じてますが、より正確にいえば「横断歩道を左折」する際にはわずかですが「横断」を含んでいる。
横断とは道路の進行方向に対し直角又は直角に近い角度で進行し、必ずしも道路の端に到達することを必要としないので。

 

なのでこういう規定なんだそうな。
分かりにくいよね笑。
「道路外から左折」でもないし、「交差点を左折」でもないし、「横断歩道を左折」にしていることになります。

 

ただしこの「横断歩道において左折」ですが、事実上無意味な規定になります。
要は赤の位置でも問題ないので。
なので「左折」という規定があってもなくても大差なし。
わざわざ信号を待つ理由がなくて、とっとと赤の位置から車道に合流すれば済む。

 

話が逸れまくりましたが、原付やオートバイ、車が横断歩道を横断することは禁止されていない。
ただし、歩行者や他の車両の正常な交通を妨害するおそれがあるときは禁止。
実態としては、車が横断歩道を横断する場面自体がないし、横断歩行者がいれば違反になるので現実的ではないというだけです。

 

分かりにくい法律はいくらでもあるし、ぶっちゃけた話道路交通法はまだマシなほうに感じます。




コメント

  1. upmoon より:

    第25条の二を元に教則で自転車に乗車したままでの横断歩道の通行について書いたら、何故かそれを論拠に横断歩道を渡ろうとする自転車も第38条で保護されると主張する人がいますよね

    改正法で条件によって歩道通行も可能である特例特定小型原付は38条一項二項で全く触れられてないけど、おそらく25条の二を以って教則の自転車による横断歩道の通行方法と同じ感じになると思いますが、38条で保護されるんだよって主張する人が出てきたりして

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      たぶんですが、特定小型原動機付「自転車」だから、自転車なんだという謎理論を発動させた上、38条は横断歩道を横断する「自転車」にも適用だ!みたいな珍説を唱える人が出現する予感しかしません笑。

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