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どっちが悪い?という無意味な議論。

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ついでなので。

 

横断歩道での優先。
まあまあどうでもいいんだけど、自転車が優先だと勘違いするのもな。 横断歩道での自転車 このケースは ・車両が交差点を左折 ・自転車は歩道を通行し横断歩道を直進 ・信号機あり 類似判例はこんな感じ。 道路交通法上、自転車は軽車両に該当し(同条...

 

他人の違反は自分の違反を消さない

例えばこういう判例があります。

見通しが悪い交差点で、被告人は時速30~40キロで進行。
被害者は赤点滅信号にも関わらず指定最高速度(30キロ)を大幅に越えた時速70キロで、しかも足元に落とした携帯を拾うため前方不注視で進行。

 

青車両が業務上過失致死に問われた事件です。
公訴事実はこちら。

被告人は,平成11年8月28日午前零時30分ころ,業務としてタクシーである普通乗用自動車を運転し,広島市a区bc丁目d番e号先の交通整理の行われていない交差点をfg丁目方面からbh丁目方面に向かい直進するに当たり,同交差点は左右の見通しが利かない交差点であったことから,その手前において減速して徐行し,左右道路の交通の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,漫然時速約30ないし40キロメートルの速度で同交差点に進入した過失により,折から,左方道路より進行してきたA運転の普通乗用自動車の前部に自車左後側部を衝突させて自車を同交差点前方右角にあるブロック塀に衝突させた上,自車後部座席に同乗のB(当時44歳)を車外に放出させ,さらに自車助手席に同乗のC(当時39歳)に対し,加療約60日間を要する頭蓋骨骨折,脳挫傷等の傷害を負わせ,Bをして,同日午前1時24分ころ,同区ij丁目h番k号県立D病院において,前記放出に基づく両側血気胸,脳挫傷により死亡するに至らせたものである。

一審、二審ともに有罪ですが、最高裁は以下のように破棄自判。

 また,1,2審判決の認定によれば,次の事情が認められる。すなわち,本件事故現場は,被告人運転の車両(以下「被告人車」という。)が進行する幅員約8.7メートルの車道とA運転の車両(以下「A車」という。)が進行する幅員約7.3メートルの車道が交差する交差点であり,各進路には,それぞれ対面信号機が設置されているものの,本件事故当時は,被告人車の対面信号機は,他の交通に注意して進行することができることを意味する黄色灯火の点滅を表示し,A車の対面信号機は,一時停止しなければならないことを意味する赤色灯火の点滅を表示していた。そして,いずれの道路にも,道路標識等による優先道路の指定はなく,それぞれの道路の指定最高速度は時速30キロメートルであり,被告人車の進行方向から見て,左右の交差道路の見通しは困難であった。
このような状況の下で,左右の見通しが利かない交差点に進入するに当たり,何ら徐行することなく,時速約30ないし40キロメートルの速度で進行を続けた被告人の行為は,道路交通法42条1号所定の徐行義務を怠ったものといわざるを得ず,また,業務上過失致死傷罪の観点からも危険な走行であったとみられるのであって,取り分けタクシーの運転手として乗客の安全を確保すべき立場にある被告人が,上記のような態様で走行した点は,それ自体,非難に値するといわなければならない。

しかしながら,他方,本件は,被告人車の左後側部にA車の前部が突っ込む形で衝突した事故であり,本件事故の発生については,A車の特異な走行状況に留意する必要がある。すなわち,1,2審判決の認定及び記録によると,Aは,酒気を帯び,指定最高速度である時速30キロメートルを大幅に超える時速約70キロメートルで,足元に落とした携帯電話を拾うため前方を注視せずに走行し,対面信号機が赤色灯火の点滅を表示しているにもかかわらず,そのまま交差点に進入してきたことが認められるのである。このようなA車の走行状況にかんがみると,被告人において,本件事故を回避することが可能であったか否かについては,慎重な検討が必要である。
この点につき,1,2審判決は,仮に被告人車が本件交差点手前で時速10ないし15キロメートルに減速徐行して交差道路の安全を確認していれば,A車を直接確認することができ,制動の措置を講じてA車との衝突を回避することが可能であったと認定している。上記認定は,司法警察員作成の実況見分調書(第1審検第24号証)に依拠したものである。同実況見分調書は,被告人におけるA車の認識可能性及び事故回避可能性を明らかにするため本件事故現場で実施された実験結果を記録したものであるが,これによれば,①被告人車が時速20キロメートルで走行していた場合については,衝突地点から被告人車が停止するのに必要な距離に相当する6.42メートル手前の地点においては,衝突地点から28.50メートルの地点にいるはずのA車を直接視認することはできなかったこと,②被告人車が時速10キロメートルで走行していた場合については,同じく2.65メートル手前の地点において,衝突地点から22.30メートルの地点にいるはずのA車を直接視認することが可能であったこと,③被告人車が時速15キロメートルで走行していた場合については,同じく4.40メートル手前の地点において,衝突地点から26.24メートルの地点にいるはずのA車を直接視認することが可能であったこと等が示されている。しかし,対面信号機が黄色灯火の点滅を表示している際,交差道路から,一時停止も徐行もせず,時速約70キロメートルという高速で進入してくる車両があり得るとは,通常想定し難いものというべきである。しかも,当時は夜間であったから,たとえ相手方車両を視認したとしても,その速度を一瞬のうちに把握するのは困難であったと考えられる。こうした諸点にかんがみると,被告人車がA車を視認可能な地点に達したとしても,被告人において,現実にA車の存在を確認した上,衝突の危険を察知するまでには,若干の時間を要すると考えられるのであって,急制動の措置を講ずるのが遅れる可能性があることは,否定し難い。
そうすると,上記②あるいは③の場合のように,被告人が時速10ないし15キロメートルに減速して交差点内に進入していたとしても,上記の急制動の措置を講ずるまでの時間を考えると,被告人車が衝突地点の手前で停止することができ,衝突を回避することができたものと断定することは,困難であるといわざるを得ない。
そして,他に特段の証拠がない本件においては,被告人車が本件交差点手前で時速10ないし15キロメートルに減速して交差道路の安全を確認していれば,A車との衝突を回避することが可能であったという事実については,合理的な疑いを容れる余地があるというべきである。
以上のとおり,本件においては,公訴事実の証明が十分でないといわざるを得ず,業務上過失致死傷罪の成立を認めて被告人を罰金40万円に処した第1審判決及びこれを維持した原判決は,事実を誤認して法令の解釈適用を誤ったものとして,いずれも破棄を免れない。

 

最高裁判所第二小法廷 平成15年1月24日

業務上過失致死なので、被告人の過失と死亡の間に因果関係がないと成立しませんが、42条の徐行義務を果たしたとしても事故を回避できなかったという認定。
つまり、被告人の過失(徐行義務違反)と死亡事故について因果関係がないので、業務上過失致死は成立しない。

 

けど、被告人が42条の徐行義務違反を犯したこと自体は事故とは別に成立するし、被害者が速度超過(22条1項)、一時停止義務違反(7条)、前方不注視(70条)の違反を犯したこと自体も別に成立する。
業務上過失致死が無罪になったところで、遡って42条の義務がなかったとするわけでもない。

 

違反自体はそれぞれに成立するし、単に刑法上の因果関係がないと判断されただけで民事責任はまた別に検討される。

 

どっちが悪い?という議論って過失の大小になるわけだけど、全く違反がなく無過失ならともかく、双方に違反自体は成立しているんだよな。

 

先日取り上げた件についても、

 

なぜ?一時停止義務がないのに逮捕!?
ちょっと前にですが、このような報道がありました。 24日夜、名古屋市天白区の交差点で乗用車とバイクが衝突し、バイクに乗っていた男性(48)が死亡しました。 報道をみると、一時停止義務はオートバイ側にある。 ではなぜ車のドライバーが逮捕される...

 

具体的状況は不明ながらも、一時停止義務がない側が逮捕。
おそらくは徐行義務違反(42条)が疑われていて、徐行義務を果たしていれば事故を回避できた可能性があるとの疑いでしょうけど。
一時停止義務がある側が劣後するとは言え、一時停止義務がない側の義務まで帳消しにするわけではない。

「やるべき義務はやれや」

他人の違反の程度が著しいからと言って自分に課された義務まで帳消しにするわけじゃないので、粛々と自分に課された義務を果たせやというだけです。

交差する道路の方に、同法43条による一時停止の標識があっても、同法42条の徐行義務は免除されないものと解すべきである。なんとなれば、優先道路または幅員の明らかに広い道路を進行する場合には、その運転者にも、またこれと交差する道路を進行する車両等の運転者にも、当該交差点における優先通行の順位が明らかになっており、その間に混乱の生ずる余地が少ないが、本件のように、交差する双方の道路の幅員が殆んど等しいような場合には、一時停止の標識が存在しても、その存在しない方の道路を進行する車両等の運転者にとっては、その標識の存在を認識することは、必ずしも可能であるとは限らず、もし、右認識を有する者についてだけ、同法42条の徐行義務を免除することにすれば、当該交差点における交通の規整は一律に行なわれなくなり、かえって無用の混乱を生ずるであろうからである。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和43年7月16日

前方から逆走自転車が来ました。
ムカついたので衝突してやりました。
はい、過失傷害罪や安全運転義務違反になります。

 

前方から逆走自転車が来ました。
ムカついたのでハイビームで攻撃してやりました。
はい、暴行罪や禁止事項違反(76条4項7号)になります。

 

前方から逆走自転車が来ました。
はい、普通にお説教してやりました。
何ら問題はありません。

 

他人の違反に対し、自分も応戦するというのは理解に苦しむが、他人の違反が自分の義務まで帳消しにするわけじゃないので、なんか勘違いしているのでは。
自分に課された義務を粛々と果たせ。

 

以前、徳島地裁令和2年1月22日を取り上げましたが、この判例は自転車横断帯を赤信号で横断した自転車と車が衝突した事故(過失運転致死)。

片側4車線の広い道路、夜間です。
過失運転致死は無罪ですが、自転車が信号無視したのは当然違反として、車は時速72キロで進行していたと認定されてます。
つまりは12キロの速度超過。
過失運転致死が無罪だから速度超過も問題なくなるわけでは当然ない。

 

ちなみにこの判例、「法定速度で進行していたら回避可能だったか?」は一切検討されていません。
理由はこれ。

なお、以下の検討は、秒速約20.05メートル【時速約72キロメートル】という被告人が現に走行したと認められる速度を基に行っており、法定速度である時速約60キロメートルで走行した場合の検討はしていないが、本件では、検察官が、公判前整理手続を行い、公判で被告人質問まで終了した後の打合せ期日において、法定速度を順守していなかったことを併存過失とする訴因変更を行う予定はない旨明言しているため、この点について更に訴因変更を促すなどして審理、検討することはしない。

 

徳島地裁 令和2年1月22日

まあ、たぶん計算上は法定速度で進行していたとしても衝突は回避できないと思われますが(たぶんギリギリ)、タラレバの話でいうなら結果は違う可能性があるわけね。
自転車は信号を守る、車は法定速度を守る。
それぞれやるべき義務はあるのだから。
それと同時に、あまりに不可解な主張を検察官が繰り広げているのも問題。
赤信号の自転車横断帯にも38条の義務があるとか…
信頼の原則が採用された判例ではありますが。

(1)自動車を運転する者は、自車が信号機により交通整理の行われている交差点を対面信号機の青色表示に従い直進する場合でも、自動車運転者として通常要求される程度に、前方左右を注視し、進路の安全を確認しつつ進行すべき自動車運転上の注意義務があるものと解すべきであり、このことは本件の被告人においても同様である。

 

(2)これに対し、検察官は、その趣旨は必ずしも判然としないものの、論告において、被告人又は被告人車両には、道路交通法38条1項が適用されることを前提として、先に述べた以上に特に高度の注意義務が課されるかのような主張をしているため、この点について念のため付言しておく。
道路交通法38条1項は、「当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合」を除外しているところ、この「歩行者等が無いことが明らかな場合」には、歩行者等に向けられた信号機の信号が赤色を表示しており、その赤色の現示時間中に車両等が横断歩道等を通過し終わることが明らかな場合が含まれると解される。本件における被告人車両は、この除外事由に該当するといえるから、道路交通法38条1項の適用はない。仮に、検察官の主張するように、被告人車両について道路交通法38条1項が適用されるとしたならば、信号機により交通整理が行われている交差点において、自車の対面信号機が青色を表示しており、横断歩道等の歩行者等に向けられた信号機の信号が赤色を表示している場合であっても、特にその道路幅が広ければ広いほど、自動車の運転者は、常に横断歩道等の直前で停止できるような速度、すなわち、横断歩道等に接近しながら徐々に速度を落とし、横断歩道等の至近のところでは徐行に近い状態の速度で進行しなければならないことになるが、このことが結論において不合理であることは明らかである

 

検察官は、この主張をするに際し、札幌高裁昭和50年2月13日判決判例タイムズ325号304頁を引用するが、同裁判例は、当該事案における道路および交通の状況等から、前方の横断歩道上に横断中の歩行者がなお残存する蓋然性が高く、運転者においても対面信号機が青色表示に変わった直後に発進したため前方の横断歩道上に横断中の歩行者等が残存している可能性があることを十分予測できた事案に関するものであって、本件とは事案を異にする
以上により、被告人又は被告人車両には道路交通法38条1項は適用されず、したがって、その適用を前提として高度な注意義務が課されるかのように述べる検察官の主張は採用できない。

 

徳島地裁 令和2年1月22日

過失運転致死が無罪だから速度超過も容認されるわけではないし、それぞれやるべき義務は果たさないといけない。
粛々と自分に課された義務をするだけなんだけどね。





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