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✕「過失があるから」○「無過失の証明がないから」。

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歩行者が横断歩道を赤信号で横断して事故になった場合、基本過失割合はこうなります。

 

歩行者:自動車=70:30

 

もちろん修正要素があれば変わりますが、なぜ赤信号無視でも車が過失責任を負うのか?

自賠法の仕組み

車が過失責任を負う理由としては、横断歩道が赤信号だろうと安全運転義務として、前方注視義務や事故回避義務を負うからなんですが、そもそも論。

(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

自賠法の規定って、「無過失を証明しない限りは賠償責任を負う」という規定だからですよ。

 

交通事故以外の損害賠償って、ほとんどが「過失責任」。
被害者側が加害者の過失を立証しない限りは賠償責任がない。
交通事故は逆で、「無過失を証明しない限りは賠償責任を負う」という規定だからです。

 

要は被害者救済の仕組みになりますが、無過失を証明しない限りは賠償責任があるので、被害者側の立証責任が軽減されるとも取れます。

 

有名な判例ですが、こちら。
判例は福井地裁 平成27年4月13日。
居眠り運転でセンターラインを越えてきた車と、対向車が衝突した事故です。

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ウ 本件事故発生時の状況
本件事故当時,G車は,時速約50kmで南進車線を進行していたところ,被告Aは,平成24年4月30日午前7時13分ころ,本件衝突地点の約800m手前(北側)付近で疲れを感じて前を見ていることができなくなり,仮睡状態に陥った
G車は,本件衝突地点の約100m手前(北側)付近で中央線上を走行するようになり,そのままゆるやかに中央線をはみ出し,本件衝突地点の約80m手前(北側)付近では,車体が50cmほど対向車線にはみ出す形で走行するようになった。このとき,F車の2台前を北進していた車両(以下「先行車①」という。)は本件基点電柱の約47m北側(すなわち,本件衝突地点から約49.5m北側)を時速約50kmで走行しており,先行車①とG車との距離は約29mであった。先行車①の運転者は,その場でハンドルを左に切ってG車を避けた。また,その後,F車の前を北進していた車両(以下「先行車②」という。)も,左側に寄りG車を避けた。その直後,F車とG車 は正面衝突した。

(2)以上を前提に,まず,本件事故について原告Fが無過失であった といえるかどうかについて検討する
本件事故について,被告Aには,自らが運転していたG車を対向車線に逸脱させた過失があることは認定した事実によれば,本件事故直前に,被告Aが過労のために仮睡状態に陥り,そのままゆるやかに中央線をはみ出し,ついには対向車線に自車を逸脱させてF車と正面衝突したという本件事故の態様からすれば,本件事故の発生について,被告Aに極めて重大な過失があることは明らかである。
その上で,原告Bらは,原告Fは本件事故直前に脇見をしていたところ,仮に原告Fが脇見運転をしていなければ,より早い段階でG車の動向に気づき,F車を停車させるなどして本件事故を避けることが可能であったのであるから,原告Fには,本件事故について前方不注視の過失がある旨主張し,原告Fが無過失であることを争っている。
これに対し,被告Eは,原告Fは,本件事故直前に北進車線の路側帯にいた歩行者を見たものの進路前方を全く見ていなかったわけではない,F車の先行車の存在等により原告Fがより早い段階でG車の動向に気づくことは不可能であった,仮により早い段階でG車の動向に気づいたとしても,対向車線に回避する,その場で停止する,クラクションを鳴らすなどの原告Bらが主張する措置を咄嗟に講ずることは不可能であったし,仮にこれらの措置を講ずることができたとしても本件事故が避けられたとはいえないなどと主張している。

(中略)

(4)小括
以上のとおり,本件事故について原告Fは無過失であったと認めることはできない一方,原告Fに過失があったとも認められない。

詳しくは裁判所ホームページにもありますが、無過失であると認められないし、かといって過失があったとも認められない。
自賠法3条は「無過失を証明しない限りは賠償責任を負う」なので、過失がなくても無過失を証明できなければ賠償責任があることになります。

 

そういう法律なので、そういうもんなのです。
無過失を証明した判例というと、例えばこれ。

 

横断歩行者に過失100%をつけた珍しい判例。
横断歩道がなく、かつ横断禁止ではない道路の場合、民事上では車にもかなりの過失がつきます。 目安は歩行者:車=20:80。 ところが、横断歩行者に過失100%とした珍しい判例もあります。 横断歩行者に過失100% ※画...

 

横断歩行者と衝突した事故です。
この判例、車は60~70キロで進行していたとありますが、法定速度以上、70キロよりは下という認定。
法定速度で進行していたとしても回避不可能との判断からこうなります。
詳しくは判決文をみてほしいけど、注視しても横断歩行者が中央分離帯にいたことを発見できないとしています。

原告には、夜間、幅員約30m(片側約13.8m)の国道を左右の安全確認不十分のまま横断したことについて過失が認められ、また、証拠によれば、被告車両に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことも認められるから、被告は、自賠法3条ただし書の適用により、同条本文の損害賠償責任を免れる。
そして、以上の検討結果によれば、被告に民法709条所定の過失が認められないことが明らかであり、同条による損害賠償責任も負わない。

 

新潟地裁長岡支部 平成29年12月27日

無過失を証明しない限りは賠償責任を負う仕組みなので、過失割合ゼロにしたいなら頑張って無過失を証明するしかありません。
過失があるから過失がつくのではなく、無過失を証明しない限りは賠償責任を負うので。

 

なので、こういうこと。

✕「過失があるから」
○「無過失の証明がないから」

赤信号無視の横断歩行者との衝突でも、無過失を証明すれば賠償責任を負わない。
無過失を証明できないなら賠償責任を負う。

 

そういう仕組みです。
被害者保護の観点からこういう規定なので、しょうがない。

 

悪いから賠償責任を負うとも限らなくて、悪くないことを証明できなければ賠償責任を負う。

まあ

自転車は自賠法の対象外なので、自転車対歩行者の事故は歩行者側に立証責任があります。

 

クルマは過失がなくても、無過失の証明がない限りは賠償責任を負うシステムです。
判例をみていると、「自賠法三条但し書き」として無過失の主張をしているものもあるし、無過失を主張せず「原告に著しい過失があるから最低でも7割の過失相殺を行うべき」みたいなものもある。
無過失の証明はまあまあ難しいのですが、被害者救済のための特別規定なので、そういうもんです。





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