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「歩行者横断禁止」と過失割合。

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ついでなので、「歩行者横断禁止」にも関わらず横断して事故になった場合の、民事の過失割合を判例から。
過失割合には相場がありますが、具体的事情を込みに考えると相場通りになるわけではありません。

民事の過失割合には、道路交通法違反以外の要素も含まれます。

判例から見る「歩行者横断禁止」過失割合

「歩行者横断禁止」で事故になった判例をみると、いわゆる「車列間横断」がまあまああります。
以下のような状況をこの記事では、「車列間横断」とします。

車列間横断は、道路交通法でいうと「直前直後横断」になるため違反。

 

全て「歩行者横断禁止」の事例です。

歩行者 車両

大阪地裁S45.4.28

100 0
交通の激しい所、鉄柵あり、車列間横断、付近(40m)に横断歩道あり 回避可能性なし、前方注視していた

大阪地裁 H12.9.6

50 50
車列間横断、付近(約7m)に横断歩道 第三車線を進行し赤信号に向け減速中。前方不注視。

東京地裁平成5年(ワ)4682

70 30
夜間、車列間横断、付近に横断歩道 制限速度内、前方不注視、歩行者は対向車線側から横断

東京地裁 H3.1.25

40 60
飲酒、本件交差点内を斜めに横断、付近(33m)に横断歩道、降雨 前方不注視

東京地裁 S63.2.25

85 15
車列間横断、付近(11.5m)に横断歩道、赤信号 前方注視、速度、ブレーキ及びハンドルの操作のいずれかに関し義務違反

東京地裁 H3.11.29

50 50
付近(32.2m)に横断歩道
控訴審 東京高裁 H4.4.28 50 50

大阪地裁 H10.7.28

45 55
幹線道路、歩車道間の植え込み等 漠然進行

大阪地裁 H12.8.31

25 75
付近(40m)に横断歩道、中央分離帯の存在で見えにくい、 15キロの速度超過、前方を注視&速度遵守していれば50m手前で被害者を発見可能
福岡地裁小倉支部 昭和55年(ワ)1133 30 70
40キロの速度超過(時速80キロ)
京都地裁 H8.4.10 30 70
深夜 前方不注視
大阪地裁 H11.10.6 50 50
横断歩道の付近(32.5m) 前方約32.3メートルの地点を南から北に横断歩行している原告を発見し、クラクションを鳴らし、それにより原告が立ち止まってくれたものと軽信し、速度を落とすことなくそのまま進行。飲酒運転
東京高裁 H9.9.6

(一審東京地裁H8.11.27)

40 60
車列間横断、付近(40m)に横断歩道
東京地裁 R2.10.29 40 60
車列間横断、高齢者
東京地裁 H30.9.26 25 75
直前横断(車両接近5mで横断開始)、高齢者 時速30キロ
東京地裁 H29.12.20 70 30
車が青信号、T字路交差点
神戸地裁H14.1.31 15 85
4歳、停車車両の陰から横断、ガードレールあり 前方不注視

被告が原告の出てくることを予測せず事故車を進行していた点について過失はなく、また原告を発見してからの回避可能性も余りにも至近距離であり、二輪制動によつつても停止せず、左転把もすぐに効果なくもはや不可能に近いものといわざるをえず、しかもその発見が遅れたものとは周囲の状況から到底いえないから、前方注視義務に反する点も認められない。その他衝突直前に被告が取つた避譲措置からハンドル、ブレーキ操作につき不適であつたとは認められず、同人には何らの過誤はない。

 

これに反し、原告はその自認するとおり、近くに横断歩道があるのに近道を取り歩行者横断禁止場所を横断し、かつ車両等の直前、直後で道路を横断し、道交法12条2項、13条1項、2項に違反する通行方法を取つた。さらに西行バスの後方から東行車線側に出るについて、左右の安全を確認することなく、事故車の直前へ出たのであるから重大な過失があるものというべきである。

 

要するに本件事故の原因は、原告が歩行者として車両に対する僅かな注意をしさえすれば、防止できたのに、あえてしなかつたためである。従つて事故車運転の被告には何らの過失なく、かつ被告会社にも運行上の過失がなく、事故車に構造上の欠陥、機能障害が認められないから、被告に過失責任がなく、被告会社の免責の抗弁は理由があり、被告らに本件事故による損害賠償の責任はない。

 

大阪地裁 昭和45年4月28日

原告には、横断禁止規制がなされている場所で、停止車両の間から横断をし、かつ、第三車線の車両の動静を注意していなかった点に過失が認められる

 

大阪地裁 平成12年9月6日

被告は、原告が被告の進行方向右側(被告から見て対向車線側)から本件現場付近の道路を横断してきたのだから、前方を注視していれば、横断を開始しようとする原告に気付いて衝突を避ける措置を採ることができたものということができ、被告の前方不注視の過失は否定できない。

 

一方、原告は、夜間、直近に信号機の設置された横断歩道があるにもかかわらず、あえて横断禁止場所を渋滞中の車両の間を縫うように横断したこと、被告車の進行速度に照らせば、原告の中央線に達した際の安全確認が十分であれば、被告車の発見は極めて容易であつたということができることなどからすれば、原告の過失は極めて大きいといわなければならない。

 

東京地裁 平成5年(ワ)4682

いくつか判例を見ていて思うのは、結局のところ「歩行者横断禁止」自体よりも回避可能性、つまりは車列間横断をしたとしても

運転者から見て歩行者が視認可能になった地点における両者の距離関係が重視されているような気がします。
上の図でいうと、車列間横断したとしても歩行者が第三通行帯に進出してドライバーから視認可能になった時点での至近距離であれば、歩行者過失100%にしている判例もある。
一方、「歩行者横断禁止」だろうと、ドライバーが制限速度を遵守し前方注視していれば50m手前で横断歩行者を発見可能だと判断し、車の過失を大きくしているものもあります。

 

なので、
・ドライバーが容易に回避可能か?
・ドライバーから見て、横断歩行者を発見可能な距離感

 

このあたり次第かと。
車列間横断については、見たところかなりの事例にて「歩行者が確認すれば容易に回避可能」としている点に注意。

 

「歩行者横断禁止」と「車列間横断(直前直後横断)」のダブル違反な以上、加害車両の進路を横切るときには歩行者側に注意義務を課している。

 

見た感じ、「歩行者横断禁止」自体が大要素なのではなく、「車列間横断」&「結果的に至近距離」が大要素。
なので、結局、歩行者側が違反をして横断する以上、自らが確認するしかないかと。

 

法律構造上、ドライバーは過失がなくても無過失の証明がなければ賠償責任を負います。
無過失の証明をした判例もありますが。

 

ちなみに、車両側に「前方不注視」としているのは具体的によそ見があったとも限らず、民事の判例ではよくあることです。
無過失を主張するなら、車両側が無過失の立証をしないといけないシステムですし。

横断禁止の規制

民事の過失割合としては「歩行者横断禁止」自体が大要素とも言えず、むしろその他の要素のほうが過失割合に影響しているように感じます。
いわゆる修正要素になりますが、

・車線数
・ガードレールの有無
・「歩行者横断禁止」の標識の位置と横断開始地点
・車列間横断
・歩行者と車両の位置関係
・横断歩道が付近にあるか
・交通量
・見通し(夜間等)

これら等により、歩行者過失が25%~100%まで幅があるので、「歩行者横断禁止」に違反したこと自体を大きく評価しているとも限らない。

 

刑事責任については、以前判例を上げています。

 

「歩行者横断禁止」と責任。
読者様から質問を頂いたのですが、「歩行者横断禁止」の規制がある道路で、禁止規制を破って横断する歩行者と事故が起きた場合は過失責任がどうなるの?という話。 民事責任でいうなら、「歩行者横断禁止」の場所で歩行者が横断して事故になった場合、歩行者...

 

大幅な速度超過&よそ見運転で無罪にしている判例もありますが、ちょっと特殊な事例です。
基本的には前方左右を注視しながら進行するという当たり前の原則があります。

 

過失割合って具体的状況で大幅に変わるわけで、報道内容だけを見てどっちが悪いなどと軽々しく言えませんが、「歩行者横断禁止」かつ「直前直後横断(車列間横断)」のときは、歩行者が違反をしている以上、歩行者側に注意義務があるというのが裁判所の前提。

「横断禁止規制を守れ」では正直なところ難しい気もしますが、横断禁止を破り車列間横断する以上は歩行者に左右をしっかり確認する義務があると考えるしかありません。
もちろん運転者は法規を守ることや、疑わしきは徐行するしかないかと。

 

予め「ここは歩行者が乱横断頻繁する」という事情を知っていた場合には、ドライバーに注意義務が加重されることに注意。
知っていたならより警戒する義務があるので。





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