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自転車赤切符対象の「歩道の徐行義務違反」とは?判例から検討。

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警視庁が自転車の「悪質な」違反には赤切符を切るとアナウンスしてからむしろ混乱を招いた気もしますが、赤切符対象の違反に

歩道の徐行義務違反

これがあります。
63条の4第2項により、歩道を通行する自転車は徐行義務がありますが、そもそも徐行ってどれくらいなのかよくわからないという人も多いのが現実。

歩道の徐行義務

自転車が歩道を通行する際の徐行とは、

おおよそ6~8キロ

一般的には徐行=10キロ以下と言われますが、

・歩道は歩行者の場所
・自転車は歩行者を妨げてはダメ(63条の4第2項)

これらを考慮して、目安は6~8キロとしています。

 

歩行者の歩行速度がだいたい時速4キロ。
なので歩行者よりちょい速いくらいのスピードにしろというわけです。

判例から見る「徐行」とは

徐行の定義が出来たのは昭和35年道路交通法制定時。

二十 徐行 車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。

直ちに停止できるような速度とありますが、当たり前ですが一瞬で速度ゼロにすることは物理的に不可能。
おおよそ1m以内で停止できる速度と言われますが、路面の状況(ウェット、ドライ、非舗装など)、ブレーキの性能などに左右されます。

 

「徐行」の定義ができる前の判例はこのようになっています。

自動車を運転すべき場所の険夷、広狭、人馬通行の多少、その他危険発生の虞の有無等諸般の事情を斟酌し、緩急に応じて敏速に停車の手段を執り得べき速力以内に於て運転するを以て、徐行の程度を為すを相当とす

 

大審院 大正15年11月16日

所謂自動車の徐行とは如何なる程度の速度即ち時速何キロ以下をいうのか法令には格別これを定めていないのであるから社会通念によつてこれを決するより外ないのであるが、通常貨物自動車の徐行とはその制限時速(昼間の)40キロの2分の1(20キロ)以下たるべきものと解するを相当とする。

 

東京高裁 昭和29年5月31日

論旨は被告人は当該個所を進行するに際しては時速約12、3キロに減速して通行し、同条のいう徐行をしたものであると主張するのでこの点について考える。

 

同条にいう徐行については、単に減速すれば足りるというものでないことは勿論であるが、それを如何なる程度に減速すれば徐行したことになるかは法は全く規定するところがない。法が一定の場所について徐行を要求する所以のものは、その場所が一般に交通の危険の予想される地点であり、かかる地点では、予め減速し、いわゆる急停車その他の緊急措置をなるべく有効ならしめ、停車する距離を可及的に短縮せしめ、以て交通の危険を防止しようとするにあるのであるから、この法意から見て、徐行とは、その交通危険の状況に応じ、危険発生を未然に防止するに十分な程度に速度を減じ、敏速に停車の措置をとり得るような速度で進行することを指すものというべく、その程度はその道路の広狭、見通しの難易、その他の地形、並びに当該交通機関の種類型状積載量その他諸般の状況を参酌して具体的に認定するより外はない。

 

東京高裁 昭和33年4月22日

なおこの判例は、「学校あり」の道路標識がある道路を時速12、3キロで通行したことが徐行と言えるのかが争われていますが、「敏速に停車の措置をとり得る速度は尠くも時速10キロ以下であると認められる」として有罪。
今の時代よりも取締りがはるかに厳しかった?のかはよくわかりませんが、昭和30年頃は自転車の2人乗りを有罪にしている判例がいくつかあるので、厳しかったのかも。

 

昭和30年代は、自転車2人乗りで「有罪」。
自転車の「悪質な」違反に対して警視庁は赤切符運用を始めましたが、今まで自転車の違反なんて注意止まりがせいぜい。 赤切符でも98~99%は不起訴なんですが。 でも昭和30年代、チャリ2人乗りでガッツリと有罪にしていたりします。 チャリ2人乗り...

 

「徐行」が定義された後の判例はこちら。

 

見通しが悪い交差点での徐行義務は10キロ以下としています。

本件において右徐行義務を尽くしたと言い得るためには、少くとも時速10キロ以下で進行することを要するものと認められる。しかるに、被告人は、右時速を約10キロも超える時速約20キロで本件交差点に進入したのであるから、被告人に右徐行義務違反の過失があったことは明白であるといわなければならない。

 

名古屋高裁 昭和41年12月20日

事故当時の被告人の農耕車の速度は時速約10キロメートルであつたと認められ、右速度は、道路交通法2条20号の「直ちに停止することができるような速度」と認められるから、被告人には同法42条の徐行義務違反の事実はない。

 

最高裁判所第二小法廷 昭和44年7月11日

そのほか高松高裁昭和37年3月7日判決は、原付二種の徐行とは時速15キロ以下だとしていますが、「徐行」の定義ができた後の事件なのかはよくわかりません。

 

ちなみに、自転車の徐行とはどれくらいなのかを示した判例は見つかりません。

警視庁は「悪質」な違反に赤切符

警視庁の発表後からいろいろデマレベルの報道すら飛びかっていますが、あくまでも悪質な違反が対象。
時速11キロで歩道を通行したから赤切符なんてバカな話はありません。

 

というよりも、自転車にはスピードメーターもないから、乗っている人は知りようがない。
さらに言えば、何らかのスピードガンで計測することもないです。
誤差もあるし、あくまでも「悪質な違反」が対象なので。

 

歩道で自転車が時速40キロとか出すような事故が普通に起きているので、

 

時速40キロで歩道を通行する自転車と、道路外から歩道を横断するクルマの注意義務。
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歩道を電動アシスト自転車で時速40キロ!?しかもひき逃げ。
以前、歩道を時速約40キロで通行していた自転車が事故に遭った判例を紹介したことがありますが、 この判例では自転車乗りは被害者です。 けど時速約40キロで歩道を通行する自転車なんてマレな話だと思ってました。 そんな中、このような報道が。 起訴...

 

「誰がみても明らかにアウト」な自転車のみが対象です。
まあ、どんだけ見通しがよくても時速15キロ以下だろうなとは思いますが。

 

今後登場する「特定小型原付」(電動キックボード)は、「自転車通行可」の歩道のみを「時速6キロモード」にした場合のみ通行可能です。

 

「まとめ」電動キックボード法案、可決。
免許不要で乗れる電動キックボードについて、改正道路交通法が可決されました。 わかるようでわかりづらい改正についてまとめておきます。 既存の電動キックボードとのすみわけ 新しく道路交通法に規定された電動キックボードは、「特定小型原動機付自転車...

 

「時速6キロモード」は6キロ以上出ないように制御されますが、歩道を通行する歩行者からすれば、電動キックボードがこのルールを遵守するならかなり危険性は抑えられて安心。
一方の自転車は、歩道を爆走…なんて事態すら予想されますが、

 

「電動アシスト自転車にも歩道通行6キロ以下モードを!」

 

という声は時々聞きます。
まあ、電動アシスト自転車がグイグイ来ると普通に怖いんで。

 

今後、電動キックボードが歩道のルールを守るなら相対的に自転車の徐行義務違反が目立つという斬新な結果になりますが、そもそも、電動キックボードが「歩道通行6キロ以下モード」を守るのか?についても未知数。

 

カオスになるかもしれませんが、警視庁が取り締まる「悪質な違反」とはちょっとでも越えたらアウトなわけではなく、歩行者を実際に妨害したり、誰がみても明らかにアウトな速度に限られると思います。

 

そもそも、「信号間違えて赤切符になった自転車の報道」についても、信号間違えたことが赤切符の直接的理由じゃないし。
信号間違えた&横断歩行者妨害したから赤切符なのに、テキトーな報道をするから誤解を招いているとしか思えん。

赤切符運用後も、「悪質とは言えない信号無視」は赤切符対象にしてないよ。

「待ってください。赤ですよ」。31日午前、警視庁が池袋駅近くの交差点で実施した自転車利用者の公開取り締まりで、40代の男性が警察官に呼び止められた。男性はすぐ「すみません」と自転車を止めた。悪質ではなかったことから警察官は「自転車指導警告カード」を渡し、安全運転を促した。

 

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なんかおかしな方向に話が進んでいる気がするけど、歩行者妨害する自転車はよく見かけるので、過剰なくらいのほうがいいのかな?

 

なお、歩道で徐行なんてしてらんない!という方は、速やかに自転車道でも作って頂ければ。




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