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車両通行帯と公安委員会の規制。

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先日の記事について、「車両通行帯に公安委員会の意思決定が必要とは道路交通法に書いてない」という意見を頂いたのですが。

 

自転車を追い越しする時は右隣の通行帯から追い越ししなければならない。正解or不正解?
これを言う人ってよく見かけるけど、さて正解でしょうか?不正解でしょうか? 根本的な勘違い まあこういう意味ですよね。 確かに道路交通法を読む限り、この方の意見は正解なように思える。 (車両通行帯) 第二十条 3 車両は、追越しをするとき、第...

 

個人的にはまたこのネタか…という思いしかありませんが、道路交通法の歴史から見れば明らかです。

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車両通行帯と公安委員会の規制

車両通行帯の規制については現行20条にありますが、20条の改正史を見ていきます。
昭和35年に道路交通法が誕生したときは、20条1項には「公安委員会は…車両通行区分帯を設けることができる」とありました。

 

昭和35年

(車両通行区分帯)
第二十条 公安委員会は、車両の交通の円滑を図るため政令で定める基準により、車両通行区分帯を設けることができる。

この時代、道路交通法上、車両通行(区分)帯を作る権限は公安委員会にしか規定されていません。
昭和38年改正では文言の追加がありました。

 

昭和38年

(車両通行区分帯)
第二十条 公安委員会は、車両の交通の円滑を図るため政令で定める基準により道路(高速自動車国道にあつては、高速通行路を除く。)に車両通行区分帯を設けることができる。

「高速通行路を除く」というのは、昭和38年改正時に高速通行路については別規定が新設されたから。

(通行区分)
第七十五条の四 公安委員会は、高速自動車国道については、政令で定める基準により、その左側部分の高速通行路に二の車両通行区分帯を設けなければならない

次に昭和39年改正。
車両通行区分帯を車両通行帯と改め、さらに道路管理者と意見調整する義務を課した。

 

昭和39年

(車両通行帯)
第二十条 公安委員会は、車両の交通の円滑を図るため政令で定める基準により道路(高速自動車国道にあつては、高速通行路を除く。)の左側部分に二以上のに車両通行帯を設けることができる。
この場合において、道路法による道路について車両通行帯を設けようとするときは、公安委員会は、当該道路の管理者の意見をきかなければならない。

昭和45年改正では一方通行の場合を追加。

 

昭和45年

(車両通行帯)
第二十条 公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため政令で定める基準により道路(高速自動車国道にあつては、高速通行路を除く。)の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に二以上のに車両通行帯を設けることができる。
この場合において、道路法による道路について車両通行帯を設けようとするときは、公安委員会は、当該道路の管理者の意見をきかなければならない。

旧20条1項は、昭和46年に削除されました。

 

昭和46年

第二十条第一項を削り、同条第二項中「前項の」を削り、同項に次のただし書を加え、同項を同条第一項とする。

削除されたことにより公安委員会の意思決定が不要になった…というわけではなくて、現行4条(公安委員会の交通規制)に全て集約した形。
というのも昭和46年以前の道路交通法って、やたらと「公安委員会ガー!」って出てくる。
一例。

(指定場所における一時停止)
第四十三条 交差点に入ろうとする車両等は、公安委員会が道路又は交通の状況により特に必要があると認めて指定した場所においては、一時停止しなければならない。ただし、当該交差点において交通整理が行なわれているときは、この限りでない。

これを全て「道路標識等により」とか2条の定義とかにまとめた上で4条に集約。
なので標識令で「規制標識、規制標示」になっているものは「交通規制」であり、4条で交通規制できるのは公安委員会だと定めているので、車両通行帯として機能するには公安委員会の意思決定が必須要件になる。

 

なので昭和35年以来、車両通行帯には公安委員会の意思決定が必須だということは何も変わっていません。

見分けがつかない問題

車両通行帯と「車両通行帯ではない複数車線道路」は見分けがつかないという人もいますが、確かにごく一部、見分けがつかない道路もあります。
けど基本的には上乗せ規制(進行方向別通行区分や専用通行帯など)が掛かっているところのみが車両通行帯なので、見分けがつかない道路はごく稀。

 

仮に見分けがつかないにしても、見分けがつかない以上は18条1項(左側端通行義務)と20条1項(第一通行帯通行義務)の両方を満たす位置を走るしかないわけで、

 

第一車線の左側端

 

を走るしかありません。
車両通行帯であることが明らかな専用通行帯や進行方向別通行区分では第一通行帯の中なら位置の指定はありません。
なので、このように動いても問題ない。

直進時に第一通行帯内の右寄りに移動しても、進行方向別通行区分があるので車両通行帯ですから。

 

まあ、法律を読めない人が「判例を出せ」などと言っていた気がしますが、判例を出すまでもなく条文上明らかだし、判例も出したんですけどね笑。

そもそも

以前も書いたように、昭和46年には車線境界線(区画線)を車両通行帯(規制標示)にみなすための法改正が検討されてましたが、

第65回国会 参議院 地方行政委員会 第16号 昭和46年5月13日

○政府委員(後藤田正晴君)

第二条第二項、第百十条の二第三項から第七項まで等の規定は、道路法の規定に基づいて道路の管理者が設置した車道中央線、車線境界線、車道外側線等の区画線を中央線、車両通行帯、路側帯等を表示する道路標示とみなすこととするとともに、車両通行帯の設置、法定の最高速度を越える最高速度の指定等、現在も道路の管理者の意見を聞かなければならないこととされているもののほか、通行の禁止、横断歩道の設置等についても道路の管理者の意見を聞かなければならないこととし、さらに、高速自動車国道または自動車専用道路における通行の禁止、追い越しの禁止等については、道路の管理者に協議しなければならないこととする等、道路の管理者等との関係について規定を整備しようとするものであります。

理由はわかりませんが、車道中央線→中央線、車道外側線→路側帯のみが規定され(標識令7条)、なぜか車線境界線→車両通行帯のみ見送りに。
このときに車線境界線→車両通行帯とみなす規定が作られていたなら複数車線道路=車両通行帯になるのですが、現行法では複数車線道路と車両通行帯は別物扱いになってます。

 

なぜ見送りにしたかについては、資料が見つからないのでわかりません。
標識令は省令なので改正するためには国会の議決が不要ですが、当時の警察庁と旧建設省の間で何らかの意見の相違があった結果なんじゃないかと。

 

こういう経緯から車両通行帯ではない複数車線道路というものがあることになりますが、自転車が第一車線の右寄りを通行していて警察から注意される根拠は、車両通行帯がない複数車線道路だから18条1項に従うことになるからです。
高速道路は上乗せ規制がなくても車両通行帯になってますが、たぶん旧75条の4の影響があるからなんじゃないかと思いますが。

 


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