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「歩行者自転車専用信号」と対面の範囲。

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先日、某巨大なメディアからある件について情報提供の依頼がありまして、そんなもん自分で調べろやとは言わずに情報提供しました。

 

その際ついでなので、

・ダブル左折レーン
・左折専用通行帯と直進自転車
・歩行者自転車専用信号

などの「車道を通行する自転車が困っていること」をメディアで取り上げて欲しいと要望しました。
一定の理解は示して頂いた気がしますが、「またいつかね!」という扱いでしょうか。

 

メディアの関心事は、やはりアレですもんね。

 

ところで、「歩行者自転車専用信号」。

こいつのせいで車道を通行する自転車は混乱し、謎の違反認定されたりする。

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「対面」とその範囲

道路交通法施行令2条では、「対面」する交通について表示だとしています。

(信号の意味等)
第二条 法第四条第四項に規定する信号機の表示する信号の種類及び意味は、次の表に掲げるとおりとし、同表の下欄に掲げる信号の意味は、それぞれ同表の上欄に掲げる信号を表示する信号機に対面する交通について表示されるものとする

対面とはどの範囲を指すのか?という問題があります。

これについては、「対面」だけを見ても明らかではない。
じゃあどのように合理的な正解を導くのか?というと、ヒントは2点あります。

施行令改正前

平成20年施行令改正後からは、横断歩道を横断する自転車は「歩行者用信号機」に従うことになっています。
これ、改正前はどうだったのか?

「道路交通法施行令の一部を改正する政令案」に対する意見の募集について|e-Govパブリック・コメント
パブリックコメントの「「道路交通法施行令の一部を改正する政令案」に対する意見の募集について」に関する意見募集の実施についての詳細です。

イ 横断歩道を進行する普通自転車が従うべき信号灯火を定めることについて

 

この項目に対しては、
○ 自転車に乗ったまま横断歩道を通行することはできないはずであり、また、自転車で横断歩道を通行することは大変危険。
といった御意見がありました。

今回の改正は、道路交通法の一部を改正する法律(平成19年法律第90号。以下「改正法」といいます。)により、例外的に歩道を通行することができる普通自転車の範囲を明確化したことに伴い、自転車横断帯が設置されていない交差点において、これらの普通自転車が横断歩道を進行して道路を横断することが見込まれることを踏まえ、横断歩道を通行する普通自転車が従うべき信号を車両用でなく歩行者用灯器とするものです。
道路交通法においては、普通自転車が横断歩道を通行することを禁止する規定はありませんが、横断歩道は歩行者の横断のための場所であることから、交通の方法に関する教則(昭和53年国家公安委員会告示第3号)において、横断歩道の通行について、歩行者の通行を妨げてはならない旨を周知し、歩行者の安全確保を図ることとしています。

 

警察庁パブリックコメント

改正前は横断歩道を横断する自転車は、「車道用信号機」に従うことになっていました。

仮に歩道を通行し横断歩道を横断する自転車が「車道の信号機には対面していない」と解釈した場合、当時の「歩行者用信号機」は自転車に対する意味を持たなかった。
つまり「自転車にとって信号機がない」という謎解釈に陥り、不合理。

 

「対面する信号機」とは、必ずしも真正面にある信号機を意味してなかったのだと理解できます。
「真正面」ではなく「対面」ですしね。

 

なお、施行令改正前になりますが、歩道を通行し横断歩道を横断した自転車について、以下の判例があります。

なお、被告らは、「被害者が本件横断歩道上を横断する以上、たとえ自転車に乗つて横断するとしても歩行者用信号機の表示に従つて横断すべきであり、被害者が横断を開始しようとしたときには、本件横断歩道に設置されていた歩行者信号機は赤色ないし青色点滅の表示であつたから、被害者は横断を開始してはならず、それにもかかわらず、横断を始めた被害者には重大な義務違反がある」旨主張する
しかし、自転車は、道路交通法上「軽車両」として、交差点の通行方法については、自転車横断帯が設けられていない交差点にあつては、交差点の側端に沿つて通行すべきものであり(道路交通法18条、34条、63条の7参照)、その際従うべき信号は、歩行者用信号機に「歩行者・自転車専用」と表示されている場合にはこれにより、そうでない場合には車両用信号によるものとされている(同法7条、道路交通法施行令2条1、4項)のであるから被告らの右主張は採用することができない。

 

東京地裁 平成2年12月18日

横断歩道を横断する自転車が従う信号機は車道用信号機だったからですね。
平成20年施行令改正時の警察庁の説明とも合致します。

「同時に表示されている場合」

施行令2条5項にはこのような規定があります。

5 特定の交通についてのみ意味が表示される信号が他の信号と同時に表示されている場合における当該他の信号の意味は、当該特定の交通について表示されないものとする。

この規定の趣旨ですが、こうなる。

「同時に表示」の意味を考えると、「同一交差点及び交差点の直近」の信号機が「同時に表示」の範囲だと考えるしかない。
明らかに車道信号機と歩行者用信号機は同期してますし。

 

なお、交差点の範囲を勘違いする人もいますが、道路交通取締法時代から一貫してこの範囲です。

なお、道路交通法2条5号にいう道路の交わる部分とは、本件のように、車道と車道とが交わる十字路の四つかどに、いわゆるすみ切りがある場合には、各車道の両側のすみ切り部分の始端を結ぶ線によつて囲まれた部分――別紙図面斜線部分――をいうものと解するのが相当である。

最高裁判所第三小法廷  昭和43年12月24日

本件の事実関係は、右認定のとおりである。そして右のように車道と車道が交わる十字路において、四つ角の宅地または歩道の角を切り取つて歩道または車道としたことにより車道の幅員を拡大してある場合には、その拡大してある車道部分は道路交通法にいわゆる交差点に包含され、したがつて本件においては、右の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(チ)(イ)各点を順次直線で結んだ線内の車道部分全部が、双方の車道の交わる部分であつて、右の交差点にあたる、と解すべきである。故に右の(イ)点は、交差点の側端にあたる。被告人は、交差点の側端から5メートル以内の場所に自動車を駐車したことが明かである。

名古屋高裁 昭和37年11月26日

隅切りを交差点内に含めないと、大変な珍事ばかり発生してしまいます。
左折車は交差点を通行してないことになり、交差点の規定が全て適用できなくなる。

これらを踏まえた「対面」の範囲とは

上2つから考えるに、「対面」とはその交差点において進行方向に向いている信号機全てを意味すると捉えるしかなく

どちらも対面の範囲なんでしょうね。
少なくとも立法者の意図は。
どちらも「対面」の範囲で、補助標識の有無や通行位置の違いから考えるしかない。

 

ではいかなる理由で「歩行者自転車専用」を見逃した場合を違法性無しと捉えるか。

要は「歩行者自転車専用」の標識が交差点よりはるか手前から見えてないと、自転車は従いようがない。
歩行者用信号機の「灯火」は確認出来ても、「歩行者自転車専用」の標識までは遠くからではわからないし。

 ところで、道路交通法施行令七条三項には、公安委員会が道路標識を設置するときは、歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように設置しなければならない旨を規定しており、このことに鑑みても、道路標識は、ただ見えさえすればよいというものではなく、歩行者、車両等の運転者が、いかなる通行を規制するのか容易に判別できる方法で設置すべきものであることはいうまでもないしかるに本件道路標識は、前示のように、本件交差点の南東角にある元A銀行建物の角からfを約四・七米も南に入つた場所に設置されていたばかりでなく、その標識(矢印をもつて一方通行の方向を示しているもの)は、正確に西を指示しておらず、約四〇度も西南方を指示していたというのである。そのうえ本件記録によれば、本件当時、fも北から南への一方通行と指定されていたこと、本件標識のすぐ前(交差点寄り)にはfの駐車禁止をも示すものと認められる道路標識があつて、本件標識はその背後に一部重なり合うようにして設置されていたことが明らかであるから、その設置場所、設置状況にてらし、本件標識か、eの東から西への一方通行を明らかに指示するものとはとうてい認められず、むしろfの北から南への一方通行を指示するもののように見られるのである。このような標識の設置方法は、道路交通法施行令の前記法条に違反するものであり、右標識によつては、fを南下して本件交差点を左折し、eを東行しょうとする車両等の運転者に対し、eの東行を禁止する旨の通行規制が、適法かつ有効になされているものということはできないといわなければならない。したがつて、被告人が、本件道路標識を見落して、eが東から西への一方通行と指定されていることに気付かず、右道路を東に向けて前記原動機付自転車を運転通行したとしても、なんら過失による車両等の通行禁止、制限違反の罪は成立しないものというべきである。それにもかかわらず、本件道路標識が、右eの東から西への一方通行のみを指示しているものであることは疑いを容れないところであるとし、その設置が違法でないことを前提として、右の罪が成立するものとした原判決および同判決の維持した第一審判決は、事実誤認、ないし法令の解釈を誤つて被告事件が罪とならないのにこれを有罪とした違法があり、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、刑訴法四一一条一号、三号により、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。

 

最高裁判所第二小法廷 昭和41年4月15日

道路交通法施行規則

(信号の表示)
第三条の二
2 令第二条第四項の規定による公安委員会の表示は、別記様式第一の二の二の標示を、当該信号機の信号に対面する歩行者及び自転車がその前方から見やすいように、信号機の灯器に接して設けて行うものとする。

○何が書いてあるのか解読不能

車道を進行しながら横断歩道左側を注視する時点で「前方不注視」だし、見えにくいどころか「見えない」に等しい。
なので、仮に警察官が違反だと騒ぐようなら、

管理人
管理人
あんな位置に小さく「自転車専用」と書いてあっても見えません。
最高裁判例昭和41年4月15日から違法な取り締まりになりますから、切符を切るなら公安委員会に苦情入れます。
いいですか?(笑顔)
管理人
管理人
最高裁は見えにくい標識で違反にしたことを「破棄しなければ著しく正義に反する」と言ってますが、違反を取り消しにしないと著しく正義に反しますよね(笑顔)。

「対面の範疇」だけど、交差点直近までわからない標識が無効だと解釈するしかないでしょうね。

メディアで取り上げて

これらは法律と実態が合わないバグと考えますが、

・ダブル左折レーン
・左折専用通行帯と直進自転車
・歩行者自転車専用信号

メディア的にはさほど興味はないでしょう笑。

 

取り上げて欲しかったけど残念です。
まあ、メディアの関心事は○○なのは明らかですし、そこは理解しますが。
取り上げ方だけは間違わないで欲しいとだけ要望しておきました。

 

結局のところ、「容易に視認可能ではない標識は無効」で考えるしかない話ですが、同じ理屈で自転車横断帯も考えるしかない。

気がついた時には通過しちゃっているわけで、どうしても守らせたいなら、早い段階で予告標識かなんかない限り分かるわけもない。

 

道路交通法って、歴史から振り返らないとなぜなのかわからない規定はいくつもありますが、

 

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「車道を通行する自転車は、歩行者用信号機に対面してないだろ!」は昔からよく言われたネタの一つ。
けど歴史から振り返ると、ムリがあるとしか言えないよね。

なお理屈の上では、今もこうなります。

歩行者用信号機は「普通自転車」に対する意味になるので、非普通自転車が横断歩道を通行するには車道の信号機に従うと…

 

これも「対面」なんですよね。

 

「正面」でも「直近」でもなく「対面」と規定した理由は、結局のところ「向いている方向全て」を含ませたかったのでしょう。
法律解釈って一つの条文だけ見てもわからないようになっている点がややこしい。


コメント

  1. もみもみ より:

    いつも大変興味深くてためになる記事をありがとうございます。
    以前の記事を拝見しまして、「歩行者自転車専用」信号は、電動キックボード関連の法改正後、車道を走る特定原付にも適用されると知りました(自転車横断帯を使う義務が無いにも関わらず…)。特定原付についても歩行者自転車専用信号は形骸化する気がしています。
    電動キックボード関連の法制化と合わせて歩行者自転車専用信号絡みのルールも見直してくれれば自転車ユーザーとしては嬉しかったのですが、そうならなそうで残念です…。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      その通りでして、「歩行者自転車専用」は特定小型も対象です。
      多数のトラップに嵌まることになります笑

      メディアには取り上げて欲しかったのですが。

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