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いまだに「38条は横断歩道では自転車も優先」という人がいて震えるのですが。

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いまだに「横断歩道では自転車も道路交通法38条1項で優先」という人がいて震えるのですが。

 

現実はこうですよ?

自転車で交差点を横断するときは、車両が交通弱者である自転車や歩行者に配慮すべきであるから、自身は、信号色と交差点進入直前に接近している自動車がないかだけを確認し、その他、特に減速したり一時停止をしたりする必要はないと考えていたと述べる。しかし、自転車は、横断歩道で横断する際、歩行者のような優先的地位(道路交通法38条1項)が与えられておらず、自動車を含む他の車両との関係ではなお安全運転義務を負い、自ら衝突等を回避するよう行動すべきであるのに、交差点を走行する車両を顧みることなく進入したものである不注視の程度は、自転車といえども交差点に進入する際には自動車との関係で安全運転義務を負うことすら認識していないという点でも大きいといわざるを得ない

 

名古屋地裁 令和4年3月30日

青信号で横断した自転車と、右折車の事故判例です。

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そもそも

クルマのドライバーは道路交通法の義務にかかわらず、予見可能な事故を回避する義務があるのだから(自動車運転処罰法5条)、

横断歩道を横断する自転車は38条の優先権はないものの、事故を起こせばドライバー側が安全運転義務違反(道路交通法70条)、過失運転致死傷(自動車運転処罰法5条)に問われる。

事故の回避方法として必ずしも一時停止する義務がないだけ。
自転車を優先させる義務はないものの、事故を起こせばダメですよという話でしかない。

なぜこう読むのか?

自転車横断帯は昭和53年に新設されてますが、それ以前の38条1項はこう。

第三十八条 車両等は、横断歩道に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者があるときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

この規定を昭和53年に「自転車横断帯の新設」に伴い改正。

○国務大臣(加藤武徳君)

 

その二は、自転車の通行の安全を確保するための規定の整備でありますが、これは、自転車の定義を設けるほか、自転車の交通方法の特例について新たに節を設けて関係規定を整備すること、自転車は自転車横断帯により道路を横断または通行しなければならないこととし、自転車横断帯を通行している自転車の保護についての規定を整備すること、歩道等を通行することができる自転車の大きさ等を定め、歩道を通行する場合における自転車の通行方法についての規定を整備すること、自転車の運転者は、制動装置または反射器材を備えていない自転車を運転してはならないこととすること等がその内容であります。

 

第84回国会 参議院 地方行政委員会 第12号 昭和53年5月9日

なので、立法者の意図はこう。

第三十八条 車両等は、横断歩道に接近する場合には、当該横断歩道を通過する際に当該横断歩道によりその進路の前方を横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者があるときは、当該横断歩道の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

「又は」

第三十八条 車両等は、自転車横断帯に接近する場合には、当該自転車横断帯を通過する際に当該自転車横断帯によりその進路の前方を横断しようとする自転車がないことが明らかな場合を除き、当該自転車横断帯の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、自転車横断帯によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする自転車があるときは、当該自転車横断帯の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。

判例や現在の警察庁の説明も同様の立場。

 

自転車と横断歩道の関係性。道路交通法38条の判例とケーススタディ。
この記事は過去に書いた判例など、まとめたものになります。 いろんな記事に散らかっている判例をまとめました。 横断歩道と自転車の関係をメインにします。 ○横断歩道を横断する自転車には38条による優先権はない。...

 

今さらデマを流したところで、歩行者気分で横断した自転車が事故に遭った後に過失割合でビックリするだけだと思うけど。
ちなみに冒頭の判例は自転車過失が20%、優先道路が絡むと30~40%が自転車の過失。

 

クルマのほうが過失が大きいのは、そりゃ前方左右を注視して横断「歩行者」の有無を確認してから進行する義務があるからです。
歩行者がいないか確認する段階で自転車が突っ込んでくるのが見えたら、停止して事故を回避するしかないでしょう。

 

なお、青信号で横断したものの「自転車が全責任」とした判例もあるので注意。
支払い済み損害賠償を全額返金しろという判例があります。

 

そもそも昭和53年以前は横断歩道と自転車の関係しか規定されていませんが、なぜ現行38条(昭和35~42年は71条3号)が存在するのか?

 

歩行者に「付近に横断歩道がある場合には横断歩道を使って横断する義務」を定めた以上、義務を守るものを優先する規定がないと釣り合わないから。
わざわざ横断歩道に行ったのに優先されないなら、誰も使わないでしょ。

 

このあたりの流れは注解道路交通法など古い解説書に書いてあるけど、自転車は横断歩道を使って横断する義務が定められていない。
だから優先する規定が必要ない。

 

◯旧71条3号の解説

第3号は、法第12条第2項の規定に対応するものである。すなわち「横断歩道」とは、元来、歩行者の横断の安全を図るための施設であり、また、それゆえにこそ、歩行者は、右の第12条第2項により、横断歩道のある附近においては、その横断歩道について道路を横断すべきことが義務づけられているわけであるから、これに対しては、車両等の運転者に対しても、歩行者が横断歩道により道路の左側を横断し、または横断しようとしているときには、その通行を妨げてはならぬ義務を課しておかないと、横断歩道を設置したことの意味が失われてしまうことになる。

 

宮崎清文、条解道路交通法、立花書房、1961

あくまでも横断義務に対応させた規定だという原則があるので、現在の警察庁も同じ解釈。

自転車に乗り横断歩道を横断する者は、この規定による保護は受けません。

 

法の規定が、横断歩道等を横断する歩行者等となっており、横断歩道等の中には自転車横断帯が、歩行者等の中には自転車が含まれまれているところから設問のような疑問を持たれたことと思いますが、法38条1項の保護対象は、横断歩道を横断する歩行者と自転車横断帯を横断する自転車であって、横断歩道を横断する自転車や、自転車横断帯を横断する歩行者を保護する趣旨ではありません。ただし、二輪や三輪の自転車を押して歩いているときは別です。
つまり、あくまでも、法の規定(法12条、法63条の6)に従って横断している者だけを対象にした保護規定です。

 

道路交通法ハンドブック、警察庁交通企画課、p2140、ぎょうせい

昭和35年に71条3号を規定した理由から検討しないと、理解できない。
日本の法律って、こういうの多いのですよ。
私が争った「ある法律の5文字の解釈」にしても、戦前から検討しないとわからないという…

 

自転車には「横断歩道を使って横断する義務」がないため、施行令改正は何ら影響しないし、信号の意味も何ら関係ない。

謎理論

読者様
読者様
青信号が優先されるに決まっているのだから、自転車が優先だろ!
管理人
管理人
青信号は「できる」としか書いてない上、左折車も右折車も「青信号」で進行している。
信号の灯火が優先を意味しないのは、道路交通法を全部理解すれば明らか。

管理人
管理人
青信号に「優先」の意味があるなら、「青信号だから」という理由で対向直進車がいても右折開始するの?
青信号だけど劣後する関係なんて普通にあるけど。
読者様
読者様
右左折は徐行義務があるのだから、自転車が優先だろ!
管理人
管理人
徐行義務は歩道を通行する自転車にもあるし、全く関係ない。
読者様
読者様
直進優先だろ!
管理人
管理人
横断歩道は「横断」であり、交差点の進行方法とは無関係。
直進優先だというなら、下記状況では自転車が「右折」だとするの?
右折と捉えたらメチャクチャです。

読者様
読者様
「又は」の読み方がおかしいだろ!
管理人
管理人
刑事訴訟法62条にもあるように、「又は」の読み方はいくつかパターンがある。
立法者がどのように決めたかの問題。
召喚状で勾留はできないから。
第六十二条 被告人の召喚、勾引又は勾留は、召喚状、勾引状又は勾留状を発してこれをしなければならない。
読者様
読者様
けど「又は」の読み方が納得いかない!
管理人
管理人
最高裁も立法者と同じ読み方をしてますが。

車両等は,自転車横断帯に接近する場合には,当該自転車横断帯を通過する際に当該自転車横断帯によりその進路の前方を横断しようとする自転車がないことが明らかな場合除き,当該自転車横断帯の直前で停止することができるような速度で進行しなければならず,この場合において,自転車横断帯によりその進路の前方を横断し,又は横断しようとする自転車があるときは,当該自転車横断帯の直前で一時停止し,かつ,その通行を妨げないようにしなければならない(道路交通法38条1項)。

 

最高裁判所第二小法廷  平成18年7月21日

「信号ガー!」等という人は道路交通法を理解してないのでは?

 

けど最終的には、優先がないだけで事故回避義務は免れない。
「自転車を優先させる義務はないけど、事故を起こせばダメ」という結論に導かないと話がおかしくなるだけだと思うが、理解力がない人はちょっと厳しい。

なお、横断歩道を青信号で横断した自転車が38条の対象にならないことは、以下判例で示されてます。

 

・東京高裁 昭和56年6月10日(刑事)
・神戸地裁 令和元年9月12日(民事)
・大阪高裁 平成30年2月16日(民事)
・仙台地裁 平成29年5月19日(民事)
・名古屋地裁 令和4年3月30日(民事)

 

など多数。

 

実際のところ、「譲り合い」するしかないのですが。


コメント

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