二輪車のすり抜けは6倍安全なんだ!という主張の様子。
バイクはすり抜けしないよりする方が6倍安全。
追突死亡事故を回避できる。すり抜けに対して嫌悪感を持つ自動車ドライバーは多いが、本当に危ないのは自動車。事故の原因を作っている。
正しい方法で行えばすり抜けはしないより6倍安全。
すり抜けするなとか言う人は自動車のことしか考えてない。 pic.twitter.com/QctgEzb0AW— 鳥 (@tri0142) February 16, 2023
単なる確証バイアスにどや顔するってすごいなと思いません?
ある一側面のみ抽出した話でしかない
見ればわかるように「追突リスク」のみにフォーカスして結論を導いているわけで、そもそも追突がどんだけあるのかのほうが不思議。
すり抜けしたほうが安全なのではなくて、すり抜けすると「追突リスクが減る(その他リスクは考慮せず)」というだけの話。
まあ、論文とかでよくある話だけど、「そこに着目するとそうなるけど、そこは重要なファクターなの?」という部分が抜け落ちる典型例。
ずいぶん前に、自転車は傘さし運転とレインコートどっちが安全か?という論文が話題になってました。
こちらですね。
https://core.ac.uk/download/pdf/230005104.pdf
「視野」に着目した論文ですが、傘のほうが後方確認しやすいのだとしている。
見りゃわかるようにそれ以外の要素、例えば傘が風に煽られて不安定になるリスクなどは一切排除した研究でしかないので、まさかこの論文だけを見て「レインコートより傘のほうが安全」と結論付ける人もいないかと。
すり抜けについても、例えば信号待ち停止時のすり抜けで横断歩行者との衝突みたいな判例は時々みるし、すり抜け時に縁石に接触して事故になった事例とかもある。
ある意味ではこれもそうなのかな。

こういうのって「適度と過度」に持っていく人もいて、適度なすり抜けはOK、過度なすり抜けはダメとか言い出すのがオチ。
線引きできない人を置いてきぼりにするだけなんだろうな。
「正しい方法で」行うすり抜けというフレーズで逃げているようにも取れますが、正しい方法とは?
第一当事者
交通事故の統計で「第一当事者、第二当事者」というのがあり、一応このように定義されています。
「第1当事者」とは、最初に交通事故に関与した車両等(列車を含む。)の運転者又は歩行者のうち、当該交通事故における過失が重い者をいい、また過失が同程度の場合には人身損傷程度が軽い者をいう。
この説明によれば、第一当事者が最も悪という見方になる。
ところで、第一当事者、第二当事者を「決定」するのはどのような手順や方法なのでしょうか?
以前気になっていくつかの警察本部に聞いたところ、質問した警察本部全てに共通したのは「何ら基準はなく、なんとなく決まる」。
しかもある県では「怪我をしたほうが第二」と言い放つ始末だし、警察庁の統計なんて無意味だと笑。

基準がないデータ、定義通りに運用されていないデータの集大成を見てあーだこーだと語る人を見ると、滑稽としか言えない。
全てが悪とは思わないけど
すり抜け全てが悪だとは思いませんし、すり抜けしたほうが安全な場面もあるのですが、論文ってある一面だけにフォーカスした結果であることが多い。
それこそ、危機管理ができる上級者がするすり抜けと、危機管理が不十分な初心者がするすり抜けが同じとは思えないし。
飛躍した論理でしかないので、こういう話についてはまず批判的に検討する癖付けをしたほうがいいと思います。
論文とかって、中にはトンデモなものとかあるしなあ。
どうもこの手の話って、これを思い出してしまう。


よくある「ハイビームのほうが安全」という主張にしても、状況次第なのであって必ずハイビームが安全なわけもないけど、世の中極端な理論を展開したがる人が多いような気がしました。

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