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交差点の先着優先は既に失敗している。

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ちょっと気になる記事を見つけまして。

 

優先車を妨害していい? 重大事故が起こる一因は片方優先ルールにあった  
交差点での出会い頭や右直の重大事故、交通トラブルの原因は、現状の片方の交通を優先とする交通ルールに問題があると考え、対策として先着優先ルールを提案します。

 

交差点に「先着優先ルール」を設けるべきという主張の様子。

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先着優先は既に失敗している

このような「先着優先ルール」を作るべきという主張は時々見かけますが、既に大失敗しているんですよね。

 

昭和35年~昭和46年までは、交差点先入優先という規定がありました。

(先入、先順位及び左方の車両 等の優先)
第三十五条 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合において、既に他の道路から当該交差点に入つている車両等があるときは、当該車両等の進行を妨げてはならない。

なぜ昭和46年に削除されたかというと、どちらが先入したか確定しにくいことや、「我先に!」という事故が多発したから。
歴史上で既に失敗したのですけどね。

 

例えばこちらの判例。

交差点先入ルールの適用について争われた判例ですが、そもそも

いろんな人
いろんな人
この交差点の範囲はどこよ?

被告人運転の自動車が本件交通整理の行なわれていない交差点にはいろうとした際には、既に被害者運転の自動二輪車が旧国道から交差点内にはいつて横断しかけていたことがうかがわれるから、道路交通法35条1項により、被告人としては被害者運転の自動二輪車の進行を妨げてはならないのであり、したがつて、このような場合、本件交差点の特殊性をも考慮すると、自動車運転者としては、減速徐行して、自動二輪車が前記別紙図面リ点の手前で停止するのか、または、そのまま横断してくるのか、その進行状況を注視し、停止する気配がなければ同車が交差点を横断し終るのを待つて進行すべき業務上の注意義務があつたといわなければならない。しかるに、被告人は約54メートル前方に交差点を横断しかけている被害者運転の自動二輪車を認めた際、同女が被告人運転の自動車に気づいていないのを認めながら、同女の方で進路を譲つてくれるものと軽信し、直ちに減速徐行してその進行状況を見きわめることなく、単にクラクシヨンを鳴らしただけで時速約50キロメートルのまま進行し、同女がなおも気がつかないで進行して来るので、約17メートルに迫つて衝突の危険を感じ、急制動の措置をとつたというのであるから、右の注意義務を尽したということはできず、この点において被告人に過失があつたと認めざるをえない。なお、ここで、被害者の過失の有無について付言するに、被害者は交差点への先入車両として、道路交通法35条1項により、交差点を通行するについて優先権があることは前記のとおりであるが、もともと同法条は、交通整理の行なわれていない交差点における車両等の優先順位を一般的に規定して、交差点における車両等の交通の円滑を図ることを目的としているのであつて、車両等を運転する者がこれを遵守しなければならないことはいうまでもないけれども、そうだからといつて、先入車両等の運転者にすべての注意義務を免除し、衝突事故を起こしてもすべて責任がないとまで規定した趣旨とは考えられない。ことに、本件交差点は、その東側線の長さが68.6メートルもあるという変型Y字型交差点であるから、いずれの車両が交差点への先入車両であるか、相互に判明しにくいことが考えられ、また、交差点の北端線については何の標示もなく、どこから交差点になるのか一般にはわかりにくく、かつまた、新国道は幅員が明らかに広い優先道路であるという事情もあつて、当審証人の証言によれば、旧国道から北進し、交差点を進行して新国道の北行車線にはいろうとする車両は、新国道を南進または北進する車両があれば右交差点の中心(別紙図面リ点の手前)付近で停止して(先入車両に停止すべき法規上の義務はない)その通過を待つて北行車線に向け進行しているのが実情であることが認められることなどに徴すると、被害者としては、交差点にはいつてからのちも、新国道を南北進する車両の交通に注意を払い、その安全を確認したうえで新国道の北行車線に向け進行し危険の発生を未然に防止すべき注意義務があるものといわなければならない。しかるに、被害者は交差点にはいる前に被告人運転の自動車を認めて十分交差点を横断できると軽信し、交差点内に進入後は被告人運転の自動車に対する注視を全く欠いてそのまま横断中衝突したというのであるから、右の注意義務を尽したものとはいえず、この点、被害者にも過失があつたといわなければならない。

 

大阪高裁 昭和44年8月7日

先入優先を規定すると先に入ろうとする車両が増えて注意が散漫になるし、そもそも交差点の範囲がわからない。
どっちが先入したかも明らかにしにくいなどから昭和46年改正時に削除したのが「交差点先入優先」。

 

古い民事判例をみても、どっちが先に入ったかで揉めているものは普通に見つかります。
先入優先にするとより危険性が増すのは歴史が既に証明しているとしか。

 

そもそも交差点の定義を理解してない人が多いけど、交差点には隅切りを含みます。

なお、道路交通法2条5号にいう道路の交わる部分とは、本件のように、車道と車道とが交わる十字路の四つかどに、いわゆるすみ切りがある場合には、各車道の両側のすみ切り部分の始端を結ぶ線によつて囲まれた部分――別紙図面斜線部分――をいうものと解するのが相当である。

最高裁判所第三小法廷  昭和43年12月24日

本件の事実関係は、右認定のとおりである。そして右のように車道と車道が交わる十字路において、四つ角の宅地または歩道の角を切り取つて歩道または車道としたことにより車道の幅員を拡大してある場合には、その拡大してある車道部分は道路交通法にいわゆる交差点に包含され、したがつて本件においては、右の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(チ)(イ)各点を順次直線で結んだ線内の車道部分全部が、双方の車道の交わる部分であつて、右の交差点にあたる、と解すべきである。故に右の(イ)点は、交差点の側端にあたる。被告人は、交差点の側端から5メートル以内の場所に自動車を駐車したことが明かである。

名古屋高裁 昭和37年11月26日

 

昭和46年改正

交差点事故多発につき、昭和46年に大改正。

・交差点先入ルールの廃止
・交差点については「進行妨害」という言葉に統一
・「進行妨害」の定義を明確化
・評判が悪かった37条2項を削除
・交差点安全進行義務(36条4項)の新設

 

旧37条と交差点安全進行義務。
こちらの続き。 ちょっとマニアックなので興味がない方はスルー推奨。 旧37条と交差点安全進行義務 36条4項には交差点安全進行義務が規定されてますが、この規定は昭和46年改正で誕生しています。 4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内...

 

前年の昭和45年には、「進行方向別通行区分」を新設するなど交差点事故を減らすために改正したのが昭和45~46年。

 

冒頭の記事を読んでいて思ったのですが、「進行妨害」の件。
昭和46年改正以前は「進行を妨げてはならない」としていたものを、交差点では「進行妨害」に統一し定義を規定しています。

 

「進行を妨げてはならない」の時代から「進行」を妨げてはならないなので優先車が停止している(=速度ゼロ)なら劣後車が進行してかまわないと解釈されてました。
速度ゼロの車両は「進行してない」ので、妨げようがない。

この「進行を妨げてはならない」とは、一般に相手方の車両等の進行を妨害し、その進行を遅らせてはならないということである。この点、「進路を譲らなければならない」の意義とは異なり、相手方の車両が動き出さない限りはそのまま進行してもさしつかえないが、相手が進行を始めた以上はこれを妨げてはならない。

 

註釈道路交通法、横井大三、木宮高彦、有斐閣、1965

昭和46年改正時に「進行妨害」にまとめた際に、きちんと定義からやって曖昧さを無くそうとしただけかと。

 

冒頭のリンク先についてチラっといくつかの記事を見たのですが、既に確立された解釈すら間違っていたりするので大丈夫なのか心配になりますが(直前横断は1mなどと書いてますが…大丈夫なのでしょうか?)、道路交通法に限らず解釈は「逐条解説」など政府刊行物で示すのが日本では多い。
条文だけ見ても理解することは難しい上、なぜそのルールなのかについては立法当時の考え方から見ないとわからない。

 

何を懸念し、立法者がどのような意図をもって規定したかを理解しないと、問題点も改善案もブレブレになるのよね。
既に大失敗したルールを復活させるなんて、まずあり得ない話なんだから。

先入優先は既に大失敗し、昭和46年に削除されてます

寒い日に「こたつは先入優先」だと決めたら、急いで入ろうとする。
「ワゴンセール早い者勝ち」とすれば、オバチャンが人を押し退けてでも買おうとする。

 

早い者勝ちルールは既に大失敗しているんですよね。


コメント

  1. noName より:

    先着優先は交差点への侵入道路すべてに一時停止があるとこだと今でも暗黙の了解でありますね。
    初見で通過する人が動けなくて全方向が動けなくなってたりするのをたまに見ます。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      全員が停止したなら優先原理は作用しませんので、譲り合いしながらプレイするしかないですね。
      よくある話です。

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