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追いつかれた車両の義務は速度超過車に追いつかれた場合でも義務が発生するか?

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追いつかれた車両の義務って、自転車には関係ないのでアレなんですが。

読者様
読者様
追いつかれた車両の義務(27条2)は、速度超過車に追いつかれた場合でも譲らなければならないですか?

 

「義務はありません」。

義務があると解釈したら、こんな奴に譲らないと犯罪になるという意味不明な状況になりますから。

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追いつかれた車両の義務

 

道路交通法27条「追いつかれた車両の義務」は「徐行や一時停止義務」を負うのか?
ちょっと前の続きです。 27条2項「追いつかれた車両の義務」は徐行や一時停止義務を負うのか?という話がありますが、ちょっとこれについて掘り下げてみます。 なお、話は長いので興味がない人はスルー推奨。 (他の車両に追いつかれた車両の義務) 第...

 

(他の車両に追いつかれた車両の義務)
第二十七条
2 車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

先行車、後続車ともにクルマで考えます。

 

そもそも論ですが、27条2項は一種の優先規定。
大原則として、優先規定は適法に通行する場合を対象にするため、速度超過している車両に譲らなければならない義務はないです。

 

そもそも、27条2項は過失犯の処罰規定がありません。
では故意が成立する地点はどこになるかというと

①追いつかれたことの認識
②追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするとき(つまり自車速度の認識)

この二点を認識していれば義務があるわけで、故意の成立とはこの二点を認識すること。
さっきまで遠く離れた後方にいたクルマが接近して追いついた状態なら、後続車のほうが速いわけことも認識しているので、②についても認識があると考えるしかないでしょう。

 

以前も挙げましたが、捜査マニュアル。

<捜査の要点>
1、前車(違反車)と後車の車種、優先順位、速度
2、道路左側部分の幅の広さ
3、違反車の車体幅と進路コース
4、違反車が右側に寄って進路を譲る余地の有無
5、違反走行距離と現認場所
6、道路及び交通の状況及び現認場所
7、違反の動機・原因

 

<事実の書き方>
①進路避譲不履行
被疑者は、法定の除外事由がないのに、昭和○○年○○月○○日午後○時○○分ころ、○○自動車第○○○○号を運転中、○○県○○町○丁目○○番地附近道路において、通行の優先順位が先である○○自動車第○○○○号に追いつかれた際、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がないのに道路左側に寄って進路を譲らなかったものである。

 

浅野信二郎、北原四郎、木宮高彦、「交通実務教本:事例中心」、警察時報社、1968

※「4」は右側ではなく左側の間違いな気がします。

 

「追いつかれた」と認識し、車両の優先順位の認識、もしくは現実の速度が当該道路の最高速度より遅いことを認識していれば義務が発生する。
義務が発生した時点で左側端に寄る必要が発生します。

 

これ、「違反車だから適用しない」ではなく「信頼の原則」によってどうのこうのと説明しているサイトもあるのですが、信頼の原則って過失犯における注意義務を制限するもの。
なので具体的義務(故意)を信頼の原則でという時点でだいぶ的外れだなあと思いますが、その点を措くとして。

 

そもそも信頼の原則を最高裁が認めたのは昭和40年代。
昭和35年から追いつかれた車両の義務は存在するわけで(もっと遡れば昭和22年道路交通取締法から存在する)、信頼の原則が認められる前から「速度超過車には譲る義務がない」なんですよね。

 

説明するまでもなく、単純に「違反車両を優先させる義務はない」で終了します。

 

そもそも、追いつかれた車両の義務は「進路を譲る義務」だけど、後続車が先に行かなきゃいけない義務はない。
先に行きたいなら進路を空けますよ?というだけでしかなくて、後ろで追従したいなら追従すればいいし、追い越ししたいならすればよい。
先に行かなきゃいけない義務なんてどこにもないのですよ。

 

道路交通法27条「追いつかれた車両の義務」は「徐行や一時停止義務」を負うのか?
ちょっと前の続きです。 27条2項「追いつかれた車両の義務」は徐行や一時停止義務を負うのか?という話がありますが、ちょっとこれについて掘り下げてみます。 なお、話は長いので興味がない人はスルー推奨。 (他の車両に追いつかれた車両の義務) 第...

 

なお、追い越しするときに速度超過が許容されないことは判例で確定済み。

先行自動車を追い越すため一時的に法定の最高速度を越えた場合であっても速度違反としての刑責は免れない。先行車を追い越すべく判示のような速度違反行為に出たことが円滑な交通をはかる上でやむを得ない措置であったとの主張は、道路における交通の安全性の要請を無視した独自の見解である。

 

仙台高裁 昭和43年10月17日

優先規定の基本

以前「赤信号無視の歩行者にも38条1項の義務がある」と力説していた人も「信頼の原則」とか言ってましたが、38条1項前段の義務は「横断歩道の存在」を認識し接近する際に発生するもの。
つまりは義務(故意)の発生は「横断歩道に接近していることを認識した時点」なので、信頼の原則を誤用しているのね。
なぜに故意と過失を混同するのかと。

 

最高裁が信頼の原則を採用する以前から普通にこのように解釈されていたわけで

道路交通法第37条第1項所定の交差点における直進車の右折車に対する優先は、直進車が交差点に適法に入ったときだけに限るのであって、信号を無視して不法に交差点に入った場合には認められない。

 

昭和38年11月20日 東京高裁

道路交通法の優先規定って、違反している人や車両を優先する意図なんて全くないし、普通にこのように解釈されてきたのにね。

 

昭和42年改正時、警察庁の説明。

この改正内容の第二点は、従来の第一項および第二項の区別を廃止したことである。改正前の第38条は交差点における交通整理の有無によって第一項と第二項を分けて規定していたが、車両等の義務の内容としてはいずれも「歩行者の通行を妨げてはならない」ことを規定していた。したがって、規定をこのように分けていた実益は、交通整理の行われている交差点において優先の適用を受ける歩行者を「信号機の表示する信号または警察官の手信号等に従って横断している」歩行者に限っていたことにあると考えられるが、本来このような優先の規定は適法な歩行者にのみ適用になると解するのが当然のことであるので(注2)、今回の改正を機にこの区別を廃止したのである。

 

(注2)この点については、改正前の第71条第3号すなわち改正後の第38条第1項の規定についても、信号無視の歩行者に優先権を与えたものでないのは解釈上当然のことであると考えられていた

 

警察庁交通企画課 浅野信二郎、警察学論集20(12)、p37、立花書房、1967年12月

追いつかれた車両の義務についても当然のように、速度超過車相手には譲る義務が発生するわけもない。

 

「信頼の原則ガー!」って語る人を見ていると、そもそも道路交通法の義務と過失運転致死傷の注意義務の違いを理解してない上、信頼の原則自体も理解してないとしか思えません。

 

なお、「譲る義務」がなくても事故回避義務は免れないため、下手な追い越し喰らったときには減速するなどの措置を取らないと過失にはなり得ます。
道路交通法の具体的義務と事故回避義務を混同するから信頼の原則がどうのこうのとなるのかと思いますが、とちらにせよ「速度超過車相手に譲る義務があると解釈できない」ので、そういうもんです。

 

なお、冒頭の動画について思うのですが、正論が通じないことは明らか。
警察呼ぶか、テキトーに濁すかしかないのかと。


コメント

  1. upmoon より:

    屁理屈になりますけど、「その追いついた車両の速度よりもおそい速度」の追いついた車両の速度が分かるのかよって話ですよね

    追いついた車両の速度は分からないのだから、追いつかれてから少しでも加速しちゃえば引き続き遅い速度で進行してないから譲る義務は発生しないことに

    たまたまカーブ等での減速量の違いで追いつかれたのかもしれないのに直線になってから加速しても、カーブでは追いつかれのだから譲れとなったら安全かつ円滑には程遠い法の運用です

    結局その道路における追いついた車両の最高速度と自分の最高速度と現在の速度でしか関係を判別できないのだから速度超過車にも云々にはなりえないですよね

    これが法定最高速がなく速度計もない自転車に例え27条の義務があっても実務上無理よねって話に繋がるのかな

    この観点だと特定小型原付は性能で20km/h、法定最高速度でも30km/hになるはずなので追いつかれた車両の義務は実務的にもできちゃう?

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      >追いついた車両の速度は分からないのだから、追いつかれてから少しでも加速しちゃえば引き続き遅い速度で進行してないから譲る義務は発生しないことに

      これについてはその通りです。
      ただし制限速度を越えたら違反。

      結局のところ「できる限り左側端によって」なので、カーブのようなところは「できないからしょうがない」になります。
      普通に走ればそれで「できる限り左側端によっている」となるので。

  2. やまぐち より:

    道交法の、第二条 八に、
    「車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。」と、いう規定があります。
    よって、追い付かれた車両の義務は、自転車にも課せられます。関係無く無いですよ。

    • roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      すみません、「そこ」が問題ではありません。2条1項8号の車両の定義に軽車両が含まれるのは当たり前です。

  3. やまぐち より:

    あれ?冒頭ではっきり「追いつかれた車両の義務って、自転車には関係ないのでアレなんですが。」って書いてませんか?
    これはどういう意図ですか?

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