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2輪車の追い越し、追い抜き時に起きた非接触事故と責任。

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以前、先行する自転車を側方間隔1.2mで追い抜きした際に起きた非接触事故について、後続四輪車に60%の過失責任を認めた判例を紹介してますが、

 

自転車追い抜き時に非接触事故の判例。
自転車を追い越し、追い抜きする際には側方間隔が問題になりますが、接触してないものの事故になった判例を。 非接触事故の判例 非接触事故の判例としてますが、事故態様には争いがあります。 判例は東京地裁 平成27年10月6日。 まずは大雑把に状況...

 

一方では、側方間隔0.7m~1mで原付を追い越しして起きた非接触死亡事故について、過失を認めなかった判例もあります。

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側方間隔0.7m~1mで原付を追い越し

判例はちょっと古いのですが、長野地裁飯田支部 昭和44年6月27日。
側方間隔0.7m~1mで原付を追い越しした際に、原付が転倒した死亡事故です。

5、6両以上連結した汽車又は電車が時速5、60キロ以上で走行する場合、鉄路犬走外側の雑草が風圧によつて前方に靡くことは、吾人の日常経験するところであるけれども、普通乗用車又は貨物自動車が時速5、60キロで走行する場合、該自動車の外側1m、高さ0.3mの範囲内における斜後方外側に流れる気流の強さは、自重75キログラムの原動機付自転車に体重45キログラム以上の人が乗車している該自転車前後車輪下部を外側に押す程強力なものでなく、又乗用自動車、貨物自動車の後部直近中央部に流入する気流も亦右自転車の運転者を右方に引き込む程強力なものでないことは、経験則に徴し自ら明らかであり、これを前記認定事実に照せば、訴外加害者が訴外被害者運転の原動機付自転車の右側0.7ないし1mの個所を時速凡そ50キロで通過した際における貨物自動車による気流は、いづれも同女をして平衡を失せしめ、転倒させるに足る程強力なものであつたと断定し難いので、訴外加害者の右運行々為と同女の転倒との間には、相当因果関係あつたということができず、同訴外人に自動車運転につき、他に注意義務を怠つた過失を認めるに足る事実も存しない。

 

以上の理由により被告に対し自動車損害賠償保障法第3条に基く責任は勿論、民法第709条、第715条に基く責任を負わせることができないものと認める。

 

長野地裁飯田支部 昭和44年6月27日

という判例です。

検討

実はこちらの判例については私は知らなかったものでして読者様から聞いたものなのですが、単純比較するとこうですよね。

長野地裁飯田支部S44.6.27 東京地裁H27.10.6
先行2輪車の速度 35~40キロ 15キロ程度
側方間隔 0.7~1m 1.2m
後続四輪車の速度 50キロ 40キロ
加害者過失割合 0%(請求棄却) 60%

あんまり単純な比較をするものとは思えないのですが、理由をいくつか。
まず一つに、最高裁判決の前の事案ですよね。

 二、ところで、不法行為において、車両の運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係があるとされる場合は、車両が被害者に直接接触したり、または車両が衝突した物体等がさらに被害者に接触したりするときが普通であるが、これに限られるものではなく、このような接触がないときであつても、車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したものであつて、歩行者がこれによつて危難を避けるべき方法を見失い転倒して受傷するなど、衝突にも比すべき事態によつて傷害が生じた場合には、その運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係を認めるのが相当である。
本件についてこれをみるに、原審の認定した事実によれば、上告人は、訴外D、同E外二名と連れ立つて、暗夜の市道(幅員約三メートル、非舗装)を歩行中、前方からは被上告人が運転する軽二輪車が、後方からは訴外Fが運転する原動機付自転車が、それぞれ、接近して来るのを認めたため、右原動機付自転車の方を振り返りながら、右D、E両名に続いて、前方右側の道路端にある仮橋のたもとに避難したところ、前方から右軽二輪車が運転を誤り、上告人がまさに避けようとしている仮橋上に向つて突進して来て仮橋に乗り上げたうえ後退して停車し、その際運転者である被上告人の肩が右Eに触れて同人を転倒させ、他方上告人は右仮橋の西北端付近で転倒し、原判示の傷害を受けたというのである。右事実関係のもとにおいて
は、上告人は、同人の予測に反し、右軽二輪車が突進して来たため、驚きのあまり危難を避けるべき方法を見失い、もし、現場の足場が悪かつたとすれば、これも加わつて、その場に転倒したとみる余地もないわけではない。そうだとすれば、上告人の右受傷は、被上告人の軽二輪車の運行によつて生じたものというべきである。

 

最高裁判所第三小法廷 昭和47年5月30日

非接触驚愕事故についての損害賠償責任って、まあまあ広く認められているのが実態。
側方間隔1.2mで追い抜きした東京地裁H27.10.6判決が「被害者の予測を裏切るような常軌を逸したもの」と言えるかは別として。

 

次に長野地裁飯田支部S44.6.27判決では風圧による平衡損失の有無を問題にしているようですが、刑事事件になりますが、このような判例があります。

先行2輪車の速度 追い抜き四輪車の速度 側方間隔
45キロ 65キロ 0.3m

一審の竜ヶ崎簡裁は「至近距離の追い抜きにより風圧により平衡を失わせた過失」として有罪にしていますが、東京高裁は破棄。
二輪車が時速45キロ、追い抜きした普通貨物車が時速65キロでは、側方間隔0.3mでは風圧による平衡喪失は考えられないとしています。

 

その上で「0.3mの追い抜きにより驚愕狼狽せしめ、心理的動揺からハンドル操作を誤り平衡を失わしめ」として有罪にしています。

 

自転車への側方間隔はどれくらい空けるべき?判例を検討。
先行する自転車を追い越し、追い抜きするときに、側方間隔が近すぎて怖いという問題があります。 これについて、法律上は側方間隔の具体的規定はありません。 (追越しの方法) 第二十八条 4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条に...

 

風圧云々をいうとその立証で無理が生じてしまう…というところなんじゃないですかね。
驚愕狼狽、心理的動揺を起こすような側方間隔と速度差だったのか?を争点にするのと、風圧による平衡損失を起こすような側方間隔と速度差だったのか?ではだいぶ違う気がします。

 

そりゃ、第一車線を通行する自転車に対して、第三車線から追い抜きした車両がいたときに「驚愕狼狽!心理的動揺!非接触事故!」と主張されたらだいぶムリがありますが、東京地裁H27.10.6判決は側方間隔1.2m、速度差25キロ。
まあ、非接触事故としては起こりうる範囲かと思いますが、仮にこれが速度差5キロだったらだいぶ厳しくなるし、速度差25キロ&側方間隔5mだったらまず認められないでしょう。

 

なので争点の違いとか速度差なども関係するので、2つの判例を比較してもあまり意味がない気がします。

そもそも

一審判決って裁判の証拠に出してもほとんど考慮されない気がしますが、以前も書いたように何を主張して何を争点にするかによっても結果は違うので、判決の結果よりも中身に着目した方がいいと思います。

 

以前も書いてますが、逆走自転車と順走自転車の衝突事故について、順走自転車の過失を100%にした判例があります。
この判例はたぶん本人訴訟で弁護士を立ててないのかと思いますが、なぜ順走自転車が全面的に悪いという判決に至ったのかというと、理由はこちら。

左側通行義務違反については当事者の主張がなされておらず

 

自転車事故過失相殺の分析、財団法人 日弁連交通事故相談センター著、株式会社ぎょうせい、p371

 

逆走自転車と衝突したのに、順走自転車が過失100%??
ちょっと前に取り上げた件。 この記事で取り上げたブログさん、ほかにも判例について解説(?)をしているようなのですが、逆走自転車と順走自転車が衝突した事故で、順走側に過失100%を付けている判例を紹介していました。 古い記事のようですし、何か...

 

左側通行義務違反を過失だとする主張が全くされてないので、判決には逆走(左側通行義務違反)が全く反映されていない。
主張がないことは判決に影響させてはダメなルールなので、こうなります。

 

本人訴訟だと勝率が下がる理由ってこういうところなんじゃないかと思いますが、至近距離の追い越しや追い抜きでも風圧云々を主張したら反論されて撃沈しかねないので、あくまでも心理的動揺とか驚愕狼狽を起こしうるかどうかを主張する方がいいのかと。

 

もちろん側方間隔5mあるのに驚愕狼狽とか主張しても相手にされないでしょうけど。


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