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「黄色灯火を長くすれば事故は防げただろ」という意見はちょっと短絡的。

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ちょっと前に書いたこちらについてですが、

交差点内は駐停車禁止だから、クラクション鳴らして横断歩行者を蹴散らせ!
この人ってマジで語っているのか、ネタなのかわからないけど要約すると、「交差点内は駐停車禁止だから止まることができず、クラクション鳴らして蹴散らせ!」という恐ろしい主張をしてますが…交差点内は「法令の規定」(38条1項)や「危険を防止するため...
信号の全赤クリアランスタイムを長くすると、余計危険になる。
そういえばこれ。信号サイクルを変えて、例えば全信号が赤になった時間を増やしたとするじゃないですか。信号のクリアランスタイムについては、昔から様々な実験や研究がありますが、全赤時間を増やした場合に起きるのはこれ。黄色信号で止まらない車両が増え...

長文でメールを頂きまして、「黄色信号が何秒あれば事故は起きてない」とか、「その根拠はバスが交差点を通過するのに何秒擁していた」とか、「交差点の長さが何メートルあるから…」などと書いてありまして。

 

ざっくり言いますと、その視点が既に的外れです。
というのも、このタイミングでたまたま交差点に進入して起きた事故「のみ」を防げたかどうかを論じても意味がない。

 

例えばですが、このタイミングで交差点に進入したバスの「黄色灯火」があと数秒長かったならば、確かにこの事故は起きてない。
けどさ、世間一般の風潮って「黄色は通過」ですよね。

黄色灯火を長くしたとして、結局黄色から赤に変わるタイミングで交差点に進入する車両がいたら同じように事故るんですよ。
信号の間隔やクリアランスタイムについては様々研究がありますが、全赤時間を長くしたらフライング発射する車両や歩行者が増えるし、黄色灯火を長くしても黄色灯火で交差点に進入する車両がいる以上、無意味。
たまたまこのタイミングで起きた一件「のみ」を考えるから、おかしな発想になってませんかね。

 

要はこの件、2つのミスと3つの誤解があるわけよ。

 

<3つの誤解>
①黄色灯火は「止まれ」であり、「注意して進んでよい」ではない。
②交差点内は法令の規定や危険防止のために一時停止することは禁止されていないのに、禁止だと勘違いしている人が多い。
③青信号で横断する歩行者は、38条1項により優先権があるのに、なぜか頭から抜け落ちる人が多い。

 

<2つのミス>
①黄色灯火で進入した。
②黄色灯火で進入した以上、横断歩道が青信号に変わり横断する歩行者が予見されるのだから、減速接近義務(38条1項前段)を免れず、青信号に変わった以上は「横断しようとする歩行者」に対し一時停止義務があるのに怠った。

黄色灯火で止まるべきだったけど、ミスって進入した以上は横断歩道の直前で一時停止すれば済んだ話。
そもそも、「バスが信号無視だったか?」というところに注目し過ぎて、本質が蔑ろにされていたように思うのね。
二段構え(黄色灯火、横断歩行者妨害)で注意義務があり、少なくともどちらかを履行していれば事故にならない。
二段構えをダブルで不履行なら、そりゃ事故るよ。
昭和40年代にきちんと判例で示されてますし。

青の信号で交差点に進入した自動車運転者が、前方の横断歩道上左端付近に左から右に横断しようとして佇立している歩行者を認め、さらに右交差点の中央付近まできたときに前方の信号が黄色に変わったのを認めた場合には、直ちに横断歩道直前で停止すべき業務上の注意義務はないけども、間もなく歩行者に対する信号が青に変わり、歩行者が当該横断歩道を左から右に横断を開始することが必至であるから、自動車運転者としては、右歩行者の通行を妨げないよう配慮するとともに減速徐行し、状況に応じいつでも急停止し得るような態勢で横断歩道またはその付近における歩行者の動静を絶えず留意して進行するなど、その安全をはかる業務上の注意義務がある。

東京高裁 昭和41年10月19日

「黄色灯火を長くしたら事故ってない」と言われても、そもそもこの事故だけを見ているわけじゃないです。
黄色灯火を長くしても、「黄色は進め」だと思っている人はギリギリで進入します。
ギリギリで進入する車両がいたら、同じように事故ります。

 

ダブルで義務を課していて、ダブルで不履行なら事故るのは必然。
ダブル不倫してダブルバレしたみたいな、阿鼻叫喚な事態に陥るのは必然としか言えない。

 

「黄色は止まれ」だし、「交差点内は法令/危険防止の一時停止は禁止されていない」。
根本的な間違いを改めないと、同じ事故が起きるだけ。
だからタイミングを間違って交差点に進入した以上、38条1項に基づき横断歩道直前で一時停止しましょうねとしか言えないよね。

信号の間隔やクリアランスタイムなんていくらでも研究があるし、その手の話は昭和から平成前半にかけて散々やってきたこと。
そもそも「交差点内は停止禁止」だと勘違いしている人が多いけど、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合には何ら問題ないのだからルール通りにすれば済んだとしか。

(停車及び駐車を禁止する場所)
第四十四条 車両は、道路標識等により停車及び駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、又は駐車してはならない。
一 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル

誤った解釈を前提に「信号の間隔やクリアランスタイム」なんて言っても、まずは認識を改めないと同じなのよ。
黄色を長くしても、結局黄色灯火で進入する車両がいたら同じこと。
全赤時間を長くした場合、フライング発射する歩行者が増えるのも研究で明らか。
昭和40年代頭にきちんと判例で示されているのだから、その通りにするのが筋。

 

この判例もそうだけど、昭和46年に減速接近義務が新設される以前から「減速接近すべき業務上の注意義務違反」を認定してきた判例は多い。
理屈の上では、「青信号に変わるタイミングの横断歩道」に対しても減速接近義務が生じることになりますが、動画の状況は38条1項前段と後段の違反になります。

間もなく歩行者に対する信号が青に変わり、歩行者が当該横断歩道を左から右に横断を開始することが必至であるから、自動車運転者としては、右歩行者の通行を妨げないよう配慮するとともに減速徐行し、状況に応じいつでも急停止し得るような態勢で横断歩道またはその付近における歩行者の動静を絶えず留意して進行するなど、その安全をはかる業務上の注意義務がある。

東京高裁 昭和41年10月19日

この判例は警察学論集 昭和46年11月号(立花書房)の「自動車事故における過失認定の問題点-16-横断歩行者保護義務,横断・転回時の注意義務」 (久保哲男)128ページに要旨のみ書いてあります。

コメント

  1. てふてふ より:

    車(バス)の信号が赤になったあと
    歩行者側の信号が青になるタイミングを
    遅くすることはできないのですかね?

    全ての信号が赤になっている時間を長くするイメージです

    フライング横断してくる歩行者は防げませんが
    今回のような事故は防げると思います

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      それをすると、歩行者がフライング発射するので無意味なのです。
      事実、動画でも歩行者信号が青に変わる前に発射してますが、「青に変わったから進む」のではなく、「交差道路が赤になったから進む」人が多いのです。

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