PVアクセスランキング にほんブログ村 当サイトはAmazonアソシエイト等各種アフィリエイトプログラムに参加しています。
スポンサーリンク

バックで側道から国道に進入して追突…

blog
スポンサーリンク

なかなか凄まじい事故だなぁと思うのですが、ちょっと気になる点。

7月2日正午ごろ、岐阜県岐阜市の国道で、岐阜バスの路線バスがトラックに衝突し、乗客1人がケガをしました。

ガラスが割れ車体が大きくゆがんだバス。岐阜市岩田東3丁目で2日正午ごろ、岐阜バスの路線バスがバックで側道から国道に出ようとしていたトラックに衝突しました。

消防によりますと、バスの乗客14人のうち20代の女性1人が首に軽いケガをして病院に搬送されました。

50代のバスの男性運転士にケガはなく、岐阜バスは「運転士の指導を徹底し、事故の再発防止に努めたい」とコメントしています。

バックで側道から国道に出ようと…トラックと走って来た路線バスが衝突 乗客14人のうち20代女性1人がケガ(東海テレビ) - Yahoo!ニュース
7月2日正午ごろ、岐阜県岐阜市の国道で、岐阜バスの路線バスがトラックに衝突し、乗客1人がケガをしました。  ガラスが割れ車体が大きくゆがんだバス。岐阜市岩田東3丁目で2日正午ごろ、岐阜バスの路線

これって2つの可能性があって、どっちなのかはイマイチわからない。

 

①安全不確認のままトラックが後退してバスに衝突
②バックしたトラックは既に国道に進入していたところ、バスが追突

 

おそらくは①なんじゃないかと予想しますし、ヤフコメを見ても①の前提で語っている人が多い。

 

ところで、安全不確認のままトラックが後退した事故の場合、何の違反になるのでしょうか?

スポンサーリンク

25条の2第1項

普通に考えると25条の2第1項の違反になると考えられます。

(横断等の禁止)
第二十五条の二 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない

ところが道路交通法の難しいところで、25条の2第1項は故意犯の処罰規定しかない。
つまり「他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるとき」であることを認識せず、安全不確認のままバックして起こした事故については、25条の2第1項の違反として処罰できなくなる。

 

これは昭和40年代に論争になってまして、過失の処罰規定がない25条の2第1項を過失によって違反した場合、安全運転義務違反(70条)の過失犯を適用できるのか?という問題があります。
実例を。

被告人は、昭和44年11月3日午前9時10分ころ、山口県玖珂郡a町大字bA方前道路の三差路において、普通貨物自動車を運転して、狭い道路(幅員約4.4メートル)から国道(幅員約6.1メートル)に後退するに際し、左右道路の安全を確認しないで後退したため、同国道を後退方向に向つて右側から直進して来た普通乗用自動車の左前部を自車の左後部に衝突させた

25条の2第1項は過失犯の処罰規定がない。
広島高裁は過失による安全運転義務違反の成立を認めず。

そもそも被告人の本件後退行為を道路交通法70条の安全運転義務違反罪に問擬すること自体問題である。すなわち、同条の規定は同法の他の各条で定められている道路交通の危険防止のための典型的、類型的義務の各規定を補充する趣旨で、これら各規定ではまかない切れない具体的危険行為を禁止するため設けられているので、もし道路交通上危険と思われるある行為が右各典型的、類型的義務のいずれかに違反する内容をもつときは、当該個別法規を問擬すべく同法70条の安全運転義務違反罪の規定を適用することは許されないと解されるところ、本件事実関係は前記説示のとおりであつて、本件後退行為は道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項に定められている『他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは後退してはならない』との義務に違反する内容をもつことが明らかであるから、前記理由により道路交通法70条の安全運転義務違反罪の成立する余地はない。
もつとも、道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項所定の義務違反罪は故意犯であつて、少くとも同条項にいわゆる『他の車
両等の正常な交通を妨害するおそれがある』と認められるに足る事情についての認識は必要と解されるところ、被告人が本件後退行為に及んだのは前記説示の事実関係から明らかなように国道上の交通状況を十分確認せず南進中の車があつたことに気づかなかつた過失によるものであり、当時国道上の交通がひんぱんであつたとの事情もうかがえないので、被告人には確定的故意はもちろん、未必的故意もなかつたと認められ、本件後退行為につき右条項所定の義務違反罪は成立せず、また右義務違反罪については過失犯処罰の明文の規定もないので過失犯としても処罰することはできない。
そこでこのような場合には道路交通法70条の安全運転義務違反罪の過失犯処罰の規定(同法119条2項)を適用することができるとの見解もありうるし、現に検察官も当審において過失による安全運転義務違反罪の訴因を予備的に追加している。しかし、もともと同法70条の安全運転義務違反の内容は他の各条で定められている類型的義務ではまかない切れないこれ以外のこれと異なる内容をもつているのであるから、同法70条の安全運転義務違反罪の過失犯には当然他の各条で定められている類型的義務違反の過失犯を含まないと解されるばかりでなく、同法が70条の安全運転義務以外の各種の類型的な危険防止義務につきそれぞれ過失犯処罰の有無を明確に規定し、かつ、過失犯処罰の規定を設けると否とにつきその必要性等を十分考慮していて合理的区別をしていることにかんがみるときは、ある種の類型的義務違反につき過失犯処罰の規定を設けなかつた以上当然それらの義務違反については一切過失犯を処罰しない法意と解されるから、道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項所定の義務違反罪につき過失犯処罰の規定のない以上、道路交通法70条の安全運転義務違犯罪の過失犯処罰の規定を適用することも許されないのである。

広島高裁  昭和47年3月23日

広島高裁は25条の2に過失犯の処罰規定がなく、安全運転義務違反は他条を補完する趣旨で創設された経緯から、25条の2第1項の過失犯を70条の過失犯として処罰することは許されないとした。
しかし最高裁は25条の2第1項を過失により違反し、それが「他人に危害を及ぼす速度か方法」であれば安全運転義務違反の過失犯を適用できるとした。

 道路交通法70条の安全運転義務は、同法の他の各条に定められている運転者の具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられたものであり、同法70条違反の罪の規定と右各条の義務違反の罪の規定との関係は、いわゆる法条競合にあたるものと解される(最高裁昭和45年(あ)第95号同46年5月13日第二小法廷決定・刑集25巻3号556頁参照)。すなわち、同法70条の安全運転義務は、他の各条の義務違反の罪以外のこれと異なる内容をもつているものではなく、その構成要件自体としては他の各条の義務違反にあたる場合をも包含しているのであるが、ただ、同法70条違反の罪の構成要件に該当する行為が同時に他の各条の義務違反の罪の構成要件に該当する場合には、同法70条の規定が同法の他の各条の義務違反の規定を補充するものである趣旨から、他の各条の義務違反の罪だけが成立し、同法70条の安全運転義務違反の罪は成立しないものとされるのである。
つぎに、同法70条の安全運転義務違反の罪(ことに同条後段違反の罪)と他の各条の義務違反の罪とは、構成要件の規定の仕方を異にしているのであつて、他の各条の義務違反の罪の構成要件に該当する行為が、直ちに同法70条後段の安全運転義務違反の罪の構成要件に該当するわけではない。同法70条後段の安全運転義務違反の罪が成立するためには、具体的な道路、交通および当該車両等の状況において、他人に危害を及ぼす客観的な危険のある速度または方法で運転することを要するのである。したがつて、他の各条の義務違反の罪の過失犯自体が処罰されないことから、直ちに、これらの罪の過失犯たる内容をもつ行為のうち同法70条後段の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすものについて、それが同法70条後段の安全運転義務違反の過失犯としても処罰されないということはできないのである。
これを本件についてみるに、道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項の「車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害
するおそれがあるときは、後退してはならない。」との規定の過失犯たる内容をもつ行為は、直ちに道路交通法70条後段の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすものではなく、具体的な道路、交通および当該車両等の状況において、他人に危害を及ぼす客観的な危険のある速度または方法による運転だけがこれに該当する
のであるから、道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項違反の過失犯が処罰されていないことから、その過失犯たる内容をもつ行為のうち道路交通法70条後段の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすものについて、同法70条後段違反の過失犯として処罰できないとはいえないのである。
そうすると、道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)25条の2第1項違反の過失犯たる内容をもつ被告人の本件後退行為につき、道路交通法
70条後段の安全運転義務違反の過失犯処罰の規定の適用がないとする理由はなく、かえつて、同法70条の安全運転義務が、同法の他の各条に定められている運転者の具体的個別的義務を補充する趣旨で設けられていることから考えると、他の各条の義務違反の罪のうち過失犯処罰の規定を欠く罪の過失犯たる内容を有する行為についても、同法70条の安全運転義務違反の過失犯の構成要件を充たすかぎり、その処罰規定(同法119条2項、1項9号)が適用されるものと解するのが相当である。

最高裁判所第一小法廷 昭和48年4月19日

「正常な交通を妨害するおそれ」を認識せず安全不確認のままバックした行為は25条の2第1項に過失犯の処罰規定がないので違反に問えないにしても、そのバックが「他人に危害を及ぼす速度か方法」であれば安全運転義務違反(70条)の過失犯を適用できるとしている。

 

ややこしいのよね、道路交通法違反の認定は。
ちゃんと確認してからバックすべきとしか言えない。

安全運転義務違反が多発する理由

警察庁が出す事故/違反の統計ではやたらと安全運転義務違反が多発してますが、要は過失犯の処罰規定がない条文に違反した事故の場合、安全運転義務違反の過失犯を適用するしかないから。

なぜ?自転車の「対歩行者事故」の大半が安全運転義務違反になる理由。
ちょっと前に読者様から質問を頂いていたのですが、詳しい内情はわからないので「たぶん」として回答します。 安全運転義務違反を適用する理由 まず、 これはその通り。 安全運転義務違反は、あくまでも他の具体的規定ではまかないきれない部分を補完する...

統計データをみて「◯◯違反は少ない」みたいな読み方はできないのよ。
過失の処罰規定がないなら安全運転義務違反として処理するしかないのだから。
実質的に25条の2第1項の違反でも、それが故意ではなく過失によるものなら安全運転義務違反として処理せざるを得ない。
だから統計データは意味がない。

 

まあ、安全不確認のままバックするのはご法度です。
けどこれ、バス側から見てどの地点でトラックが後退することを予見できたか次第。

 

バスもトラックも乗客にケガを負わせた件(過失運転致傷)で書類送検されますが、バス側に予見可能性も回避可能性もないなら、バス側には違反点数はつきません。
安全運転義務って勘違いしている人が多いけど、「事故を起こした結果」を違反とするのではなく、事故に至る危険な運転方法を問題にしているので、回避不可能な場合には点数すらつかない。
実際どうだったのかは報道からはわかりません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました