自転車は飲酒運転と思われますが、それとは別に加害者の注意義務違反をどこに見いだすかがポイント。
大阪市平野区の国道で26日夜、自転車に乗った男性が倒れているのが見つかりその後、死亡しました。警察は転倒した後に男性と接触したにもかかわらず、現場から逃走したなどとしてトラック運転手を逮捕しました。
26日午後9時ごろ、平野区の国道25号で区内に住む会社員の男性(61)が倒れて、応急処置されているのを巡回中の警察官が見つけました。警察によりますと、男性は頭蓋骨を骨折していて、搬送先の病院で死亡が確認されました。
男性は当時同僚5人と酒を飲んだ帰りで、警察が周辺の防犯カメラを調べたところ、自転車で歩道を走っていた男性が何らかの理由で車道側に倒れたタイミングで大型トラックと接触した可能性が高いとみられていました。
トラックは現場から走り去っていて、警察はひき逃げ事件として捜査していましたが、その後、大阪府阪南市のトラック運転手・新宅隆平容疑者(33)を過失運転致死やひき逃げの疑いで逮捕しました。
道路に転倒した自転車の男性はねて逃走…ひき逃げなどの疑いでトラック運転手を逮捕 男性は頭がい骨折れ死亡 車道に倒れたタイミングで接触か 大阪・平野区(MBSニュース) - Yahoo!ニュース大阪市平野区の国道で26日夜、自転車に乗った男性が倒れているのが見つかりその後、死亡しました。警察は転倒した後に男性と接触したにもかかわらず、現場から逃走したなどとしてトラック運転手を逮捕しました。
結果論だけみて「酒飲んで自転車に乗り転倒した被害者が…」といっても、車道を通行していた加害者は被害者が飲酒していたかなんてわかるはずもなく、それは結果論。
ところで、このような事故について加害者の「過失」をどこに見いだすか?という問題があります。
②制限速度内で通行していた場合に、急ブレーキ等で回避可能だったか?
むしろ問題になるのは①。
民事の事例ですが、予見可能性についてこのような判例があります。
被告は、本件事故発生の数秒前に、本件歩道上を走行する原告自転車を認めることができた。しかし、原告自転車は、本件車道と縁石で区画された本件歩道上を走行しており、原告自転車に本件車道への進入等をうかがわせる動きはなかった。したがって、本件車道を制限速度内の時速約38キロで走行していた被告において、原告自転車を認めた時点で、原告自転車の車道側への進入等を予見して速度を落として走行すべき注意義務はなかったといえる。
東京地裁 令和2年6月23日
これが仮に歩道上でふらついていた自転車を見ていたなら、減速する等の注意義務が求められる。
注意義務を怠ったことを過失と呼ぶわけでして。
報道の事例では自転車が歩道から車道に進出する可能性を窺わせる事情があったのかはわかりませんが、ポイントになるのはそこ。
というのもあえてこれを取り上げたのは、以前読者様からコメントを頂いたこれ。
状況はサイクリングロードで起きました。私と歩行者の進行方向は同じで私が10M程度手前から歩行者を認識しており、ベルを鳴らしながらブレーキをかけて減速しながら走行しました。歩行者は親子で母親は左端、息子が中央にいて右側が空いていたため私はベルを鳴らしながら右側をすり抜けた時に息子が急に右に動き私の左腕に衝突し私は右側に転倒しました。
息子さんは私の自転車に尻もちを付きましたが特に大きな怪我はありませんでしたが私は右にコンクリート柵があり、そこに激突したので肋骨を骨折してしまいました。
その後、一緒に居た母親が「あなたが100%悪い、110番してください!」と言ったので110番しました。その後警察で調書を作成しましたがその時、担当のお巡りさんには「歩行者の不注意もある」とおっしゃってましたがこの場合、どうなりますか?
被害者の後ろ方突っ込んだなら私が100%だと言われても仕方がありませんが、横から押されて倒れるのは避けようがありません。自転車に乗ってるということだけで加害者と決めつけられて正直腹が立ちました。怪我も私のほうが重症です。なのに相手は示談金目当てに毎日通院しているようです。
こういうケースでも自転車の過失は大きいんでしょうか。
イメージはこう。
回避不可能だという気持ちはわからなくもないのですが、要は歩車道の区別がなく実質的に遊歩道的に扱われているサイクリングロードで、子供が不意な動きをすることは予見可能。
予見可能な以上、大幅に減速するとか、子供が自転車の存在に気づいたことを確認してから進行すべき注意義務がある。
それら注意義務を怠っていたところにサイドアタックを受けた扱いなので、自転車過失は大きいことになる。
よく「かもしれない運転」と言われますが、日本の法律が過失致死傷を犯罪だと規定している以上、予見可能ならそれに応じた注意義務を果たすことを求めているわけでして。
道路交通法○条の問題じゃないのよね。
そしてホンキで予見不可能なことについては、信頼の原則等により過失が否定されます。
くまモンの中に人間が入っていることは予見可能だし、夜のお店に書いてある年齢は実年齢ではなくキャラ年齢であることは予見可能。
画像が加工されていることは予見可能ですが、無加工画像だと思い込んで指名するから事故るわけでしょ。
そこに信頼の原則が作用する余地はない。
けど「総額6万円(税込)」と書いてあるなら、その金額であることを信頼してサービスを受けることは許される。
自転車に乗っていても、歩道から車道にノールック進出する自転車をよくみかけますが、そんな場合でも予見可能な以上は回避しないと、相手がケガしたら有罪なのよ。
報道の件は予見可能だったかわかりませんが、どこに過失責任を求めているかというと実際に車道に転倒した時点での回避可能性だけじゃなくて、それ以前の予見可能性。

2011年頃からクロスバイクやロードバイクにはまった男子です。今乗っているのはLOOK765。
ひょんなことから訴訟を経験し(本人訴訟)、法律の勉強をする中で道路交通法にやたら詳しくなりました。なので自転車と関係がない道路交通法の解説もしています。なるべく判例や解説書などの見解を取り上げるようにしてます。
現在はちょっと体調不良につき、自転車はお休み中。本当は輪行が好きなのですが。ロードバイクのみならずツーリングバイクにも興味あり。
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