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特定小型原付は「失敗」なのか?違反件数と事故件数が公開されています。

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ちょっと前にメルボルンで、電動キックボードのシェア事業を終了させるみたいな記事が出てました。

メルボルン市が電動キックボード全面禁止、事故や苦情増加 オーストラリア
オーストラリア南東部ビクトリア州のメルボルン市が、電動キックボードの全面禁止に踏み切った。効率的で持続可能な移動手段として各国の大都市で普及した電動キックボードだが、事故が相次いで苦情も増え、規制強化を求める声が強まっている。

オーストラリアのメルボルン市は13日、レンタルの電動キックボードの禁止を決定した。許容できない安全リスクがあるとしている。

同市の市議会は2022年2月、電動キックボードの導入を歓迎し、2年にわたって試験運用してきた。しかし、これまでに何百件もの事故が発生し、市民から苦情や怒りの声が上がっていた。

市議会はこの日、6対4の多数決で、ほぼ即時の禁止を決めた。電動キックボードのレンタル事業を展開しているライムとニューロンの2社は、30日以内にスクーターを撤去するよう命じられた。

メルボルンのニコラス・リース市長は、一部ユーザーの危険なふるまいに「うんざりした」と述べた。

「あまりに多くの人が歩道で電動キックボードに乗っている。きちんと駐車もしない。そのへんに倒され、紙吹雪のように、ごみのように街中に散乱し、人々がつまずく危険性を生み出している」と、リース市長はラジオ番組で指摘した。

最高時速26キロで走行できるレンタル電動キックボードは、世界各都市で導入されたものの、短期間で廃止されている。仏パリは昨年9月に使用を禁止しており、リース市長は「パリのやり方」をまねしたいとしている。

事業会社のライムとニューロンにはまだ6カ月の運営契約が残っている。両社はここ数週間、熱心にキャンペーンを展開し、利用者に議会へ請願するよう促していた。

両社はまた、キックボードの使用に関する安全性と規制を改善するため、ここ数カ月でかなりの投資を行ってきたと述べている。ニューロンは、キックボードが誤って使われるのを防ぐため、人工知能(AI)を搭載したカメラを設置するとしていた。

同社の広報担当者は13日、市議会の一律禁止を非難。電動キックボードの使用を市内の混雑していない場所に制限したり、乗車ゾーンを設定したりするなどの対策を導入するため、市当局と協議してきたと述べた。

ニューロンのジェイデン・ブライアント氏は以前、豪メディアに対し、「これは州政府が発表した改革を上回るものだ」と語っていた。

「新しいeスクーター技術の導入に関する(別の)提案が、禁止案に変わるのは非常に奇妙なことだ」

メルボルンでは2022年2月の試験開始以来、ライムとニューロンの電動キックボード合わせて約1500台が、市内全域に配置された。

メルボルン市議会は以前、電動キックボードが市の二酸化炭素(CO2)排出量を400トン以上削減し、公共交通機関の利用を促進したと報告していた。

一方で、この計画の欠陥を示す証拠も増えていた。市内の主要病院の一つであるロイヤル・メルボルン病院が昨年12月に発表した報告によると、2022年に250人近いユーザーが負傷し、同院の救急外来を受診した。受診者の大半は、酒酔い運転、スピード違反、ヘルメット未着用などがけがの原因となっていた。

病院の広報担当者によると、電動キックボードの事故は死亡や脳損傷の原因にもなっており、負傷者は主に若年層だという。

電動キックボード、豪メルボルン市がレンタル禁止を決定 事故多発と苦情殺到で - BBCニュース
オーストラリアのメルボルン市は13日、レンタルの電動キックボードの禁止を決定した。許容できない安全リスクがあるとしている。

報道が混乱しているようにみえますが、あくまでレンタルが禁止で個人所有はOKなのだろうか?
日本と大きく違う点があるとしたら、日本の場合自治体の長がレンタル電動キックボードサービスを終了させる権限はない。

 

ちょっと日本の事情と比較してみます。

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日本の特定小型原付

一応法令上、電動キックボードは特定小型原付と一般原付がありますが、特定小型原付に絞ってみていきます。
まずはおさらい。

特定小型原付 一般原付
最高速度 20キロ 30キロ
免許 不要(16歳以上) 必要
ヘルメット 努力義務 義務
歩道通行 時速6キロモードにした場合、「自転車通行可」の歩道は通行可能 不可

メルボルンの報道やパリのレンタル電動キックボードサービス終了の一因として「歩道通行」が挙げられています。
日本の場合、特定小型原付は令和5年7月から施行されてますが、違反件数と事故件数はこちら。

あくまでも検挙件数ベースですが、令和5年7月~令和6年6月までで通行区分違反(歩道通行や逆走など)が13824件(55%)のトップ。
ついで信号無視が7725件(31%)。

 

つまり、歩道通行・逆走・信号無視の合計が86%を占めてます。
次に事故件数。

一年間で218件。
分かりにくいのでまとめます。

相手当事者 件数(一年間)
単独 78件(35.7%)
4輪 67件(30.7%)
歩行者 37件(16.9%)
自転車 31件(14.2%)
2輪車 3件
その他 2件
合計 218件

最も多いのは単独事故、つまり自爆系。
ついで対4輪ですが、一般的には4輪と特定小型原付が衝突すれば特定小型原付がケガするだろうから、この場合は被害者になった可能性が高い。

注目なのは、対歩行者事故。
17%近くあるので少ないとは言えないし、特定小型原付と歩行者が衝突したら歩行者が被害者になる事例がほとんどのはず。
対歩行者事故に着目したのは、特定小型原付の違反行為として「通行区分違反」が最も多く(55%)、通行区分違反は歩道通行と逆走がメイン。
メルボルンやパリのシェア事業廃止理由をみても、違法に歩道通行する電動キックボードが多いことが挙げられてますし、日本でも違法に歩道通行する電動キックボードの目撃情報は多い。

 

個人的には「通行区分違反」の内訳を出したほうがいいと思うけど、やはり日本でも海外でも違法に歩道通行する事例が多いのでしょうね。

 

その上での話ですが、日本の法令上、特定小型原付が歩道通行する場合は「自転車通行可」の標識がある歩道限定で、しかも時速6キロモードに切り替える義務がある。
時速6キロモードはランプが点滅するので、モードを切り替えたか容易に判別可能(停止しないとモードの切り替えはできない仕組み)。

結局、モードを切り替えないまま歩道通行する事例が多いけど、海外との決定的な違いはスピードなんじゃないかな。
特定小型原付はリミッター制御で、時速20キロまでしか出ない。
電動アシスト自転車に乗り歩道を爆走する人は普通にいるけど(徐行義務があるから違法)、電動アシスト自転車は時速24キロまでアシストされるので電動キックボードより速い。

 

海外だと時速26キロとか出るみたいですが(メルボルンの事例では「スピード違反」も指摘されてますが、リミッター制御はないのだろうか?)、時速20キロまでしか出ない仕組みにした分、日本はまだマシなのかもしれません。
もちろん違反は違反だけど、守らない人が一定数いることを前提に制度設計しないとまずいわけで、これだけ歩道の違法通行がみられる中で対歩行者事故が37件(16.9%)で収まったのは、最高速度が関係していそう。

 

その意味では、海外よりも速度を制限したことは正解なのかもしれません。
実証実験時は最高速度15キロ(小型特殊自動車扱い)でしたが、業界団体がスピードアップを求めても20キロまでしか許さなかった点はまだマシな要素。

6キロモードは失敗なのか?

歩道通行する際の「時速6キロモード」が成功なのか失敗なのか?ですが、今のところ遵守率は極めて悪いと考えられ、失敗でしょう。
ただし、モード変更したかしてないかが外見上判別可能(ランプの点滅)なので、検挙しやすさでいうなら仕組みは成功なのかもしれません。

 

自転車が歩道通行する場合には徐行義務がありますが、その速度を徐行とみなせるか?という判断ラインは難しい。
特定小型原付は「徐行なのか?」という判断は不要で、ランプが点滅してなければ容赦なく検挙できるので、検挙しやすさは良い。

 

結局、歩道通行する場合にモード変更をしないから対歩行者リスクが高まるわけですが、守らせることが期待できないルールを頑張るか?
守りやすいルールに変えるか?
それとも歩道から完全排除するか?
などいろいろ方法論はあるでしょうけど、わりとシンプルな話として、歩道通行する理由を削るのも一つの政策。
自転車道や自転車レーンが整備されればわざわざ歩道通行する理由がなくなる気もするけど、パリって急速に自転車レーンの整備をしたはずなのに「歩道通行電動キックボード」が一因でシェアサービスが廃止になったのよね。

パリのサービス終了は、テキトーに乗り捨てる「違法歩道駐車」も問題になったのでなんとも言い難いけど、自転車レーンを大量に整備しても違法に歩道通行する電動キックボードがいる理由が知りたいところ。

 

パリってそういう細かいデータは出てないのだろうか?

結局、特定小型原付は失敗なのか?

今のところ判断つかないけど、海外で言われているほど日本では問題になってないのよね。
いくつか理由があると思うのですが、

事故件数を見ると、東京都が164件(75%)、大阪府が38件(17%)、他16件。
東京都に偏りが大きく、2位の大阪府と比較してもかなりの差があるけど、これら以外の道府県で事故件数が少ない理由は、単純に特定小型原付の普及率だと思う。
乗る人が少なければ事故が少ないのは当たり前。

 

ぶっちゃけた話、うちの近所には特定小型原付は全くいません。
施行から一年経ちましたが、東京都と大阪府はともかくとして他の道府県ではそもそも乗る人がほとんどいないと思われる。

京都府では一年間での検挙数が704件とあります。

法律の改正で去年7月から「特定小型原動機付自転車」として扱われるようになった一定の基準を満たした電動キックボードなどについて、京都府内のこの1年間の検挙数は700件余りにのぼることが警察のまとめでわかりました。
警察は原則、車道を通行することなど、交通ルールを守るよう呼びかけています。

電動キックボードなどをめぐっては、去年7月の道路交通法の改正で最高時速20キロ以下など一定の基準を満たしたものは「特定小型原動機付自転車」と位置づけられ、16歳以上なら運転免許なしで利用できるようになりました。
京都府警によりますと、その後、6月末までの1年間で、「特定小型原動機付自転車」による交通違反の検挙数は、府内で704件にのぼるということです。
もっとも多かったのは、歩道を通行するなどの通行区分の違反で、全体の半数を超える373件、次いで、信号無視が103件、酒気帯び運転が41件となりました。
一方、違反者を年代別にみると、▼20代が421件で最も多、次いで、▼10代が112件、▼30代が90件と、30代までで全体の9割近くを占めました。
また、職業別では大学生が346件と半数近くを占めました。

電動キックボードの車道通行など検挙数 1年間で700件余|NHK 京都府のニュース
【NHK】法律の改正で去年7月から「特定小型原動機付自転車」として扱われるようになった一定の基準を満たした電動キックボードなどについて、京都府内のこ…

京都府のデータだと違反者の半数が大学生で、違反者の年齢は30代までが9割だそうな。
今のところ若い世代がメインですが、一つ気になるのは違反と知らずに違反したのか?
それとも違反と知らずに違反したのか?についても調査すると、解決の糸口が見えそうな気がする。

 

けど、検挙数が704件で事故件数は「その他の16件中の?件」なんですよね。
事故件数ベースでみたら、わりとマシなのかもしれません。

 

パリだと自転車レーンを急速に作りまくったわりには電動キックボードの歩道通行が問題になったわけだし、インフラ整備しても違法に歩道通行する輩は大量発生するのか?という疑問もありますが、この手の話題って開示されているデータだけだと本当の問題がよくわからない気がする。
まあ、個人的には電動キックボードに乗りたいとは全く思わないのですが…特定小型原付は電動キックボードより着座型が主流になると予想しつつも、今のところまだ電動キックボードタイプが主流なのだろうか。

コメント

  1. 山中和彦 より:

    先日、京都で深夜ですが、
    ◆2人乗り
    ◆歩道走行(もちろん通常モード)
    ◆信号無視
    という、トリプル違反のLUUPの電動キックボードを見かけました。
    ほんと、海外のように市区単位で、住民投票で禁止できるようにしてほしいです。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      トリプル役満ですね笑。
      救いようがない。

  2. 山中和彦 より:

    今日のX(旧Twitter)で上がっていた動画のLUUPもひどいです。
    (これも大阪)
    https://x.com/henoheno_456/status/1827668990984155454
    子供がかわいそうです。

    あと、先ほど仕事場の近くの幹線道路(四ツ橋筋と言いまして、6車線の一方通行の幹線道路)で逆走していくLUUPがいました。歩道を走られるよりはマシだと思いますが、もしぶつかったクルマがいたら不運です。

    • roadbikenavi roadbikenavi より:

      コメントありがとうございます。

      これはひどいですね笑。
      偶然死ななかっただけとしか。

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